GNOME 50がGoogle Driveを切り捨てた理由

Linuxデスクトップの「当たり前」がひとつ消えた。GNOME 50はGoogle Driveアクセスを廃止し、Googleは公式Linuxクライアントを出さないまま13年が過ぎた。

GNOME 50がGoogle Driveを切り捨てた理由

Linuxデスクトップの「当たり前」がひとつ消えた。GNOME 50はGoogle Driveアクセスを廃止し、Googleは公式Linuxクライアントを出さないまま13年が過ぎた。


Google Drive統合が消えた——バグではなく「仕様」

Ubuntu 26.04 LTS「Resolute Raccoon」のベータ版が公開されている。Linuxカーネル7.0、Mesa 26、GNOME 50という切りのいい数字が並ぶこのリリースで、多くのユーザーの目を引いたのは新機能ではなかった。失われた機能だ。

GNOME 50のファイルマネージャ「Nautilus」から、Google Driveへのアクセスが消えている。オンラインアカウント設定でGoogleにログインしても、メール・カレンダー・連絡先の権限は表示されるが、「ファイル」のトグルがない。Fedora 44ベータのユーザーがGNOME Discourseで報告したこの現象に対し、GNOME開発者エマヌエーレ・バッシは端的に答えた。

「残念ながら、もうサポートされていません。Googleのオンラインサービスとの連携に使われていたlibgdataは、約4年間メンテナンスされていません」

バグではない。意図的な廃止だ。

4年間、誰も手を挙げなかった

経緯を遡ると、これは突然の決定ではなかったことがわかる。libgdataはGoogleのAPIとGNOMEアプリをつなぐ橋渡し役のライブラリで、2009年からフィリップ・ウィズノールが一人でメンテナンスしてきた。2022年5月、彼はメンテナーの辞任を表明する。

同年12月、GNOMEのマイケル・カタンツァーロが「Call for help with libgdata」と題した最後の呼びかけを投稿した。libgdataを救うには、古いネットワーキングライブラリlibsoup2からlibsoup3への移植を完了させるボランティアが必要だった。

呼びかけは30日後に自動的にクローズされた。新しいメンテナーは現れなかった。

Call for help with libgdata
Hi, this is one last call for help with libgdata. I am following up on the previous announcements: Giving up maintainership of libgdata Reminder: everything that still depends on libsoup 2 will be removed in February At this point, all of libgdata’s dependencies (grilo-plugins and gvfs) have been ported to libsoup 3, but libgdata has not (stalled merge request), which means processes that link to it will crash on startup. Google integrations that depend on libgdata will not work in GNOME 44.…

GVFS(仮想ファイルシステム)は約10カ月前にlibgdataへの依存をデフォルトで無効化し、GNOME Online Accountsもそれに追従した。こうして段階的に、Google Drive統合はGNOMEから静かに剥がされていった。

Googleは13年間、Linuxクライアントを出していない

この問題をさらに痛みのあるものにしているのは、Google側の姿勢だ。Google Driveは2012年にサービスを開始し、Windows、macOS、Android、iOS向けには公式クライアントが提供されている。Linuxだけが、ない

開発者のエイブ・ヴォルカーが作った風刺サイト「How long since Google said a Google Drive Linux client is coming?」は、Googleが「もう少し待ってほしい」と言ってから13年以上が経過したことを淡々とカウントし続けている。そしてGNOMEコミュニティが自前で維持してきた統合機能さえ、メンテナーの燃え尽きとともに消えた。

How long since Google said a Google Drive Linux client is coming?
We’ve been waiting since April 24, 2012 for a Google Drive Linux client.
Google Drive統合が失われたことで、GNOMEデスクトップのLinuxユーザーがGoogle Driveにアクセスするには、rclone、google-drive-ocamlfuse、有料のInsyncといったサードパーティツールが必要になる。いずれもセットアップに手間がかかる。

