SanDisk、2TB SDカードに32万円の衝撃価格──メモリ不足時代の「プロ向け」は誰のためか
SDカード1枚に32万円。この数字が、2026年のストレージ市場の現実を映し出している。
SDカード1枚に32万円。この数字が、2026年のストレージ市場の現実を映し出している。
8K撮影のために生まれた怪物スペック
SanDiskが静かに投入したExtreme Pro UHS-II V90の2TBモデルは、SDカードとしては最上位の性能を誇る。シーケンシャルリードは最大310MB/s、ライトは305MB/s。V90規格に準拠し、8K動画の連続記録にも対応する。
IP68の防水・防塵性能に加え、6メートルの落下にも耐えるタフネス設計。プロの映像制作現場を想定した仕様だ。2TBの容量があれば、30fpsの8K映像を約1,118分、24メガピクセルのRAW写真なら4万7,368枚を保存できる。
問題は価格だ。
1GBあたり1ドルという現実
Amazon.comでの販売価格は1,999.99ドル、日本円で約32万円。同じExtreme Proシリーズでも、UHS-I規格の2TBモデルは500ドル以下で手に入る。UHS-II V90の2TBは、その4倍以上の価格差がついている。
1GBあたりのコストを計算すると約1ドル。一方、microSD Express規格の512GBモデルは1GBあたり0.23ドルだ。UHS-II V90は「速さ」と「大容量」の両立に、文字通り桁違いのプレミアムを要求している。
| UHS-II V90 | UHS-I | |
|---|---|---|
| 価格 | $1,999.99 | $500以下 |
| 読み取り速度 | 310MB/s | 250MB/s |
| 書き込み速度 | 305MB/s | 150MB/s |
| 1GBあたり | 約$1.00 | 約$0.21 |
| 8K対応 | ○ | × |
参考までに、2TB UHS-I SDカードは1GBあたり約0.21ドル。UHS-II V90の約5倍のコスト効率だが、書き込み速度は150MB/sに留まる。8K収録には力不足だ。
メモリ不足がすべてを変えた
この価格設定の背景には、2026年を通じて続くNANDフラッシュ不足がある。
TrendForceの調査によれば、2026年第2四半期のNAND契約価格は前四半期比70〜75%上昇する見通しだ。第1四半期も約60%上昇しており、価格高騰に歯止めがかかる気配はない。
原因は明確だ。Samsung、SK Hynix、Micronの3社が、製造能力をAIサーバー向けのHBM(高帯域幅メモリ)に集中させている。OpenAIのStargateプロジェクトだけで、世界のDRAM生産の最大40%を消費するとの試算もある。コンシューマー向け製品は、残りのパイを奪い合う構図だ。
PhisonのCEO、K.S.プア氏は「2026年はNANDメーカー全社が完売状態」と語り、中小の家電メーカーが供給を確保できず「多くの犠牲者が出る」と警告している。
誰がこのカードを必要とするのか
このSDカードが想定するユーザーは限られる。8K映像を日常的に扱う映像制作者、長時間の連続撮影が必要なドキュメンタリー制作、複数カメラでの同時収録を行うライブイベント撮影。こうした現場では、2TBの大容量と途切れない書き込み速度が武器になる。
しかし、多くのカメラマンにとって、512GBのUHS-II V90を複数枚運用する方が現実的だろう。512GBモデルは約500ドル、4枚買っても2TBモデルと同額だ。バックアップの分散という観点でも、複数枚運用には利点がある。
SanDiskがこの製品を「静かに」投入したのは象徴的だ。大々的な発表ではなく、Amazonの商品ページに突如として現れた。メモリ不足の時代、プレミアム製品の需要が読みにくい市場で、慎重に様子を見ているようにも映る。
高性能SDカードの限界
皮肉なことに、UHS-II規格のSDカードは技術的には旧世代だ。microSD Express規格はPCIe/NVMeを採用し、理論上はさらに高速な転送が可能になる。しかし、現行のプロ向けカメラの大半はUHS-IIスロットを採用している。
CFexpress Type Bへの移行が進む上位機種を除けば、UHS-II V90が「現実的な最高速」であり続ける時間はまだ残されている。
つまり、このカードは「過渡期の最適解」だ。新規格への移行が本格化するまで、8K対応のSDカードとしては選択肢がほぼない。
32万円のSDカード。それが高いか安いかは、使う人の仕事次第だ。ただ、この価格が「異常」ではなく「市場の現実」になりつつあることは、記憶しておいた方がいい。
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