CPU不足が深刻化──納期最大6ヶ月、メモリに続く第二の危機

メモリに続き、今度はCPUが消え始めている。IntelとAMDの納期は最大6ヶ月に延び、価格は10〜15%上昇。AIが吸い上げる製造能力の波は、PC市場の構造を変えようとしている。

CPU不足が深刻化──納期最大6ヶ月、メモリに続く第二の危機

メモリに続き、今度はCPUが消え始めている。IntelとAMDの納期は最大6ヶ月に延び、価格は10〜15%上昇。AIが吸い上げる製造能力の波は、PC市場の構造を変えようとしている。


IntelとAMDのCPU不足はどこまで悪化しているのか

PCメーカーが直面している危機が、もう一段階深くなっている。メモリ・ストレージの供給不足に加え、IntelとAMDのCPUまでもが入手困難になりつつあるのだ。

日経アジアの報道によれば、HPやDellといった大手メーカーは2月末から、発注したCPUの納品数が必要量を満たさない事態に直面している。あるサーバーメーカーの幹部は、CPUの平均リードタイム(発注から納品までの期間)が従来の1〜2週間から8〜12週間に延びたと証言した。別の関係者は、最長6ヶ月に達するケースもあると語っている。

価格も急騰している。2026年に入ってCPU価格は複数回にわたって引き上げられ、平均で10〜15%の値上げが実施された。一部製品ではそれ以上だ。Intelは3月から、AMDは4月から新たな価格改定を顧客に通知済みだ。

ゲーミングPCブランドのある幹部の言葉が、事態の深刻さを物語る。「お金で解決できるなら、それでいい。怖いのは、お金を積んでも手に入らないことだ。CPUの不足はメモリの状況に劣らず、日に日に深刻になっている」。

なぜCPUが足りなくなったのか──AIが奪う製造キャパシティ

構造は、メモリ不足と同じだ。AIハイパースケーラーが製造能力を吸い上げている。

2023年から2025年半ばにかけてはGPUが品薄になった。その供給が正常化すると、今度はメモリとストレージが逼迫し始めた。Micronが自社のコンシューマー向けブランド「Crucial」から撤退してAIとエンタープライズに集中したのは、この流れの象徴だ。GPU、メモリ、そしてCPU──AIが食い尽くす部品リストは、着実に長くなっている。

AIの学習処理はGPUに依存するが、システム全体の制御にはCPUが不可欠だ。小型モデルやエージェント型AIの普及により、サーバー用プロセッサの需要は2026年に約15%増加する見通しだが、Intelの生産能力の伸びは一桁台にとどまる。需要と供給のギャップは開く一方だ。

AMDの事情はさらに複雑で、自社ファブを持たない同社はTSMCやSamsungの製造キャパシティをNVIDIAやGoogleと奪い合わなければならない。IntelのCFOデイヴィッド・ジンスナーが決算で「CPUがまたクールになった」と語ったのは、皮肉なことに供給不足の裏返しでもあった。

IntelのCEOリップ・ブー・タンも「需要は非常に強い」と認めているが、その需要を満たせるかは別の話だ。業界関係者は、2026年第2四半期にかけて状況がさらに悪化すると見ている。

PC価格への影響──ノートPCの部材費は58%に

CPUとメモリの同時不足は、PC市場の価格構造を根底から変えつつある。

TrendForceの分析によれば、ノートPCにおけるCPUとメモリの部材コスト比率は、2025年第1四半期の45%から2026年第1四半期には58%へ急上昇した。メーカーが既存のマージンを維持しようとすれば、小売価格は最大40%上昇する計算になる。

ASUSのシステムビジネス事業部長リャオ・イーシャンは、台湾市場でのPC価格が第2四半期に25〜30%上昇すると警告した。32GBメモリモジュールの価格が、昨年の3,000台湾ドル超から第2四半期には2万台湾ドル近くに跳ね上がる可能性があるという。Acer、MSI、Gigabyteも二桁台の値上げを準備している。

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日本の一般ユーザーにとっても、この影響は他人事ではない。年内にPCの買い替えやアップグレードを検討しているなら、パーツ価格がさらに上昇する前に判断を迫られる局面が近づいている。


x86の危機がArm陣営の追い風に変わるとき

供給制約がもたらしているのは、価格上昇だけではない。CPU市場の勢力図そのものが書き換わりつつある。

ASUSのリャオによれば、同社のCopilot対応AI PCのうち、Armアーキテクチャを搭載した製品の比率は昨年末の約20%から現在約30%に上昇した。Intelの供給不足が特に深刻な中価格帯のx86チップで顕著であり、メーカーは代替策としてArmへの投資を加速させている。

QualcommのSnapdragon搭載Copilot+ PCが2024年にMicrosoftの後押しで市場に投入されて以来、Windows on Armは着実に地歩を固めてきた。NVIDIAのArm搭載チップ「N1X」も今年中にノートPCに搭載される見通しだ。IntelとAMDが共同でx86の普及を守るべく「x86エコシステム・アドバイザリーグループ」を結成したのは、まさにこの脅威への対応だった。

だが、守りの同盟だけでは供給不足は解消しない。ゲーマーや特殊なアプリケーションを必要とするユーザーはx86にとどまるだろう。しかしメインストリームのノートPC市場では、CPUが手に入らないという物理的な制約が、アーキテクチャの選択を技術論から在庫論へと変えてしまう。

半年前なら「Armはまだ互換性が」と言えた。だが今、メーカーが直面しているのは「x86が物理的に届かない」という現実だ。技術の優劣ではなく、存在するかしないか。その問いの答えは、すでに出始めている。


参照元

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