PC市場の冬──米国13%減、日本31%減の衝撃
2025年は日米ともにPC市場が好調だった。だが、その宴はすでに終わっている。メモリ価格の暴騰がPC市場を直撃し、2026年は世界中で「冬の時代」が始まろうとしている。
2025年は日米ともにPC市場が好調だった。だが、その宴はすでに終わっている。メモリ価格の暴騰がPC市場を直撃し、2026年は世界中で「冬の時代」が始まろうとしている。
米国PC市場、2四半期ぶりの成長──しかし最後の輝き
調査会社Omdiaが発表した最新データによると、2025年第4四半期の米国PC出荷台数は前年同期比3%増の1,820万台に達した。2四半期連続で前年割れが続いていた市場が、ようやくプラスに転じた格好だ。
年末商戦の需要に加え、2025年10月のWindows 10サポート終了を控えた法人の駆け込み更新、そしてメモリ不足が本格化する前に在庫を確保しようとした動きが重なった結果だった。法人向けは前年同期比6%増の820万台で、4四半期連続の成長を記録している。
Omdiaのキーレン・ジェソップ氏は「Q4は米国PC市場にとって意味のある転換点だった」と述べている。
2025年通年では前年比3%増の7,150万台。数字だけ見れば安定成長に見える。だが、この3%という数字が「最後の輝き」になる可能性が高い。
2026年は13%減──メモリ・ストレージがさらに60%上昇
Omdiaの予測では、2026年の米国PC出荷台数は前年比13%減の約6,190万台にまで落ち込む。
背景にあるのは、止まらないメモリ・ストレージ価格の高騰だ。2025年の年初から40〜70%上昇したコストが、2026年第1四半期にはさらに60%上昇するとOmdiaは見積もっている。AIデータセンターの爆発的なメモリ需要が、PC向けの供給を根こそぎ奪っている構図だ。
最も打撃を受けるのは500ドル(約8万円)以下のエントリー市場で、教育向けや低価格帯のコンシューマー機がここに集中している。利幅の薄い小規模メーカーは市場から弾き出されるリスクがあるとジェソップ氏は警告する。
IntelとAMDのCPU供給にも逼迫の兆候が出ている。システムインテグレーターの発注リードタイムは最大6カ月に延び、部品不足はメモリだけの問題ではなくなりつつある。
「2028年にはエントリーPC市場が消滅する」という予測まで出始めている。500ドル以下でまともなPCが買えなくなる時代が、冗談ではなく近づいている。
日本のPC市場はさらに深刻──31%減、過去最高からの急降下
米国の13%減でさえ厳しいが、日本のPC市場はそれを大きく上回る落ち込みに直面している。
2025年の日本国内PC出荷台数は前年比42.9%増の1,782万6,000台と過去最高を更新した。出荷金額は2兆448億円で、25年ぶりに2兆円を突破している。Windows 10サポート終了とGIGAスクール構想第二期の端末更新という二大特需が重なり、まさに「記録的な当たり年」だった。
| 米国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 2025年出荷 | 7,150万台前年比 +3% | 1,783万台前年比 +42.9%(過去最高) |
| 2026年予測 | 約6,190万台前年比 −13% | 1,229万台前年比 −31.1% |
| 主な成長要因 | Win10終了+年末商戦 | Win10終了+GIGAスクール |
| メモリ影響 | さらに+60%上昇見込み | PC価格10〜20%↑ |
| 出典 | Omdia | MM総研 |
※ 日本の出荷台数1,783万台はMM総研の暦年集計(1,782万6,000台を丸め)。メモリ影響の「+60%」は2026年Q1の主流PC向けメモリ・ストレージコスト上昇予測(Omdia)。日本のPC価格上昇はMM総研予測。
だが、MM総研が予測する2026年の国内PC出荷台数は前年比31.1%減の1,229万台。米国の13%減すら霞むほどの急落だ。
法人向けは34.8%減の883万台、個人向けは19.2%減の346万台。GIGAスクール需要が2025年に集中した反動に加え、メモリ価格高騰によるPC本体の値上がりが直撃する。MM総研はPCの平均価格が2025年比で「少なくとも10〜20%は上昇する」と見積もっている。
すでにJEITAが発表した2026年1月の国内PC出荷統計では、前年同月比15.9%減の57万9,000台と、マイナス成長のスタートが数字として顕在化している。
つまり、日本のPC市場は「特需の反動」と「メモリ高騰」という二重苦に見舞われている。米国がメモリ不足という単一要因で13%減なのに対し、日本は構造的な需要サイクルの崩壊と部品コスト上昇が同時に襲いかかる形だ。
唯一の逆行者──Appleの存在感
この暗い見通しの中で、唯一「逆張り」に成功しているのがAppleだ。
日本では9万9,800円(米国では599ドル)のMacBook Neoは業界を驚かせた。ASUSのCFOが「PC業界全体にとってショックだった」と語ったほどだ。M5搭載MacBook Airもベースストレージを512GBに倍増しつつ、価格上昇を100ドルに抑えている。
Omdiaのデータでは、Appleの米国法人向けシェアは2025年通年で11%に達し、前年から2.4ポイント拡大した。メモリを自社設計チップに統合するAppleのアーキテクチャが、DRAM市場の混乱からある程度の距離を保てている理由だろう。
ただし、Appleの好調がPC市場全体を救えるわけではない。世界のPC市場は依然としてx86アーキテクチャが主流であり、そこにメモリ危機の波が押し寄せている現実は変わらない。
「冬の時代」は一時的か、構造的か
Omdiaは2027年に米国市場が7%増の6,600万台超に回復すると予測しているが、それでも2025年の7,150万台には届かない。日本でも同様で、MM総研は2026年以降の回復を見込みつつも、メモリ価格の動向次第では「4割減も視野に入る」との声もある。
SKグループの崔泰源会長は「メモリ不足は2030年まで続く」と発言しており、短期的な回復を期待するのは楽観的すぎるかもしれない。
AIが奪ったメモリは、簡単には戻ってこない。データセンター事業者は2026年と2027年の供給枠をすでに押さえ、一部では2028年の予約争いまで始まっている。一般消費者向けのPCは、その「おこぼれ」で作られるという構図が定着しつつある。
PCを買い替えたい人にとって、2026年は厳しい年になる。だが、2027年が楽になる保証もない。「買えるうちに買っておけ」が冗談で済まなくなる日は、もうすぐそこまで来ている。
参照元
関連記事
- メモリがデータセンター投資の30%を占拠、4年で4倍に急膨張
- DDR5メモリ、8カ月ぶりの価格下落──米中欧で同時進行する「調整」の正体
- MacBook Neo「8GBで十分」は本当か──60アプリの答え
- Corsair Strix Halo PCが突如1100ドル値上げ
- Mac miniとMac Studio、納期最大5カ月に──DRAM不足がAppleを直撃
- サムスンがDRAM契約価格をQ2も30%値上げ、2025年比2.6倍に到達
- Copilot新版、Edge丸ごと同梱でRAM消費10倍に
- Apple Silicon初のeGPU承認——NVIDIA対応だがAI研究限定
- Copilot「娯楽目的限定」——MS利用規約が語る矛盾
- イランのサイバー部隊がStrykerを壊滅させた手口と、FBIが学んだ教訓