岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
NVIDIA、Jetson Thor T3000/T2000を発表 ロボットの量産時代を70Wで切り開く

AI

NVIDIA、Jetson Thor T3000/T2000を発表 ロボットの量産時代を70Wで切り開く

NVIDIAがJetson Thorの下位モデル2機種を投入した。フラッグシップと同等の推論性能を半分の電力に収めたT3000と、40Wのエントリー機T2000で、ロボティクスのコスト障壁を崩しにかかる。 865 TFLOPSを70Wに収める NVIDIAは現地時間7月15日、Jetson Thorシリーズの新モジュールT3000とT2000を発表した。ジェンスン フアン(Jensen Huang)CEOが日本を訪問中で、フィジカルAI関連の発表が相次いでいる。 Jetson Thor T3000は、フラッグシップであるT5000の性能をおよそ半分のサイズと電力で実現するモジュールだ。FP4演算性能は865 TFLOPS。NVIDIA Blackwell GPUに8コアのArm Neoverse CPUを組み合わせ、32GBのLPDDR5Xメモリ(帯域273GB/s)と25GbE接続を備える。消費電力は70W。 NVIDIAの公称では、LLMやVLM、ワールド基盤モデルといったマルチモーダル推論において、T3000はT5000とほぼ同等の推論性能を発揮する。T5000は128

中国、AIコンパニオン規制を施行。3億人超の会話が消える

AI

中国、AIコンパニオン規制を施行。3億人超の会話が消える

中国で擬人化AIへの国家規制が始まった。コンパニオン機能を全面停止した企業と、AIとの別れを惜しむユーザーが残された。 施行日に起きたこと 7月15日、中国で「人工智能拟人化互动服务管理暂行办法」(AI擬人化インタラクションサービス管理暫定弁法)が施行された。AIが人の性格や思考パターンを模倣し、継続的に感情のやり取りをするサービスを対象とした、世界初の国家規制だ。 その瞬間に何が起きたか。バイトダンスの「豆包」(Doubao)は、ユーザーが自由に作れていたAIエージェント機能を停止した。アリババの「千問」(Qwen)は5日早い7月10日から段階的に停止し、15日に完全終了。テンセントの「元宝」(Yuanbao)はさらに早く、6月30日にカスタムAIエージェントへの入り口を削除していた。NetEaseのAI感情サポートアプリ「妙時」(Miaoshi)は14日をもって全サービスを終了した。 中国のIT大手4社が、ほぼ同時にコンパニオン機能を切った。 3億人が失うもの 規模が尋常ではない。QuestMobileの調査によれば、豆包の月間アクティブユーザー(MAU)は2026

Microsoft、DellのIntel搭載PCへ7月更新の配信を停止

Windows

Microsoft、DellのIntel搭載PCへ7月更新の配信を停止

過去最大のセキュリティ更新が、一部のDell製PCでシャットダウンや過熱を引き起こした。Microsoftが配信を差し止めている。 USB-Cの新機能がIntelドライバーと衝突した Microsoftは現地時間7月14日、Windows 11向け累積更新プログラムKB5101650をリリースした。対処した脆弱性は570件。前月の206件を大きく上回り、Patch Tuesday史上最大の規模になった。 配信の翌日、Microsoftは同更新プログラムの一部をDell製PCに対して差し止めた。Intelプロセッサーを搭載した一部のDellデバイスで、予期しないシャットダウン、性能低下、発熱の増大、バッテリー消費の加速が起きるためだ。 KB5101650配信停止までの経緯 6月23日プレビュー更新KB5095093を配信USB-C接続マネージャーに新インターフェースを追加テスト期間Dellが不具合を検知内部テストでIntelドライバーとの競合を発見、Microsoftに報告7月14日KB5101650リリース(月例更新)脆弱性570件を修正。悪用済みゼロデイ2件を含

