Ryzen X3D全9機種比較、主役は今も7800X3Dだ

AMDのRyzen X3D全9機種を一斉比較する検証が公開された。派手な見出しは「最大64%の差」。だがその数字の裏で、最新の9800X3Dが7800X3Dに付けた差は、わずか1割に過ぎない。

Ryzen X3D全9機種比較、主役は今も7800X3Dだ
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AMDRyzen X3D全9機種を一斉比較する検証が公開された。派手な見出しは「最大64%の差」。だがその数字の裏で、最新の9800X3Dが7800X3Dに付けた差は、わずか1割に過ぎない。


「64%差」という見出しは、どこから来たのか

Hardware Unboxedが公開した検証では、Ryzen 5とRyzen 7のX3D CPU全9機種が、1080p解像度+RTX 5090という環境で14タイトルを一斉に走らされている。世代はZen 3からZen 5まで、価格帯は最廉価から最上位まで、すべて1つの土俵に乗った。

報道各社がこの結果から掴んだ数字は「最大64%」だった。1080p Medium設定で最速の9850X3Dが平均266FPS、最遅の5500X3Dが162FPS。確かに差はある。

この64%は、Zen 3世代の最廉価X3Dと、Zen 5世代の最上位X3Dを並べた結果だ。世代も価格帯も違うCPU同士を比べれば、そうなるのは当然と言ってもいい。

ただし、この数字は「これからX3Dを買う人」にとってはほぼ意味がない。問うべきは、同じ世代のなかで何を選ぶか、そして世代を跨ぐ価値が本当にそこにあるのか——その2つだけだ。


世代を跨いだジャンプ、その実態

検証の結論はきれいに整理されている。14ゲームの平均で、7800X3Dは5800X3Dより20〜24%速い。対する9800X3Dは7800X3Dより8〜10%速いだけだ。

5800X3D以降でAMDが最も印象深く世代を進めたのは、9800X3Dではなく7800X3Dだった。検証を通じて見えてきた結論は、そういうものだ。

前者のジャンプは、アーキテクチャ刷新とDDR5対応が同時にもたらした本物の世代交代だった。後者のジャンプは、無視できる差ではないが、世代交代と呼ぶには物足りない。

CPUを最も厳しく問うRTX 5090+1080pという条件下で、9800X3Dと7800X3Dの差はわずか1割前後に収まっている。WQHDや4Kといった実使用の解像度に上げれば、この差はさらに縮む。GPUがボトルネックになる領域で、CPU間の10%差が体感に届くことはほぼない。

売り場では「最新だから速い」という物語が今日も回っている。実測値はそれとは別のことを言っている。

コア数という「迷路」

この検証は、もう一つの通説にも穴を開けていく。6コアの7600X3Dと8コアの7800X3Dの差は、多くのタイトルで6〜10%程度にとどまった。「ゲーミングでは8コア必須」という話が、どれだけ曖昧な根拠で広まってきたかがよく分かる。

ゲーミング性能を決めているのはコア数ではない。IPC、動作クロック、そして想像以上に効くメモリ帯域——この3つだ。3D V-Cacheが強力でも、前提条件が揃わなければ威力は薄れる。

たとえばSpider-Man 2では、5800X3Dから7500X3Dへ移るだけで17%の性能向上が出た。コア数は8から6に減っているのに、である。DDR4からDDR5に変わったことで帯域差がそのまま結果に出た。

逆にCounter-Strike 2のように、メモリ帯域が効かず、コア数もほぼ無関係で、純粋にIPCだけで差がつくタイトルもある。ゲームによって効く要素が違う——これが、9機種の数字を並べて残る最大の発見だ。


AM4という「終わらない生命線」

面白いのは、この検証に対する視聴者の反応層だ。動画のコメント欄には、9800X3Dへの羨望よりも、5800X3Dや5700X3Dを使い続けるユーザーの「まだ戦える」という書き込みの方が目立つ。

自分の1%ロウはすでにモニターのリフレッシュレートを超えている。それなら5800X3Dから動く理由はない、と。

ある視聴者のその書き込みには、何百もの同意が集まっていた。検証結果を見た上での反応がこれだ。

AM4プラットフォームは2017年に登場した。8年を超えてなお、新しい3D V-Cache CPUが出るたびに比較対象として呼び出され、そのたびに「まだ使える」と判定され続けている。ここまで寿命の長いデスクトップ基盤は、近年ほかに例がない。

買い替えを煽る記事は世の中に溢れている。その中でAM4が使い倒されているのを見るのは、正直、少し愉快だ。

日本の価格が映す「正解」

最後に、日本市場のいまの価格を置いておこう。価格comでも秋葉原の店頭でも、ほぼ揃った結果が出ている。

秋葉原の2026年4月上旬の相場では、7800X3Dが4万8,000円9800X3Dが5万9,999円、9850X3Dが7万4,800円という並びだ。価格comの最安値もほぼ同水準で推移している。

最速を求めるなら9850X3Dがある。最新を求めるなら9800X3Dがある。そしてゲーミングCPUとしての価値で言えば、1割の性能差に1万2,000円を乗せるかどうかは、各自の懐具合と優先順位が決める話だ。

そしてこの検証の10日後、4月22日にはデュアル3D V-Cacheを載せた9950X3D2が発売される。米国価格は899ドル、日本では18万円前後の見通しだ。ただしAMD自身がこれを「ゲーム開発者やクリエイター向け」と明言しており、純ゲーミング用途の序列は、この検証が示した通りに固まったままだ。

新しいから速いとは限らない。9機種の数字が残したのは、その一行に尽きる。


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