Appleが4種類のスマートグラスをテスト、2027年発売へ

Appleが4種類のスマートグラスをテスト、2027年発売へ

ディスプレイなし、でも普通のメガネではない。Appleが準備しているAIスマートグラスの全貌が、ここにきて少しずつ見えてきた。


Metaを追う形で、Appleが具体的な形を模索している

Bloombergのマーク・ガーマン記者が報じたところによると、Appleは現在4種類のスマートグラスデザインをテスト中で、2026年末から2027年初頭にかけて発表、2027年春夏の発売を目指して開発が進んでいる。

4つのデザインとは、大型の長方形フレーム、スリムな長方形フレーム(ティム・クックCEOが普段使用しているものに近い形状)、大型の楕円形または円形フレーム、小型の楕円形または円形フレーム。カラーバリエーションはブラック、オーシャンブルー、ライトブラウンが検討されている。フレームの素材にはプラスチックではなく、より耐久性が高く質感のよいアセテートを採用する方向で、デザインは自社で手掛けている(ファッションブランドとの提携はなし)。内部では「N50」のコードネームで呼ばれているプロジェクトだ。

複数のデザインを並行してテストするというアプローチは、Appleがまだ「どれが売れるか」を模索している段階であることを示している。最終的にいくつのデザインが製品化されるかはまだ決まっておらず、場合によってはすべてのデザインが同時に発売されることもあり得るとガーマン氏は述べている。

Appleのスマートグラスは、写真・動画撮影、通話、音楽再生、通知の確認、そして刷新されたSiriとの対話機能を搭載する見通し。ただしディスプレイは搭載しない。
Appleスマートグラス(N50)— 4種フレームデザイン比較
大型長方形 スリム長方形 大型楕円形 小型楕円形
フレーム形状 大型長方形 スリム長方形 大型楕円・円形 小型楕円・円形
参考スタイル Ray-Ban
Wayfarer風
ティム・クックCEO
着用モデル風
カラー展開 ブラック/オーシャンブルー/ライトブラウン(全フレーム共通)
フレーム素材 アセテート(プラスチックより耐久性・質感が高い素材)
フレーム設計 自社設計(ファッションブランドとの提携なし)
カメラ形状 縦向き楕円+インジケーターライト(全フレーム共通)
同時発売の可能性 一部または全4種の同時発売を検討中
※ Bloomberg Mark Gurman氏の報道(2026年4月12日)に基づく。テスト中の情報であり、最終仕様は変更される可能性がある。

Vision Proの反省が、この製品に透けて見える

これはAppleが描いていた「未来」の縮小ではない。むしろ、戦略の組み換えだ。

かつてAppleはARディスプレイを搭載したフル機能のグラスを想定していた。しかしその計画は技術的・コスト的な壁に阻まれ、中止された。一方でVision Proは税込みおよそ60万円という価格と引き換えに、消費者の広い支持を得ることができなかった。

今回のスマートグラスは、Metaの「Ray-Ban Meta スマートグラス」に近いコンセプトだ——ディスプレイなし、普通のメガネと見分けがつかない外観、カメラとマイクとスピーカーを搭載。

「誰でも毎日かけられるもの」に照準を合わせた。それがAppleの現実的な答えだと思う。

カメラが2つある理由

TechCrunchなどの報道によると、カメラ2眼構成となる可能性が高い。フロント部に縦向きの楕円形カメラを配置し、その周囲にインジケーターライトを配置するデザインで、競合製品との差別化を図る。1つは写真・動画撮影用の高解像度カメラ、もう1つはSiriへの視覚情報提供と環境認識に特化したカメラだ。

iPhoneのLiDARスキャナに近い役割を担う2つ目のカメラにより、スマートグラスは周囲の状況を理解し、Apple Intelligenceと連携してユーザーに情報を提供できる。「見ているものについて教えてくれる眼鏡」という体験は、Siriが本来目指していたものに重なる。なお、機能の肝となるSiriの大幅な刷新はiOS 27での実装が目標とされており、スマートグラスの発売タイミングと連動する形で開発が進んでいる。

AI部門トップの退任、そのタイミング

今回の報道と同じガーマン氏のニュースレターで、もう一つの話題が扱われていた。AppleAI部門を8年間率いてきたジョン・ジャナンドレア上級副社長が、4月15日頃をもってAppleを完全退職するという情報だ。

ジャナンドレア氏は昨年12月に退任が発表され、それ以降はアドバイザーとして残っていた。Siriの大幅な刷新が当初計画から繰り返し遅延したことが退任の背景にあるとされ、後任にはGoogleGeminiアシスタントのエンジニアリング部門を率いたアマル・スブラマニヤ氏が就任している。

スブラマニヤ氏はAppleのFoundation Models、機械学習研究、AI安全性などを統括し、クレイグ・フェデリギの直属となる。(Apple公式発表)

スマートグラスはSiriの実力に依存する部分が大きい。ジャナンドレア氏が去り、新体制でSiriをどこまで立て直せるか——その答えを試す場の一つが、このスマートグラスになる。

主要AIスマートグラス 3社比較
Apple
N50(開発中)
Meta
Ray-Ban Meta
Google
Android XR Glasses
ディスプレイ なし なし(標準モデル) なし(基本モデル)
カメラ 2眼(撮影用+AI視覚用) あり あり
AIアシスタント Siri(iOS 27以降) Meta AI Gemini
フレーム設計 自社設計 Ray-Ban
(EssilorLuxottica提携)
Samsung・Gentle Monster・Warby Parker提携
iPhoneとの連携 深い連携(Apple生態系) 対応 Android中心
発売状況 2027年春夏予定 販売中
(2026年内に日本展開予定)
2026年展開予定
※ Apple情報はBloomberg Mark Gurman氏の報道(2026年4月12日)に基づく開発中の仕様。Meta/Google情報は各社公式発表・公式ブログ(2026年3〜4月時点)に基づく。

市場で戦う相手はMetaだけではない

スマートグラス市場はすでに各社が参入を急いでいる。

Metaは先行者として大きな優位を持っている。2025年8月時点でRay-Ban Metaの売上が前年同期比約3倍に拡大したことが明らかになり、2026年末までには年間生産能力を1,000万台規模まで引き上げる計画だ。さらに今年(2026年)内には日本を含む新市場への展開も予定されている。Googleサムスン、Gentle Monster、Warby Parkerと組み、Gemini搭載モデルを展開中。Snapも高機能ARグラスを計画している。

後発であることのリスクは、Appleも当然わかっているはずだ。それでも複数デザインを同時テストするという進め方は、「急いで出すより、正しく出す」というAppleらしい姿勢の現れでもある。

いずれにせよ、スマートグラスという製品カテゴリーは「ガジェット好きのおもちゃ」から「日常品」に変わろうとしている。AppleがどのデザインでどのSiriと共に世に出るか——その選択が、この市場の次の姿を決める。


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