アルテミスII打ち上げ成功——53年ぶり、人類が再び月へ向かう

アメリカ東部夏時間4月1日午後6時35分(日本時間4月2日午前7時35分)、NASAのSLSロケットがフロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上がった。4名の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船「インテグリティ」は現在、月へ向かう軌道に乗っている。

アルテミスII打ち上げ成功——53年ぶり、人類が再び月へ向かう
NASA

アメリカ東部夏時間4月1日午後6時35分(日本時間4月2日午前7時35分)、NASAのSLSロケットがフロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上がった。4名の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船「インテグリティ」は現在、月へ向かう軌道に乗っている。


人類が深宇宙へ戻った瞬間

アポロ17号が月面を離れた1972年から53年。いま人類は再び、低軌道の外へ踏み出している。

乗組員は4名。コマンダーのリード・ワイズマンは元米海軍大佐で、165日の宇宙滞在経験を持つ。パイロットのビクター・グローバーはスペースX「クルー1」ミッションを操縦した人物だ。ミッションスペシャリストのクリスティーナ・コークは宇宙での単独最長滞在記録(328日)を持つ電気工学者で、宇宙飛行士として初めて月周辺を飛行する女性となる。そして、カナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン大佐は、米国人以外で月軌道へ向かう史上初の宇宙飛行士だ。

ワイズマン グローバー コーク ハンセン
役職 コマンダー パイロット ミッションスペシャリスト ミッションスペシャリスト
所属 NASA NASA NASA CSA(カナダ宇宙庁)
経歴 元米海軍大佐 元米海軍大佐 電気工学者 カナダ空軍大佐
宇宙滞在 165日 328日(単独女性最長記録)
主な実績 元NASA宇宙飛行士局長 SpaceX クルー1操縦 女性初・月周辺飛行 非米国人初・深宇宙へ

— は非公表または今回が初飛行。クルー1はISS有人飛行ミッション(2020年)。

アルテミスIIは月着陸ミッションではない。オリオン宇宙船の生命維持システム、通信、深宇宙航法を実際に人間を乗せた状態で検証する「テストフライト」であり、2028年以降の月面着陸を目指すアルテミスIVに向けた橋渡しとなる。

打ち上げ前、飛行終了システムとの通信に問題が生じ一時「ノーゴー」判定が出たが、スペースシャトル時代の機材を活用したエンジニアチームが迅速に解消。予定ウィンドウ開幕から11分後に打ち上げが成功した。

コマンダー・ワイズマンは打ち上げ前夜、「飛ぶ時が来た(It is time to fly)」とXに投稿した。54年越しの再挑戦を、その一文が静かに代弁していた。


史上最遠の距離を刻む10日間のミッション

現在オリオンは地球周回軌道でシステムの検証を行っており、日本時間4月3日に月遷移軌道投入(TLI)燃焼が実施される予定だ。月への最接近は飛行6日目で、月面から約7,600kmの地点を通過する。

LIVE: Artemis II Launch Day Updates - NASA
Live updates for launch of NASA’s Artemis II test flight will be published on this page. NASA’s launch broadcast coverage is airing

月の裏側を通過した際、クルーは地球から約40万6,000kmという人類史上最遠の距離を記録する見込みだ。これはアポロ13号の記録(約40万km)を7,000km以上更新する。地球から見てほんの点にすぎない月の先に、人間がいる。その事実を、数字はあっさりと示している。

ビクター・グローバーは打ち上げから約3時間後、オリオンとロケット上段(ICPS)を分離した後の手動操縦テストを終え、こう言った。「ICPSと月が視界に入った。見て、ワーオ!」

打ち上げ延期を繰り返したSLSロケット、ようやく飛ぶ

相次ぐトラブルを乗り越え、アルテミスIIはいまフロリダの空から月へ向かっている。当初2026年2月初旬の打ち上げを目指していたが、液体水素漏れ、加圧弁の調整不備、2月の大寒波と問題が連続した。再び射点へ向かうまでに、NASAは2度のウェット・ドレス・リハーサルを経た。

その後も3月にヘリウム系統の問題が発覚しVABへ一時返却。射点への再ロールアウトは3月19日にようやく実現した。4月1日、ロケットはついに空へと向かった。

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ただ、1つのリスクは依然として残っている。2022年のアルテミスIで確認された熱シールドの損傷だ。アルテミスIIでは設計自体は変えず、大気圏再突入の角度を調整することで熱暴露を軽減する対応が取られている。

NASAのジャレッド・アイザックマン長官は打ち上げ後の会見でこう述べた。「宇宙飛行士は全員無事で士気も非常に高い状態だ。54年ぶりに人類が深宇宙へ旅立った」
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スプラッシュダウンは日本時間4月10日、太平洋上の予定だ。


アポロの先へ——月を人類の活動拠点にする計画

アルテミスIIは終点ではなく、出発点だ。NASAの長期目標は月南極域への恒久基地、アルテミス・ベース・キャンプの建設で、そこで培う水資源の採取技術や長期滞在のノウハウが、いずれ有人火星探査への足がかりとなる。

JAXAも計画に深く関与している。アルテミスIV以降のミッションへの日本人宇宙飛行士の月面参加と、有人月面ローバーの提供が計画されており、日本の宇宙探査にとっても転換点となりうる。

Artemis II: NASA’s First Crewed Lunar Flyby in 50 Years - NASA
Meet the Artemis II crew and learn how NASA’s 10-day lunar flyby mission will test deep space systems and pave the way for future Moon landings.

10日後、4人が太平洋に帰還したとき。それがようやく、次のアルテミスへの本当の出発になる。


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