岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Xbox分離・売却の選択肢が浮上。利益率わずか3%の現実

ゲーム

Xbox分離・売却の選択肢が浮上。利益率わずか3%の現実

MicrosoftがXbox部門の組織再編を検討していることが明らかになった。完全なスピンオフ、LinkedInやGitHubと同様の完全子会社化、外部パートナーとのジョイントベンチャーという3つの選択肢が俎上に載っている。即座に実行する計画はないというが、サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOとエイミー・フッド(Amy Hood)CFOは、それによってXboxの事業が改善するなら再編を排除しない姿勢だという。 「売りやすくする」ための構造 報じたのはThe Informationで、Microsoft内部の議論に直接通じる3人の関係者を情報源としている。報道はこれらの選択肢を「将来の売却を容易にする」構造として位置づけている。 完全子会社化の先例にはLinkedInとGitHubがある。Microsoftが100%株式を保有しながら、独自のブランドと経営判断を維持する独立性が認められた形態だ。Xboxをこの形に移行すれば、Microsoft本体の高い利益率基準から切り離しつつ、必要に応じて株式を外部に放出する道が開ける。 ジョイントベンチャーなら、外部資本を取

RTX PRO 6000 Blackwell、公式価格が約212万円に跳ね上がる

GPU

RTX PRO 6000 Blackwell、公式価格が約212万円に跳ね上がる

NVIDIAが自社のオンラインストアで、ワークステーション向けフラッグシップGPU「RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition」の価格を1万3250ドル(約212万円)に設定した。2025年3月の発売当初、米国の小売店では8000ドル台だったこのカードが、1年余りで別の価格帯に移った。 73%の値上げ、公式アナウンスはゼロ RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionは、2025年3月のGTCで発表されたBlackwellアーキテクチャのプロ向け最上位モデルだ。GB202 GPUに2万4064基のCUDAコア、96GBのGDDR7 ECCメモリ、600WのTDPを備え、Blackwell世代で唯一96GBを搭載するカードでもある。 発売当初、米国の小売価格は8435〜8565ドルだった。予約段階ではパッケージや販売店によって7673ドルまで下がった記録もある。2025年11月には米Neweggで7999ドルという値下げ表示すら出ていた。 それが今、NVIDIAの公式Marketplaceに1万3

Metaが社内AIトークン使い放題を撤回。コスト抑制へ転換

AI

Metaが社内AIトークン使い放題を撤回。コスト抑制へ転換

4月には社内リーダーボード「Claudeonomics」で従業員同士がAIトークン消費量を競い合い、30日間で60兆トークンを燃やしていた。それからわずか2カ月。Metaは6月9日付の社内メモで、従業員のトークン使用量に上限を設け、社内AIツールMetaCodeへの移行を促す方針を打ち出した。 「使い放題」から「制限」へ、2カ月で180度転換 報じられた社内メモの内容は端的だった。2026年の社内AI関連支出の予測が数十億ドル規模に達したことを受け、個人やチーム単位でのトークン使用量の可視化、予算の設定、使いすぎへの自動通知を導入する。2027年にはさらに踏み込んだ管理体制に移行するという。 ほんの数カ月前まで、Metaは真逆のことを言っていた。CTOのアンドリュー・ボズワース(Andrew Bosworth)氏は2月の技術カンファレンスで、トップエンジニアが自身の給与に相当する額をトークンに費やし、生産性が5〜10倍に跳ね上がったと語っている。「簡単に元が取れる。上限なしでやれ」。 その号令を真に受けた結果がClaudeonomicsだった。8万5000人以上の従業員が参加

EXPO ULL、600シリーズにも展開開始。今のメモリでは使えない

メモリ

EXPO ULL、600シリーズにも展開開始。今のメモリでは使えない

AMDがComputex 2026で発表した「EXPO ULL」(Ultra Low Latency)が、マザーボード各社のBIOS更新を通じて、旧世代の600シリーズにまで広がり始めた。サブタイミングの自動最適化でゲーミング性能を底上げする技術だが、恩恵を受けるには対応メモリの購入が必須。DDR5が高騰を続けるこの状況で、AM5ユーザーにとってどこまで現実的な選択肢になるのか。 やっていることは単純。やれなかった理由がある EXPO ULLの仕組み自体はシンプルだ。 メモリのオーバークロックプロファイルであるEXPO(Intelで言うXMP)は、これまでCL・tRCD・tRP・tRASという4つのプライマリタイミングしか規定できなかった。問題は、性能に大きく効くセカンダリ・ターシャリタイミングだ。BIOSはJEDECの緩いデフォルト値をそのまま当てるため、詰めたければユーザーが手動でやるしかなかった。 G.Skillが明かしたところによると、EXPO ULLはこの制限を取り払う。メモリベンダーが工場でセカンダリタイミングまで詰め、その設定値をSPDに書き込む。ユーザーはBI

