岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Kimi K2.7-Code、自社テストで2桁改善も独立検証では後退。ベンチマークの読み方を考える

AI

Kimi K2.7-Code、自社テストで2桁改善も独立検証では後退。ベンチマークの読み方を考える

Moonshot AIのコーディング特化モデルKimi K2.7-Codeが現地時間6月12日に公開された。推論トークンを約30%削減し、自社テストでは2桁の改善。数字だけ見れば順当な進化に映る。だが公開から数時間で、外部の研究者と開発者が独立ベンチマークで検証し、公称スペックとは異なる結果を示した。 何が出たのか K2.7-Codeは、4月にリリースされたKimi K2.6をベースにしたコーディング特化のオープンウェイトモデルだ。1兆パラメータのMixture-of-Experts構成(トークンあたり320億パラメータ稼働)、コンテキスト長は最大約26万トークン。修正MITライセンスでHugging Faceに重みが公開されており、vLLMやSGLangでセルフホストできる。API価格は100万トークンあたり入力0.95ドル(約152円)、出力4ドル(約640円)で、K2.6と同額だ。 K2.6はリリース直後にOpenRouterの週間LLMリーダーボードで1位を獲得し、開発者のAPI利用量で既存モデルを上回った実績がある。K2.7-Codeはその後継にあたり、コーディングと

Teams、Wi-Fi接続で出社を自動通知する機能を再始動

Microsoft

Teams、Wi-Fi接続で出社を自動通知する機能を再始動

Microsoftが延期を重ねてきたTeamsの「勤務場所自動検出」機能が、再び動き出した。会社のWi-Fiに接続するだけで、オフィスにいることが上司や同僚のTeams画面に表示される。「便利」と「監視」のあいだに引かれた線は、思ったより細い。 何度目かの仕切り直し この機能が初めて広く知られたのは2025年後半だった。Microsoft 365ロードマップに載った直後から反発が起き、当初2025年12月だったロールアウトは延期に。その後も2026年1月、3月と展開時期を後ろ倒しにし、一時は「キャンセル」のステータスが付くほどだった。 Workplace check-in via Wi-Fi ロールアウトの経緯 2025年後半ロードマップ掲載Microsoft 365ロードマップに「勤務場所の自動更新」が登場2025年12月ロールアウト予定当初の展開時期2026年1月延期(1回目)ユーザーの反発を受けて後ろ倒し2026年3月延期(2回目)展開時期を再度後ろ倒し2026年春一時キャンセルロードマップのステータスが「キャンセル」に2026年6月再発表・年内ロール

「新しいOutlook」に統合受信トレイがようやく来る

Microsoft

「新しいOutlook」に統合受信トレイがようやく来る

Microsoftが「新しいOutlook」に5つの機能追加を予告した。統合受信トレイ、お気に入りフォルダーの改善、未読カウントの制御、差し込み印刷、.PSTからの予定表・連絡先インポート。どれもクラシック版のユーザーには「いまさら」の一言だろう。だが、これが揃わなければ移行できないと多くの人が感じてきた機能でもある。 「全アカウント表示」は8月展開予定 今回の目玉は「全アカウント表示」(All accounts view)、いわゆる統合受信トレイだ。Microsoft 365のロードマップに5月27日付で追加された。展開開始は2026年8月の予定で、Windows版とWeb版の両方が対象になる。 Outlookのモバイル版やMac版では、複数アカウントのメールを一画面にまとめる機能が何年も前から使えていた。Gmailにもある。それなのにWindows版だけが取り残されていた。Microsoft 365コミュニティでは要望が年単位で積み上がり、ようやくロードマップに載った。 単にメールが一覧に並ぶだけではない。削除・アーカイブ・移動・既読マークといった操作もその場で行え、個別

