Nova LakeはIPC優位、クロックはZen 6が制す
まだどちらも正式発表すらされていないCPUアーキテクチャの性能比較が、すでに始まっている。IntelのCoyote CoveがIPCで上回り、AMDのZen 6がクロックで上回る。リーク情報とはいえ、両社が真逆の武器を選んでいる構図がはっきり見えてきた。
まだどちらも正式発表すらされていないCPUアーキテクチャの性能比較が、すでに始まっている。IntelのCoyote CoveがIPCで上回り、AMDのZen 6がクロックで上回る。リーク情報とはいえ、両社が真逆の武器を選んでいる構図がはっきり見えてきた。
たった2行が語る次世代の勢力図
リーカーHXL(@9550pro)が4月5日にXへ投稿した内容は、これだけだった。
IPC: CYC>Zen6 clock: Zen6>CYC
CYCはIntelの次世代Pコア「Coyote Cove」の略称で、Nova Lakeの中核をなすアーキテクチャだ。
https://x.com/9550pro/status/2040458335091339268
この噂に根拠がないわけではない。Coyote Coveの前世代にあたるCougar Cove(Panther Lake搭載)は、中国のハードウェアレビュアー「笔吧评测室」がSPEC CPU 2017で測定した結果、Zen 5に対してIPCで約10%リードしている。後継のCoyote Coveがそこからさらに伸ばしてきても、何もおかしくない。
クロック側の予測にも筋は通る。AMDはTSMC N2プロセスで製造するZen 6で、現行Ryzen 9 9950Xの5.7GHzを大きく超え、6GHz台半ばを狙っているとされる。Moore's Law is Deadは「6.1GHzや6.2GHzではなく、それよりはっきり上」と述べている。
一方のIntelは、Arrow Lake世代で第14世代の6GHz台から5.7GHzへとブーストクロックを引き下げた。周波数よりIPC効率を重視する方向に舵を切ったのは明らかだ。
Intelは1サイクルあたりの処理量で勝負し、AMDはサイクル数を稼ぐ。アプローチが真逆だからこそ、結果がどう出るかは実機が出るまでわからない。
CES 2027で直接対決か
両プラットフォームの登場時期が重なりそうな点も見逃せない。IntelのCEOリップブー・タンは2026年1月の決算説明会で「Nova Lakeは2026年末」と明言した。しかし2月にはリーカーの金猪升级包やHXL自身が、デスクトップ版Nova Lake-SはCES 2027へスライドしたと主張している。
AMDのZen 6デスクトップ版「Olympic Ridge」も同様だ。台湾メディアBenchlifeによれば、Olympic Ridgeの2026年中の発売はなく、2027年が最も早い投入時期だという。
背景にはIntelがデータセンター向けに生産能力を振り向けている事情と、DDR5メモリの高騰がある。両社にとって、メモリが高い時期に新プラットフォームを出しても消費者は手を出しにくい。CES 2027で同時発表となれば、ここ10年で最も激しいデスクトップCPUの直接対決になる。
52コア対24コア、設計思想の断絶
Nova Lake-Sの最上位構成は率直に言って異常だ。Coyote Cove Pコア最大16基、Arctic Wolf Eコア最大32基、LP-Eコア4基で合計52コア。LGA 1954という新ソケットを要求し、最大288MBのbLLCキャッシュを載せる。ただしデュアルコンピュートタイル構成の最上位SKUは消費電力が約700Wに達するというリーク情報もあり、これはもはやデスクトップCPUではなく小型サーバーの領域だ。
700Wという数字が本当なら、それはCPUの性能の話ではなく、電気代と冷却システムの話になる。誰がそれを喜んで使うのか、という問いが先に来る。
対するAMDのOlympic Ridgeは、CCDあたり12コア・48MB L3キャッシュで、デュアルCCDの最上位が24コア・96MB L3。ダイサイズはZen 5の約71mm²から約76mm²へわずかに拡大しただけで、TSMC N2がコア数50%増とキャッシュ50%増を吸収している。AM5ソケットの継続も見込まれており、既存マザーボードがそのまま使える可能性がある。
| Nova Lake-SIntel Core Ultra 400 | Olympic RidgeAMD Ryzen 10000 | |
|---|---|---|
| Pコア | Coyote Cove | Zen 6 |
| Eコア | Arctic Wolf + LP-E | — |
| 製造 | TSMC N2P* | TSMC N2 |
| 最大コア | 5216P + 32E + 4LP-E | 2412 × 2 CCD |
| キャッシュ | 最大288MBbLLC | 96MB L348MB × 2 CCD |
| ソケット | LGA 1954新規 | AM5継続 |
| CCD面積 | — | ~76mm² |
| 最大電力 | ~700W*2タイル構成 | 未公開 |
| 発売時期 | CES 2027* | CES 2027* |
どちらが正しいかは市場が決める。
IPCで勝っても「速い」とは限らない
ここが肝心なところだ。IPCの優位は実性能の優位を自動的に意味しない。
Panther LakeのCougar CoveがZen 5にIPCで10%勝っていても、ゲーミングやマルチスレッドの実性能はクロック、キャッシュ、メモリレイテンシ、スレッドスケジューリングなど無数の変数に左右される。AMDのRyzen 7 9800X3Dが3D V-Cacheの力だけでゲーミング最速の座を守っているのが、その証拠だ。
Zen 6のX3Dモデルでは、CCD1基あたり144MB(標準L3 48MB+3D V-Cache 96MB)のキャッシュが噂されている。デュアルCCDなら合計288MBになり、Nova Lakeの288MB bLLCと数字上は完全に並ぶ。
シングルスレッドはどうなる
Xでの反応を見ると、「IPCでIntelが勝ち、クロックでAMDが勝つなら、シングルスレッドは引き分けでは」という見方が支配的だ。あるユーザーは「STは引き分け、MTはNova Lakeが物量で勝ち、ゲーミングはZen 6のベストケース」とまとめていた。
実機ベンチマークのない段階で速い遅いを議論するのは、占いと大差ない。だが両社のアプローチがここまで対照的なこと自体が、2027年のCPU市場に緊張感を持ち込んでいる。
性能の前に立ちはだかる現実
Intel対AMDの構図は、スペック表の数字だけでは語れなくなっている。Intelは52コアとbLLCで物量勝負、AMDは高クロックと3D V-Cacheでゲーマーと効率を取りに行く。
ただし、2027年のPCユーザーが直面する現実は厳しい。DDR5メモリの価格高騰は続いており、Intelは新ソケットへの移行を強いる。700W級の消費電力を許容できる環境を持つユーザーがどれだけいるのか。性能が上がっても、それを買える人間が減ったら意味がない。
どちらのCPUが速いかより、どちらのCPUを実際に買えるか——2027年の勝負は、案外そこで決まるのかもしれない。
参照元
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