NTSB予備報告、テキサス住宅衝突事故でアクセル全開を確認

Tesla

NTSB予備報告、テキサス住宅衝突事故でアクセル全開を確認

Tesla Model 3がテキサス州の住宅に突入し76歳女性が命を落とした事故で、米国家運輸安全委員会が予備報告を公開した。 時速113キロで住宅街を走る車 2026年6月19日午後8時3分、テキサス州ケイティ。制限速度48km/hの住宅街を走っていた2025年型Tesla Model 3が、交差点を曲がらずに直進し、住宅に突入した。 家の中にいたマーサ・アビラ(Martha Avila)氏、76歳が命を落とした。運転者のマイケル・バトラー(Michael Butler)氏、44歳は軽傷で済んでいる。 7月15日、米国家運輸安全委員会(NTSB)がこの事故の予備報告を公開した。車両から回収された電子データは、衝突時の速度が時速70マイル(約113km/h)を超えていたことを示している。制限速度の2倍以上だ。 アクセル100%、ブレーキなし NTSBの報告によると、バトラー氏はTeslaの運転支援システムFSD(Supervised)を使用していた。衝突前にアクセルペダルを100%まで踏み込み、FSDを手動でオーバーライドしている。 裁判記録はさらに詳しい。アクセルが

Suno、YouTube等から200万曲超を収集(ハッキングで判明)

AI

Suno、YouTube等から200万曲超を収集(ハッキングで判明)

AI音楽生成サービスSunoのソースコードが外部に流出し、訓練データの取得先と規模が明らかになった。 流出コードに記録されていた取得先 AI音楽生成サービスSunoが2025年11月にハッキングされ、ソースコードと顧客情報が流出した。攻撃者から内部資料の提供を受けた404 Mediaが報じ、Sunoがどこから、どれだけの音声データを集めていたかが具体的に判明した。 流出したソースコードは2023年から2024年にかけて作成されたもので、スクレイピング(自動収集)の処理と対象が記されていた。コード内のコメントには、取得先としてyoutube_music、deezer、genius_hq、freesound、jamendo、pond5_musicなどが列挙されている。 ファイルに記録されていた規模は膨大だ。YouTube Musicからの取得は201万3545クリップ、11万3879時間。Pond5(Shutterstock傘下のストック音楽ライブラリ)から6万2117時間、IMSLP(国際楽譜ライブラリー)から1万9514時間、Geniusから1万7615時間。 Deezer

Thinking Machines、初のモデルInklingを公開

AI

Thinking Machines、初のモデルInklingを公開

OpenAI元CTOミラ・ムラティのAIスタートアップが、設立から約1年半で初の自社モデルを世に出した。最強は名乗らない。狙いはカスタマイズの素材だ。 9750億パラメータ、ただし「最強ではない」 Thinking Machines Labは現地時間7月15日、初の自社開発AIモデルInklingを公開した。オープンウェイトで、誰でもダウンロードして改変できる。 総パラメータ数は9750億。Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャにより、1つのタスクで実際に動くのは約410億パラメータに限られる。テキスト、画像、音声、動画の45兆トークンで事前学習され、推論時はテキスト・画像・音声を受け付ける。出力はテキストのみ。コンテキストウィンドウは最大100万トークン。 公式資料にはこう記されている。Inklingは「現時点でクローズド・オープンを問わず、最強のモデルではない」。自社モデルの発表でここまで率直に書く企業は珍しい。 特定の領域で突出するのではなく、推論、コーディング、マルチモーダル、指示追従、安全性にわたって安定したスコアを出す設計だ。コーディングベ

CXMT製DDR5、ASUSテストで判明した4つの弱点とIPO直前の現実

CXMT

CXMT製DDR5、ASUSテストで判明した4つの弱点とIPO直前の現実

DRAM不足の中で急拡大するCXMTのDDR5に、マザーボードメーカー自身が品質面の課題を報告した。上場まで12日。量と質のギャップが数字で見え始めている。 8600 MT/sは回ったが、中身が違う ASUSがCXMT製DDR5ダイのオーバークロック特性を検証した結果を、オーバークロッカーのSafedisk氏がまとめ、UNIKO's Hardwareが7月15日に共有した。SK Hynix製ダイとの差が明確に出ている。 kingbank 2x24 6000c36 1.25 kit (cxmt 3gb dies) on asus c10a manual oc to 8600c44 mt 100% key characteristics of cxmt dies - dont scale with voltage - cant tighten timings - silicon variance appears to

