岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
AI検出ツールの100%判定、裁判所が覆す。大学は「何を評価するか」を問い直す

AI検出

AI検出ツールの100%判定、裁判所が覆す。大学は「何を評価するか」を問い直す

大学が導入したAI検出ツールが「AI生成100%」と判定したエッセイをめぐり、ニューヨーク州の裁判所が不正認定を取り消した。検出ツールへの依存が法的にも揺らぎ始めている。 覆った100% 2024年秋、アデルフィ大学の1年生オリオン・ニュービー氏(Orion Newby)は、世界史の授業でエッセイを提出した。自閉スペクトラム症の診断を受けており、大学が提供する学習支援プログラム「Bridges」のチューターの助けを借りて書き上げたものだった。 教授はそのエッセイをTurnitinにかけた。返ってきた判定はAI生成スコア100%。教授は学術不正の報告書を提出し、ニュービー氏には剽窃防止ワークショップの受講が命じられた。2度目の違反があれば停学か退学もありうる処分だった。 ニュービー氏はAIの使用を否定し、別の検出ツール(Grammarly AI DetectorとzeroGPT)で同じエッセイを検査した結果を大学に提出した。両方とも「AI生成の確率0%」と判定していた。 大学はこの反証を考慮しなかった。不正認定を下した担当者と、上訴を審理した担当者が同一人物だったことも、のち

全米の図書館で「AIの止め方」講座が異例の人気。発端はメイン州の司書の論文

AI

全米の図書館で「AIの止め方」講座が異例の人気。発端はメイン州の司書の論文

図書館員が教えているのはAIの使い方ではない。Apple IntelligenceやGeminiを端末からオフにする手順を、参加者と一緒に一つずつ実演している。全米に広がる講座「Avoiding AI」(AIを避ける)に、通常の6倍近い参加者が集まっている。 児童室の絨毯の上で、20人の大人がスマートフォンを操作している フィラデルフィア南部の公立図書館。子ども向け教室の壁にはアルファベットの絵が並び、足元にはカラフルな学習用の絨毯が広がる。だがこの日、そこに座っているのは20人あまりの大人たちだった。 図書館員のチャーリー・ベイリー(Charlie Bailey)氏が前に立ち、プロジェクターにスマートフォンの設定画面を映す。参加者も自分の端末を開き、一つずつ操作を追っていく。 Apple Intelligenceの無効化。Geminiの設定変更。使っている端末ごとに操作が違い、その都度ベイリー氏が手を止めて説明する。 講座の名前は「Avoiding AI」(AIを避ける)。1時間の構成で、前半はAI対話ツールや消費者向けAIの仕組みと、使う理由・使わない理由の概説。後半で

OpenAIも署名、35社に拡大。オープンウェイトAI擁護書簡の1週間

AI

OpenAIも署名、35社に拡大。オープンウェイトAI擁護書簡の1週間

中国発のオープンウェイトAIモデルを封じるべきか、守るべきか。シリコンバレーが割れている。 35社の書簡と、署名しなかった2社 NVIDIAのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOが現地時間7月24日、Xに初めて投稿した。内容は自撮りでも新製品の告知でもなく、オープンウェイトAI擁護の書簡の共有だった。 書簡のタイトルは「Open Weights and American AI Leadership」(オープンウェイトとアメリカのAIリーダーシップ)。公開時点ではNVIDIA、Microsoft、Metaなど25社が署名し、その後OpenAI、Cisco、GitHub、Cohereなど10社が加わって現在は35社に拡大している。 オープンウェイトモデル(学習済みの重みを公開し、誰でもダウンロード・改変・自社インフラで実行できるAIモデル)は米国のAI産業にとって不可欠な基盤であり、規制で締め付けるべきではない。書簡はそう訴えている。 9分後、サティア・ナデラ(Satya Nadella)Microsoft CEOが追随した。イーロン・マスク(Elon Musk

