xAI共同創業者が全員退社──「基礎から作り直す」の先に何が残るか
イーロン・マスク氏が2023年に集めた11人の共同創業者が、ひとり残らずxAIを去った。最後の砦だったロス・ノーディーン氏の退社で、「再建」はいよいよ別の言葉に聞こえ始めている。
イーロン・マスク氏が2023年に集めた11人の共同創業者が、ひとり残らずxAIを去った。最後の砦だったロス・ノーディーン氏の退社で、「再建」はいよいよ別の言葉に聞こえ始めている。
最後の共同創業者が静かに去った日
xAIに残っていた最後のオリジナル共同創業者、ロス・ノーディーン氏が3月28日(金)に退社した。Business Insiderが関係者の証言として報じている。
ノーディーン氏はマスク氏の「右腕」と呼ばれた人物だ。36歳、ミシガン工科大学卒。Tesla時代にはスーパーコンピューティング・機械学習部門のテクニカルプログラムマネージャーを務め、2022年にはTwitter買収時の大規模リストラを現場で指揮した。ウォルター・アイザックソンの伝記によれば、マスク氏の従兄弟ジェームズ・マスクとも近い間柄だったとされる。
xAIでは技術スタッフとしてマスク氏に直接報告する立場にあり、近年はサウジアラビアのHumainとのマルチギガワット級データセンター交渉を主導するなど、インフラ戦略の要を担っていた。技術者というより「マスク帝国の実行部隊長」に近い存在だったといえる。
ノーディーン氏のXプロフィールからは、すでにxAIの所属バッジが削除されている。xAIとノーディーン氏のいずれも、コメント要請に応じていない。
11人中11人──「自然な入れ替わり」では説明できない数字
xAIの創業チームは、もう誰も残っていない。2023年7月にマスク氏がDeepMind、OpenAI、Google、Microsoft Research、Teslaから集めた11人の共同創業者は、AI業界でもトップクラスの布陣だった。あの顔ぶれこそがxAIの「資産」だったはずだ。
それが、2026年3月末時点で全員が退社している。
退社の波は2026年に入って一気に加速した。2月にジミー・バー氏とトニー・ウー氏が相次いで離脱。3月にはトビー・ポーレン氏、グレッグ・ヤン氏、ジーハン・ダイ氏、グオドン・チャン氏が続き、3月25日前後にはプリトレーニング責任者のマヌエル・クロイス氏が10人目の退社者となった。そしてノーディーン氏で、11人全員の退社が確定した。
退社者のカバー範囲は、安全性・インフラ・アーキテクチャ・プロダクト・研究と、あらゆる部門に及ぶ。これは「自然減」ではない。技術的リーダーシップの完全な入れ替えだ。
マスク氏はこの事態を「設計通り」だと主張している。2月の全社会議では「初期段階に向いている人と、後期に向いている人がいる」と語った。だが、12人中12人が去る組織の変化を「フェーズの移行」と呼ぶのは、さすがに無理がある。
「正しく作れていなかった」──マスク氏が認めた構造的欠陥
3月13日、マスク氏はXにこう投稿した。
xAI was not built right first time around, so is being rebuilt from the foundations up.
— Elon Musk (@elonmusk) March 12, 2026
Same thing happened with Tesla.
「xAIは最初から正しく作れていなかった。だから基礎から作り直している。Teslaでも同じことが起きた」。5000万回以上閲覧されたこの投稿は、率直な自己批判であると同時に、投資家にとっては不穏なシグナルだ。
なぜなら、この発言のわずか6週間前に、TeslaはxAIのシリーズEラウンドに20億ドル(約3,200億円)を投資している。2月にはSpaceXがxAIを買収し、合算企業価値は1兆2500億ドル(約200兆円)と報じられた。
SpaceXは2026年中に1兆5000億ドル(約240兆円)規模のIPOを計画しているとされる。自社の資金で「壊れていた」会社を買い取り、そのまま株式公開の看板に掲げる構図だ。
Tesla株主はすでにマスク氏を受託者責任違反で提訴している。AIリソースをTeslaからxAIに流用したという主張だ。「基礎から作り直す」宣言は、その訴訟に新たな材料を提供することになる。
SpaceXとTeslaの幹部がxAIに「監査役」として送り込まれ、チームの評価と人員整理を行っているとも報じられている。再建というより、もはや組織の「解体と再組装」に近い。
Grokの現在地──コーディングで「遅れている」という現実
マスク氏が「基礎から作り直す」と宣言した背景には、Grokの競争力不足がある。3月のAbundance Summitで、マスク氏は自ら「Grokは現在、コーディングで遅れている」と認めた。
AnthropicのClaude CodeやOpenAIのCodexがデベロッパー市場で存在感を増す中、xAIのGrok Codeは後塵を拝している。コーディング責任者だったグオドン・チャン氏は、マスク氏からその遅れの責任を問われた末に退社したとされる。
この穴を埋めるために、マスク氏はAIコーディングツールCursorからアンドリュー・ミリッチ氏とジェイソン・ギンズバーグ氏を引き抜いた。Cursorは年間売上20億ドル(約3,200億円)規模に成長した企業だ。ふたりはマスク氏に直接報告する体制で、Grokのコーディング基盤を一から再構築する任務を負っている。

ホワイトカラー業務を丸ごとAIに任せるプロジェクト「Macrohard」も、リーダーのポーレン氏が就任からわずか16日で退社したことで停滞。現在はTeslaとの共同プロジェクト「Digital Optimus」として再始動を図っている。
「テセウスの船」としてのxAI
ここで素朴な問いが浮かぶ。共同創業者が全員いなくなり、組織が解体・再編され、SpaceXに吸収されたxAIは、まだ「xAI」なのだろうか。
マスク氏には再建の実績がある。Teslaも初期は経営危機を何度も乗り越えた。SpaceXも失敗の連続から世界最大の宇宙企業になった。その手腕を疑う理由はない。
だが、2026年のAI競争は、2008年のEV市場や2006年のロケット産業とは根本的に異なる。OpenAI、Anthropic、Google DeepMindという資金も人材も潤沢な巨人たちが、すでに全速力で走っている。「基礎から作り直す」と宣言する時間的余裕が、果たしてあるのか。
11人の共同創業者が持ち去った知識と経験は、採用発表では埋まらない。新しいxAIが何を生み出すかは、まだ誰にもわからない。ただひとつ確かなのは、「最初のxAI」はもう存在しないということだ。
参照元
他参照
#AI #xAI #Grok #イーロン・マスク #SpaceX #Tesla #ロス・ノーディーン #OpenAI #Anthropic

