PS5 ProのPSSRトグルは「固定」──進化するアップスケーラーと、取り残されるゲームたち
PSSR 2.0の恩恵を全ゲームに届けるはずだったトグル機能に、意外な制約が明らかになった。将来のPSSRが進化しても、あのスイッチは今のまま動かない。
PSSR 2.0の恩恵を全ゲームに届けるはずだったトグル機能に、意外な制約が明らかになった。将来のPSSRが進化しても、あのスイッチは今のまま動かない。
「PSSR画質向上」トグルは今後更新されない
PS5 Proの「PSSR画質向上(Enhance PSSR Image Quality)」トグルは、将来PSSRの新バージョンがリリースされても、現在のバージョンに固定されたまま更新されない。PlayStation LifeStyleが3月24日(日本時間)に報じた内容によれば、PlayStationのリードシステムアーキテクト、マーク・サーニーがDigital Foundryとのインタビューでこの方針を明言した。
多くのPS5 Proユーザーは、このトグルをオンにすれば常に最新のアップスケーラーが適用されると考えていたはずだ。だが現実は違う。
「現在の戦略として、このトグルは固定される。つまり、最新のPS5 Proゲーム向けに更新されたネットワークパラメータがあっても、Enhance機能使用時にはそれらは適用されない」
サーニーの発言は、RedditユーザーDreamCorridorが共有したDigital Foundryのインタビュー抜粋から確認されている。インタビュー本編は現在Patreonで有料公開中だ。
'Enhanced PSSR Toggle' is a Fixed Version (Will Not Update Over Time)
by u/DreamCorridor in PS5pro
サーニーが「固定」を選んだ理由
なぜSonyは、自動更新という一見合理的な選択肢を捨てたのか。サーニーの回答は明快だ。
「PS5 Proコミュニティが、Enhance機能をいつ、どう使うべきかについて明確なガイダンスを提供できるようにするためだ」──もしパラメータが絶えず更新され続けたら、そのガイダンスの提供は「はるかに難しくなる」という。
これは技術的な制約ではなく、ユーザー体験の一貫性を優先した設計判断だ。トグルの挙動が更新のたびに変われば、「このゲームではオンにしたほうがいい」「あのゲームでは逆効果」といったコミュニティの知見が、アップデートのたびに無効化される。サーニーは、技術の最先端よりも、ユーザーが予測可能な結果を得られることを選んだ。
正直なところ、この判断には一理ある。PCゲーマーなら覚えがあるだろう。NVIDIAのDLSSはバージョンごとに挙動が変わり、「このゲームはDLSS 3.7.20のほうが3.8.1より綺麗」といった議論が日常茶飯事だ。サーニーは、コンソールでその混乱を再現したくなかったのだろう。
パッチ済みゲームとトグル依存ゲームの格差
この設計が生む構造は明確だ。PS5 Proのゲームは今後、2つの階層に分かれていく。
開発者が自主的にパッチを適用したゲームは、常に最新のPSSRで動作する。Silent Hill f、Alan Wake 2、Monster Hunter Wildsなど、3月17日(日本時間)のシステムアップデートで正式にPSSR 2.0対応となったタイトルがこれにあたる。
一方、開発者がパッチを提供しないゲームは、トグルによるPSSR 2.0の恩恵を受けられる。だが将来PSSR 3.0が登場しても、トグルはPSSR 2.0のままだ。そのゲームがPSSR 3.0の恩恵を受けるには、開発者が改めてパッチを出すしかない。
サーニーはゲームのパッチ適用を 「かなり面倒なプロセス」 と表現しており、対応するかどうかは開発者の裁量に委ねられている。大手スタジオならリソースを割けるが、中小デベロッパーにとっては現実的でない場合も多い。
つまり、トグルは「セーフティネット」であって「エレベーター」ではない。一度救い上げてはくれるが、その後の上昇には連れて行ってくれない。
PCとは正反対のアプローチ
PC側では、まったく逆の思想が根付いている。NVIDIAのDLSSは、ゲームフォルダ内のDLLファイルを最新版に差し替えるだけで、ほぼすべてのゲームに最新のアップスケーラーを適用できる。公式のDLSS Swapperツールまで存在し、ユーザーが自らバージョンを選べる仕組みだ。
AMDのFSRも同様に、ドライバレベルでのオーバーライドが可能になりつつある。つまりPC側は「最新が常に正義」という前提で動いている。
Sonyのアプローチはその対極にある。コンソールらしい「設定したら忘れていい」体験を守るために、あえて進化の自動適用を封じた。これはPS4 Pro時代の「ブーストモード」にも通じる哲学だ。あのときも、互換性を最優先にして性能の上限を意図的に抑えていた。
だが問題は、PSSRの進化速度だ。Project Amethystを通じたAMDとの共同開発は加速しており、FSR 4.1が3月20日(日本時間)にリリースされたばかりだ。サーニー自身がFSR 4.1とPSSR 2.0が同じニューラルネットワークを共有していると公言している。この速度でアップスケーラーが進化し続ければ、固定トグルと最新パッチの間の画質差は時間とともに拡大する。
今は問題ない。だが1年後は?
現時点では、この制約は大きな問題にならない。PSSR 2.0は発表からわずか1週間であり、トグルが提供するバージョンと最新バージョンの間に差はない。Digital Foundryが「PS5 Proの存在意義を正当化する」と評したほどの画質向上は、トグル一つで享受できる。
しかし半年後、あるいは1年後にPSSRがさらに進化したとき、50本以上あるPSSR対応ゲームのうち、開発者がパッチを提供しないタイトルはどうなるのか。そのゲームのユーザーは、固定されたトグルの恩恵だけで満足できるだろうか。
サーニーは「現在の戦略」という言い方をした。これは裏を返せば、戦略は変わりうるということでもある。Redditでは早くも「将来のシステムアップデートで方針が変わる可能性」を指摘する声が上がっている。
要するに、パッチ済みゲームは常に最新PSSRで動作し、トグル依存ゲームはPSSR 2.0で固定される。この二層構造が問題化するかどうかは、PSSRの進化速度と開発者のパッチ対応次第だ。
コンソールの美徳は「考えなくていい」ことだ。だがPSSRの進化は、PS5 Proユーザーに「このゲームはパッチ済みか、トグル依存か」を意識させ始めている。それは、サーニーが最も避けたかった混乱の別の形かもしれない。
#PS5Pro #PSSR #PlayStation #マークサーニー #アップスケーリング #ProjectAmethyst