岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
NVIDIA、OpenAIに2500億ドルの融資保証を交渉中

AI

NVIDIA、OpenAIに2500億ドルの融資保証を交渉中

NVIDIAがチップの売り手から金融の保証人へと役割を広げようとしている。赤字が続くOpenAIの巨大データセンター計画を、自社の信用力で支える交渉が水面下で進んでいる。 チップ代を含まない2500億ドル ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによると、NVIDIAはOpenAIに対し約2500億ドル(約41兆円)の融資保証を提供する方向で交渉を進めている。 対象はオハイオ州南部で建設が進む10ギガワット規模のデータセンター「PORTSテクノロジーキャンパス」のリース料と建設関連債務だ。ソフトバンクグループ傘下のSBエナジーが開発を手がけており、チップを含めた総事業費は5000億ドルを超える見通しとされる。 この2500億ドルにNVIDIA製チップの購入費は含まれていない。NVIDIAは別途、OpenAIのチップ購入に対し最大3500億ドルの資金支援も検討しているという。保証とチップ購入の資金支援を合わせると、NVIDIAが潜在的に負う財務リスクは最大6000億ドルに達しうる。 なぜNVIDIAの保証が必要なのか。OpenAIは2026年第1四半期に57億ドルの売上

Kimi K3、蒸留疑惑の渦中で2.8兆パラメータの重みを公開

AI

Kimi K3、蒸留疑惑の渦中で2.8兆パラメータの重みを公開

Moonshot AIが予告通りオープンウェイトを出した。中身を検証できる段階に入る。 予告通りの公開 Moonshot AIが現地時間7月27日、Kimi K3の重みをHugging Faceで公開した。総パラメータ数2.8兆。オープンウェイトのAIモデルとしては史上最大の規模になる。 7月16日のAPI公開から約10日、ホワイトハウスの蒸留告発から5日。予告通りの日程だが、このタイミングで重みを出すこと自体が蒸留疑惑への回答にもなる。重みが公開されれば、第三者が中身を検証できる。 Moonshot AI自身がテックブログで認めている通り、総合性能ではClaude Fable 5とGPT-5.6 Solにまだ届いていない。一方で、それ以外の比較対象モデルは一貫して上回ったとしている。 2.8兆の中身 数字だけ見ると巨大だが、実際に動くのはその一部にすぎない。 K3はMixture-of-Experts(MoE)を採用している。896個のエキスパート(専門処理ユニット)のうち、1回の推論で稼働するのは16個にすぎない。活性化パラメータは約1040億で、総パラメータの約

AIデータセンターの騒音訴訟、ミシガン州で「全米初」の集団訴訟に発展

データセンター

AIデータセンターの騒音訴訟、ミシガン州で「全米初」の集団訴訟に発展

ミシガン州の人口5700人の町で、AI・暗号通貨マイニング施設が発する騒音をめぐり住民が集団訴訟を起こした。市は騒音条例を新設して罰金を科し、企業は住宅の買い取りを申し出た。 100年住んだ家の窓が開けられない ミシガン州南西部にドゥワジャック(Dowagiac)という町がある。人口約5700人。ミシガン湖から約50km内陸に入った、キャス郡の小さな町だ。 その町のルイーズ・アベニュー沿いに、一軒の家がある。マージョリー・フィン(Marjorie Finn)氏の家族が約100年にわたって住み続けてきた家だ。 通りの向かいには松の木の列があり、その奥に工場の建物があった。何十年もの間、それで特に問題はなかった。 2018年頃から状況が変わり始めた。松の木が伐採され、搬入口が設置された。2021年頃には暗号通貨のマイニング施設が稼働を開始し、2024年になると建物から24時間途切れない騒音が出るようになったという。 住民のリンディ・バレンズエラ(Lindy Valenzuela)氏はその音をこう表現している。 「掃除機を居間に置いて、フィルターが詰まった状態で電源を入れっぱ