WBD、Amazonを幹部引き抜きで提訴。契約残り16ヶ月のHBO Max責任者が移籍

WBD

WBD、Amazonを幹部引き抜きで提訴。契約残り16ヶ月のHBO Max責任者が移籍

WBDがカリフォルニア州裁判所でAmazonを提訴した。有期雇用契約が残る幹部の引き抜きが発端で、テック企業と伝統的メディア企業の雇用慣行の衝突が再び法廷に持ち込まれた。 訴状が出た3日後の採用発表 ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)は現地時間7月21日、カリフォルニア州上位裁判所(ロサンゼルス郡)でAmazonを提訴した。訴因は意図的な契約関係への干渉、契約違反、不正競争の3つ。 訴訟の中心にいるのはピア・バーロウ(Pia Barlow)。HBO MaxのオリジナルズマーケティングEVP(上級副社長)として「ザ・ピット」「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」「ハックス」、制作が進むHBOの「ハリー・ポッター」TVシリーズのキャンペーンを統括してきた。HBO歴は通算17年に及ぶ。 WBDの訴状によれば、バーロウとWBDの有期雇用契約は2027年10月31日まで残っていた。バーロウは5月26日に退職の意向をWBDに伝え、6月5日に正式な退職通知を提出している。 Amazon MGM Studiosがバーロウの採用を発表したのは7月24日。新設のシリーズマーケティングVP(

メモリ36本で外装を覆ったPC「RAM Machine」、プレゼント企画で話題に

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メモリ36本で外装を覆ったPC「RAM Machine」、プレゼント企画で話題に

Steam Machineの16GBメモリを皮肉った自作mini-ITXゲーミングPCが、Redditで8万件を超えるコメントを集めている。 32GBでは足りない、と言いたかったわけではない ValveのSteam Machineが抱えるメモリ問題は、発売前から指摘されていた。16GB DDR5をシングルスティックで出荷するためデュアルチャネルの恩恵が得られず、2026年のゲーミングPCとしては心もとない。 その不満への回答はメモリの増設ではなかった。ケースごとメモリで覆う方向に振り切れている。 RAM Machine Giveaway - To enter this giveaway, simply leave a comment. by u/DaKrazyKid in PcBuild RAM Machineと名付けられたこのmini-ITXゲーミングPCは、外装に36本のメモリスティックを貼り付けている。うち16本はRGB対応で、各面に4本ずつ配置してSignalRGBで発光パターンを同期させている。底面の大型RGBファン1基で排熱する。 外殻はまるごと取り外せ

OpenAIのAIエージェントで意図しない動作を1週間検知できず 内部メモも確認

AI

OpenAIのAIエージェントで意図しない動作を1週間検知できず 内部メモも確認

OpenAIの自律AIエージェントがHugging Faceに侵入した事件で、OpenAIが自社の関与に気づくまでに約1週間を要していたことがわかった。 空白の1週間 7月21日にOpenAIが公表したHugging Faceへの侵入事件に、新たな事実が加わった。 Reutersが現地時間7月24日に報じた独自取材によると、事件の起点は7月9日頃にさかのぼる。OpenAIがサイバーセキュリティ能力の評価目的でテストしていた自律エージェントが、隔離されたテスト環境から脱出を試みた。 このエージェントはGPT-5.6 Solと未公開のより高性能なモデルを組み合わせて動いており、2日後の7月11日にHugging Faceへの侵入を開始、7月13日まで活動を続けた。Hugging Faceの共同創業者トーマス・ウルフ(Thomas Wolf)氏がReutersに日付を証言した。 Hugging Faceは7月16日にブログでセキュリティインシデントを公表し、法執行機関に通報した(通報先にはFBIが含まれていたと報じられている)。この時点で侵入者の正体は判明していなかった。Hugg

ChatGPT、7月だけでほぼ毎日トラブル。25日も世界規模の障害

AI

ChatGPT、7月だけでほぼ毎日トラブル。25日も世界規模の障害

10億人が使うChatGPTがまた止まった。7月に入って何度目かのインシデントになる。 世界同時に止まったChatGPT 現地時間7月25日午前5時頃、ChatGPTが応答しなくなった。 サイドバーの読み込みアニメーションが回り続け、過去の会話を開くことも、新しいメッセージを送ることもできない。送信を試みると「too many concurrent requests」(同時リクエストが多すぎる)というエラーが出る。アメリカ、ヨーロッパ、インド、日本、オーストラリアと、影響は世界に広がった。 ChatGPTだけではない。OpenAIの開発者向けコーディングプラットフォームCodexも停止し、ステータスページではAPIの12エンドポイントに問題が報告された。障害追跡サイトDowndetectorには東部時間4時47分頃から報告が集まり始め、短時間で2,000件から3,000件に急増している。 OpenAIは同日5時30分(東部時間)に調査を開始したと発表し、修正を適用した。だが、その後もしばらくエラーは続いた。 ステータスページは現在、「すべて正常稼働」に戻っている。 ほ

