岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Defenderのゼロデイ「RoguePlanet」にCVE割り当て。パッチはまだない

セキュリティ

Defenderのゼロデイ「RoguePlanet」にCVE割り当て。パッチはまだない

Microsoftは現地時間6月16日、Defenderのゼロデイ脆弱性「RoguePlanet」にCVE-2026-50656を割り当て、パッチを準備中であることを明らかにした。公開から1週間、脆弱性の存在を正式に認めたことになる。ただし修正の提供時期は示されておらず、発見者のクレジットもない。 1週間の沈黙を経て RoguePlanetが公開されたのは6月10日、月例パッチの数時間後だった。セキュリティ研究者Nightmare Eclipse氏が自前のGitリポジトリに実証コードを投稿し、複数の第三者が最新パッチ適用済みのWindows 10/11でSYSTEM権限の奪取を再現した。Defenderの内部処理に存在するレースコンディション(ファイルパスの検証と実行の間に生じるタイミングの隙)を突く手法で、リアルタイム保護の有効・無効を問わず動作する。 Microsoftはその時点で「調査中」とだけ回答していた。それから1週間。6月16日に公開されたアドバイザリで、MicrosoftはようやくCVE-2026-50656を割り当てた。CVSS 7.8(High)、深刻度はIm

6月パッチでOfficeが開かない。原因はMicrosoftではないかもしれない

Windows

6月パッチでOfficeが開かない。原因はMicrosoftではないかもしれない

6月の月例更新KB5094126で、また別の不具合が見つかった。サードパーティ製アプリからOfficeが起動しなくなる問題を、Microsoftが公式に認めた。ただし、原因は単純ではない。 「何も起きない」という不具合 6月9日配信のKB5094126(Windows 11 24H2/25H2)およびKB5093998(Windows 11 23H2)を適用した環境で、サードパーティ製アプリケーションからMicrosoft Officeアプリやドキュメントを開けなくなる不具合が報告されている。Windows 10向けのKB5094127でも同じ問題が起きる。 影響を受けるのはWord、Excel、PowerPoint、Accessなど主要なOffice製品だ。ただし、Office単体では正常に動作する。壊れたのはOfficeそのものではない。OLEオートメーションと呼ばれる連携の仕組みだ。 会計ソフトがWord文書を自動生成する、歯科診療ソフトが患者レポートをExcelに出力する。こうした「アプリからOfficeを操作する」処理の裏側で動いているのがOLEオートメーションで、

XPS 13が15万4800円で日本発売。米国の「599ドル」は別世界の話だった

PC

XPS 13が15万4800円で日本発売。米国の「599ドル」は別世界の話だった

DellがXPSブランドの再出発として投入したXPS 13が、日本でも販売を開始した。ただし米国で話題になった「599ドル」とは、かなり違う景色だ。 「XPS史上最安」の中身 Dellが6月16日に日本で発売したXPS 13(DX13260)は、Intel Wildcat Lake世代のCore 5 320を搭載するモバイルノートだ。CNCアルミ削り出しの筐体で1kg、厚さ12.7mm。XPSシリーズ史上最も薄く、最も軽い。 画面は13.4インチの2.5K(2560×1440)タッチ対応、最大120Hz、輝度500ニット。メモリはLPDDR5X 8GB(オンボード)、ストレージは512GB SSD。Wi-Fi 7とBluetooth 6.0を備え、52WhrバッテリーでNetflix再生は最大17時間を謳う。 Core 5 320は、Cougar Coveの高性能コア2基とDarkmont LP-Eの省電力コア4基による6コア構成。TDPは15W。