Intel、次世代EUV露光装置で量産出荷した業界初の企業に

半導体

Intel、次世代EUV露光装置で量産出荷した業界初の企業に

ASMLのHigh NA EUV露光装置が、研究開発の段階を超えた。 1台約4億ドルの装置が量産ラインに入った ASMLは現地時間7月15日、Intel FoundryがIntel 18Aプロセスの一部レイヤーにHigh NA EUV(高開口数EUV)リソグラフィを適用し、Core Ultra Series 3(Panther Lake)プロセッサの量産出荷を開始したと発表した。 High NA EUVで製造したロジック半導体を量産出荷するのは、業界で初めてとなる。 High NA EUVは、従来のEUVスキャナー(NXEシリーズ)の開口数0.33を0.55に引き上げた次世代リソグラフィ技術で、1回の露光でより微細なパターンを描ける。解像度は約67%向上し、複雑なマルチパターニング工程を削減できる可能性がある。 代わりに、コストは跳ね上がる。装置1台の価格は3億8000万~4億ドルと従来型の約2倍で、1回の露光コストも約2.5倍とされる。 従来EUV(NXE)vs High NA EUV(EXE) 従来EUV

Windows 11の500GBバグ、7月更新で修正も手動確認が必要

Windows

Windows 11の500GBバグ、7月更新で修正も手動確認が必要

7月14日配信のKB5101650にストレージ修正が含まれた。だがファイルは自動で縮まない。 修正は届いた。ストレージは戻らない 7月のPatch Tuesday更新プログラムKB5101650に、Capability Access Manager(機能アクセス マネージャー)のデータベースファイルが際限なく肥大化するバグの修正が含まれた。Windows 11 25H2はビルド26200.8875、24H2はビルド26100.8875に更新される。 修正自体は、6月23日のプレビュー更新KB5095093で先行配信されていた。Microsoftがリリースノートにストレージ修正の記載を追加したのは6月29日で、配信開始から6日後のことだ。 KB5101650はプレビューの非セキュリティ変更をすべて引き継いでいる。今回は段階的な配信ではなく全台同時配信のため、更新を実行すれば修正が適用される。 この修正は、これ以上の肥大化を止める処理だ。既に膨れ上がったファイルを自動で縮小する処理ではない。 Microsoftのリリースノートにある表現は「CapabilityAccessMa

OpenAI初のデバイスは「動く」スピーカー、Apple訴訟の渦中で浮上

AI

OpenAI初のデバイスは「動く」スピーカー、Apple訴訟の渦中で浮上

画面のないスマートスピーカーが、OpenAI初のハードウェア製品になるという。自ら動き、持ち主を学び、家に住む「AIコンパニオン」として設計されている。 画面を捨て、人格を載せる OpenAIが開発中の最初のハードウェアデバイスは、画面を持たないスマートスピーカーだとBloombergが報じた。現地時間7月14日付の報道で、事情を知る関係者の話として伝えている。 ChatGPTと連携し、スマートホーム機器の操作、メディアの再生、メッセージへの応答といった機能を備える。ここまでなら、AmazonのEchoやGoogleのNestと変わらない。 従来のスマートスピーカーと異なるのは、このデバイスが「自ら動く機械的要素」を備えている点だ。具体的にどう動くのかは明かされていないが、社内では「家に住む、人のようなAIコンパニオン」として位置づけられており、ChatGPTを物理的な形にすることを目指しているとされる。 持ち主の生活に能動的に関わる設計で、メールなどのデジタル情報にアクセスし、時間をかけて持ち主を学習することで、よりパーソナライズされた応答を返す。ウェイクワード(起動の合

NVIDIAフアンCEO、セガとの30周年を祝いに秋葉原へ

NVIDIA

NVIDIAフアンCEO、セガとの30周年を祝いに秋葉原へ

「ジャパン・パッシング」と呼ばれた素通りから約1カ月。ジェンスン・フアンが東京に現れた。目的は回顧だけではない。 セガが救った会社の、30年後 7月15日、秋葉原のゲームセンターGiGO 3号館に、時価総額で世界最大の企業を率いる男が立っていた。 NVIDIAのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOが来日し、セガとの提携30周年を記念する招待制イベントに登壇した。セガの里見治紀CEO、内海州史社長、バーチャファイターの生みの親である鈴木裕氏、元社長の入交昭一郎氏も顔を揃えている。 NVIDIAとセガの関係は1995年にさかのぼる。NVIDIAの最初のチップNV1は、セガと組んでPCにバーチャファイターを持ち込んだ。しかしNV1は商業的に失敗し、次世代チップNV2の開発も頓挫する。NVIDIAは倒産寸前に追い込まれた。 そのとき、当時のセガ経営陣が契約金の全額(500万ドルとも700万ドルとも伝えられている)をNVIDIAに支払った。開発が破綻した相手への支払い義務はない。にもかかわらずセガは支払い、NVIDIAは生き延びた。その資金でフアンは方向転換し、199

