Blu-ray撤退ラッシュの中、Verbatimとアイ・オー・データが供給継続
ドライブもディスクも、気づけば作り手が消えていた。それでも残ると決めた二社がいる。
ドライブもディスクも、気づけば作り手が消えていた。それでも残ると決めた二社がいる。
「記録用Blu-ray」という小さな島に、まだ灯りがある
Verbatim Japanと株式会社アイ・オー・データ機器が4月8日、記録用Blu-ray製品の国内供給を継続すると改めて表明した。今回の共同声明が前回と違うのは、ディスクだけでなくドライブのハードウェアまで対象に含めたことだ。部材を確保し、生産体制を調整し、今後も商品提供を続ける方針だという。
この1年あまり、日本市場では退出の連鎖が続いてきた。ソニー、バッファロー、エレコム、パイオニア、そしてかつてのLG。作り手が一社また一社と静かに看板を下ろしていくなかで、「まだ作る」と言う側にまわるのは、もはや勇気の問題に近い。
なぜ今、ディスクではなく「ドライブ」なのか
昨年1月末、両社は似た趣旨の声明を出していた。ただしあのときの主役はディスクだった。ソニーが国内最後の記録用Blu-ray工場を閉じる決定を下した直後の、いわばメディア側の防衛線だった。
今回はそこから一歩踏み込み、ドライブ本体にまで話を広げている。理由は単純で、供給不安の重心がメディアからドライブ側に移ったからだ。垂直統合で光学ドライブを国内生産している日本メーカーは、いまやパナソニック一社しか残っていない。メディアだけ確保しても、それを読み書きする機械が手に入らなければ、記録という行為そのものが成立しない。
Verbatimブランドの光学メディアの国内総代理店を務めるのはアイ・オー・データであり、両社は実質的に「日本市場向け記録用Blu-ray」という一つの生態系を二人三脚で支える立場にある。
BDレコ、売れた理由は何だったのか
今年2月、アイ・オー・データはWindows対応の外付けBlu-rayドライブ「BDレコ」を発表した。両社の発表によれば、この製品は予想以上の反響を集めたという。そしてその手応えが、今回の供給継続宣言を後押ししたと読める。
同発表では、「手元にあるディスクに、残しておきたいデータを記録したい」というニーズが依然として存在することを改めて確認した、という趣旨が述べられている。クラウドでもSSDでもなく、わざわざ光学メディアに焼きたい人がまだいる。その事実が、この業界の生存基盤になっている。
ストリーミングに慣れ切った世代には奇妙に映るかもしれない。だが、サブスクの解約で消える映像、アカウント凍結で失われる写真、クラウド障害で戻らないデータを一度でも経験した人なら、「物理的に自分の棚にある1枚」の意味を軽くは扱えないはずだ。
撤退の年表、あるいは市場が痩せた理由
数字を並べると、市場の輪郭がはっきりする。JEITAの統計によれば、国内のBlu-rayレコーダー出荷台数は2011年にピークを迎え、1年間でおよそ630万台が売れていた。それが2025年には約62万台。ピーク時のおおよそ10分の1だ。
4年でおよそ10分の1。これはもう市場の「縮小」ではなく、別の形への移行だと考えた方が実態に近い。残った需要は薄くなったのではなく、用途ごとに選別され、濃くなった。
この痩せ細った市場から、プレイヤーが次々と降りていった。LGは2024年に撤退。ソニーは今年2月に国内最後のBlu-rayレコーダーを出荷して事業を畳み、バッファローのジャパン部門は現行の携帯型USBドライブの後継機を出さないと明言した。エレコムも先月、外付けドライブ9機種の販売終了を告知し、販売終了日は今年6月にかけて設定されている。パイオニアも光ディスク事業から退いた。
パナソニックは国内唯一のBlu-ray TVレコーダーメーカーとして残ったが、今年3月には「DMR-ZR1 4K DIGA」への注文が殺到し、供給が追いつかないことを公式に詫びる事態になった。最後の一社に需要が集中する、という典型的な構図だ。
| メーカー | 事業の扱い | 時期 |
|---|---|---|
| Verbatim Japan/アイ・オー | ディスク+ドライブ供給継続を表明 | 2026年4月 |
| パナソニック | 国内唯一のTVレコーダー継続 | 2026年3月 増産表明 |
| ソニー | BDレコーダー事業終了 | 2026年2月 最終出荷 |
| エレコム | 外付けドライブ9機種 販売終了 | 〜2026年6月 |
| バッファロー(国内) | 携帯型USBドライブ 後継機なし | 2025年 |
| パイオニア | 光ディスク事業から撤退 | 2025年 |
| LG | Blu-ray機器事業から撤退 | 2024年 |
「負けた規格」ではなく、「別の価値がある規格」へ
Blu-rayをDVDの後継として普及させたかった陣営の目論見は、正直に言えば外れた。配信の波に抗う力は、このメディアにはなかった。
それでも退場と「役目を終える」は同じではない。画質・音質の面で現在のストリーミングは4K UHD Blu-rayにまだ追いついていないと感じるユーザーは根強く存在するし、データの長期保存という観点では、アカウントに縛られないオフラインメディアの価値はむしろ時代に逆行する形で再評価されつつある。
AI時代のクラウドは便利だが、同時に脆い。自分のデータを自分の手で握っておく最後の手段として、光学ディスクが細く長く生き延びる可能性は、まだ消えていない。
二社に委ねられた薄氷の未来
ただ、バーベイタムとI-O DATAの宣言を楽観的に受け取り過ぎるのは危うい。部品の確保や生産ラインの調整は、市場が縮む中でのコスト勝負になる。パナソニックがドライブの供給を細らせれば、「ドライブも作る」と言った今回の約束も、どこかで現実と折り合いをつける必要が出てくるだろう。
それでも、撤退の発表ばかりが続いた界隈で「続ける」という言葉が聞けるのは、悪くない報せだ。光学ディスクという技術が、誰のために、何を守るために残っているのか。その問いを引き受ける会社が、まだ二つある。
棚の奥で静かに待っているディスクに、もう少しだけ時間が与えられた。
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