岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
スマートフォン連携のメモリリーク、最大56GBの報告が3年放置

Windows

スマートフォン連携のメモリリーク、最大56GBの報告が3年放置

PCとスマートフォンをつなぐPhone Linkのバックグラウンドプロセスが、数十GBのメモリを消費し続ける報告が3年にわたって積み上がっている。Microsoftは公式に認めていない。 ゲーム中に25GB、翌朝56GB Windows 11には「スマートフォン連携」(Phone Link)というアプリが標準で入っている。PCとスマートフォンを接続し、通知の確認や通話、写真の閲覧をPC上で行える。 バックグラウンドではMicrosoft Cross Device Serviceというプロセスが常駐して同期処理を担う。このプロセスのメモリ消費が異常に膨らむ不具合が、繰り返し報告されている。 直近では、r/Windows11に投稿されたスレッドが注目を集めた。投稿者はゲーム中にPCが急激に遅くなり、タスクマネージャーを開こうとしたが、表示まで3分かかった。 Why you should not use Smartphone Link by u/CoolerC94 in Windows11 ようやく開いた画面で、Cross Device Serviceが25〜30GBのR

ChatGPTの新Macアプリ「スーパー」を検証 機能構成と課題を整理

AI

ChatGPTの新Macアプリ「スーパー」を検証 機能構成と課題を整理

ChatGPTとCodex、Atlasを一つにまとめた「スーパーアプリ」が7月9日にリリースされた。だが蓋を開けてみれば、UIの混乱がひどく、旧アプリのシンプルさは跡形もない。 ネイティブからElectronへ OpenAIは7月9日(米国時間)、新しいChatGPTデスクトップアプリをMac・Windows向けに公開した。ChatGPT、コーディングエージェントのCodex、廃止が決まったAIブラウザAtlasを一つに束ねる「スーパーアプリ」構想が、3月の報道から4か月で形になった。 問題は、その統合がどう実装されたかにある。 旧ChatGPT Macアプリは159MBのネイティブアプリだった。macOSのフレームワークで組まれ、動作は軽快で、Option+Spaceのショートカットで呼び出すミニオーバーレイも快適に使えた。 新アプリは1.5GBのElectronバンドルだ。Apple界隈で影響力を持つブロガー、ジョン・グルーバー(John Gruber)氏は発表当日に旧版159MBとの対比を示し、容量が約10倍に膨れたことに苦言を呈した。 ElectronはWeb技術

RTX 5090 SE、リーク直後に技術的矛盾を指摘される

GPU

RTX 5090 SE、リーク直後に技術的矛盾を指摘される

RTX 5080とRTX 5090の間を埋める新GPUの情報が出回り、当日中に複数メディアが信憑性に疑問を投げかけた。 384bitバスに32GBは載るのか NVIDIAがGeForce RTX 5090 SEを準備しているというGameGPUの報道が7月9日に出た。RTX 5080とRTX 5090の価格・性能の隙間を狙う製品だとしている。 GPUはRTX 5090と同じGB202ダイで、192基あるSM(ストリーミングマルチプロセッサ)のうち110基を有効化。CUDAコア1万4080基、RTコア110基、Tensorコア440基。メモリは32GB GDDR7で384bitバス接続、TGPは約500W。 想定MSRP(希望小売価格)は1,500ドル。キャンセルされたとされるRTX 5080 Tiの代替製品で、RTX 5090Dのような輸出規制対応モデルではなくグローバル展開のゲーミング製品だという。 報道当日、OC3Dが矛盾を突いた。384bitバスで32GBという構成は成立しない、と。 GDDR7のメモリ構成には物理的な制約がある。384bitバスは12枚のメモリチッ