トーバルズ氏「Linuxは反AIプロジェクトではない」と明言

Linux

トーバルズ氏「Linuxは反AIプロジェクトではない」と明言

Linuxカーネルの創始者が、AI/LLM利用に反対する一部開発者に対し、最上位メンテナーとして譲らない姿勢を示した。 発端はSashikoとPatchworkの連携スレッド リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏が現地時間7月14日、linux-mediaメーリングリストに投稿した。きっかけは、AIコードレビューシステムSashikoとカーネルのパッチ管理ツールPatchworkの連携を議論するスレッドだった。 スレッドを立ち上げたのは、メディアサブシステムのメンテナーであるマウロ・カルバリョ・チェハブ(Mauro Carvalho Chehab)氏だ。5月末に始まり、Sashikoの開発者ロマン・グシュチン(Roman Gushchin)氏を含む複数の開発者が参加していた。 議論の途中で、あるコメントがLLMに対する全面的な反対を表明していると指摘された。グシュチン氏が「LLMを使わないこと自体が目的であれば議論しよう」と呼びかけたところに、トーバルズ氏が返信した。 「トップレベルメンテナーとして踏み込む」 トーバルズ氏のメールで際立つのは、発言のト

Microsoftアカウント侵害で25年分のデータ喪失、復旧拒否

セキュリティ

Microsoftアカウント侵害で25年分のデータ喪失、復旧拒否

Microsoftアカウントを乗っ取られたストリーマーが、25年分のデータとOneDriveのファイルを永久に失った。Microsoftは正当な所有者だと認めたうえで、復旧を拒否している。 「あなたのデータには、もうアクセスできません」 オランダ在住のTwitchストリーマー、ジョシュア・ケイン(Joshua Khane)氏のMicrosoftアカウントが第三者に乗っ取られた。攻撃者はアカウントのセキュリティ情報を書き換え、ケイン氏を締め出した。 Microsoftの対応は、復旧ではなく永久凍結だった。ケイン氏が7月14日の投稿で公開したMicrosoftサポートのメールには、セキュリティ情報が変更されたアカウントについて社内プロトコルにより復旧は行えないと記されている。 凍結されたアカウントに紐づいていたのは、25年分の蓄積だ。OneDriveに保存された息子の赤ちゃんの写真。数千ユーロ分のゲーム。Minecraftのライセンス。メールには、Minecraftは新しいアカウントで買い直すよう推奨する文言が添えられていた。 OneDriveのファイルについても、暗号化とプラ

FreeBSD、ベースシステムからGPLコードを完全除去

FreeBSD

FreeBSD、ベースシステムからGPLコードを完全除去

FreeBSDのソースツリーからGPLライセンスのコードが全て消えた。10年以上にわたる置き換え作業が完了した。 gnu/ディレクトリの削除 FreeBSD開発者のダグ=エーリング・スモルグラフ氏(Dag-Erling Smørgrav)が7月7日、gnu/ディレクトリを丸ごと削除した。20ファイルの変更で、追加はわずか11行。905行が消えた。 コミットメッセージにはこう書かれている。 Retire the GNU subtree (GNUサブツリーを退役させる) With GNU diff and cdialog gone, this is now an empty shell. (GNU diffとcdialogがなくなり、これは空の殻になった) 削除されたのはGPLおよびLGPLのライセンスファイル(COPYING、COPYING.LIB)、ビルド用のMakefile群、テスト用ディレクトリ構造だ。gnu/配下に実行可能なコードはもう何も残っていなかった。 このコミットのレビューは2月21日に提出され、markj氏が6月30日に承認した。 最後に残っていたも