iOSアップデートが自分のiPhoneに入れなくさせた──ある学生の1週間
パスコードは変えていない。忘れてもいない。ただiOSをアップデートしただけなのに、翌日から自分のiPhoneに入れなくなった──そんな事態が現実に起きている。
アップデートした翌日から、自分のiPhoneに入れなくなった
コナー・バーン(21歳)は、4月5日にiPhone 13をiOS 26.4へアップデートした。その日を境に、自分の端末に入れなくなった。
パスコードを忘れたわけではない。バーンは4桁の数字ではなく、英数字にチェコ語の特殊文字「ハーチェク(ˇ)」を組み合わせたパスコードを使っていた。セキュリティを真剣に考えた人間が自然に行き着く選択だ。だがiOS 26.4がロック画面のキーボードからハーチェクを事実上消してしまった。
結果、正しいパスコードを知っていても、その文字を入力する手段がなくなった。
ハーチェクは「č」「š」「ž」など、チェコ語・スロバキア語・スロベニア語などで使われる発音記号。iOS 18まではロック画面のキーボードに存在していたが、iOS 26以降、カスタムパスコード入力画面から消えた。
アップデート後のキーボードでは、ハーチェクが別のアクセント記号(アキュート)に置き換えられて表示されている。バーンによれば「無意味だ。エンコードは同じだから」とのことで、入力しても元のパスコードとは一致しない。
「写真が価値のすべて」──iPhone本体より大切なものが消えかかっている
端末そのものは画面が大きくひび割れた古いiPhone 13で、高価な端末とは言えない。問題はその中身だ。
バックアップしていなかった思い出の写真が詰まっている。iCloudにも保存していないため、別の端末から取り出す手段もない。Apple側に問い合わせたところ、端末を初期化しなければアクセスを回復できないと告げられた。
「写真こそが僕が気にしているデータだ。バックアップしていなかったのに」とバーンは語る。
Genius Barのスタッフとの対面サポートも、事態を悪化させるだけだった。担当者は本人の同意を求めることなく初期化を開始したという。「何も提案せずにいきなり始めた」とバーンは述べている。
バーンがこれまで試みたこと:代替のアクセント記号を入力する、iOS 26.3.1へのダウングレードを検討する、長押しで隠し文字を探す、手書きやワープロでパスコードを書いてAutoFillで読み取る──いずれも失敗に終わった。
| 試みた方法 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 代替記号で入力 | ハーチェクの代わりに表示されているアキュート記号をそのまま入力 | ✗ 不一致 |
| ダウングレード検討 | iOS 26.3.1に戻してパスコードを変更する方法を調査 | ✗ 不可 |
| 長押しで探索 | すべてのキーを長押しして隠れたハーチェクを探す | ✗ 見つからず |
| AutoFill読取 | 手書き・ワープロで書いたパスコードをAutoFillでスキャン | ✗ 「" 」or「°」と誤認識 |
| Genius Bar訪問 | Apple直営店のサポートに持ち込み、担当者が対応 | ✗ 解決せず・無断初期化開始 |
| 外付けキーボード | 有線キーボードを接続してハーチェクを入力 | ✗ BFU状態で有線アクセサリ無効 |
| Face IDに切替 | パスコードの代わりにFace IDを使用する | ✗ 初回有効化にパスコード必須 |
次のアップデートでも直らず、Appleは無回答
4月8日にリリースされたiOS 26.4.1。バーンはこれで解決することを期待していた。しかし修正は含まれていなかった。
The Registerが自前でiPhone 16を使って検証したところ、iOS 26.4.1でも同様の挙動が確認されている。ハーチェクはチェコ語キーボード自体には残っているが、ロック画面のパスコード入力時にはキーのアニメーションこそ動くものの、文字が入力されない状態になっている。
つまり「見た目にはある、でも使えない」という状況だ。
Appleは取材に対し、現時点で回答していない。
「iOSのカスタムパスコードで特殊文字が使えなくなった」と報告しているRedditのユーザーは彼だけではなく、同様のケースが散見されている。iOS 18のリリースは2024年。それ以降、一度もハーチェクが復活していないことを考えれば、次のアップデートで修正される保証はどこにもない。
アップデートが「壊しに来る」ユーザーは、どうすれば良かったのか
バーンは今、安価なAndroid端末を別途購入して使いながら、修正を待っている。「1〜2ヶ月様子を見て、状況が変わらなければ本格的にAndroidに乗り換える」と語っている。
この話から引き取れるものは2つある。
まず、iCloudバックアップの話だ。「設定したのに容量が足りなくてオフになっていた」「なんとなく使ってなかった」という人は少なくない。端末が使えなくなる原因は故障や紛失だけではない。アップデートでさえ、その引き金になりうることが今回はっきり示された。
もうひとつは、より根本的な問いだ。メーカーのアップデートが、正しく知っているパスコードを入力不能にするという事態は、本来あってはならない。バグをゼロにはできないとしても、最低限「自分の端末を自分でロック解除できなくなる」という影響のあるケースは、修正を最優先すべきだろう。
Face IDを使えば良かったのでは、という声もあるかもしれない。だがバーンはこう言っている。「警察や税関など、自分と端末を同時に制御される状況ではFace IDは意味をなさない。だから選ばなかった」。セキュリティへの意識が高いほど被害を受けやすかったという皮肉が残る。
修正がいつ来るかは、今のところ誰にも分からない。
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