ラピダス、2nmウエハーを1枚300万円台でTSMCに挑む

半導体

ラピダス、2nmウエハーを1枚300万円台でTSMCに挑む

ラピダスの小池淳義CEOが、2027年に量産を開始する2nmウエハーの価格をTSMCと同等かそれ以下に設定すると明言した。後発が価格で先行者を切り崩す賭けに出る。 「値段で負けるわけにはいかない」 7月8日、長野県軽井沢町で開かれた日本生産性本部のセミナーで、ラピダスの小池淳義CEOが2nmプロセスの価格戦略を公にした。 ウエハー1枚あたり300万〜350万円。TSMCの2nmプロセス(N2)のウエハー価格は約3万ドル(約490万円)とされており、ラピダスの提示額は3〜4割安い。小池氏は「TSMCが価格を決めてしまう」と認めたうえで、「少なくとも同じか、それよりも少し下がるくらいのところで対応する」と述べた。 この水準は、Samsungが2nm(SF2)プロセスで設定した約2万ドル(約320万円)とほぼ同じだ。2nmウエハーの価格帯は、TSMCの約3万ドルが最も高く、Samsungとラピダスが約2万ドルの水準に並ぶ。 価格だけでは説明できない差 数字だけ見れば、ラピダスは安い。だが、ウエハーの価格はチップのコストの一部でしかない。 TSMCのN2はすでに量産が始まって

EUチャットコントロール案が再浮上 加盟国の反対状況と審議経緯

EU

EUチャットコントロール案が再浮上 加盟国の反対状況と審議経緯

3月に一度否決された法案が、夏季休会直前の議場に戻ってきた。反対314、賛成276。反対が上回ったにもかかわらず、手続き上の壁に阻まれて否決が成立しなかった。欧州議会は7月9日、チャットコントロール1.0の復活を事実上認めた。 3月の否決、7月の復活 チャットコントロール1.0は、eプライバシー指令(EU域内の電子通信におけるプライバシーを保護する指令)の一時的な適用除外措置として2021年に導入された。オンラインプラットフォームに対し、CSAM(児童性的虐待コンテンツ)の自主的な検出・報告・削除を法的に許可する。スキャンの実施は義務ではなく任意だ。 この措置は本来、恒久法であるCSAR(児童性的虐待規制、通称チャットコントロール2.0)が成立するまでのつなぎとして設計された。2.0の議論が長引き、1.0は延長を重ねて存続してきたが、2026年3月26日の欧州議会本会議で延長が311対228で否決され、4月3日に失効した。 失効から3か月後の7月7日、欧州人民党(EPP)の主導で状況が動く。通常の立法手続きを経ずに再投票を強行できる「緊急手続き」(Rule 170)が331対

WindowsのGDID、解析で全容判明。完全な無効化は不可能

Windows

WindowsのGDID、解析で全容判明。完全な無効化は不可能

FBIがハッカーの追跡に使ったWindowsの固有識別子GDID。独立した研究者がバイナリを解析し、生成から送信までの全経路を突き止めた。Microsoftアカウントの有無にかかわらず生成され、ユーザーが完全に止める手段はない。 Microsoftが公式に語らなかった中身 Windowsのすべてのインストールに含まれるGDID(Global Device Identifier)の正体が、独立した研究者のリバースエンジニアリングで明らかになった。 きっかけは2026年6月30日に公開された、Scattered Spiderメンバーとされるピーター・ストークス(Peter Stokes)氏に対する連邦訴状だった。GDIDがFBIの追跡に使われたことが法廷文書に記載され、Windowsユーザーの間に波紋が広がった。 Microsoftの公式文書でGDIDに触れているのは、Azure Monitorのリファレンス内にある1行だけだ。配信の最適化テーブルUCDOStatusのカラム定義に「Microsoftが内部で使用する識別子」と記載されているだけで、生成の仕組みも収集対象も説明され

マイクロソフト、一部PCのセキュアブート更新を一時停止。確認方法

Windows

マイクロソフト、一部PCのセキュアブート更新を一時停止。確認方法

6月に期限を迎えたセキュアブート証明書の更新が、一部のWindows PCで自動適用されないまま止まっている。マイクロソフトはファームウェア起因の既知の問題を公式に認め、該当するPCへの配信を一時停止した。 Windowsセキュリティに表示される2つの警告 マイクロソフトが6月29日付で公開したサポートドキュメントは、セキュアブート証明書を受け取れないPCを2つの状態に分類している。 1つ目が「一時停止」だ。Windowsセキュリティアプリの「デバイスセキュリティ」→「セキュアブート」を開くと、該当するPCには「既知の問題の影響を受けている」旨のメッセージが表示される。 マイクロソフトとPCメーカーが共同で原因を調査しており、修正が完了するまで証明書の配信を止めている。 2つ目が「非サポート」だ。ハードウェアやファームウェアの制限により、自動更新の経路自体が使えないPCに表示される。 メーカーのサポートが終了した古い機種や、ファームウェア更新の提供見込みがないPCがここに該当する。 セキュアブート証明書が届かないPCの2つの状態 一時停止非サポート表示既知の