AIの安全性を疑い続けた研究者が、止める側に回った

AI

AIの安全性を疑い続けた研究者が、止める側に回った

Anthropicのセキュリティ研究者ニコラス・カルリーニ(Nicholas Carlini)氏は、AI業界の安全性主張を疑うことを仕事にしてきた。その彼が、自ら確かめた事実によって立場を変え、いま米政府とAnthropicの対立の最前線に立っている。 「職業的懐疑論者」の転向 カルリーニ氏のキャリアは、AIの弱点を暴くことで築かれた。カリフォルニア大学バークレー校でデイヴィッド・ワグナー(David Wagner)教授のもと博士号を取得。2016年に発表した「Carlini & Wagner攻撃」は、敵対的機械学習の標準的な手法となった。画像認識を騙す手法、音声アシスタントに人には聞こえない命令を埋め込む手法、大規模言語モデルが訓練データを暗記・出力してしまう問題。AI開発者が「安全だ」と言えば、カルリーニ氏がそれを破る。 Google Brain、DeepMindで7年を過ごした後、2025年にAnthropicへ移った。AIモデルで「どんな悪いことができるか」を調べるためだと本人は書いている。 2019年、カルリーニ氏はOpenAIがGPT-2を「危険すぎてリリースでき

ChatGPTのシェアが初めて50%を割った

AI

ChatGPTのシェアが初めて50%を割った

月間11億人が使うアプリでも、過半数は維持できなかった。Sensor Towerが発表した最新レポートで、AIアシスタント市場の勢力図が塗り替わりつつある実態が明らかになった。 46.4%という数字の意味 Sensor Towerが現地時間6月16日に公開した「State of AI 2026」レポートによると、ChatGPTの市場シェアが、5月末時点で46.4%に低下した。ここで使われている指標はTrueAudience(モバイルアプリとWebの実ユーザーを統合した数値)で、1月時点では50%を超えていた。ChatGPTがこの指標で過半数を失ったのは、2022年11月のサービス開始以来これが初めてになる。 削り取った側の顔ぶれは明確だ。GoogleのGeminiが27.7%、AnthropicのClaudeが10.3%。上位3サービスだけで84%を占め、Grok、Perplexity、DeepSeek、Meta AIはいずれも5%未満にとどまる。 AIアシスタント市場シェア(2026年5月末) サービス月間ユーザーシェアChatGPT11億人超46.4%Gemi

「AI搭載」表記で購入意向が低下 2000人調査の結果を分析

AI

「AI搭載」表記で購入意向が低下 2000人調査の結果を分析

ブランドのメッセージに「AI」の二文字が入っているだけで、米国消費者の60%が敬遠する。WordPress VIPが2026年4月に実施した2000人規模の調査が突きつけたのは、企業が誇りたいものと消費者が求めるもののあいだに開いた溝だった。 10年前より「人間味がない」 Automattic傘下でWordPressの企業向けサービスを手がけるWordPress VIPが、「Future of the Web 2026」レポートを公開した。2026年4月、企業の意思決定者・CMO 800人と一般成人1200人の計2000人を対象に、AI時代のブランドと消費者の信頼を正面から調べた調査だ。 回答者の74%が「10年前よりインターネットに人間味がなくなった」と答えた。ネットを使い始めて平均40分で「ボット疲れ」に達するという。 だが不快感だけの話ではない。消費者の42%は、出典のないAI生成回答を 航空運賃の不透明さやプライバシーポリシー、医療費の請求書よりも信頼できない と答えた。「よくわからないもの」の代名詞を下回った。 「AI搭載」は売り文句ではなくなった 最も直截な

インドでTelegramを一時遮断 試験不正対策が1億5000万人に影響

インド

インドでTelegramを一時遮断 試験不正対策が1億5000万人に影響

試験問題の漏洩を防ぐために、国がメッセージアプリを丸ごと止める。インド政府が現地時間6月16日に出した命令は、アプリ1つの遮断で済む話ではなかった。 アプリを止めても、漏洩は止まらない インド電子情報技術省(MeitY)はIT法第69A条に基づき、Telegramへのアクセスを6月22日まで全国で遮断する命令を出した。Telegramに対してはメッセージ編集機能を6月30日まで無効にすることも求めている。 きっかけは、医学部入試「NEET(UG)2026」の再試験だ。5月3日に実施された本試験で問題用紙の漏洩が発覚し、227万人以上の受験生に影響が及んだ。CBIが捜査に着手し、これまでに13人を逮捕している。再試験は6月21日。インド空軍が全国18拠点に問題用紙を空輸し、準軍事組織が警備にあたるという異例の厳戒態勢が敷かれた。 NTA(全国試験機関)の声明によると、Telegramでは「PAPER LEAKED NEET」「Re-NEET 2026」といったチャンネルが再試験の問題用紙を販売すると称し、1万4000〜2万5000ルピー(約2万4000〜4万3000円)、高額な

