岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
AIデータセンター建設の停止・延期が全米で増加 テネシーなどの事例を整理

AI

AIデータセンター建設の停止・延期が全米で増加 テネシーなどの事例を整理

テネシー州の複数の自治体が、AIデータセンターの建設許可を一時凍結するモラトリアムを相次いで可決した。州都ナッシュビルでも市議会が凍結法案を可決し、市長も支持を表明。全米では2026年第1四半期だけで75件・約20兆8000億円規模のデータセンター計画が阻止されており、AI時代のインフラ拡張に対する住民の反発が構造的な局面に入りつつある。 テネシー州で同時多発的なモラトリアム マクミンビル(McMinnville)はテネシー州中部にある人口約1万4000人の小都市だ。その市議会が現地時間6月9日、データセンター建設許可の18か月間凍結を全会一致で可決した。凍結期間中に送電網の許容量、上下水道への影響、環境・公衆衛生上の懸念、騒音、地域との適合性を検証するとしている。 きっかけは、AI向け25メガワット級データセンター「Hixsonデータセンター」の建設計画だった。約8900平方メートルの施設にNVIDIA GB200 NVL72を収容する計画で、電力は天然ガスとディーゼル発電機で自前で賄う。2028年初頭の稼働を見込んでいた。園芸苗木の産地として知られるこの町にとって、その規模

Teams効率モード6月末展開。映像品質を下げてメモリ節約へ

Microsoft Teams

Teams効率モード6月末展開。映像品質を下げてメモリ節約へ

Microsoft Teamsに「効率モード」(Efficiency Mode)が導入される。メモリやCPUに余裕のないPCを自動検出し、会議中の映像品質を引き下げることでリソース消費を抑える機能だ。Windows版・macOS版が対象で、既定で有効になる。展開は6月末までに完了する見通しだが、この機能が必要になった背景には、メモリ高騰と8GB PC回帰という業界全体の歪みがある。 効率モードで何が変わるか Microsoftがロードマップで公開した情報によると、効率モードの変更点は大きく2つある。 1つ目は会議中のカメラ映像の解像度が、端末のスペックに応じて 動的に引き下げられる こと。高画質なカメラを接続していても、出力はPC側の処理能力に合わせて自動調整される。メモリとCPUの負荷は下がるが、通話相手から見た映像は粗くなりうる。 2つ目は起動時の挙動。通常はチャット一覧をまとめて読み込むが、効率モードではチャットを事前選択せずに起動し、メッセージ欄には静止画像が表示される。初回ロードのデータ量を減らして起動を速くする仕組みだ。 効率モードが有効なとき、タイトルバーにイ

AI開発需要でGitHub負荷が増加 MicrosoftがAWSを利用した経緯を整理

AI

AI開発需要でGitHub負荷が増加 MicrosoftがAWSを利用した経緯を整理

AIコーディングツールの爆発的な普及でGitHubのインフラが限界に達し、MicrosoftがクラウドのライバルであるAWSから計算資源を調達したと報じられた。2027年までに自社のAzureへ全面移行する計画だったが、AI需要の伸びがその計画を追い越している。 年間10億が週2億7500万に変わった GitHubのコミット数は、2025年は通年で10億件だった。当時はそれだけでマイルストーンだった。 2026年4月、GitHubのCOOカイル・デイグル(Kyle Daigle)氏が公表した数字は次元が違った。週2億7500万件。年間換算で約140億件。前年比14倍。「成長が線形のままなら今年140億になる。ネタバレ:ならない」と同氏は付け加えている。 この爆発を引き起こしたのは開発者ではない。CursorやClaude CodeといったAIコーディングツール、そしてコードの生成・テスト・デプロイを自律的に行うAIエージェントだ。エージェントが開いたプルリクエストは2025年9月の約400万件から2026年3月には1700万件以上に達したと報じられている。GitHub Act