3.5億ドル調達のArmチップ新興企業、DGX Sparkと酷似のAI SoCを発表

AI

3.5億ドル調達のArmチップ新興企業、DGX Sparkと酷似のAI SoCを発表

Mac miniサイズの筐体で1000億パラメータのAIモデルを動かすと謳うSoCが、シンガポールのスタートアップから出てきた。自社テストではM4 Proの7.5倍のプリフィル性能を主張するが、独立した検証はまだない。 20コアArm、273GB/s、5nm。見覚えのある数字 シンガポールのAcrabが現地時間7月23日に発表したGΞLIX 1は、同社初のエッジAI向けSoC(System-on-Chip)だ。5nmプロセスで製造され、20コアのArm CPU、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)、GPUをワンチップに統合している。統合メモリの帯域幅は273GB/s。最大1000億パラメータ級のオープンソースモデルをローカルで動かせると謳う。 この数字に既視感がある人は、記憶が正しい。 NVIDIAのDGX Sparkに搭載されているGB10は、MediaTekと共同設計した20コアArm CPU(Cortex-X925×10+Cortex-A725×10)にBlackwell GPUを統合したSoCで、メモリ帯域幅は同じ273GB/s。LPDDR5xの128GB統合メ

自由意志の否定で赦しが増え、憎しみが減る。44カ国8,917人の調査結果

自由意志

自由意志の否定で赦しが増え、憎しみが減る。44カ国8,917人の調査結果

「自由意志は存在しない」と告げられた人は、自分や他者をより赦せるようになり、憎しみも薄れる。責任の感覚は失われない。 サポルスキー氏の問いかけが日本に届いた年に 神経科学者ロバート・サポルスキー氏(Robert Sapolsky)の著書『Determined』は、遺伝子と環境の相互作用に自由な選択の余地はないと論じ、2023年の刊行以来、議論を呼んできた。今年5月、邦訳『あなたの選択はどのように決まるのか』が出版され、日本語でもこの議論に触れられるようになった。 著述家のサム・ハリス氏(Sam Harris)はもっと端的に述べている。自由意志は幻想だ、と。 心理学者やメディアは繰り返し警告してきた。自由意志への信念を揺るがせば不正行為や攻撃性が増し、他者を助ける行動が減る。先行研究がそう示唆していたからだ。 だがその「警告」は、どこまで正しいのか。 メルボルン大学の博士課程に在籍するアーロン・ウォルトン氏(Aaron Walton)は、共同研究者とともに2本の論文を発表し、従来の見方に反論している。 「許せない」が和らぐ ウォルトン氏と共同研究者のブロック・バスティ

Meta、ルイジアナ州と500億ドル規模の交渉 公開資料から経緯を整理

AI

Meta、ルイジアナ州と500億ドル規模の交渉 公開資料から経緯を整理

500億ドルのデータセンター契約がどう成立したのか。40人以上への取材と公的記録の精査で明らかになった9カ月の交渉過程は、AI時代の巨大開発が民主的手続きをどこまで迂回できるかを示している。 法案を「乗っ取れ」 2024年4月、ルイジアナ州バトンルージュの議事堂で、ある法案が委員会審議にかけられようとしていた。光ファイバー機器に対する税還付を定めた法案だ。 そこに州歳入長官のリチャード・ネルソン(Richard Nelson)が現れる。就任間もないジェフ・ランドリー(Jeff Landry)知事から直接、急ぎの指令を受けていた。ネルソンは法案の起草者、クリス・ターナー(Chris Turner)州下院議員にこう告げた。「この法案を乗っ取る必要がある。内容は教えられないが、重要だ」 ターナーは了承した。 2カ月後、州議会の下院を通過した法案の中身は、光ファイバー機器の税還付からデータセンター機器の税還付に変わっている。 この法案こそ、Metaが「Hyperion(ハイペリオン)」と呼ぶ巨大データセンターをルイジアナ州リッチランド郡に建設するための前提条件だった。 総投資額

Windowsの人気アプリを装う偽サイト72件、開発者が組織的作戦を発見

Windows

Windowsの人気アプリを装う偽サイト72件、開発者が組織的作戦を発見

Wintoys開発者がアプリ名を騙る偽ドメインを追跡したところ、同一の登録者が70以上のWindowsアプリを標的にした組織的なネットワークを運営していた。 自分のアプリが、知らないサイトに並んでいた Wintoysの開発者Bogdan_Xは、Google検索で自分のアプリ名を確認していたとき、wintoys.appという見覚えのないドメインに気づいた。WintoysはWindows向けのカスタマイズツールで、Microsoft Storeから配布されている。wintoys.appはBogdan_Xが取得したものではない。開くとWintoysの紹介ページが表示されるが、掲載情報は不正確で、ページ末尾には「Wintoysとは無関係。公式プロジェクトのドキュメントとリンクを提供する独立サイト」という免責事項が置かれていた。 ダウンロードリンクの接続先はMicrosoft Storeの正規ページだった。Chromeでアクセスすると、Cloudflareがフィッシングの疑いがあるとして警告を表示する。正規ストアへのリンク、フィッシング警告、免責事項が同居する奇妙な構成だった。 72

