CHUWI CPU偽装、ようやく公式声明──「製造ミス」で片付けようとする姿勢への疑問

3週間の沈黙、記事削除の要求、AMDからの法的措置の警告。すべてを経て、CHUWIがようやく口を開いた。だが、その中身を読むと、新たな疑問が湧いてくる。

CHUWI CPU偽装、ようやく公式声明──「製造ミス」で片付けようとする姿勢への疑問
CHUWI

3週間の沈黙、記事削除の要求、AMDからの法的措置の警告。すべてを経て、CHUWIがようやく口を開いた。だが、その中身を読むと、新たな疑問が湧いてくる。


CHUWIが認めた「製造上のエラー」とは何か

CHUWIが3月23日(日本時間)、公式ブログで声明を発表した。CoreBook XとCoreBook Plusの一部ロットに仕様と異なるプロセッサが搭載されていたことを認め、全額返金に応じると表明している。

CHUWI - 機械翻訳

声明の核心は 「production error(製造上のエラー)」 という言葉に集約される。返金期限は2026年5月31日まで。購入元を通じた返品か、サポートチームへの連絡で手続きを開始できるとしている。22年のブランド歴史を持ち出し、「ユーザー第一」の哲学を掲げる文言が並ぶ。

だがこの声明には、影響を受けた台数の開示も、偽装がなぜ起きたのかの説明もない。「誰が」「どの工程で」プロセッサを差し替えたのか、その一切に触れていない。

「製造上のエラー」──この表現は、ファームウェアレベルでCPUの識別情報を書き換えるという高度に意図的な工程とは、あまりにもかけ離れている。

「完品状態で返品せよ」という条件の矛盾

返品条件にも引っかかる点がある。CHUWIは「すべてのアクセサリを含む元の状態」での返品を求めている。

ここで立ち止まって考えてほしい。Ryzen 5 7430Uと表示されたノートPCを購入し、BIOSもWindowsもCPU-Zも「7430U」と表示する。箱を捨て、保護フィルムを剥がし、普通に使い始める。ヒートシンクを外してチップの刻印を読まない限り、偽装を見破る術はなかった。それを今になって 「元の状態で返せ」 と言われても、無理がある。VideoCardz.comも指摘しているが、メディアですら見抜けなかった偽装に対して、この返品条件は事実上の門前払いになりかねない。


声明が触れなかったもの──UBoxとメディアへの圧力

CHUWIの声明はCoreBook XとCoreBook Plusにしか言及していない。だが問題はノートPC2機種にとどまらない。

香港のCHUWI代理店Horningtonは、すでに3月16日(日本時間)の時点でUBOX 7430U Mini PCも対象に含めた全額返金を開始している。Notebookcheckの報道でも、小売店の独自検査でUBoxに偽装CPUが確認されたことが伝えられた。にもかかわらず、CHUWI本体の声明にはミニPCへの言及が一切ない。意図的に対象を狭く絞り、被害の規模を小さく見せようとしているのではないか。

もうひとつ見過ごせないのは、この問題を最初に暴露したNotebookcheckに対する記事削除要求と法的脅迫について、声明が一切触れていないことだ。VideoCardz.comによれば、CHUWIは記事の削除を要請してきた後、一度も連絡を寄越さず、この声明すら直接共有しなかったという。

VideoCardz.comはこの声明について、「心変わり」ではなく「ダメージコントロールのための対外的なポーズ」だと評している。

AMDの法的警告、そしてCHUWIの沈黙が語ること

AMDはCHUWIの声明に先んじて、すでに明確な姿勢を打ち出している。

3月17日(日本時間)、HKEPCを通じて公式声明を発表し、Ryzen 5 5500UをRyzen 5 7430Uとして表示する行為を一切認知しておらず、承認もしていないと明言した。製品名称の無断使用や虚偽表示に対して法的措置を講じる権利を留保すると警告している。

注目すべきは、AMDがCHUWI製品に貼られた「Ryzen 5 7000 Series」ステッカーの存在を問題視している点だ。偽装されたプロセッサの上に、AMD公式ブランドのステッカーが「お墨付き」として機能していた。AMDにとっては自社ブランドの信頼性そのものが汚された形だ。

一方のCHUWIは、AMDの声明に対する公式な反応を示していない。PCWorldが問い合わせたところ、4日後に返ってきた回答は「調査中」の一言だったという。


ODMへの疑惑はどうなったのか

前回の記事で取り上げたODM(受託設計製造業者)Emdoor Digitalへの疑惑は、CHUWIの声明では一切扱われていない。

Notebookcheckの調査で、CHUWIのCoreBook PlusとNinkearのA15 Proが同一のマザーボードを使用していることが判明している。CPUはマザーボードにハンダ付けされており、BIOSの開発もODM側の工程だ。PCWorldの取材に対し、Ninkearは3月19日(日本時間)にODMメーカーとの調査を開始したと回答している。Emdoor Digitalからの回答は現時点で確認されていない。

「製造上のエラー」がCHUWI側の問題なのか、ODM側の問題なのか。CHUWIの声明はこの核心的な問いを意図的に避けているように見える。だが仮にODMの責任だったとしても、自社ブランドで販売した以上、品質管理の最終責任はCHUWIにある。

HWiNFO64の開発者が明かしたところによると、同ツールのベータ版ではCPUのヒューズに焼き込まれた「本来のモデル名」を読み取る機能を復活させたという。AMDが以前、OEM向けリブランド対応のためにこの表示を控えるよう要請していた事実も浮かび上がった。

3週間の沈黙が物語るもの

この問題の時系列を振り返ると、CHUWIの対応のまずさが鮮明になる。

3月4日(日本時間)にNotebookcheckがCoreBook Xの偽装を報じてから、CHUWI公式声明まで約20日。その間に起きたことは、記事の削除要求、法的脅迫の示唆、曖昧な「バッチ違い」の弁解、メディアへの無回答の連続だ。代理店のHorningtonが即日で販売停止と全額返金を決め、AMDが法的措置を警告し、CPU-Zがバージョン2.19で偽装検出に対応し──周囲が次々と動くなかで、CHUWI本体だけが沈黙を続けていた

声明が出たのは、もはや沈黙を続けるコストが声明を出すコストを上回ったからにすぎない。


「製造ミス」で済むなら、ファームウェアの書き換えは何だったのか

正直なところ、この声明は問題の解決ではなく、問題の封じ込めを意図したものに見える。

「製造上のエラー」でプロセッサを間違えることは、理論上はありえる。だが、BIOSの識別情報を書き換え、Windowsの表示を偽り、CPU-ZやHWiNFO64まで騙す「エラー」は存在しない。ファームウェアレベルの改変には、意図と技術と工程が必要だ。

返金を申し出たこと自体は、しないよりはましだ。だが、影響台数を開示せず、UBoxを対象外とし、偽装の原因にも触れず、メディアへの法的脅迫を謝罪しない声明は、信頼回復にはほど遠い。格安PC市場で「値段の割に悪くない」という評価を得てきたCHUWI。その信頼の土台が、今まさに崩れている。

返金で失われた金銭は取り戻せるかもしれない。だが、一度失った信頼を取り戻すのに、5月31日という期限は設定できない。


#CHUWI #CPU偽装 #AMD #Ryzen #CoreBookX #CoreBookPlus #消費者保護 #情報の灯台