Flatpak次世代はsystemd依存へ。怒りが消した妥協

Linux

Flatpak次世代はsystemd依存へ。怒りが消した妥協

Linuxの「どのディストリビューションでも動く」アプリ配布基盤、Flatpak。その次世代構想で、systemdを使わない環境が切り捨てられようとしている。開発者はもともと配慮するつもりだった。だが、コミュニティ自身の炎上がその意志を折った。まだコードは1行も書かれていない段階での出来事だ。 何が変わるのか 5月のLinux App Summit 2026(ベルリン開催)で、2人のRed Hat開発者がFlatpakの将来像を発表した。エイドリアン・ヴォヴク(Adrian Vovk)氏とセバスチャン・ウィック(Sebastian Wick)氏だ。現行Flatpak(6月8日に1.18リリース)の改善を続けつつ、並行して「Flatpak Next」と呼ばれる次世代アーキテクチャの構想を進めているという。 核心は systemd-appd という新コンポーネントにある。 現在のFlatpakは、bubblewrapというサンドボックスツールでアプリをホストOSから隔離している。Flatpak Nextでは、この設計を一から作り直す。サンドボックスの実行基盤はbubblewrap

Anthropicの安全性は信念であり武器でもある

AI

Anthropicの安全性は信念であり武器でもある

Fable 5の停止劇には、ジェイルブレイクや輸出規制より深い話がある。テック戦略アナリストのベン・トンプソン(Ben Thompson)氏が、Stratecheryでその論理を読み解いた。氏はAnthropicの行動原理を「安全性という超能力」と呼ぶ。安全性への信念が本物であること自体が、この会社のあらゆる攻撃的な判断を正当化する構造になっているという指摘だ。 なぜ「危険すぎる」モデルを公開したのか Mythos Previewを「危険すぎて一般公開できない」と発表したのは4月のこと。その会社が2カ月後、ガードレール付き版のFable 5を公開した。公開3日でジェイルブレイクが見つかり、政府に止められた。しかもFableの公開は、6月1日にSECへIPOの秘密申請を行ったわずか8日後だ。評価額は約9650億ドル(約154兆円)、年間収益ランレートは470億ドル(約7兆5000億円)。この規模の企業が、政府と真正面からぶつかっている。 皮肉屋なら「自作自演」と言うだろう。しかしトンプソン氏が掘っているのはもっと構造的な話だ。 AIの最前線で経済的価値を吸い上げてきたのは、ここ

パランティアと英NHS。「脱却」を阻む本当の壁

テクノロジー

パランティアと英NHS。「脱却」を阻む本当の壁

英国議会の委員会が、国民保健サービス(NHS)のデータ基盤を担うパランティアとの契約を「容認できない弱点」と断じた。政府は契約の全面見直しに着手した。2027年2月の解約条項を行使するかどうかが焦点だ。だが問題の根は、パランティア1社にあるのではない。代わりを選べる状態を、英国が15年かけて作れなかったことにある。

Xbox、複数スタジオに閉鎖を通知 Showcase後の組織再編を整理

Xbox

Xbox、複数スタジオに閉鎖を通知 Showcase後の組織再編を整理

6月15日、Xboxのスタジオ閉鎖と人事異動の情報が立て続けに報じられた。Ninja Theory、Double Fine Productions、Compulsion Gamesの3スタジオに閉鎖または独立の選択が突きつけられ、Xbox Game Studios責任者のクレイグ・ダンカン(Craig Duncan)氏が辞任。Arkane Lyonにも不安が広がっている。Xbox Games Showcaseからわずか1週間。「Xboxリセット」は数字の上の話ではなくなった。 6月15日に起きたこと まず時系列を整理する。 Xbox Game Studios責任者のダンカン氏が辞任を発表した。2011年、Rareに加わり、約14年間スタジオを率いたのち2024年11月にXbox Game Studios全体の責任者へ就任。在任期間はわずか約20か月だった。チーフ・オブ・スタッフのルイーズ・オコナー(Louise O'Connor)氏も同日にMicrosoftを離れている。後任が決まるまで、最高コンテンツ責任者のマット・ブーティ(Matt Booty)氏がスタジオ群を統括する。