Google、広告のAI使用を閲覧者に開示へ。外部ツールの申告は広告主任せ

Google、広告のAI使用を閲覧者に開示へ。外部ツールの申告は広告主任せ

Googleは2026年7月9日、広告の制作過程で生成AIが使われた場合に、その事実を閲覧者へ開示する仕組みを発表した。Google検索、YouTube、Discoverに表示される広告の三点メニューや情報アイコンから開けるマイアドセンターに、「この広告の作成方法」(How this ad was made)パネルが加わる。 生成AIを使えば、商品の撮影をせずに複数の背景や場面に商品画像を配置した広告を作れる。広告制作のコストは下がった。一方で、閲覧者が目にしている商品写真が実物なのかAIの生成物なのかを見分ける手段は、これまでなかった。 Googleは誤解を招く広告や虚偽の広告を禁止しているが、AIで生成・加工したコンテンツを含む広告を出稿すること自体は認めている。AIの使用を開示する義務はこれまで選挙広告だけに課されており、今回の機能で対象が広告全般に広がった。 キーラット・シャルマ氏がGoogle公式ブログで発表した。広告プライバシー・安全担当のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー。 自社ツールは自動、外部ツールは申告 Googleが提供する生成AI広告ツールで作

OpenAI、Atlasを9か月で終了。機能はChromeとデスクトップへ

AI

OpenAI、Atlasを9か月で終了。機能はChromeとデスクトップへ

Atlasが消える。OpenAIが2025年10月に送り出したAI統合ブラウザが、1年を待たずに廃止される。備えていた機能はChatGPTデスクトップアプリとChrome拡張機能に移され、独立したアプリとしての役目を終えた。 Atlasに何が起きたのか OpenAIは現地時間7月9日、エージェント機能「ChatGPT Work」の発表と同時に、Atlasの廃止を明らかにした。製品スタッフのジェームズ・サン(James Sun)氏がXで終了を告げ、廃止予定日は8月9日と示している。 Lastly, with all these updates, we are going to be sunsetting Atlas. All these capabilities were built on what we learned from Atlas users who took a leap of faith on a

エヌビディア株がS&P 500より割安に。ボトルネックはメモリへ移った

AI

エヌビディア株がS&P 500より割安に。ボトルネックはメモリへ移った

AI半導体で圧倒的な存在だったエヌビディアの株価が、予想利益ベースでS&P 500の平均を下回った。エヌビディアが値を下げた2カ月間にメモリ大手マイクロンの株価は3倍に跳ね上がり、データセンターの「詰まる場所」が入れ替わっている。 GPUの余り、メモリの枯渇 エヌビディア株は5月14日に235.47ドルの最高値をつけた。7月に入っても200ドル前後で推移し、2カ月で15%前後を失ったまま戻らない。 売上は落ちていない。2027年度第1四半期(2026年5月発表)の売上高は816億ドル、前年同期比85%増と過去最高を更新した。 それでもフォワードPER(向こう12カ月の予想利益に対する株価の倍率)は約18倍にまで圧縮され、S&P 500の20倍超を下回った。年間66%で売上を伸ばす企業が、指数の平均銘柄より割安で取引されている。 一方、メモリチップメーカーのマイクロンは真逆の軌道を描いた。年初来で株価は約3倍に上昇し、5月26日に時価総額1兆ドルを突破した。48日間で時価総額が倍増しており、1兆ドル到達の速度は上場企業として史上最速とされる。2026年度第3四半期(2026年

