MS古参エンジニアが断言「壊したのは更新ではなく再起動だ」

Windowsの不具合を何でもアップデートのせいにしていないか。Microsoftの30年選手が、その思い込みに真正面から異を唱えた。

MS古参エンジニアが断言「壊したのは更新ではなく再起動だ」

Windowsの不具合を何でもアップデートのせいにしていないか。Microsoftの30年選手が、その思い込みに真正面から異を唱えた。


「壊したのはアップデートではない」

Microsoftの古参エンジニア、レイモンド・チェンが自身のブログ「The Old New Thing」で、Windows Updateにまつわる根深い誤解を指摘している。

企業のIT部門から「最新の更新がシステムを壊した」という報告が届く。サポートチームはログやダンプを集め、時間をかけて調査する。そして毎回たどり着く結論は同じだ。更新の前から、システムはすでに壊れていた

チェンの説明はこうだ。問題の本当の原因は、数週間前にIT部門が入れた新しいドライバー、あるいは「TikTokの動画で見た」グループポリシーの変更にある。レジストリキーのセキュリティを書き換え、サービスの設定をいじり、ドキュメントにない構成を触る。こうした変更がマシンを起動不能にしているのだが、再起動するまで誰も気づかない。

そしてPatch Tuesdayが来る。更新がインストールされ、システムが再起動する。そこで初めて、数週間前に仕込まれた「時限爆弾」が起爆する。

つまり犯人はアップデートではない。再起動そのものが、隠れていた問題を表面化させただけだ。タイミングが一致しただけで、因果関係はない。チェンはこれを淡々と、しかし断定的に述べている。

Before you check if an update caused your problem, check that it wasn’t a problem before the update - The Old New Thing
It was going to be like that when I got here.

Samsungが証明した「犯人はWindows以外にもいる」

チェンの主張を裏付けるかのように、Samsungのソフトウェアが立て続けに問題を起こしている。

3月のPatch Tuesday直後、一部のWindows 11搭載Samsung端末でCドライブにアクセスできなくなる深刻な不具合が報告された。犯人はSamsung Galaxy Connectアプリだった。MicrosoftとSamsungの共同調査の結果、Windows Updateは無関係と確認されている。

さらに、SSD管理ソフトSamsung Magicianのバージョン9.0.0が、2025年末から広範な不具合を抱えたままだ。起動失敗、UIスケーリングの崩壊、SSDの未検出。Samsung公式コミュニティには報告が溢れている。

Samsung Magicianの不具合はWindowsとは無関係だ。だが、同じベンダーのアプリが連続して問題を起こせば、ユーザーが「OS自体が不安定なのでは」と感じるのは無理もない。

これらはいずれもWindows Updateが原因ではない。だが、ユーザーにとっては「更新のあとにPCがおかしくなった」という体験が全てだ。原因の切り分けを一般ユーザーに求めるのは酷というものだろう。

しかしMicrosoft自身も壊している

チェンの指摘は正論だ。だが、タイミングが悪い。

Microsoftは2026年3月26日にリリースしたオプション更新KB5079391で、まさに「アップデート自体が壊れている」事態を引き起こした。インストール中にエラーコード0x80073712が発生し、ダウンロードとインストールを繰り返すループに陥るユーザーが続出。Microsoftは異例の速さで配信を停止し、3月31日に緊急差し替え版KB5086672をリリースした。

チェンが「壊したのは再起動だ」とブログを公開したのは、この緊急修正が出たのと同じ3月31日だ。皮肉としか言いようがない。

2026年1月以降だけでも、リモートデスクトップの接続失敗、Outlookのクラッシュ、NVIDIAのゲーミング性能低下、Microsoftアカウントのサインイン障害と、Windows Update起因の不具合が相次いでいる。

1月にMicrosoftは「2026年はWindows 11の品質改善に集中する」と宣言した。3月には大規模な改修計画も発表されている。約束は評価できる。だが、現実はまだ追いついていない。

再起動なしの未来は来るか

興味深いのは、チェンの指摘がもうひとつの流れと交差する点だ。

Microsoftは2026年5月から、ホットパッチ(再起動不要のセキュリティ更新)をWindows Autopatch管理下のデバイスでデフォルト有効にする。セキュリティ修正がインメモリで適用され、再起動を待たずに保護が有効になる仕組みだ。

チェンの論理に従えば、再起動がなければ「隠れた問題」は表面化しない。ホットパッチは更新の濡れ衣を晴らす技術でもある。ただし、四半期に一度のベースライン更新では依然として再起動が必要で、問題が完全に消えるわけではない。

正直なところ、チェンの主張は技術的に正しいが、政治的にまずい。自社の更新が同じ週に壊れた直後に「ユーザーの環境が悪い」と言えば、どう聞こえるか。事実と印象は別物だ。

信頼はコードでは書けない

チェンの30年にわたるWindows開発経験に基づく指摘は、エンジニアリングの観点では反論の余地がない。企業のIT部門が検証なしに適用した変更が、再起動をトリガーに顕在化する。このメカニズム自体は事実だ。

だが、Windowsの品質問題は単なる「誤解」では片付かない。更新を出して、壊れて、引っ込めて、差し替える。このサイクルが常態化している限り、ユーザーが疑心暗鬼になるのは合理的な反応だ。

「壊したのは再起動だ」は、技術者として誠実な言葉だ。だが、信頼を取り戻すのに必要なのは、正しい説明ではなく、壊れない更新のほうだろう。


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