Amazon倉庫の誤発送、得するのは買い手、損は全て販売店
1個注文した商品が、箱ごと50個届く。買い手にとっては予期せぬ棚ぼただが、その差額を泣く泣く被るのはAmazonでもなく、出店している販売店だ。
1個注文した商品が、箱ごと50個届く。買い手にとっては予期せぬ棚ぼただが、その差額を泣く泣く被るのはAmazonでもなく、出店している販売店だ。
1個の注文に対し、50個が箱ごと届く
香港のテックメディアHKEPCが、Amazon米国の倉庫運営に対する出店者の悲鳴を伝えている。ニューヨークに移住した香港出身の販売店主K氏(仮名)がHKEPCに打ち明けた話は、倉庫運用の杜撰さを生々しく物語っている。
ある顧客が商品を1個だけ注文したところ、倉庫スタッフは50個入りの段ボールごと出荷してしまった。FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン、Amazonの倉庫代行サービス)に商品を預けている販売店は、こうした大量誤発送を受けても補填を受けられない。
「Amazonは顧客に大盤振る舞いをしているだけで、自分たちは1セントも損をしない。すべて販売店のコストで賄われているからだ」── K氏はHKEPCにそう語ったとされる。
K氏の場合、同種の誤出荷が2回重なり、合計98個の在庫を失った。Amazonに賠償を求めても、応対は壁に向かって話すような堂々巡りで、結局うやむやにされたという。
PCゲーマー界隈では、Amazonからの誤発送で1個注文したRAMやSSDが複数届いた、という幸運談が時折SNSを賑わせる。買い手にとっては嬉しい棚ぼただが、その帳尻はどこかで誰かが合わせている。それが販売店だった、というのが今回の構図だ。
30日返品制度が生む「砂袋ガチャ」
問題は誤発送だけではない。Amazonは購入から30日間の無条件返品を認めており、繁忙期には90日まで延長される。返ってきた商品の検品体制が、ここで大きな穴を開けている。
K氏によれば、返品された箱の中身が砂や石ころにすり替わっていた事例も珍しくないという。倉庫スタッフは中身を確認せず、ラベルだけを見て棚に戻す。次の購入者が「壊れている」「中身が違う」とクレームを入れれば、Amazonは即座に返金処理を行い、その損失はそのまま販売店に転嫁される。
中身を抜き取って石を詰めて返品しても、誰も検品しないなら詐欺は成立してしまう。これは販売店の責任ではなく、Amazonの倉庫運用とポリシー設計の問題だ。だが現状の力関係では、コストの押し付け先はいつも同じ場所に向かう。
「消費者の天国は、販売店の地獄」
台湾のメモリ・SSDブランドで電子商取引を担当するP氏も、HKEPCに同様の証言を寄せている。記憶媒体の価格高騰が続くなか、悪意ある返品やすり替え詐欺による損害は雪だるま式に膨らんでいるという。
「消費者にとってAmazonの保証制度は無敵だ。だが販売店から見れば、この仕組みは非人道的ですらある」── K氏はそう言い切ったとされる。
P氏もまた、制度の不公平を認めながらも、Amazonの市場規模を前にしては代替手段が見当たらない、と諦めの色をにじませる。
販売店側の自衛策は、地味で痛々しい。P氏の会社は被害を抑えるため、これまで20個1箱で納品していた商品を10個1箱に減らしているという。1回の誤出荷で消える在庫を半分にするための、苦渋の選択だ。守りに回るほど物流コストは嵩み、利益は痩せていく。
巨大プラットフォームの非対称性
この件が示しているのは、Amazon一社の倉庫管理の杜撰さだけではない。巨大ECプラットフォームと出店者のあいだに横たわる、構造的な力の非対称性だ。買い手の信頼を絶対視するポリシーは、消費者保護として一見正しく見える。だが、その「保護」のコストを誰が払っているかを問えば、答えは出店者の取り分から黙って差し引かれている。
客にとっての天国は、売り手にとっての地獄だ。
PCパーツが1個の注文で10個届いた、という幸運談を見かけたとき、その向こう側では誰かが静かに帳簿を閉じている。プラットフォームの太っ腹は、たいてい別の誰かの財布から出ている。
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