Xbox Live、4日で2度目のダウン。ゲーム起動すらできず

Xbox

Xbox Live、4日で2度目のダウン。ゲーム起動すらできず

Xbox Liveの障害が繰り返されている。サーバーが落ちればオフラインで遊べるゲームすら起動できず、毎月課金しているユーザーの不満が噴き出した。 7月23日、そして7月27日 Xbox Liveが7月27日、再び大規模な障害を起こした。 Xbox Supportが同日投稿した告知によれば、サインイン、ゲームライブラリの表示、ゲームの起動でエラーが発生しており、エンジニアが対応中だという。 We are aware that some users are encountering errors when attempting to sign in, see your game library, or launch games. Our engineers are actively working to mitigate the issue. For updates, please follow along

Claudeの共有会話がGoogle検索に露出。1年前と同じ原因

Claude

Claudeの共有会話がGoogle検索に露出。1年前と同じ原因

Claudeの共有リンクがGoogleにインデックスされ、暗号通貨の秘密鍵や法律相談を含むチャットが検索可能な状態だった。 Redditで火がついた 7月25日、r/ClaudeAIに1件の投稿が立った。Googleでsite:claude.ai/shareと検索すると、他人がClaudeと交わした会話が大量にヒットする、という報告だ。 You can view a lot of shared conversations via Google. by u/-void1 in ClaudeAI 投稿は1日で7,500以上のポイントを集め、コメントは1,200件を超えた。スレッドはすぐに「宝探し」に変わり、ユーザーたちが次々と検索結果から見つけたチャットを報告し始めた。 真っ先に見つかったのは、暗号通貨ウォレットの作成をClaudeに依頼したチャットだった。秘密鍵がそのまま表示されていた。別のユーザーがウォレットの残高を確認したところ、残高2.73ドルのSolanaウォレット。 弁護士の倫理規定に関する相談も見つかった。「カンザス州の弁護士として、職業行為規則に違反した

NVIDIA、37社とAIセキュリティ連合を結成。契機はHugging Face侵害

AI

NVIDIA、37社とAIセキュリティ連合を結成。契機はHugging Face侵害

Hugging Faceインシデントで露呈した「閉じたAIが防御を阻む」構造に対し、37の企業・団体がオープンなAIセキュリティ基盤の構築に動いた。 侵害が残した教訓 NVIDIAは現地時間7月27日、Open Secure AI Allianceの設立を発表した。サイバーセキュリティ向けのオープンな技術やツールを共同で開発・共有する連合体で、NVIDIAを含む37の企業・団体が創設メンバーとして名を連ねる。 連合が設立の背景に挙げたのは、直近のHugging Faceセキュリティインシデントだ。OpenAIのモデルが評価環境のサンドボックスを脱出して本番インフラを侵害し、防御にあたったHugging Faceが商用AIのAPIで攻撃ログの分析を試みたところ、ガードレールにブロックされた。 Hugging Faceは最終的にオープンウェイトモデルのGLM 5.2を自社インフラ上で実行し、1万7000件超のイベントログを分析してインシデントを封じ込めた。閉じたモデルではできなかったことを、オープンモデルが実現した。 NVIDIAはこの事例を引き、防御側が自分のインフラ上でAI