AMDのAI開発機「Ryzen AI Halo」が予約開始。DGX Sparkより約11万円安い

PC

AMDのAI開発機「Ryzen AI Halo」が予約開始。DGX Sparkより約11万円安い

AMDが初の自社製AIミニPCをようやく市場に投入した。Ryzen AI Haloは3,999ドル(約64万円)。NVIDIAのDGX Sparkと真正面からぶつかるカテゴリの製品で、価格は約700ドル(約11万2,000円)安い。Micro Centerで6月8日から予約受付が始まっている。 半年遅れの「公式版」 CES 2026で発表されたRyzen AI Haloが、ようやく予約可能になった。搭載するSoCはRyzen AI MAX+ 395。Zen 5の16コア/32スレッドCPU、RDNA 3.5ベース40CU構成のRadeon 8060S iGPU、50 TOPSのXDNA 2 NPUを1チップに統合したStrix Haloだ。メモリは128GBのLPDDR5X-8000をオンボード搭載し、ストレージは2TBのPCIe Gen4 x4 SSD。TDPは最大120W。 筐体は150×150×43.2mmで、重量は約1kg強。

Steam Machine、レビュー機が出荷か。発売は6月末の可能性

ゲーム

Steam Machine、レビュー機が出荷か。発売は6月末の可能性

Valveが「今夏出荷」と公言したSteam Machineに、具体的な動きが出てきた。Valve非公式の情報追跡アカウントが、レビュアーへの実機提供が始まったと投稿。予約開始と価格発表は6月22日から30日の間、レビュー解禁は6月23日以降になるとしている。 レビュー機が動いた Steam Hardware Updatesという、Valve非公式ながらハードウェア動向を追跡しているアカウントが6月13日に投稿した内容はこうだ。レビュアーがSteam MachineとSteam Frameの実機を受け取り始めている。キットにはSteam Machine本体、Steam Controller、マウンティングブラケット2個が含まれ、フェイスプレート用の箱も別途確認されたという。ただし、フェイスプレートが標準付属なのかオプション扱いなのかは不明だとも付け加えている。 1. Announcement for Hardware reservations and prices expected between Jun 22 - Jun 30 2. Reviewers are activel

SpaceX上場初日、マスク氏がNVIDIAとの関係深化を示唆

宇宙

SpaceX上場初日、マスク氏がNVIDIAとの関係深化を示唆

SpaceXがナスダック市場に上場した6月12日、初日の終値は160.95ドルだった。公開価格135ドルから19%の上昇。時価総額は一時約2.1兆ドル(約338兆円)に達し、750億ドル(約12兆円)を調達した史上最大のIPOは、イーロン・マスク(Elon Musk)氏を世界初のトリリオネアに押し上げた。 だが本題は株価ではない。 祝辞の裏にある10年の文脈 上場直後、NVIDIAがSpaceXチームへの祝賀を投稿した。約10年前のDGX-1からDGX Sparkまで、両社の関係を振り返る内容も添えられていた。 数時間後、マスク氏がこれに応じた。 Looking forward to taking our exciting partnership with Nvidia to the next-level https://t.co/WYxxC6V1CE — Elon Musk (@elonmusk) June 12, 2026

AURマルウェア、被害は1,579件超に拡大。第2波も発生していた

Linux

AURマルウェア、被害は1,579件超に拡大。第2波も発生していた

Arch LinuxのAURで発覚したマルウェア汚染は、当初報じた400件をはるかに超える規模だった。最終的に確認された被害パッケージは少なくとも1,579件。しかも攻撃は一度では終わらず、第2波まで発生していた。Arch Linux側は悪意あるコミットの削除を終えたとしているが、公開されたリストには「すべてではない」との但し書きがある。 400件が1,579件に膨れ上がるまで 6月11日に最初の報告が上がった時点で、被害パッケージは約408件と見積もられていた。だが数時間後には約900件に増え、最終的にArch Linuxのパッケージメンテナーであるヨナタン・グローテリュッシェン(Jonathan Grotelüschen)氏がメーリングリストに投稿した影響パッケージリストには、1,579件 のパッケージ名が並んでいた。 ここまで膨らんだのは、攻撃が一度では終わらなかったからだ。 第2波はnpmではなくBunだった 既報の通り、第1波の手口はPKGBUILDや.installファイルに npm install atomic-lockfile を挿入するものだった。だが攻

