SSD高騰時代の裏技、約4300円のアダプターでNVMe増設
SSDの価格が記憶にないほど高騰している。その中で、たった27ドルのアダプターカードがRedditのホームラボコミュニティで話題を呼んでいる。
SSDの価格が記憶にないほど高騰している。その中で、たった27ドルのアダプターカードがRedditのホームラボコミュニティで話題を呼んでいる。
GPUが使い残したPCIeレーンに目をつけた
r/homelabに投稿されたのは、ロープロファイルGPU用のPCIeライザーカードだ。半高のPCIeカードをフルハイトに変換しつつ、カードの空きスペースにM.2 NVMeスロットを2基搭載している。
We have ASUS Dual at home
by u/thepromiseman in homelab
仕組みはシンプルだが巧妙だ。現行のミドルレンジGPU、たとえばRTX 4060はPCIe x16スロットに装着されるが、実際にGPUが使うのはx8レーンだけ。残りのx8レーンは電気的に接続されないまま、ただそこにある。このアダプターはPCIeバイファーケーション(分岐)を利用して、余剰レーンをx4+x4に分割し、2基のNVMe SSDに割り当てる。
PCIeバイファーケーションとは、マザーボードのBIOS設定でx16スロットをx8+x4+x4などに分割する機能。CPUとマザーボードの両方が対応している必要がある。
投稿者のthepromisemanは、RTX 4060を搭載したmini-ITXシステムでこのアダプターを使い、「驚いたことに、すべて普通に動いた」と報告している。投稿は826の賛成票と94件のコメントを集めた。
動機は「RAMageddon」
なぜこんな回り道をするのか。投稿者自身が理由を端的に述べている。「RAMageddonのせいで大容量NVMeドライブが買えない。だからマザーボードのバイファーケーション機能を使ってストレージを拡張することにした」。
2026年のストレージ市場は異常事態にある。AIデータセンターの爆発的な需要によりNANDフラッシュの供給が逼迫し、NVMe SSDの平均価格は前年比で約115%上昇した。かつて約250ドルで買えたSamsung 990 Proの4TBモデルは、現在950ドル前後まで跳ね上がっている。大容量ドライブを1本買う代わりに、手持ちの小容量ドライブを複数束ねるという発想が出てくるのは、むしろ当然だろう。
約4300円で買える「空きレーン活用キット」
このアダプターの正体は、RIITOPが販売するPCIe 4.0 x16対応のデュアルNVMeアダプターだ。Amazonで26.99ドル(約4,300円)で手に入る。
構造としては、PCIe x16コネクタからx8信号をそのままGPU側に渡しつつ、残りのx4+x4を2基のM.2スロットに分配する。カードの両面にM.2ソケットがあり、2230から22110までの各サイズに対応している。
注意点として、マザーボードのBIOSで「PCIe x8x4x4」のバイファーケーション設定が可能でなければ、M.2 SSDは一切認識されない。非対応ボードに挿しても、ランダムクラッシュやブルースクリーンの原因になるだけだ。
mini-ITXやスモールフォームファクターのビルドでは、PCIeスロットが1基しかないケースが多い。GPUを挿したらストレージ拡張の余地がなくなる。このアダプターはその制約をカード1枚で解消する。NASや仮想化環境でNVMe容量を増やしたいユーザーからも動作報告が上がっている。
ASUSは同じ発想を製品化していた
「余ったPCIeレーンをSSDに使う」という着想は、ASUSがすでに商用製品として形にしている。2023年11月に発表されたASUS Dual GeForce RTX 4060 Ti SSDは、GPU背面にM.2 2280スロットを統合した世界初のコンシューマー向けGPUだ。
ASUSの製品はさらに踏み込んでいる。PCIe 5.0対応のマザーボードとSSDの組み合わせであれば、GPU側がPCIe 4.0でも、M.2スロットはPCIe 5.0のフルスピードで動作する。SSDの熱をGPUクーラーのヒートシンクに逃がす設計で、マザーボード直付けより温度が約40%低下するとASUSは主張している。
ただし、ASUS製品は通常モデルより高い価格帯で販売されている。今回のReddit投稿が注目を集めたのは、同じ原理をわずか27ドルのサードパーティ製アダプターで、しかも手持ちの任意のロープロファイルGPUと組み合わせて実現できる点にある。
バイファーケーション対応は「運試し」に近い
Redditのコメント欄で最も多かった警告は、バイファーケーション対応の確認が難しいという問題だ。
あるユーザーは「マザーボードがx8x4x4のバイファーケーションに対応しているか確認しないと、痛い目に遭う」と書いている。別のユーザーは、非対応ボードでの使用経験として起動時のランダムクラッシュやディスク管理の異常を報告した。
厄介なのは、バイファーケーション対応がマザーボードの製品ページに書かれていないケースが大半だという点だ。BIOS/UEFI設定の奥にオプションとして埋まっており、マニュアルを読み込まないと分からない。コメント欄の報告を総合すると、AMDのAM4プラットフォーム(B550やX570)では対応例が多く、Intelのコンシューマー向けチップセットではZ系以外は限定的だという。
「自分のB550 Aorus AXにはバイファーケーション設定があった」「ASRockのAM4-ITXボードなら30ドル台でも対応しているものがある」といった声がある一方、「Gigabyte B450 Aorus Proには設定がなかった」という報告もあった。
対応の有無が製品スペックに明記されないのが、この手法の最大のハードルだと思う。エンタープライズ向けボードでは標準装備だが、コンシューマー向けは製品ごとにバラバラだ。購入前にBIOSのスクリーンショットやフォーラムの動作報告を探るしかない。
「余剰」を「資源」に変える発想の価値
この手のアダプター自体は新しいものではない。PCIeバイファーケーションはサーバー環境では日常的に使われている技術だ。だが、SSD価格の高騰が、一般ユーザーの目を「遊んでいるレーン」に向けさせた。
Amazonのレビューには、2枚のアダプターを同時に使ってx16スロット1本から4基のM.2 SSDを認識させたという報告もある。ゲーム用途ではロスレススケーリングのために2枚のGPUを共存させるケースや、ローカルAI推論のためにVRAMを分散させる使い方も議論されている。
たった4,300円のカード1枚が、mini-ITXの最大の弱点であるスロット不足を解消し、高騰するSSD市場への対抗策にもなる。ただし、マザーボードのBIOS設定画面とにらめっこする覚悟は必要だ。
参照元
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