SNSをやめてYouTubeへ——英国人のネット習慣が変わりつつある
投稿を控え、AIに話しかけ、テレビを捨ててYouTubeを観る。英国の規制当局がまとめた最新調査が、静かに進む「デジタル生活の再編」を浮き彫りにした。
投稿を控え、AIに話しかけ、テレビを捨ててYouTubeを観る。英国の規制当局がまとめた最新調査が、静かに進む「デジタル生活の再編」を浮き彫りにした。
SNS離れは「沈黙」ではなく「撤退」だ
SNSをやめた、とは言い切れない。ただ、投稿しなくなった——英国の成人がたどり着いたのは、そういう状態だ。
英国の通信・メディア規制機関Ofcomが2026年4月2日に公表した年次調査によれば、SNSで積極的に投稿・シェア・コメントをする成人ユーザーの割合は、2024年の61%から49%にまで落ちた。12ポイントの下落は、1年間の変化としては大きい。
利用者数は変わっていない。成人インターネットユーザーの89%が何らかのSNSを使っており、16〜34歳に限れば97%に達する。使ってはいる。ただ、「見るだけ」になっている。
Ofcomの定性調査では、ユーザーが投稿に対してより慎重になっていることが確認された。「軽率な投稿を後悔したくない」「デジタル上の足跡を残したくない」という意識が高まっており、永続的なグリッド投稿よりも短期間で消えるストーリー形式を好む動きも見られる。
| 指標 | 2024年 | 最新調査 |
|---|---|---|
| SNS積極投稿・シェア・コメント率 | 61% | 49% |
| 新しいウェブサイトを積極的に探索 | 70% | 56% |
| ネット利用の利益がリスクを上回ると感じる | 72% | 59% |
| SNSが精神的健康に良いと答えたユーザー | 42% | 36% |
| 将来の投稿が問題になると心配する割合 | 43% | 49% |
| AIツール利用率(成人) | — | 54% |
出典:Ofcom「Adults' Media Use and Attitudes」調査(2026年4月2日公表)。定量調査は2025年9〜11月実施、英国成人7,533人対象。2024年の値は同調査の前年データ。AI利用率の前年比較値は今回の報告では示されていない(—)。
1年前には「将来、自分の投稿が問題になるかもしれない」と心配する人は43%だったが、今回は49%に増えている。ストーリー形式など、消えるコンテンツへの移行も同じ不安から来ている。かつてSNSが「自己表現の場」だったとすれば、今それは「リスクの高い場所」に変わりつつある。
新しいウェブサイトを探索する割合も、70%から56%に低下した。ネットの使い方が全体的に「保守化」している。
「無意識に人として接している」——AIの浸透
静かに目立つのが、AIの普及だ。
英国の成人の54%がすでにAIツールを利用している。ChatGPT、Copilot、Geminiといったサービスが対象で、前年の水準から大幅に増えており、とくに若い世代が引っ張っている(16〜24歳では79%、25〜34歳では74%)。
用途は実用的なものが多い。文書の下書き、文体の調整、インテリジェントな検索の代替として使うケースが主流だ。ただ、調査はそこで終わらない数字を含んでいる。
AIユーザーの8人に1人(約12%)が、AIを「会話」目的で使っていると回答した。25〜34歳では5人に1人に達する。
Ofcomのレポートには、こんな記述がある。「調査参加者の一部は、しばしば無意識のうちに、AIをまるで人間のように扱っているように見える。恋愛の別れについてアドバイスを求めたり、在宅勤務中の孤独を紛らわすために使っていたりするケースも報告された」
これを「依存」と呼ぶのは単純すぎるかもしれない。だが、同時にSNSへの能動的な参加が減っているという事実と重ね合わせると、何かが変わっているように思える。人とのつながりを求める場所が、少しずつ移動している。
男性はテレビをやめ、YouTubeを選んだ
もう一つ、見逃しにくい数字がある。
Ofcomの定性調査では、一部の男性参加者において、YouTubeが「主要または唯一の動画視聴手段」になっていることが確認された。従来、YouTubeは興味分野に特化した動画を見るためのプラットフォームだったが、最新の調査波では用途が広がっている。
「BGM代わりの視聴」(かつての昼間のテレビの代替)、特定の趣味に絞らないランダムな話題の動画——そういった使われ方が目立つようになった。
英国では地上波テレビを視聴するためにTV受信許可料の支払いが必要で、年々その費用対効果が問い直されている。Netflixなどのサービスが値上げを続けるなか、YouTubeがコスト面でも魅力的な選択肢になっているという背景もある。
これを「男性だけのトレンド」と切り捨てることもできる。ただ、Ofcomのより広い調査では、YouTubeはすでに英国で最も視聴に費やす時間が長いオンラインプラットフォームになっている。成人が1日に費やす時間は平均51分、テレビセットでの視聴も着実に伸びている。
主流メディアへの信頼は、二極化している
ニュースの信頼度についても数字が出た。
成人の85%はニュースを主流メディア(BBC、ITV、Sky Newsなど)から得ている。ただし、その信頼度には大きなばらつきがある。「常に正確だと信頼する」人と、「常に疑ってかかる」人がそれぞれ約2割ずつ存在し、両者の割合はほぼ同じだ。
Ofcomは「主流メディアを深く不信任し、独立系クリエイターやYouTubeの市民ジャーナリストからニュースを得ることを好む人々が一定数存在し、双方とも自らの立場をより強固にしていっているように見える」と記している。
「分断」という言葉は使いやすすぎて陳腐に聞こえるが、この数字は確かに同じ英国の中に、全く異なるメディア生態系が並立していることを示している。
スクリーンタイムの不安が広がっている
今回の調査で最も地味に、しかし重く響く数字の一つがある。
ネットを使うことのメリットがリスクを上回ると感じる成人の割合が、前年の72%から59%に下がった。SNSが精神的健康に良いと答えたユーザーも36%で、前年の42%から減少している。3人に2人は「使いすぎている」と自覚している。
ネットを切れなくて、でも使うことに疑問を感じている——そういう人が増えている。
調査は2025年9〜11月にかけて16歳以上の英国成人7,533人を対象に実施された定量調査と、長期追跡の定性研究を組み合わせたもので、Ofcomが毎年公表する信頼性の高い指標だ。
「デジタル疲れ」という言葉は数年前から言われ続けているが、今回の数字はそれが掛け声で終わっていないことを示している。SNSへの投稿を減らし、AIに孤独を話しかけ、テレビの代わりにYouTubeをつけっぱなしにする。これを「健全な変化」と見るか「別の依存への移行」と見るかは、まだ判断できない。ただ、何かが確実に変わっている。
参照元
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