Metaの「優秀な人材」が単純作業に回される。AI部門6500人の反乱

AI

Metaの「優秀な人材」が単純作業に回される。AI部門6500人の反乱

「優秀だから選ばれた」。そう告げられてApplied AIチームに異動させられたエンジニアたちが、いま声を上げている。 配属か退職か Metaの社内が荒れている。新設されたApplied AI Engineering(応用AIエンジニアリング)部門で不満が噴出し、今週の社内ライブ配信中に従業員がマイクを乗っ取って上級幹部を罵倒する一幕があったと報じられた。プレゼンターの一人は両手で顔を覆ったという。 この部門は3月に設立され、約6500人のエンジニアとプロダクトマネージャーが所属する。率いるのはReality Labs部門の元副社長、マヘル・サバ(Maher Saba)氏。CTOのアンドリュー・ボズワース(Andrew Bosworth)氏の直轄組織だ。 問題の核心は、配属の経緯にある。従業員に与えられた選択肢は2つだけ。「参加するか、辞めるか」。社内では自分たちを「徴兵組」と呼ぶ声が広がっている。 担当する業務は、AIモデルの訓練用にコーディング問題やパズルを生成すること。以前はソフトウェア開発の最前線にいたエンジニアたちにとって、それは創造性も技術的挑戦もない単純作業だ

OpenAI、米42州の司法長官連合から召喚状。IPO直前の包囲網

AI

OpenAI、米42州の司法長官連合から召喚状。IPO直前の包囲網

月間10億人が使うサービスに、アメリカの42州が同時に動いた。OpenAIが6月12日、州司法長官の連合から召喚状を受け取ったことが報じられている。広告、消費者データと健康データの取り扱い、未成年者や高齢者に関する活動、ディープラーニングモデル、モデルの迎合性、社内方針まで、要求される文書の範囲は広い。召喚状はニューヨーク州の司法長官が発行したものだという。 IPO申請から4日後の召喚状 タイミングが鋭い。 OpenAIは6月8日、SECに対してS-1(上場目論見書)の機密提出を自ら公表した。企業価値は直近の資金調達で約8500億ドル(約136兆円)。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが主幹事を務め、早ければ2026年秋の上場を視野に入れる。1週間前にはAnthropicが、同じ週にはSpaceXがIPOに向けて動き出しており、AI業界が一気に公開市場へなだれ込もうとしている。 その渦中での召喚状だ。 OpenAIは声明で「AIは新しく強力なテクノロジーであり、責任ある方法で安全にその恩恵を届けるために毎日取り組んでいる」「州司法長官が提起した懸念を真摯に受け止め

米政府がFable 5とMythos 5を輸出規制。リリース3日で全ユーザーのアクセス停止へ

AI

米政府がFable 5とMythos 5を輸出規制。リリース3日で全ユーザーのアクセス停止へ

6月9日に一般公開されたばかりのClaude Fable 5が、わずか3日で使えなくなった。 6月12日、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官がAnthropicのCEOダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏宛てに書簡を送り、Fable 5とMythos 5を輸出規制の対象に指定した。米国外への提供はもちろん、米国内の外国籍の人物への提供も禁止される。Anthropicの外国籍社員すら対象だ。外国籍のユーザーだけを選別する手段がない以上、Anthropicは全ユーザーのアクセスを止めるしかなかった。他のClaudeモデルには影響しないとしている。 波乱のリリースから72時間 Fable 5とMythos 5は同一の基盤モデルだ。違いはセーフガードの有無だけで、Fable 5にはサイバーセキュリティ、生物・化学、AI蒸留(高性能モデルの出力を使って別のAIを訓練する手法)に関するリクエストを検知する分類器が搭載されている。該当するリクエストを検知すると、応答をClaude Opus 4.8に自動的に切り替える仕組みだった。Mythos 5はこの制限

Windows 11の標準アプリ7本が一斉アップデート。リリースノートも公式化

Windows

Windows 11の標準アプリ7本が一斉アップデート。リリースノートも公式化

Microsoftは6月12日、Windows 11の標準アプリ7本を一斉にアップデートした。対象はペイント、フォト、クロック、電卓、メディアプレーヤー、カメラ、サウンドレコーダー。あわせて、各アプリのリリースノートをMicrosoft Learn上に個別ページとして新設し、変更履歴をアプリ単位で追えるようにしたことも発表している。 「おまけ」から「ソフトウェア」へ 今回の発表で目を引くのは、アプリの中身よりもリリースノートの公式ドキュメント統合のほうかもしれない。 従来、標準アプリのアップデート情報はInsiderビルドのリリースノートに埋もれていた。どのビルドでどのアプリが何を変えたのか追いかけるには、ビルドごとの膨大な変更履歴を自力で掘り返すしかなかった。それが今回、7本すべてに専用ページが用意され、アプリ単位で変更履歴をたどれるようになった。 地味に見える。だが、OS付属の無料アプリに専用の変更履歴ページを設けるという判断は、「おまけ」ではなく正式なソフトウェアとして扱う意思の表れだろう。今後も対象アプリは順次追加される予定だという。 7アプリの主なアップデート

