Anthropic、OpenClaw開発者をBAN

APIルールに従っていたOpenClaw開発者のSteinbergerが、Claudeアカウントを「不審な操作」で一時停止された。バイラル後に数時間で復旧したが、その裏には数カ月にわたるAnthropicの動きがある。

Anthropic、OpenClaw開発者をBAN
OpenClaw

APIルールに従っていたOpenClaw開発者のSteinbergerが、Claudeアカウントを「不審な操作」で一時停止された。バイラル後に数時間で復旧したが、その裏には数カ月にわたるAnthropicの動きがある。


APIルールに従った開発者がBANされる

オープンソースAIエージェントOpenClaw」の生みの親であるPeter Steinberger氏のClaudeアカウントが、4月10日に一時停止されている。Anthropicからの通知には「不審な操作」が理由として記されていた。

ここで重要なのは、Steinberger氏がAnthropicの新ルールに従っていたという点だ。Anthropicは4月4日にサブスクリプション経由でのサードパーティ製ツール利用を遮断し、APIキーによる従量課金への移行を義務化した。Steinberger氏はこの変更に従い、APIキーでClaudeに接続していた。

ルールに従った人間を締め出して、いったい何のルールなのか。開発者たちの怒りは当然だった。

バイラル後に数時間で復旧

Steinberger氏はXに停止通知のスクリーンショットを投稿し、こう書いた。

「今後、OpenClawをAnthropicのモデルで動かし続けるのは難しくなりそうだ」——Steinberger氏

投稿はXで急速に拡散した。数時間後にアカウントは復旧し、コメント欄にはAnthropicのエンジニアも姿を見せた。「OpenClawの使用を理由にBANしたことは一度もない」と説明し、協力を申し出ている。

ただし、この介入が復旧の直接の契機だったかは不明だ。TechCrunchはAnthropicにコメントを求めているが、回答は得られていない。


数カ月にわたるOpenClaw包囲網

今回のアカウント停止は、突発的な事故ではない。Anthropicが段階的に進めてきたサードパーティ排除の流れの中で起きている。

OpenClawはもともと2025年11月に「Clawdbot」の名で公開された。「Claude」に名前が近すぎるとして、Anthropicから商標面での法的圧力がかかった。2026年1月27日に「Moltbot」へ改名し、3日後にはさらに「OpenClaw」へ変更している。

2026年2月14日、Steinberger氏はOpenAIへの入社を発表。プロジェクトはオープンソース財団に移管された。その直後の2月20日にAnthropic利用規約を更新し、サブスクリプションのOAuthトークンをサードパーティ製ツールで使うことを明確に禁止。4月4日に完全施行へ移行した。

施行時点で、サブスクリプション経由でClaudeに接続していたOpenClawインスタンスは推定13万5000台。従量課金への移行により、一部ユーザーのコストは最大50倍に跳ね上がる計算になる。

OpenClawをめぐるAnthropicの動き
2025年11月
「Clawdbot」公開
Steinbergerがオープンソースで公開。Claude経由で動作するAIエージェント
2026年1月27日〜30日
商標圧力で2度改名
Anthropicの法的圧力により Clawdbot → Moltbot → OpenClaw
2026年2月14日
Steinberger、OpenAI入社を発表
プロジェクトはオープンソース財団に移管
2026年2月20日
利用規約更新
サブスクリプションのOAuthトークンをサードパーティ製ツールで使用することを明確に禁止
2026年3月17日
Claude Dispatch公開
Anthropicが自社エージェント製品Coworkに新機能を追加
2026年4月4日
サブスクリプション遮断を施行
前日に通告。推定13万5000台のインスタンスが影響
2026年4月10日
Steinbergerアカウント一時停止→復旧
API課金に移行済みだったが「不審な操作」で停止。バイラル後に数時間で解除
●=Anthropicの行動 ◯=OpenClaw/Steinberger側の動き 🔴=本記事の事案

Anthropicも影響の大きさは認識しているようだ。

Anthropicは移行措置として月額相当の無料クレジットと、追加利用枠の30%割引を提供している。返金にも応じる姿勢だ。

「片方は歓迎し、片方は法的脅迫を送ってきた」

X上では「OpenAIではなくAnthropicに行けばよかったのでは」という指摘もあった。Steinberger氏の回答は辛辣だ。

「片方は僕を歓迎してくれた。もう片方は法的脅迫を送ってきた」

なぜ競合であるClaudeをわざわざ使うのかという質問には「OpenClaw FoundationとOpenAIでの仕事は別物だ」と説明。OpenClawがあらゆるモデルプロバイダで動作することを目指す以上、Claudeでのテストは不可欠だと強調した。

実際、OpenClawユーザーの間ではChatGPTよりもClaudeが依然として人気だという指摘が多数寄せられている。Steinberger氏はこれに対して「取り組んでいる」とだけ返した。OpenAIでの自身の役割を暗に示唆した格好だ。

コスト構造は破綻していた——だがやり方が問われている

Anthropicのクロード・コード責任者Boris Cherny氏は、今回の価格変更についてこう説明している。

「キャパシティは我々が慎重に管理する資源だ。自社製品とAPIの顧客を優先する」——Cherny氏、Xへの投稿より

エージェント型ワークロードは連続的な推論ループやタスクの自動リトライを伴い、通常のプロンプトとは桁違いの計算リソースを消費する。あるAIプロダクトマネージャーの試算では、OpenClawエージェント1台を1日稼働させるとAPI換算で1000〜5000ドル(約16万〜79万円)のコストが発生する。月額20ドルの食べ放題プランでこれを吸収し続けるのは、たしかに持続不可能だろう。

サブスクリプション vs API従量課金のコスト比較
Claude Pro
月額
$20(約3,200円)
Claude Max
月額
$200(約3万2,000円)
API 下限
1台/1日
$1,000(約16万円)
API 上限
1台/1日
$5,000(約79万円)
Aakash Gupta氏の試算に基づく。エージェントの使用パターンにより変動|1ドル≒158円で換算

しかしSteinberger氏は「コスト」という説明を額面通りには受け取っていない。同氏が指摘するのはタイミングだ。

Anthropicが自社エージェント製品「Cowork」にClaude Dispatchを追加したのは3月17日。OpenClawの締め出しは、そのわずか2週間半後にあたる。「まず人気機能を自社製品にコピーし、そのあとでオープンソースを閉め出す」というのが同氏の見立てだ。


事実と推論の境界

経済的な合理性はAnthropicの側にある。サブスクリプションは人間の使用ペースを前提に設計されており、24時間稼働するエージェントの負荷を定額で引き受けるモデルは構造的に破綻する。Googleも2月にGemini CLIで同様の措置をとっており、業界全体の流れでもある。

一方で、やり方が荒い。商標訴訟の脅し、OAuthの段階的な締め付け、施行の前日に出された通知。「インフラの都合」で片付けるには手順が攻撃的すぎると感じる開発者は多い。今回のアカウント停止が加わり、「意図的な排除ではないか」という疑念はさらに濃くなった。

OpenClawユーザーの多くは、今もChatGPTよりClaudeを選んでいる。追い出される側が離れないというのは、Anthropicにとって最も厄介な現実だろう。


参照元

他参照

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