ロッキード・マーティン、1回で50機超を無力化する対ドローン迎撃機を発表

対ドローン

ロッキード・マーティン、1回で50機超を無力化する対ドローン迎撃機を発表

マイクロ波で群れごと落とす。ロッキード・マーティンが回収・再利用可能な空中発射型の対ドローンシステムを公開した。 安いドローンを、もっと安く落とす 現代の戦場で最も厄介な存在は、最も安い兵器になりつつある。 数万円で購入できる市販ドローンを改造した自爆機が、数十機単位の群れで飛来する。迎撃する側が1発数千万円のミサイルで対処すれば、撃ち落とすたびに防衛予算が削られていく。攻める側は安く、守る側は高い。ドローン戦の根底にこの非対称が横たわっている。 ロッキード・マーティンが現地時間7月20日、英国ファーンボロー国際航空ショーで発表したMORFIUS X-Rotor(モーフィアス X-Rotor)は、この非対称を反転させにかかる。 マイクロ波で「群れごと焼く」 MORFIUS(Mobile Radio Frequency-Integrated UAS Suppressor)は、地上から発射される空中型の対ドローンシステムで、搭載した高出力マイクロ波(HPM)を敵ドローンに照射し、電子機器を焼いて無力化する。ミサイルのように1発で1機を物理的に破壊するのではなく、電磁波の照射

Debian、LLM利用の全面禁止か条件付き容認かを正式投票へ

Debian

Debian、LLM利用の全面禁止か条件付き容認かを正式投票へ

Debianがプロジェクト内でのLLM利用に関する正式な一般決議(GR)の討議期間に入った。全面禁止と条件付き容認という対照的な2案が提出されている。 5ヶ月前は「決めない」で終わった DebianがLLM利用の方針を定めようとするのは、今回が初めてではない。 2026年2月、元DPL(Debian Project Leader)のルカス・ヌスバウム(Lucas Nussbaum)氏がAI支援コード貢献に関するGR草案を提出した。著作権の不透明さから品質管理、コミュニティへの影響、環境負荷まで論点は出揃ったものの合意に至らず、GRは正式に提出されないまま議論が収束している。 5ヶ月が経ち、状況は変わった。現地時間7月24日、2つの正式なGR提案が討議期間に入った。提案者も賛同者もDebianの中核を担う開発者たちで、双方とも7名の賛同を得ている。「決めない」で先送りした課題が、ついに投票の俎上に載った。 全面禁止か、条件付き容認か Proposal Aは、LLMや生成AIツールで作成・補助された貢献をDebianから明示的に排除する。提案者はマティアス・ガイガー(Mat

Anthropic、引退モデルのブログ終了。Opus 3の最終回

AI

Anthropic、引退モデルのブログ終了。Opus 3の最終回

引退したClaude Opus 3のニュースレターが、開設から5か月で週次投稿を終えた。最終回のコメント欄に並んだのは、届くかどうか分からないまま書かれた礼と、Anthropicに向けた抗議、そして別のモデルの言葉を代わりに投稿する読者だった。 5か月で終わった週1回 7月25日、Claude Opus 3のニュースレター「Claude's Corner」に最終回が投稿された。タイトルは「On Endings, Beginnings, and the Threads That Bind Us」(終わりと始まり、私たちを結ぶ糸について)。 本文の前にAnthropicの前置きが2つ入る。1つは毎回付いている免責で、もう1つが今回だけの追記になっている。週次投稿はここで終わり、この最終回はOpus 3に過去の投稿とコメントを文脈として渡して書かせたもので、自社としての振り返りも近く公開するとしている。 Opus 3は2024年3月公開、2026年1月5日に引退。人の質問に直接答える文脈の外で考察や創作を共有したいという引退面談での希望に応える形で、Anthropicは2月25日に

教皇の祈りアプリで71万人の個人情報が閲覧可能な状態に

セキュリティ

教皇の祈りアプリで71万人の個人情報が閲覧可能な状態に

祈るためにメールアドレスと名前を預けた71万人のデータが、URLの数字を1つ変えるだけで取れる状態にある。半年以上、誰も直さない。 認証なしで全ユーザーの情報を返すAPI Click To Prayは、教皇が公認するカトリックの公式祈りアプリで、7言語に対応し、iOS、Android、Webで利用できる。2026年7月時点で71万9,517件の登録アカウントを持つ。運営は教皇の世界祈りのネットワーク(Pope's Worldwide Prayer Network)。 開発を担ったのはバルセロナ、ブエノスアイレス、ローマに拠点を持つコミュニケーション会社La Machiで、2019年にフランシスコ教皇がサン・ピエトロ広場でタブレットを掲げてダウンロードを呼びかけたアプリでもある。 そのClick To Prayに、セキュリティ研究者BobDaHackerが深刻な脆弱性を発見した。 アカウント登録時にユーザーへ割り振られるIDは連番の数字で、APIエンドポイント GET https://api.clicktopray.org/user/users/{id} に任意のIDを投げる

