Intel Serpent Lake、NVIDIAのGPUタイルを搭載する初のx86 SoCへ

Intelの次世代SoC「Serpent Lake」にNVIDIA RTXグラフィックスタイルが搭載されることが判明した。さらに新たなPコアアーキテクチャ「Cooper Shark」の名前も浮上し、「Pコアは終わる」という従来のシナリオが揺らぎ始めている。

Intel Serpent Lake、NVIDIAのGPUタイルを搭載する初のx86 SoCへ

Intelの次世代SoC「Serpent Lake」にNVIDIA RTXグラフィックスタイルが搭載されることが判明した。さらに新たなPコアアーキテクチャ「Cooper Shark」の名前も浮上し、「Pコアは終わる」という従来のシナリオが揺らぎ始めている。


NVIDIA RTXタイルを内蔵する「異形のSoC」

Intel内部のリーカーであるJaykihnが4月初旬にXで公開した情報によると、Serpent LakeはTitan Lakeの派生プラットフォームでありながら、まったく異なる性格を持つSoCだという。最大の特徴は、Intel製SoCとして初めてNVIDIA RTXアーキテクチャのGPUタイルを搭載する点にある。

https://x.com/jaykihn0/status/2040847527029669903

従来のIntelプロセッサはArc系の自社製iGPUを内蔵してきた。Serpent Lakeではこれを捨て、NVIDIARubinまたはその次世代GPUアーキテクチャを統合する。GPUタイルはTSMCのN3Pプロセスで製造される見通しだ。

2025年9月に発表されたIntelとNVIDIAの50億ドル規模の提携は、NVIDIAがIntel株を1株23.28ドルで取得するとともに、x86 CPUとRTX GPUを融合した新カテゴリの製品を共同開発する内容だった。Serpent Lakeはその最初の具体的な成果物になる。

この提携が発表されたとき、多くの業界関係者は製品化までに数年かかると見ていた。実際、2025年12月のRedGamingTechによるリーク時点では「2027〜2028年の投入」とされていたが、ここにきてロードマップの輪郭が一段と鮮明になりつつある。

AMDのStrix Haloが切り開いた「大型iGPU搭載APU」という市場に、IntelNVIDIAのGPU技術を武器に正面から挑む構図だ。メモリ16チャネルLPDDR6に対応するとされ、Strix HaloのLPDDR5Xで指摘されていた帯域幅のボトルネックを回避する狙いがある。

Serpent Lake vs AMD Strix Halo 構成比較
Serpent Lake Strix Halo
CPU設計 Cooper Shark+Golden Eagle Zen 5
iGPU NVIDIA RTX(Rubin系) Radeon 8060S(RDNA 3.5)
GPU製造 TSMC N3P TSMC 4nm
メモリ 16ch LPDDR6 8ch LPDDR5X
設計思想 Intel CPU+NVIDIA GPU協業 AMD単独SoC設計
投入時期 2028-29年(推定) 2025年(発売済)
Serpent Lakeはリーク情報に基づく推定スペック。Strix Haloは2025年時点のAMD公式仕様。Strix HaloのLPDDR5X帯域幅は最大256GB/s

「Cooper Shark」が示すPコア存続の可能性

今回のリークでもうひとつ注目すべきは、Serpent Lakeに搭載される次世代Pコアアーキテクチャが「Cooper Shark」と呼ばれていることだ。Eコア側は従来のリーク通りGolden Eagleが維持される。

https://x.com/Silicon_Fly/status/1944833462139281537

この情報は、2025年7月にSiliconFlyがXに投稿したロードマップ表と食い違う。SiliconFlyの情報では、Razer LakeのGriffin CoveがIntel最後のPコアとされ、その後のTitan Lakeでは「Unified Core」(統合コア)に移行するとされていた。つまり、Pコア開発チームは解散し、Eコアベースの統合設計に一本化される、というのが従来の見立てだった。

