米データセンター反対運動が銃撃に発展、議員宅に13発
AIインフラへの反発が、ついに銃弾という形で表出した。「NO DATA CENTERS」のメモを残して去った犯人。この事件が意味するものは何か。
AIインフラへの反発が、ついに銃弾という形で表出した。「NO DATA CENTERS」のメモを残して去った犯人。この事件が意味するものは何か。
「怖かった」──深夜の銃声
イースターの余韻が残る4月6日深夜0時45分頃、米インディアナポリス市議会議員ロン・ギブソンの自宅に13発の銃弾が撃ち込まれた。玄関マットの下には、ジップロックバッグに入れられた手書きのメモが残されていた。
「NO DATA CENTERS」
ギブソンと8歳の息子は銃声で目を覚ました。ガラスが砕ける音。暗闇の中、父親は息子のもとへ走った。幸い二人に怪我はなかったが、弾痕は玄関ドアを貫通し、息子が前日レゴで遊んでいたダイニングテーブルのすぐそばまで達していた。
「私は公務員だ。しかし、父親であり、近隣住民でもある。この行為は、私が毎日立ち向かっている暴力そのものを、私たちの地域に持ち込んだ」
ギブソンは声明でそう述べた。
5億ドルのプロジェクト、沸騰する反対運動
事件の背景には、ロサンゼルスのスタートアップ企業Metrobloksが計画する5億ドル規模のデータセンターがある。建設予定地は、かつてドライブインシアターがあったマーティンデール・ブライトウッド地区の14エーカー。2棟の建物に加え、駐車場、バックアップ発電機、冷却システムが設置される計画だ。
ギブソンは4月1日、都市開発委員会の公聴会でこの計画への支持を表明した。「この開発には実際の恩恵がある。建設期間中に約300人の雇用が見込まれる」。しかし会場では、反対派の住民が一斉に立ち上がり、彼の発言はブーイングにかき消された。
それでも委員会はゾーニング変更を承認した。最終決定は市議会に委ねられている。
なぜ住民は反対するのか
データセンターへの反発は、インディアナポリスだけの現象ではない。全米各地で同様の対立が激化している。
住民の懸念は具体的だ。電力需要の急増による電気料金の上昇、共有グリッドへの負荷、大量の水消費、騒音、そして環境への影響。マーティンデール・ブライトウッド地区は過去に鉛工場による汚染被害を受けた歴史があり、住民の警戒心は一層強い。データセンターは膨大な電力を消費し、その負担は周辺住民に転嫁される。しかも建設後の常勤雇用はわずかだ。こうした構造的な問題が、各地で住民の怒りを増幅させている。
ケンタッキー州では、あるテック企業が農地に対して地域相場の約10倍となる2600万ドル(約41億円)を提示したが、農家の家族は「留まって国民を養う」として申し出を拒否した。しかし周囲の地主が応じたため、結局データセンター計画は進行している。
初めての暴力、そして沈黙
この事件は、データセンター反対運動が暴力に発展した初めてのケースとして報じられている。地元の反対派グループ「Protect Martindale-Brightwood」は、即座に事件を非難する声明を出した。
「暴力は、私たちのコミュニティにも主張活動にも居場所がない。現場に残されたメッセージは、私たちの組織とは一切関係がない」
インディアナポリス警察とFBIは「孤立した標的型事件」として捜査を進めているが、犯人の特定には至っていない。月曜夜の市議会では、議会議長マギー・ルイスがギブソンに向かって言った。「あなたとご家族に起きたことを、深くお詫びします。受け入れがたいことです」
ジョー・ホグセット市長もXで声明を発表し、「意見の相違がどうあれ、暴力は決して答えにならない」と述べた。下院議員アンドレ・カーソンは「政治的緊張が高まると、一部の人間は暴力に訴える。それは決して正当化されない」とコメントしている。
それでもギブソンは支持を撤回しない
銃撃を受けたその日の夜、ギブソンは市議会後の記者対応で明言した。
「まず、私がまだここにいることをイエスに感謝したい。神が私と息子を守ってくださった」
そして、データセンターへの支持を撤回する意思がないことを表明した。この姿勢を勇敢と見るか、無謀と見るか。評価は分かれるだろう。だが一つ確かなことがある。データセンターをめぐる対立は、もはや公聴会でのブーイングや署名運動の段階を超えた。銃弾という形で対立が顕在化したこの事件は、各地で計画が進むAIインフラ開発に影を落とす。
AIインフラの拡大は止まらない。電力需要は増え続ける。そして、その負担を誰が引き受けるのかという問いは、どこかで必ず衝突を生む。
今回は銃弾だった。次は何か。
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