Windows 11、「壊れたら戻せる」復元機能が一般リリース目前へ

Windows

Windows 11、「壊れたら戻せる」復元機能が一般リリース目前へ

Windows 11のRelease Previewチャネルに、3本のプレビュービルドが一斉に公開された。24H2向けのBuild 26100.8728、25H2向けのBuild 26200.8728、そして26H1向けのBuild 28000.2333。変更ログは膨大だが、読者に関わる変化ははっきりしている。PCを丸ごと過去に巻き戻す「ポイントインタイム リストア(特定時点への復元)」、ウィジェットの静粛化、そして目の疲れを軽減する画面カラーオーバーレイだ。 「システムの復元」から20年、ようやく本当の復元が来る 今回のビルドで最も意味が大きいのは、ポイントインタイム リストア(Point-in-time restore)がRelease Previewに到達したことだろう。 2025年11月のIgniteで発表され、2026年4月にInsider Experimentalチャネルで初登場。その機能が、一般リリース直前の段階まで降りてきた。Release Previewは正式版の一歩手前にあたるチャネルだ。ここまで来れば、近い将来の月例アップデートで全ユーザーに届く可能性が高

PCゲームの「あの待ち時間」が消える。まずRadeonから

ゲーミングPC

PCゲームの「あの待ち時間」が消える。まずRadeonから

ゲームを買って、インストールして、さあ遊ぼう。そう思った瞬間に現れる「シェーダーをコンパイルしています」の進捗バー。PCゲーマーなら誰でも知っているあの待ち時間が、Radeonユーザーから先に消え始めた。 PCだけが抱えていた待ち時間 問題の根は、PCというプラットフォームの多様性そのものにある。コンソールならハードウェアが固定されているから、開発者がシェーダーを事前にコンパイルして出荷できる。PCではGPUもドライバも千差万別で、同じことができない。結果として、ゲームの初回起動時にユーザーのマシン上でシェーダーを一からコンパイルする必要が生じる。 数万本のシェーダーをCPUが処理する間、プレイヤーは画面を眺めて待つ。ゲーム側の実装によっては、コンパイルが追いつかない場面でカクつきが発生する。シェーダースタッターと呼ばれる現象だ。Unreal Engineが導入したPSOプリキャッシュなど部分的な緩和策はあるが、根本解決には至っていなかった。 MicrosoftのAdvanced Shader Delivery(ASD)は、このボトルネックを仕組みごと取り除く。ゲームのダウン

KPMGのAIレポートがAI自身に裏切られた

AI

KPMGのAIレポートがAI自身に裏切られた

AIの未来を語るレポートが、AIの欠陥によって崩壊した。四大会計事務所KPMGが2025年10月に公開した旗艦レポートの引用45件中、正確だったのはわずか5件。残り40件の引用タイトルは捏造だった。 45件中5件だけが「本物」 KPMGが公開したレポート「Total Experience: Redefining Excellence in the Age of Agentic AI」は、エージェントAIが世界中の企業でいかに顧客体験を変革しているかをまとめた年次調査の報告書だ。47カ国の事例を並べ、AIの導入がもたらす効果を華々しく描いていた。 このレポートの引用を一件ずつ検証したのが、AI検出ソフトウェアを開発するGPTZeroだった。結果は壊滅的だ。45件の引用のうち、実在するソースを正確に指していたのは5件。28件は実在するソースに近いものの、タイトルや著者が改変されていた。残りの12件はあいまいすぎて照合すら不可能だった。 引用の問題だけではない。引用が支える事実も約半数が虚偽か誤帰属だったとGPTZeroは報告している。 存在しない導入事例が並ぶ レポートの第