Anthropic、Agent SDKの従量課金化を施行当日に一時停止

AI

Anthropic、Agent SDKの従量課金化を施行当日に一時停止

Anthropicが、Claude Agent SDKの課金体系変更を施行当日の6月15日に一時停止した。定額サブスクの枠内で使えていたAgent SDKの利用を別枠に切り出し、従量課金へ移行する計画だったが、「現在のところ何も変わっていない」と告知。変更が消えたわけではない。延期だ。 施行当日の方針転換 5月14日、Anthropicは予告していた。Claude Agent SDKと claude -p コマンド、サードパーティアプリの利用を、6月15日からサブスクリプションの使用枠から切り離す。チャットやClaude Codeの対話利用はこれまで通りサブスクの枠内に残し、自動化やプログラムからの呼び出しだけを別プールに移す。プランごとの月額クレジット(Proで20ドル、Max 5xで100ドル、Max 20xで200ドル)をAPI標準レートで消費させ、クレジットを使い切れば停止か追加の従量課金に移行する仕組みだった。 ところが6月15日当日、Anthropicはヘルプセンターとユーザー宛メールで方針を覆した。変更は一時停止。Agent SDK、claude -p、サードパー

中国発オープンソースAI「GLM-5.2」がClaude Opus 4.8に肉薄

AI

中国発オープンソースAI「GLM-5.2」がClaude Opus 4.8に肉薄

中国のAI企業Z.ai(旧Zhipu AI/智譜AI)が、オープンソースの大規模言語モデル「GLM-5.2」を公開した。100万トークンのコンテキストウィンドウとMITライセンスを備え、長時間のコーディングタスクではClaude Opus 4.8に数ポイント差まで迫る。出力トークンの単価はOpus 4.8の6分の1以下。フロンティアAIに、オープンな選択肢が現実として加わった。 ベンチマーク無しの発表から3日で数字が出揃った GLM-5.2の発表は現地時間6月13日。米政府がAnthropicのフロンティアモデルを輸出規制で止めた翌日だった。Z.aiの創業者タン・ジエ(Jie Tang)氏は「特定のフロンティアモデルへのアクセスが非技術的理由で突然絶たれたことは深く遺憾だ」と投稿し、GLM-5.2のリリースを事実上の応答として位置づけた。 ただし、発表時点ではベンチマークが一切公開されていなかった。数字が出揃ったのは3日後の6月16日。Z.aiが公式ブログでベンチマーク結果と技術詳細を公開した。同日、Hugging FaceとModelScopeにMITライセンスのオープンウェ

Linuxカーネルが新ファイルシステムの受け入れ基準を明文化

Linux

Linuxカーネルが新ファイルシステムの受け入れ基準を明文化

新ファイルシステム追加のガイドラインが、異論なく承認された。5月に草案として提示されていた文書が、Linux 7.2のマージウィンドウが開くと同時にカーネルのドキュメントツリーへ収まっている。 草案から正式な「門」へ adding-new-filesystems.rst がLinuxカーネルの Documentation/filesystems/ に追加された。 5月のLSFMM+BPFサミットでアミール・ゴールドスタイン(Amir Goldstein)氏が提案し、ファイルシステム開発者の間で議論を経たドキュメントだ。当時は草案だった。今回Linux 7.2のマージウィンドウで、反対意見なしに正式採用された。 中身は「新しいファイルシステムをカーネルに入れたいなら、これを満たせ」という要件集。技術要件とコミュニティへの責任、その両方を明記している。 何が求められるのか 技術面の要件は明快だ。 folio(ページキャッシュの管理単位)とiomap(ブロックマッピングの現行API)を使うこと。古いAPIで組まれたファイルシステムは、そもそもレビューの土俵に上がれない。mk