Intel CPUコアアーキテクチャ ロードマップ
世代 Pコア Eコア iGPU 時期
Arrow Lake Lion Cove Skymont Xe2 2024年
Nova Lake Coyote Cove Arctic Wolf Xe3 2026年後半
Razer Lake Griffin Cove Golden Eagle Xe3 2027-28年
Titan Lake Unified Core(統合コア) Xe3P 2028年
Serpent Lake Cooper Shark Golden Eagle NVIDIA RTX 2028-29年
Jaykihn(@jaykihn0)およびSiliconFly(@Silicon_Fly)のリーク情報に基づく。すべて未確定。Titan LakeのUnified CoreはP/Eコアの区別を廃止する設計。Serpent LakeはTitan Lake派生だがP/E分離を維持する点が特異

Cooper Sharkの存在はこのシナリオに疑問符を投げかける。Serpent LakeがTitan Lakeの派生であるにもかかわらず、Unified Coreではなく「Pコア+Eコア」の構成を維持しているからだ。

Jaykihnは「golden eagleとcopper sharkは存在する」と明言している。Unified Coreへの全面移行が予定通りなのか、それとも製品ラインごとにハイブリッド構成と統合コアが共存する道を選ぶのか。Intelのコア戦略は、当初の想定より複雑な分岐点に差しかかっているのかもしれない。

ひとつの解釈としては、NVIDIARTXタイルと組み合わせるHaloSoCには高いシングルスレッド性能が求められるため、専用設計のPコアを残す判断があり得る。汎用ノートPC向けのTitan LakeはUnified Core、ハイエンドSoCのSerpent Lakeは従来型ハイブリッド、という棲み分けだ。

Razer Lake-AXの巨大ソケットも浮上

Serpent Lakeの情報と前後して、もうひとつの動きがあった。VideoCardzが4月6日に報じたところによると、NBD(国際貿易データベース)の出荷記録から、IntelRazer Lake-AX」がBGA4326という巨大ソケットに紐づけられていることが判明した。プラットフォームサイズは37.5×56.5mmで、Nova Lake-Sデスクトップ向けのLGA 1954(37.5×45.0mm)の約1.3倍にあたる。

NVL-AXと表記されているが、Nova Lake-AXの後継機種を指している可能性があるという
もともと「Nova Lake-AX」としてAMD Strix Haloの対抗馬とされていたプラットフォームは、2025年後半に計画中止の噂が流れた。しかし名前を「Razer Lake-AX」に変えて開発が続いているようだ。Intelは大型APU市場を諦めていない。

Jaykihnもこの情報を裏付け、XでRazer Lake-AXのBGA4326対応を明言している。このサイズ感は通常のノートPC向けとは明らかに異なり、ワークステーション級のソケット式APUを示唆する。

Intel Fellowのトム・ピーターセンは2026年1月、Club386とのインタビューで「Strix Haloの直接的な対抗製品は計画していない」と発言していた。しかしBGA4326の出荷記録とJaykihnの情報を重ね合わせると、Intelの内部では別の結論に至っている可能性がある。


Intelのロードマップは「一本道」ではなくなった

ここまでの情報を整理すると、Intelの次世代CPUロードマップは以下のような構造になる。

2026年後半にNova Lake(デスクトップ+モバイル)が登場し、Coyote Cove PコアArctic Wolf Eコアを搭載する。続くRazer Lake(2027〜2028年)ではGriffin Cove Pコア+Golden Eagle EコアでIPCの二桁向上を目指す。モバイル向けTitan Lakeは統合コアへの転換点、Serpent LakeはNVIDIA GPUタイルとCooper Shark Pコアで「怪物APU」を構成する。

かつてIntelのロードマップは「世代ごとにひとつのアーキテクチャが全セグメントを貫く」というシンプルな構造だった。いまや同世代の中に、デスクトップ、モバイル、Halo APU、そしてNVIDIA協業SoCという4つの製品カテゴリが並立し、それぞれが独自のコア構成とGPU構成を持つ。

NVIDIAとの提携がなければ、こんな複雑な分岐は起きなかっただろう。50億ドルの投資が、Intelのチップ設計の選択肢そのものを書き換えている。

ただし、これらはすべてリーク情報であり、Intelが公式に確認したものではない。Serpent Lakeの実際の姿が明らかになるのは、早くても2027年以降だろう。それでも、かつて経営危機が囁かれたIntelが、NVIDIAの火力を借りて描こうとしている設計図は、ここ数年で最も大胆なものだ。

答え合わせは来年以降になる。だが少なくとも、「もう終わった」と言われた会社のロードマップが退屈でないことだけは確かだ。


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