紅の砂漠、500万本目前でもPearl Abyssが急がない理由
発売9日で500万本に迫るモンスタータイトル。だがCEOの口から出たのは、慎重な言葉ばかりだった。
発売9日で500万本に迫るモンスタータイトル。だがCEOの口から出たのは、慎重な言葉ばかりだった。
株主総会で見えた「売れても浮かれない」戦略
紅の砂漠(Crimson Desert)が止まらない。3月19日の発売から24時間で200万本、4日で300万本を突破し、現在は500万本の大台に迫っている。Steamの同時接続は24万人を記録し、レビューも発売直後の「賛否両論」から「非常に好評」へと急回復した。
だが3月27日、京畿道果川のPearl Abyss本社で開かれた第17期定時株主総会で、ホ・ジニョン代表の語り口は意外なほど抑制的だった。数字の自慢に終始するのではなく、弱点を認め、未決定事項を正直に並べてみせた。これは単なる謙虚さではない。7年がかりの大作を世に出したばかりの企業が、次の一手をどう打つかという判断の表明だ。
ホ・ジニョン代表は「500万本の達成を近いうちに株主の皆様にお知らせできるよう、全社員が最善を尽くす」と述べた。
株主総会では財務諸表の承認や社外取締役の選任といった定例議案もすべて原案通り可決された。2025年の連結売上高は前年比6.8%増の3,656億ウォンだったが、紅の砂漠のマーケティング費用が膨らみ、営業損失148億ウォンと赤字に転落している。つまり、この売上の急成長がなければ会社の体力は相当に削られていた。
ストーリー批判にCEOが正面から応じた
紅の砂漠のナラティブに対する不満は、発売直後から根強い。メタクリティック78点という数字は決して低くないが、ゲームプレイの評価と比べてストーリーへの批判が目立つ。韓国ゲームメディアInvenの詳報によれば、株主総会のQ&Aでもこの点が真っ先に槍玉に上がった。
ホ代表はこの批判を正面から受け止めている。
「ストーリーに対するユーザーの失望は、開発チーム自身も同じくらい強く感じている。改善できなかったのは、我々の力不足だ」
残された時間の中でチームはストーリーの穴を埋めようとしたが、最終的にはゲームプレイの強化を優先する判断を下したという。7年間同じチームが一つのゲームを作り続けることの難しさにも触れ、組織内の政治的対立があったのではという噂には、「そこまで極端な状況があれば、このレベルの成果物は出なかったはずだ」とやんわり否定した。
この率直さは珍しい。多くのスタジオが発売直後に弱点を公式に認めることを避ける中、Pearl Abyssは自社の最大のヒット作を「不完全だった」と株主の前で認めた。これが単なる誠実さなのか、次回作への布石なのかは見方が分かれるだろう。
Switch 2版のR&Dは「始まっている」
Nintendo Switch 2への展開可能性が浮上している。プラットフォーム拡大について問われたホ代表は、明言を避けなかった。
「他のコンソールと比べてSwitchはスペックが低く、諦めなければならない部分がある。だが、社内では関心を持ってR&Dを開始した」
これは正式な移植発表ではない。だが「研究開発を始めた」という表現は、単なる「検討中」よりも一段階踏み込んでいる。紅の砂漠はPearl Abyss独自のBlackSpaceエンジンで動いており、PS5やXbox Series X|Sでも最適化に苦労した経緯がある。Switch 2への移植が実現するなら、グラフィックの大幅な妥協は避けられない。
ただし、サイバーパンク2077やバイオハザードシリーズがSwitch 2で動作している事実を考えれば、技術的に不可能とは言い切れない。問題は「削ったあとに残るものが、まだ紅の砂漠と呼べるか」という一点に尽きる。
マルチプレイヤーは「技術的に厳しい」
オンラインMMO「黒い砂漠」で知られるPearl Abyssが、紅の砂漠をシングルプレイヤー専用にした理由が明かされている。開発チームは社内でマルチプレイヤーの実装を試みていたが、結論は厳しいものだった。
現行ハードウェアの制約からグラフィック面で明確な犠牲が必要になることが判明し、見送られたという。
紅の砂漠の戦闘は環境を使った即興性が売りだ。敵を崖から突き落とし、壁に叩きつけ、木を引き抜いて武器にする。この物理演算の密度をマルチプレイヤーで維持することの難しさは、想像に難くない。
Pearl Abyssはマルチプレイヤーを完全に否定してはいないが、「現行ハードウェアの制約で、グラフィック面の犠牲が明確に必要になる」として、近い将来の実現は難しいとの認識を示した。
MOD対応もDLCも「まだ白紙」
長期IPとして育てるなら、コミュニティの力を取り込むMOD対応は有力な選択肢だ。実際、スカイリムの前例が示すように、MODはゲームの寿命を何年も延ばす。ホ代表もその価値は認めている。
「MODコミュニティの活性化についてアイデアは議論している。ただし、MODツールの提供にはエンジンのかなりの部分を公開する必要があり、具体的な計画はまだない」
MODの価値を理解しつつも、自社エンジンの機密性との間で天秤にかけている段階だ。独自エンジンで戦うスタジオにとって、エンジンの公開はビジネスリスクでもある。
有料DLCについても方針は未定だ。ホ代表は「まずは無料アップデートでベースゲームの販売を伸ばすことが最優先」と明言した。これは一見ユーザー寄りの姿勢に見えるが、裏を返せば現時点の売上ペースを落としたくないという判断でもある。
500万本目前という数字がある以上、有料DLCで既存プレイヤーの財布を開くより、まだ手を出していない新規層を取り込む方が効率がいい。パッチでの改善を続けて評判を上げ、セールやプラットフォーム拡大で裾野を広げる。その戦略がSwitch 2版のR&D開始とも整合する。
次回作「DokeV」に主力チームがシフト
株主総会で最も注目すべき情報は、次回作に関するものかもしれない。2019年に発表され、2021年のGamescomトレイラーで世界を驚かせたオープンワールド・クリーチャー収集ゲームDokeV(ドケビ)に、紅の砂漠のコア開発チームがすでに移行を始めている。
ホ代表は「紅の砂漠の後、できるだけ早くDokeVをお見せできるよう準備している」とし、完成とポリッシュまでに現時点から2〜3年を見込んでいると述べた。2028年前後の発売が現実的なラインだ。
DokeVもBlackSpaceエンジンで開発されており、紅の砂漠での経験がそのまま活きるという。K-POPの音楽、韓国の伝統的なモチーフ、スケートボードで駆け回るポップな世界観。紅の砂漠とは対照的なトーンだが、Pearl Abyssにとっては「オンラインゲーム会社」から「マルチIPスタジオ」への転換を象徴するタイトルだ。
We are grateful to share #CrimsonDesert has sold through 3 million copies worldwide. To everyone who has stepped into Pywel and shared this journey with us, thank you.
— Crimson Desert (@CrimsonDesert_) March 24, 2026
Your feedback continues to help shape the experience, and we will keep working to make the journey ahead even… pic.twitter.com/8T26KzhQwm
紅の砂漠の商業的成功は疑いようがない。だが、ストーリーの反省、マルチプレイヤーの断念、MODの棚上げ、DLCの先送り。株主総会で並んだ言葉は「成功の上に座り込む」企業のものではなかった。
Pearl Abyssは今、紅の砂漠を「最初の成功」ではなく「最初の一歩」にできるかどうかの岐路に立っている。500万本の先にある景色は、まだ誰にも見えていない。
参照元
他参照
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