Windows Insider刷新、チャンネル統合と初の機能フラグ

Windows Insider Programが、もっとも根本的な問題に向き合おうとしている。「アップデートしたのに、新機能がない」──これが過去のものになるかもしれない。

Windows Insider刷新、チャンネル統合と初の機能フラグ

Windows Insider Programが、もっとも根本的な問題に向き合おうとしている。「アップデートしたのに、新機能がない」──これが過去のものになるかもしれない。


4チャンネルが2つに──選べる明快さの復活

Windows Insider Programの構造が変わる。Microsoftのプロダクトマネージャー、アレック・ウートが4月10日に公式ブログで発表した内容は、プログラムの根幹に手を入れるものだ。

これまでCanary、Dev、Beta、Release Previewの4チャンネルだった体制が、ExperimentalとBetaの2つに統合される。CanaryとDevが持っていた実験的な性格をExperimentalが引き継ぎ、Betaは数週間以内に正式リリースされる予定の機能をプレビューする場になる。

どちらを選ぶべきかは明快だ。Experimentalは壊れることを覚悟で最先端に触れたい人向け。Betaは近い将来の新機能を安定した環境で試したい人向け。Windows 10時代のFast Ring / Slow Ringに近い分かりやすさが戻ってきた、と言ってもいいかもしれない。

Microsoftは「Experimentalという名称は意図的なものだ。開発中の機能への早期アクセスであり、変更・遅延・出荷中止もありえる」と説明している。

Experimentalの中にはさらに「Future Platforms」というオプションも用意される。これは製品版Windowsとは紐づかない最初期のプレビュービルドで、プラットフォームレベルの変更を追いたい人向けだ。ただし、このビルドからの離脱にはクリーンインストールが必要になる。

Release Previewは商用顧客向けの詳細オプションとして存続するが、選択には「詳細オプション」からの有効化が必要になる。

新チャンネル構成の比較
Experimental Beta Release Preview
統合元 Canary + Dev Beta(従来) 変更なし
特徴 開発初期の機能に早期アクセス 出荷間近の機能をプレビュー 製品版直前のビルド
機能配布 Feature flagsで個別制御 全機能を全員に配布 変更なし
安定性 低い 高い 最も高い
切替 IPU可能 ※ IPU可能 IPU可能
※ Future Platformsビルドのみクリーンインストールが必要。IPU=インプレースアップグレード(データ保持のまま切り替え)

「機能がない」問題への回答──段階ロールアウト廃止と機能フラグ

Insider Programで最も不評だったのは、段階的ロールアウトと呼ばれる仕組みだ。新機能を一部のユーザーから順に配布して品質を確認するのだが、これがInsiderの体験を台無しにしていた。ブログで発表された新機能をインストールしたのに、自分のPCにだけ来ない。テスターとして参加しているのにテスト対象がないのだから、本末転倒だった。

Betaチャンネルでは、この段階的ロールアウトが廃止される。ブログで発表された機能を含むアップデートをインストールすれば、その機能は確実に有効化される。小さなバリエーションテストが残る可能性はあるが、機能そのものが欠落することはなくなる。

Experimentalチャンネルには、さらに踏み込んだ仕組みが加わる。設定画面に新設される「Feature flags」ページで、発表された個々の機能を手動でオン・オフできるようになる。

Chromechrome://flags に似た発想だと思えばわかりやすい。ブラウザの世界では当たり前だった「自分でテスト対象を選ぶ」体験が、ようやくWindowsにも来る。

対象はブログ記事で発表された目に見える新機能が中心で、バグ修正やシステム改善など裏側の変更は当初含まれない予定だ。

段階的ロールアウト品質管理の常道だが、テスタープログラムでそれを適用するのは矛盾だった。Microsoftもようやくそこに気づいたということだろう。


クリーンインストール不要──チャンネル切り替えの壁が消える

もう一つの大きな変更が、チャンネル間の移動方法だ。これまでは、チャンネルの切り替えやプログラムからの離脱にクリーンインストールが必要になるケースが多く、事実上の「出口なし」状態になっていた。

Microsoftインプレースアップグレード(IPU)の導入で、この問題を解消する。同じWindowsコアバージョン内であれば、Experimental、Beta、Release Preview間の移動、あるいはプログラム自体からの離脱が、アプリや設定を保持したまま可能になる。

通常のアップデートよりは時間がかかるが、PCの初期化は不要だ。「入ったら出られない」という印象が薄れれば、新規参加のハードルも下がる。プログラムの健全な循環にとって、地味だが重要な変更だと思う。

ただし例外がある。Future Platformsビルドは製品版と紐づかないため、ここからの移動には引き続きクリーンインストールが必要になる。

既存ユーザーは自動移行──数週間以内に開始

この変更は既存のInsider全員に適用される。Release Preview以外のInsiderは、新しいExperimentalまたはBetaチャンネルに自動的に移行される。

BetaチャンネルのユーザーはそのままBetaへ、DevチャンネルのユーザーはExperimentalへ移る。Canaryチャンネルのユーザーはビルド番号で振り分けられ、29500番台がExperimental(Future Platforms)へ、28000番台がExperimental(26H1)へ移行する。移行されるのはチャンネルのラベルだけで、稼働中のWindowsバージョンは変わらない。

既存Insiderの移行先
現行チャンネル 移行先
Beta Channel Beta
Dev Channel Experimental
Canary(29500番台) Experimental(Future Platforms)
Canary(28000番台) Experimental(26H1)
Release Preview 変更なし
移行されるのはチャンネルのラベルのみ。稼働中のWindowsバージョンは変わらない

Windows Server向けのInsider Programは今回の変更の対象外だ。設定画面もリデザインされ、読み込み速度の向上とレイアウトの簡素化が図られるという。

これらの変更は、3月にMicrosoftのパヴァン・ダヴルリが表明した「Windowsの品質向上への取り組み」の一環として位置づけられている。

変更の展開は「今後数週間以内に」始まる。2014年、Windows Insiderは「一緒にWindowsを作る」という熱気で始まった。途中で複雑化し、テスターが報われない構造になっていたのは否めない。今回の刷新が原点回帰の第一歩になるかどうか、答えはそう遠くないうちに出る。


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