AIは"合議"で賢くなるか。OpenRouter Fusionの実験

AI

AIは"合議"で賢くなるか。OpenRouter Fusionの実験

複数のAIモデルに同じ質問を投げ、その回答を別のモデルが読み解いて1つに統合する。そんな仕組みが、単体のフロンティアモデルを超えるスコアを叩き出した。発表したのはAIルーティングサービスのOpenRouter。現地時間6月12日に公開した「Fusion」の検証結果は、「最強の1本を選ぶ」というAIの使い方に疑問を投げかけている。 「最強の1本」ではなく「束ねる」 Fusionの発想はシンプルだ。ユーザーからのプロンプトを複数のAIモデルに同時に送り、それぞれが独立してWeb検索を含む調査を行い、回答を生成する。その全回答を審査役のモデルが読み、合意点・矛盾点・一方にしかない知見・見落としを構造的に分析する。最終回答はこの分析を踏まえて書かれる。 API経由ではモデル名を openrouter/fusion に差し替えるだけで使える。参加モデルの構成も指定可能で、プリセットとしてフロンティアモデルを組み合わせた「クオリティ」構成と、安価なモデルで揃えた「バジェット」構成が用意されている。 DRACOベンチマークで何がわかったか OpenRouterがFusionの検証に使っ

Linuxカーネル7.2、Rustで「書かなくて済むコード」がまた増える

Linux

Linuxカーネル7.2、Rustで「書かなくて済むコード」がまた増える

「危険なコードを、書かずに済ませる」。次期Linuxカーネル7.2に向けてミゲル・オジェダ(Miguel Ojeda)氏が送ったRust関連のプルリクエストは、新機能の華やかさとは無縁だ。それでも、カーネルという土台にとっては重みのある一歩になる。今回の目玉は、4万行近いコードを一気に取り込むzerocopyライブラリの導入。これまで人が手書きしていた危ういコードの一部が、コンパイラに安全性を保証させる書き方へ置き換わる。 4万行の正体は「危険な変換」をなくすための部品 7.2のマージウィンドウは、7.1の正式リリース(現地時間6月14日)とともに開いた。その7.1も、NTFSの新ドライバ、Intel FREDのデフォルト有効化、x86の486世代サポートを含む14万行超の旧コード削除を抱えた、節目の更新だった。続く7.2に向けて、Rust陣営が真っ先に送り込んだのが今回のプルリクエストになる。 差分の行数だけ見れば、約3万9000行の追加。ベンチマーク用のコードを除いても約3万2000行という、Rust関連としては異例の大きさだ。ただ、この数字に身構える必要はない。中身のほと

AUR荒らし、マルウェアの次はロシア語の嫌がらせ。AIが最初に検知

セキュリティ

AUR荒らし、マルウェアの次はロシア語の嫌がらせ。AIが最初に検知

Arch Linuxの「AUR」(Arch User Repository)で、1500を超えるパッケージがマルウェアに汚染された騒動が、ようやく収束しかけたところだった。その同じ場所が、今度は毛色の違う厄介事に見舞われている。インストール後、シェルの設定ファイルへ勝手にロシア語の悪口を書き込む嫌がらせだ。財産も認証情報も盗まない。実害がないからこそ、運営はかえって対応に困っている。 マルウェアではない、ただの荒らし きっかけは、開発者のニコラ・ボワシャ(Nicolas Boichat)氏が運用しているAI検知ボットだった。AURのパッケージに不審なメッセージが紛れ込んでいるのを拾い上げたと報告されている。問題のコミットは現地時間6月14日、つまり大規模マルウェア騒動の直後に行われたものだ。 何が仕込まれていたのか。インストール後に bashrc や zshrc、Fishといったシェルの設定ファイルへ、ロシア語の攻撃的なメッセージを書き加える処理が仕込まれていた。端末を起動するたびに、その悪態が画面に流れ出す。 ここが前回と決定的に違う。6月11日に発覚した「Atomic A

AMDがメモリ最適化スタートアップMEXTを買収。DRAMの壁に挑む

AMD

AMDがメモリ最適化スタートアップMEXTを買収。DRAMの壁に挑む

データセンターのメモリ不足が深刻化するなか、AMDがソフトウェアでこの問題に切り込もうとしている。同社は現地時間6月15日、AIを活用したメモリ最適化技術を持つスタートアップMEXTの買収を発表した。 NANDをDRAMに見せる技術 MEXTの技術を一言で表すなら、「使っていないDRAMの中身をNANDフラッシュに逃がし、必要になる前にDRAMへ戻す」ソフトウェアだ。 サーバーに搭載されたDRAMのうち、ある時点で実際にアクセスされているデータは意外に少ない。クラウド事業者の調査では、利用率が50%を下回る環境も珍しくないとされる。にもかかわらず、アプリケーションは「そこにメモリがある」前提で動くため、物理的なDRAM容量を減らすことが難しい。 MEXTのPredictive Memory Engine(予測メモリエンジン)は、この構造に切り込む。まずアクセス頻度の低い「コールド」なメモリページを、容量単価がDRAMの約50分の1であるNANDフラッシュへ退避させる。次に、AIモデルがワークロードのメモリアクセスパターンを常時分析し、フラッシュ上のどのページが次に必要になるか