マスク「Anthropicは明らかにAIのリーダー」。遮断しないと表明

AI

マスク「Anthropicは明らかにAIのリーダー」。遮断しないと表明

10か月前に「Anthropicに勝利はありえない」と書いた人物が、同社を「AIのリーダー」と呼んだ。月額12億5000万ドルを受け取る側の発言として聞くと、景色が変わる。 「明らかに間違っていた」 イーロン・マスク(Elon Musk)氏が現地時間7月9日、Xに投稿した。X社の元エンジニア、ヤシーン(@yacineMTB)氏が「AnthropicはSpaceXAIから借りたコンピュートに完全に依存している。イーロンがAnthropicを殺そうと思えばできる」と書いたのに対し、マスク氏はそれを否定する形で称賛で返した。 I was clearly wrong about Anthropic. They are obviously currently the leader in AI. No company has released a model as good as Mythos/Fable and they

NVIDIA、GeForceの歴史を14種のトレーディングカードにした

NVIDIA

NVIDIA、GeForceの歴史を14種のトレーディングカードにした

NV1から始まった31年をカードに刻み、夏のイベントとSNSで無料配布する。PCスロットには挿せない。 14枚のGeForce史 NVIDIAが現地時間7月9日、GeForce Trading Cards シリーズ1を発表した。GPUではなく、物理的な紙のコレクターズカードだ。全14種のデザインがあり、GeForceブランドの節目となった製品・テクニカルデモ・ゲームタイトルをそれぞれ1枚に収めている。 販売はしない。夏の間、ゲームイベントとSNSのギブアウェイを通じて無料で配る。 GeForce Trading Cards シリーズ1 収録GPU年表 1995年NV1初のマルチメディアプロセッサ1999年GeForce 256世界初のGPU2001年GeForce 3初のプログラマブルシェーダー搭載GPU2005年GeForce 7800 GTXCineFX 4.0搭載フラッグシップ2016年GeForce 10シリーズPascal世代、GTX 1080が代表格2018年GeForce RTX 2080 TiRTX世代の特別モデル ※GPU製品6種のみ掲載。シリ

GPT-5.6、政府審査13日で全面解放。3モデル同時投入の全容

AI

GPT-5.6、政府審査13日で全面解放。3モデル同時投入の全容

OpenAIのGPT-5.6が限定プレビューの開始から13日で一般提供に移行した。政府審査を経たフロンティアモデルとしては初の広域リリースとなる。 13日間で何が起きたか 6月26日、OpenAIはGPT-5.6を限定プレビューとして公開した。トランプ政権がフロンティアAIの公開前審査を求めた結果、一般提供ではなく一部のパートナー企業への限定アクセスに留まった。 7月8日夜(米国時間)、OpenAIは翌9日からの一般提供を予告した。商務省傘下のAI標準イノベーションセンター(Center for AI Standards and Innovation)が評価を実施し、OpenAIの技術者はワシントンD.C.に滞在して対応にあたったという。 6月のAI大統領令は、AI開発企業に対して最先端モデルを公開前に政府へ提供し評価を受けるよう求める内容だった。法的強制力ではなく「自発的協力」の枠組みだが、Anthropicの輸出規制指令とは性格が異なる。OpenAIはこの枠組みを経て一般提供に至った最初の企業になる。 Sol、Terra、Luna GPT-5.6は3つのモデルで構成

EPYC Venice、7月22日に正式発表へ。AMD CTOが明言

AMD

EPYC Venice、7月22日に正式発表へ。AMD CTOが明言

AMDのCTOマーク・ペーパーマスター氏がパリで開催されたRAISE Summitに登壇し、Zen 6ベースのEPYC Veniceを7月22〜23日のAdvancing AIイベントで正式に発表すると明言した。 「x86は動かない」(パリでの発言) パリで7月8〜9日に開かれたAIカンファレンスRAISE Summit。ペーパーマスター(Mark Papermaster)氏はインタビューで、EPYC Veniceの発表日程を初めて具体的に語った。 企業には何十年もかけて築いたx86の導入基盤がある。それを動かすつもりはない。AMDが2017年に新しいZenプロセッサを投入してから、今は第6世代に到達した。7月22〜23日のAdvancing AIイベントで、この新世代を投入する。x86 CPUのリーダーシップを継続しながら、スタンドアロンのx86ワークロード向けに最適化した設計だ(ペーパーマスター氏のSiliconANGLEへの説明) ペーパーマスター氏が強調したのは、エージェンティックAIの台頭によってGPUだけでなくCPUへの需要が急増している現実だ。業務プロセス全体を