Amazonが株主に「AWSの気候影響を見るな」と言っている
2040年カーボンニュートラルを掲げる企業が、データセンターの排出情報を詳しく開示する提案に「反対」を推奨している。約31兆8000億円のインフラ投資を進めながら。
2040年カーボンニュートラルを掲げる企業が、データセンターの排出情報を詳しく開示する提案に「反対」を推奨している。約31兆8000億円のインフラ投資を進めながら。
「追加報告は不要」という回答の重み
Amazonが5月20日の年次株主総会に向けて提出した委任状説明書の中に、ひとつの株主提案が含まれている。データセンターの拡大が同社の気候目標にどう影響するかを、より詳細に開示せよ、という内容だ。
提案者はブライアン・カリガー氏。企業責任を推進する非営利団体As You Sowと、カトリック修道会Sisters of Mercy of the Americasの投資部門であるMercy Investment Servicesが代理人を務める。宗教系投資ファンドが気候開示を求めるという構図は、ESG投資の裾野がどこまで広がっているかを象徴している。
Amazonの取締役会は、この提案に対して「反対」票を投じるよう株主に推奨した。
委任状説明書には「当社は気候目標の進捗について定期的に公開報告を行っており、AIワークロードの炭素排出削減やデータセンターの持続可能性向上の取り組みも含めて開示している。この提案が求める報告は不要である」と記されている。
The Registerの取材に対しても、Amazonは具体的な説明を避け、委任状説明書の文面を参照するよう求めるだけだった。
約束と現実の間で膨らむ数字
Amazonは2019年にGlobal Optimismと共同でClimate Pledgeを立ち上げ、パリ協定より10年早い2040年までにネットゼロを達成すると宣言した。電力の100%再生可能エネルギー化は2030年が目標だったが、2023年に前倒し達成を発表し、2024年も継続している。
ここまでは模範的に見える。だが、絶対量の排出で見ると風景は一変する。
2024年のAmazon全体の炭素排出量は6825万トンCO₂換算で、2023年の6438万トンから6%増加した。カーボン・インテンシティ(売上あたりの排出量)は4%改善して6年連続の減少を記録したが、事業成長が排出削減を追い越している構図は変わらない。
環境団体Stand.earthの分析はさらに厳しい。Climate Pledgeを発表した2019年と比較すると、Amazonの直接排出(スコープ1)は162%増加している。「目標を掲げた年から排出が倍以上に膨らんでいる」という事実は、「進捗は常に直線的ではない」というAmazonの説明に、皮肉な重みを加える。
31兆円の投資と、その電力源
この矛盾に追い打ちをかけるのが、AWSのインフラ拡大計画だ。
CEOのアンディ・ジャシーは株主総会を前に公開した年次書簡で、2026年の設備投資が約2000億ドル(約31兆8000億円)に達する見通しだと明かした。2025年の1318億ドル(約21兆円)から5割以上の増額で、AI需要への対応が主な理由だ。
「勘で約2000億ドルを投じるわけではない」とジャシーは強調する。OpenAIとの1000億ドル超の契約を筆頭に、大口顧客からの確約済み案件が投資の裏付けになっているという。2025年中に3.9ギガワットのコンピューティング能力を追加し、2027年末までにこれを倍増させる計画も示した。
参考までに、2000億ドルという金額はIMFの統計で見ると複数の中規模国家のGDPを上回る。一企業の年間設備投資としては前例のない規模だ。
問題は、その膨大なインフラがどこから電力を得るかだ。世界最大のデータセンター集積地であるバージニア州では、急増する電力需要に対応するため、電力会社がガス火力発電所の新設を進めている。石炭火力の延命も報告されている。
再生可能エネルギー100%を掲げる企業の拡大が、化石燃料の新たな需要を生んでいる。この構造的な矛盾が、株主提案を生んだ。
「再エネ100%」の裏側にある仕組み
Amazonが再生可能エネルギー100%を主張できるのは、再生可能エネルギー証書(REC)という仕組みがあるからだ。実際にデータセンターが消費する電力のすべてが再エネで賄われている必要はない。別の場所で発電された再エネの「環境価値」を購入することで、帳簿上の再エネ100%を達成できる。
この制度自体は国際的に認められた枠組みだが、株主提案はまさにこの点を突いている。AWSの急拡大に伴い、必要なRECの購入量は膨らみ続ける。
十分な量が市場で確保できるのか。「再エネ100%」という看板を維持するコストは、いつまで現実的なのか。
さらに本質的な問題がある。AWSは自社の炭素排出量をAmazon全体の数字から分離して開示していない。
分析企業Canalysは以前から、AWSを「ハイパースケーラーの中で最も透明性に欠ける」と批判してきた。小売部門の排出とクラウド部門の排出が混在した数字では、データセンター拡大の環境負荷を正確に評価することは不可能だ。
AWSのデータセンターの電力使用効率(PUE)は1.15で、業界平均の1.25やオンプレミスの1.63を下回る。効率は高い。だが、効率と総量は別の問題だ。
「不要」と言い切れるのか
Amazonの立場は明確だ。すでに十分な情報を開示しており、追加の報告書は不要だという。2024年にはカーボン・インテンシティが6年連続で改善し、事業成長と排出増のデカップリング(切り離し)を進めていると主張する。
だが、株主提案が求めているのは「もっと頑張れ」ではない。「AWSという巨大なエンジンが、あなたの気候目標をどう変えるのか、具体的に見せてほしい」という問いだ。
炭素強度の改善は認めるとしても、絶対排出量が増え続ける中で、2040年のネットゼロがどう実現可能なのか。その道筋を示す責任は、約束をした側にある。
2025年にはAWSを含むデータセンター事業者の業界団体が、EUのデータセンター持続可能性の最低基準導入計画に批判的な報告書を出している。規制を嫌い、自主開示で十分だと主張しながら、自主開示の拡充も拒む。この姿勢が株主の信頼を勝ち取れるのかどうかは、5月20日の投票結果が示すことになる。
参照元
他参照
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