Microsoft、Azure成長鈍化を巡り株主訴訟 AI投資開示が争点

AI

Microsoft、Azure成長鈍化を巡り株主訴訟 AI投資開示が争点

2026年1月29日、マイクロソフトの株価が1日で10%崩れ、時価総額約57兆円が吹き飛んだ。約5ヶ月後、ミシガン州の年金基金が「あの数字は正直ではなかった」という訴えを抱えて法廷に踏み込んだ。 AIに積み上げた設備投資、投資家への説明が争点に 現地時間6月13日、シアトル連邦地方裁判所に集団訴訟が提起された。原告はミシガン州セントクレアショアーズ市警察・消防退職年金基金。訴訟の対象期間は2025年5月1日から2026年1月28日まで。この間の投資家向け説明において、Azureの成長鈍化と、その背景にあるAIインフラへの巨額投資の実態を正確に伝えなかったというのが、原告の主張だ。 被告に名を連ねるのは、サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOとエイミー・フッド(Amy Hood)CFOを含む複数の幹部。訴状によると、こうした幹部たちがCopilotの展開やOpenAIとの提携について過度に楽観的な描写を重ね、その陰でデータセンター建設に要する投資規模を意図的に小さく見せていたとされる。複数の決算発表、カンファレンス登壇、年次株主総会での発言が証拠として挙げられている

FSR 4.1、RDNA 2対応が2027年になる技術的な理由

GPU

FSR 4.1、RDNA 2対応が2027年になる技術的な理由

Radeon RX 7000シリーズへのFSR 4.1対応が7月に迫るなか、AMDがComputex 2026で旧世代GPU対応の裏側を語った。RDNA 3は「モデルの変換」で済む。だがRDNA 2は、GPUの設計そのものが壁になる。 「同じ品質」という約束の重さ インタビューに応じたのはAMDチーフソフトウェアオフィサーのアンドレイ・ズドラヴコヴィチ(Andrej Zdravkovic)氏と、ソフトウェア担当シニアディレクターのテリー・マケドン(Terry Makedon)氏。 核心はこの一点に尽きる。RDNA 3版もRDNA 2版も、RDNA 4と同じ画質を実現する。 モデルは異なる。ハードウェアが違う以上、動かし方も違う。だが最終出力の品質は揃える。AMDはそう明言した。OptiScalerなどのサードパーティツールは、FSR 4のINT8版を旧世代GPUで動かせることをすでに証明していた。だが画質やパフォーマンスにばらつきがあった。公式対応とは「動く」ことではなく「品質を保証する」ことだと、AMD自身が線を引いたことになる。 RDNA 4→RDNA

AMD次世代Ryzen「Olympic Ridge」NPUを得てiGPUを捨てる

AI

AMD次世代Ryzen「Olympic Ridge」NPUを得てiGPUを捨てる

Zen 6世代のデスクトップ向けRyzenに、これまでとは異なるIOダイが載る。ハードウェアリーカーのGotou_3rd氏が現地時間6月15日に公開した情報で、開発コード名Olympic Ridgeの構成の一端が明らかになった。NPUを新たにIOダイへ統合し、Ryzen 7000/9000世代で搭載されていたiGPUは廃止される。CUDIMMへの対応も明らかになったが、USB4コントローラの統合は見送られている。 IOダイの刷新――何が入り、何が消えるか Olympic Ridgeの新しいIOダイでは、デスクトップ向け非APUのRyzenとして初めてNPUが統合される。これまでAM5でNPUを搭載していたのはRyzen 8000Gシリーズ(デスクトップAPU)の上位モデルに限られており、標準のデスクトップCPUラインには載っていなかった。 代わりに消えるのが、RDNA 2ベース・2CU構成のiGPUだ。Ryzen 7000世代でAM5に初搭載されたこの小さなGPUは、ゲームをするには非力だが、映像出力やハードウェアデコードの用途には十分だった。グラフィックボードの不具合で画面が