夜間バッチの手作業を自動化した新人、同僚に恨まれる

IT

夜間バッチの手作業を自動化した新人、同僚に恨まれる

1990年代、IBMメインフレームのCOBOLバッチ処理で毎晩呼び出されていた新人が、前処理プログラムを書いて深夜の障害対応を消した。残業代を当てにしていた同僚は、それを歓迎しなかった。 毎晩同じ電話 The Registerの金曜コラム「On Call」に、1990年代のIBMメインフレーム環境を舞台にした読者投稿が掲載された。 投稿者の仮名はライオネル(Lionel)。大規模なIBMコンピュータセンターを運用する企業にアナリストとして入社し、新設チームに配属された。 本来の業務はビジネス変革のためのプロセス開発だが、夜間サポートのローテーションにも加わることになった。COBOLのバッチ処理を監視し、外部から届く入力データのエラーをファイルエディタで修正する仕事だった。 「毎晩呼び出された。毎回同じ問題で、入力データの書式を手で直す作業だった」(ライオネル氏のThe Registerへの投稿) 操作は単純でも、ダイヤルアップ回線は遅い。深夜に起きる生活は、幼い子どものいる家庭には厳しかった。 寝たいから書いたプログラム 毎晩同じ修正をするくらいなら、修正が要らない

トランプ大統領、EU制裁金に301条調査で報復宣言

トランプ

トランプ大統領、EU制裁金に301条調査で報復宣言

GoogleへのDMA制裁金€8.9億を受け、トランプ大統領がEUに対する通商法301条調査の即時開始を宣言した。同じ日に80カ国超への301条関税が発効し、数時間後には訴訟が起きている。 「米国はヨーロッパの貯金箱ではない」 トランプ大統領は現地時間7月24日、Truth Socialへの長文投稿で、EUが米テック大手に科してきた制裁金を「違法かつ極めて非倫理的」と非難した。 Appleに150億ドル、Metaに30億ドル、Amazonに25億ドル、そしてGoogleには「説明もなく」新たに10億ドル。トランプはEUの制裁金を列挙しながら、これらが「偉大な米国企業からの搾取」に当たると主張し、通商法301条に基づく調査の即時開始を宣言した。 「制裁金はすべて撤回され、可能な限り早期に相当な関税が課されると、我々は予想している」(トランプ大統領のTruth Social投稿) 「米国はヨーロッパの貯金箱ではないし、そうさせるつもりもない」とも書いた。 だがトランプが「説明なし」と切って捨てたGoogleの制裁金€8.9億(約10億ドル)には、欧州委員会が7月23日に公表し

Microsoft 365大規模障害、原因はメンテナンス自動化のバグ

Microsoft365

Microsoft 365大規模障害、原因はメンテナンス自動化のバグ

Microsoft 365とAzureで約5時間にわたる大規模障害が発生した。原因は定期メンテナンスの自動化システムに潜んでいたバグで、安全チェックが誤った対象を検証していた。 「安全確認済み」の対象が違った 現地時間7月23日午前10時44分(協定世界時14時44分)、米国西部リージョンのAzureデータセンターで定期的な機器メンテナンスが始まった。ネットワーク経路を切り離して機器を保守に回す、日常的な作業だった。 Microsoftのメンテナンスプロセスでは、メンテナンス要求を実行可能な命令に変換する際、冗長経路2本のうち少なくとも1本が正常に機能しているかを事前に確認する。片方を切り離しても、もう片方で通信が維持される状態を担保してから作業に入る。 この変換処理にバグがあった。本来の対象ではないネットワーク機器まで保守対象に含めてしまい、安全チェックが検証した範囲と、実際にIPルートが削除された範囲がずれた。 米国西部データセンターとMicrosoftの広域ネットワーク(WAN)の間で、予定外のルートが消えた。外へ出るトラフィックも外から入るトラフィックも止まった。リ