SSDの小売市場が「ほぼ消滅」した

SSD

SSDの小売市場が「ほぼ消滅」した

SSDコントローラ最大手Silicon Motionの幹部が、Computex 2026のインタビューで証言した。2026年前半、小売SSD市場はほぼ消滅したという。店頭で好みのSSDを選んで買う。自作PCユーザーにとって当たり前だったその光景が、急速に過去のものになりつつある。 消えたのは需要ではなく、供給先だった Silicon Motionのネルソン・ドゥアン(Nelson Duann)上級副社長は、クライアント&オートモーティブストレージ事業の責任者だ。同氏によれば、SSDコントローラの出荷はむしろ増えている。ただし行き先が変わった。かつてSSDモジュールメーカーが作った製品は小売店の棚に並んでいたが、いまはAcer、ASUS、Dell、HPといったPC OEM向けにまるごと流れている。 PC OEM自身がNANDメーカーから十分な供給を受けられなくなったからだ。大手NANDメーカーはAI向けデータセンターへの出荷を最優先に切り替え、消費者向けの配分を大幅に絞っている。NAND不足については当サイトでも繰り返し伝えてきたが、その帰結が「リテール市場の消滅」という形で表面

次世代Threadripperの全貌。Zen 6・PCIe Gen6・新ソケットへ

CPU

次世代Threadripperの全貌。Zen 6・PCIe Gen6・新ソケットへ

AMDの技術文書に、次世代Ryzen Threadripperの姿が現れた。コードネームMustang Peak。公式資料が裏付けたのは、2nm世代のZen 6コア搭載と、PCIe Gen6に対応する新プラットフォームTR6への移行だ。PCIe Gen6をワークステーション級CPUで掲げるのはIntel Diamond Rapids(Xeon 7、同じく2027年予定)と並んで最初期の動きになる。現行のShimada Peak(Threadripper 9000)が発売からまだ1年も経たないなか、次の世代がここまで具体的に見えてきたのは珍しい。 技術文書が語ったもの AMD Technical Information Portal上に「AMD Ryzen Threadripper TR6 Desktop Processors」の文書(UG1866)が2026年6月5日付で公開された。CPU命令解析で知られるInstLatX64がこの文書とCPUID情報を照合し、現地時間6月16日に詳細を公開した。 判明した主な仕様はこうだ。CPUID BA0F80、コードネームMustang

「AIエージェント向けCPU」という分類を検証 必要な性能要件を整理

CPU

「AIエージェント向けCPU」という分類を検証 必要な性能要件を整理

AIエージェント時代に必要なのは「新しいCPU」ではない。各社が争っているのは、汎用プロセッサに何の名前を貼るかだ。 全員が「エージェント向け」を名乗る異様さ Arm、NVIDIA、AWS、Intel、AMD。データセンターCPUの主要5社が、ここ3ヶ月で一斉に同じ言葉を使い始めた。「エージェント向けCPU」だ。 Armは初の自社製チップを「AGI CPU」と名づけた。NVIDIAのジェンスン・ファン(Jensen Huang)CEOはVeraを「エージェントのためのCPU」と呼んだ。AWSは6月10日に一般提供を開始したGraviton 5のマーケティングに、エージェントAIへの言及を散りばめている。Intelは6月のComputex 2026で、100kWラックに最大3万6864コアを詰め込むリファレンス設計を披露し、エージェント推論をうたった。AMDは先週、100kWラック換算でVera比3.3倍のスループットを主張するVenice EPYCのベンチマークを公開した。 全員が同じ市場を指差して「これは自分たちのために作られた」と言っている。 だが、冷静に見れば奇妙な光

Xbox独占撤回の噂を幹部が否定。しかし問題は噂の真偽ではない

ゲーム

Xbox独占撤回の噂を幹部が否定。しかし問題は噂の真偽ではない

Xboxの最高戦略責任者マシュー・ボール(Matthew Ball)氏が、独占タイトルの方針撤回を巡る噂を正面から否定した。Gears of War: E-DayもClockwork Revolutionも独占のまま。方針転換の議論すら存在しないと言い切った。発言は明快だ。だがこの否定声明が必要になったこと自体が、今のXboxが抱える問題の輪郭を浮かび上がらせている。 9日間という距離 ボール氏の声明が出たのは現地時間6月16日。Windows Centralのジェズ・コーデン(Jez Corden)氏のXへの投稿に返信する形で、噂を全否定した。 These rumors are false. Gears of War: E-Day and Clockwork Revolution will stay exclusive. There are no conversations and have been no conversations to