「ファイルマネージャのサイドバーからワンクリック」で済んでいた操作が、コマンドラインでの設定作業に変わる。技術的には可能だが、体験としては後退だ。

Ubuntu 26.04が積み上げたもの

Google Driveの喪失は大きいが、Ubuntu 26.04 LTSが積み上げた変更の全体像も見ておくべきだろう。

GNOME 50はX11セッションを完全に廃止し、Wayland専用となった。X11アプリケーション自体はXWayland経由で引き続き動作するが、GNOME上でX11セッションを選ぶ選択肢はもうない。NVIDIAユーザーにはドライバ590が提供され、可変リフレッシュレートとフラクショナルスケーリングが正式機能に昇格した。

実用面の改善

巨大なlinux-firmwareパッケージが17のベンダー別サブパッケージに分割された。2022年のUbuntu Jammy以前から開いていたバグの修正だ。アップデート時の帯域幅が削減され、不要なハードウェアのドライバを個別に削除できるようになる。

Rustで書き直されたsudoコマンドは、パスワード入力時にアスタリスクを表示するようになった。長年のUnix文化では「何も表示しない」のが慣習だったが、実用性を取った形だ。App Centerは.debパッケージを直接扱えるようになり、Security CenterではUbuntu ProサブスクリプションとTPMベースのフルディスク暗号化が管理可能になっている。

GNOME 50はオーバービュー画面からSnapパッケージとWebを検索できるようになった。ただし検索はローカルで処理され、2012年のAmazon検索騒動の二の舞を避ける設計になっている。

KDE Plasmaという選択肢が重みを増す

Kubuntu 26.04ではKDE Plasma 6.6が搭載される。先日の検証で明らかになったように、NVIDIA環境でもAMD環境でも、KDE Plasma 6.6はGNOME 50に対してゲーミング性能で約21%の優位を示している。

そしてKDE Plasmaには、Google Driveとの統合がDolphinファイルマネージャ経由で残っている。パフォーマンスとクラウド統合の両面で、Kubuntuという選択肢がこれまで以上に説得力を持つ状況だ。Xubuntuも注目に値する。Xfce 4.20.7を搭載し、「最小インストール」を選べばsnapdすら含まれない軽量構成が手に入る。

26.10で予告された変化——そして論争

Canonicalは次期26.10の方向性もすでに示している。NTPデーモンをC言語製からRust製のntpd-rsに置き換える「酸化」の継続が計画されている。

一方で物議を醸しているのが、開発者ユリウス・クローデによるGRUBブートローダーの大幅簡素化提案だ。Secure Boot対応版GRUBから、Btrfs・XFS・ZFSといった高度なファイルシステムサポートやRAID対応、背景画像表示機能を削除するという内容で、すでに反発の声が上がっている。

Ubuntu MATEのプロジェクトリーダー、マーティン・ウィンプレスも退任を表明した。「自分の関心が別のところにある」として、新プロジェクト「Nøughty Linux」に注力するという。

オープンソースの「持続性」を突きつける一幕

Ubuntu 26.04 LTSは、4月23日の正式リリースに向けて最終調整に入っている。標準サポート5年、Ubuntu Proで最大10年という長期サポートは、企業ユーザーにとって安心材料だろう。

だが今回のGoogle Drive問題は、オープンソースの構造的な脆弱さを改めて浮き彫りにした。世界中で使われている機能が、たった一人のメンテナーの肩に乗っていた。その人が降りたとき、4年間誰も代わりに立たなかった。そしてGoogleは13年間、公式クライアントを出す気配すら見せない。

技術の問題ではない。「誰がインフラを支えるのか」という、もっと根本的な問いだ。


参照元


#Ubuntu #GNOME #GoogleDrive #Linux #オープンソース #Ubuntu2604 #Wayland #KDEPlasma

@Ubuntu 26.04 LTSベータが公開。GNOME 50搭載でWayland専用化やカーネル7.0など大幅刷新の一方、Google Drive統合が廃止された。4年間メンテ不在のlibgdata崩壊と、公式Linuxクライアントを13年出さないGoogleの姿勢が重なった結果だ。