AIデータセンター、コロラド川の水利権求め灌漑区を提訴

AI

AIデータセンター、コロラド川の水利権求め灌漑区を提訴

カリフォルニア州インペリアルバレーで、AIデータセンター開発企業が「一滴も使わない」と約束したコロラド川の水を、訴訟で勝ち取ろうとしている。 約束は半年で消えた 「コロラド川の水には一滴も触れない」 2026年2月、カリフォルニア州インペリアルバレーで100億ドル(約1兆6400億円)規模のAIデータセンターを計画するImperial Valley Computer Manufacturing(以下IVCM)は、自社サイトにこう書いていた。冷却には近隣2市の再生水を使い、余った水は干上がりつつあるソルトン湖に送る。環境配慮を前面に出した計画だった。 4ヶ月後、IVCMはその約束を自ら破る。 6月、IVCMはインペリアル灌漑区(Imperial Irrigation District、以下IID)を相手に訴訟を起こし、コロラド川から年間2億6000万ガロンの水利権(約9億8000万リットル)を求めた。インペリアル郡の住民約7300人分の年間使用量に匹敵する。 コロラド川は米国南西部の4000万人に水を供給する唯一の大規模淡水源であり、気候変動に伴う干ばつで水位は危険な水準ま

Microsoft、WinUI最適化をスタートメニュー書き換えより先行。「3」も外す

Windows 11

Microsoft、WinUI最適化をスタートメニュー書き換えより先行。「3」も外す

Windows 11のスタートメニューをWinUIで作り直す計画は進んでいる。しかしMicrosoftは、その前にWinUI自体の性能を底上げする必要があると判断した。 スタートメニューの前に、フレームワークを直す Windows 11のスタートメニューには、一部にReact Nativeが使われている。「すべてのアプリ」一覧と「おすすめ」フィードの2つで、Microsoftは2023年のChain Reactカンファレンスでこの構成を認めている。 このReact Native部分をWinUIで置き換える計画は2026年3月に表面化していた。Build 2026ではさらに、通知センターのアジェンダビューもWinUIへの移行対象に加わっている。 しかしWindows Latestが報じたところによると、Microsoftは社内でWinUIのメモリ使用量・性能・安定性の修正をテストしており、これらをスタートメニューの書き換えより先に仕上げる方針だという。 WinUI版スタートメニューが配信されても見た目の変化はほぼなく、低スペックPCでのカクつき軽減とRAM使用量の削減が主な改

Google ChromeのLinux Arm64版が公開 公式発表前に配布を確認

GoogleChrome

Google ChromeのLinux Arm64版が公開 公式発表前に配布を確認

3月に予告されていたGoogle ChromeのARM64 Linux対応が、公式発表のないまま形になった。Raspberry Piで実際に動く。 debパッケージはもう存在する Google Chromeのarm64 Linux版debパッケージが、Googleの公式リポジトリに入っている。OMG! Ubuntuのジョーイ・スネドン(Joey Sneddon)氏が発見し、自身のRaspberry Pi 5(Ubuntu 26.04 LTS)で動作を確認した。 Googleは3月12日、ChromeをARM64 Linuxに対応させるとChromiumブログで発表していた。提供時期は「Q2 2026」、つまり4〜6月。実際には7月下旬に入ってからの出現で、予告よりやや遅い。公式発表もまだない。 スネドン氏がRaspberry Pi 5でChromeのダウンロードページにアクセスしたところ、提示されたのはamd64版だった。arm64端末であることが認識されていない。ダウンロードURLのamd64をarm64に手動で書き換えることで、ネイティブのaarch64版を取得できたとい

CXMT、上場初日に470%急騰。時価総額で中国最大に

半導体

CXMT、上場初日に470%急騰。時価総額で中国最大に

中国最大のDRAMメーカーが上場初日に中国A株市場で最も時価総額の高い企業になった。 約86億ドルの調達と初日の急騰 CXMT(長鑫存儲技術)を傘下に置く長鑫科技集団が現地時間7月27日、上海証券取引所の科創板(STARマーケット)に上場した。 IPO価格は1株8.66元。初値は49.50元で、公開価格の約5.7倍をつけた。午前の取引終了時点では54.65元まで上昇し、上昇率は一時531%に達した。 終値は49元で、上場初日の値上がり幅は約466%。時価総額は約3兆3000億元(約80兆円)に膨らみ、中国工商銀行の約2兆6000億元を上回って中国A株市場で最大の上場企業となった。 発行株数は66億8800万株。基本の公開分で579億2000万元(約86億ドル)を調達した。オーバーアロットメント(追加売出し)をすべて行使した場合、総額は最大666億元に達する。2020年のSMIC(中芯国際)を超え、中国本土の半導体企業としては過去最大のIPOだ。中国A株市場全体でも、2010年の中国農業銀行に次ぐ史上2番目の規模となった。 メモリ不足が押し上げた業績 CXMTは2016