Framework「パソコンは終わった」宣言の真意と次世代イベント
修理できる、アップグレードできる。Frameworkが6年かけて証明してきた理想が、いまAIという巨大な波に飲み込まれようとしている。
修理できる、アップグレードできる。Frameworkが6年かけて証明してきた理想が、いまAIという巨大な波に飲み込まれようとしている。
「我々が知るパソコンは終わりつつある」
Frameworkの創業者ニラヴ・パテルが、穏やかならぬ言葉を公式ブログに刻んだ。4月21日にサンフランシスコで開催される次世代製品発表イベント「Framework [Next Gen] Event 2026」の告知に添えられたのは、製品の予告ではなく、パーソナルコンピューティングの未来に対するマニフェストだった。
パテルはこう書いている。「我々が知るパソコンが消滅する、非常にリアルなシナリオが存在する」。大げさに聞こえるかもしれない。だが、ここ半年のPC業界を振り返れば、この言葉に込められた危機感は絵空事とは言い切れない。
メモリ、ストレージ、シリコン、そしてそれに関連するすべてが、かつてない規模で消費されている。トークン単位で計算資源がメーターされるAIファーストの世界に向けた「勝者総取り」のレースの中で。
AIインフラの爆発的な拡大が、コンピューティング資源を根こそぎ吸い上げている。GPUの品薄は2023年から続いていたが、2025年後半にはメモリとストレージにまで波及し、いまやCPUの供給にも影響が出始めている。データセンター向けのサーバーCPU需要が急増し、リードタイムは最大6カ月にまで伸びているという報告もある。
「何も所有するな、そして幸せでいろ」
パテルの言葉で最も印象的なのは、業界のトレンドに対するこの皮肉だろう。
クラウド上のコンピュータは、手元のコンピュータより大きな経済的リターンを生む。供給に制約がかかれば、カネのあるクラウド側が必ず勝つ。その構造が、一般消費者のパソコン環境を着実に圧迫している。
「コンピュータはもはや心の自転車ではない。あなたを目的地に直接運ぶ自動運転車になりつつある」。スティーブ・ジョブズがかつてコンピュータを「心の自転車」と呼んだのは、人間が自分の力で遠くまで行ける道具だという意味だった。パテルはその比喩を引き継ぎつつ、いまのPCは「ユーザーが行き先を選べない乗り物」に変わりつつあると指摘する。
Frameworkにとって、これは他人事ではない。同社もメモリ危機の直撃を受けている。2025年末から毎月のように価格改定を重ね、DIYエディションのDDR5メモリは1GBあたり13〜18ドル(約2,100〜2,900円)にまで高騰した。128GBのLPDDR5xを搭載するFramework Desktopも値上げを余儀なくされている。
安定の兆しが見える部分もあるが、すべての兆候が示しているのは、これは一時的な小康状態に過ぎず、2026年を通じて変動と価格上昇が続くということだ。
それでも「所有」を諦めない
ここがFrameworkらしいところだ。マニフェストは悲観で終わらない。
パテルは宣言している。「自分の計算手段を所有したいと願う人がこの世に一人でもいる限り、我々はそれを可能にするハードウェアを作り続ける」。OS選択の自由、ハードウェアの改造、データとコンピューティングのローカル保持。一朝一夕には実現しないが、すべてを所有し自由でいられる未来のために戦い続けると。
Frameworkの哲学は要するにこうだ。OSを選べること、ハードを自分で変えられること、データをクラウドに預けずに済むこと。それが「自分のコンピュータ」の最低条件であると。
Frameworkの6年間は、この思想の実践そのものだった。モジュラー設計のノートPCは、メモリやストレージはもちろん、GPUやマザーボード、ディスプレイまでユーザーが交換できる。最新のFramework Laptop 16(RTX 5070搭載)は、ノートPCのGPUアップグレードが現実に機能することを証明した製品だ。iFixitの修理しやすさスコアでFramework 12が10点満点を獲得したのも記憶に新しい。
そしてAppleですら、最新ノートブックで修理対応を進め始めた。パテル自身、「壊れた業界をリセットし修復するために会社を作った」と振り返っている。「ミッション達成? まだだ」と続ける言葉には、修理の文化が広がった手応えと、それでもなお足りないという焦りが同居している。
4月21日、サンフランシスコで何が発表されるのか
イベントの具体的な内容は明かされていない。ただし、いくつかの手がかりはある。
公式のイベントページにはヒントが含まれているとFramework自身が明言している。実際、Linuxとの深い統合をにおわせるティーザーが複数確認されており、オープンソースコミュニティ向けに最適化された新製品やコンポーネントの登場が期待されている。AMD Ryzen AI 400シリーズやIntel Panther Lakeへの対応、あるいはFramework DesktopへのNVIDIA GB10搭載といった予測も出ている。
イベントは太平洋時間4月21日午前10時30分からYouTubeでライブ配信される。サンフランシスコ近郊のファンには会場への招待枠も用意されている。
あわせて、Frameworkの出荷対象国がニュージーランド、ノルウェー、スイス、シンガポールの4カ国に拡大されたことも発表された。メモリ価格が高騰し、PC市場全体が縮小に向かうなかでの対象国拡大は、同社のグローバル展開への意志を示すものだろう。
マニフェストの向こう側
ブログ記事を冷静に読めば、これがイベントへの関心を集めるためのマーケティング戦略であることは明らかだ。「パソコンの消滅」という強い言葉で業界の現状への怒りに共鳴し、そこにFrameworkの哲学をぶつけて新製品への期待を煽る。計算された構成と言える。
だが、それを差し引いても、パテルが描く構図は事実に裏打ちされている。メモリ価格は半年で数倍に跳ね上がり、PC出荷台数は2026年に10年超で最大の落ち込みが予測されている。エントリー市場は2028年までに消滅するとの見方すらある。AIが生み出す経済価値と、それが一般消費者から奪い取る選択肢のあいだで、PCの「個人」という冠は確かに揺らいでいる。
Frameworkが4月21日に見せるものが、この危機に対する具体的な回答になるのか。それとも、理想を掲げながらも現実に押し流されるのか。
11日後の答えを、待つ価値はある。
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