スペースX、史上最大のIPOで時価総額2兆ドル超え

テクノロジー

スペースX、史上最大のIPOで時価総額2兆ドル超え

2026年6月12日、スペースXがナスダック市場に上場した。ティッカーシンボルはSPCX。公募価格135ドルに対して初値は150ドル、終値は160.95ドル。初日の上昇率は約19%。時価総額は一時2.25兆ドル(約360兆円)に達し、終値ベースでも約2.1兆ドル(約336兆円)を記録した。史上最大のIPOを、宇宙企業がやり遂げた。 750億ドルの調達、サウジアラムコの2.5倍 スペースXは5億5,556万株を1株135ドルで売り出し、約750億ドル(約12兆円)を調達した。オーバーアロットメント(追加売出し枠)を含めると最大約860億ドル。2019年にサウジアラムコが記録した294億ドルの2.5倍を超える。 主幹事はゴールドマン・サックス。モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン・チェースの4社が続いた。 個人投資家への配分が異例だった。通常のIPOでは5〜10%にとどまるリテール枠を、スペースXは最大30%まで拡大する方針を打ち出していた。マスク氏を支持する個人投資家層を安定株主として取り込む狙いがあるとみられる。日本にも割り当てがあった。

Steam調査にRDNA 4がようやく登場。数字の裏にある15か月の空白

GPU

Steam調査にRDNA 4がようやく登場。数字の裏にある15か月の空白

2025年3月に発売されたRadeon RX 9070 XTが、ようやくSteamハードウェア調査のGPUランキングに姿を現した。25位にシェア約1.3%で初登場し、すぐ上にはGeForce RTX 5080の約1.5%。数字だけ見れば僅差だが、問題はそこではない。なぜ発売から15か月もかかったのか。 数字の全体像 Valveが公開した2026年5月分の調査で、RDNA 4世代が一斉にランキング入りした。RX 9070 XTに加え、2025年6月発売のRX 9060 XTが39位(約0.72%)、RX 9070は90位(0.18%)。これまで名前のなかったカードが、同じ月に3枚まとめて出現した。 GPU全体のトップは相変わらずGeForce RTX 3060で4.02%。2位と3位にはRTX 4060のノートPC版(3.99%)とデスクトップ版(3.74%)が入り、NVIDIAの上位独占に変化はない。NVIDIAのGPUシェアは全体の72.42%、AMDは19.13%

AMD、RMA拒否判断を撤回 保証対応の経緯を整理

ハードウェア

AMD、RMA拒否判断を撤回 保証対応の経緯を整理

Ryzen 9 7950X3Dの基板が膨らみ、保証交換を求めたユーザーが門前払いを受けた。マザーボードメーカーは「うちに非はない」と言い、AMDは「物理的損傷だから対象外」と突き放す。11万円のCPUが突然壊れたのに、どちらも引き受けない。その膠着を動かしたのは、海外の有名テックチャンネルのたった一言だった。 何が起きたのか 台湾のユーザーが2023年5月、GIGABYTE X670E AORUS MasterにRyzen 9 7950X3Dを載せてPCを組んだ。手動オーバークロックはしておらず、メモリのEXPOプロファイルを有効にしただけの標準的な構成だった。 2026年4月28日、アイドル状態で突然「パン」と大きな音がし、システムが落ちた。以降、二度と起動しない。 マザーボードはGIGABYTEの検査でBIOSの破損が見つかったものの、再書き込み後に別のRyzen 9 7950X3Dで64時間以上のストレステストを通過している。ソケットピンに軽微な曲がりがあったが修正済みで、短絡もなし。GIGABYTEの結論は明快だった。マザーボードに障害はない。 問題はCPUの裏面だ

パランティアCEOが問う「AIラボの死角」。企業の不満とIPOの季節

AI

パランティアCEOが問う「AIラボの死角」。企業の不満とIPOの季節

AnthropicとOpenAIが兆ドル規模のIPOに向けて走るなか、パランティアのアレックス・カープ(Alex Karp)氏がCNBCのインタビューで、企業顧客のAIラボ離れを明言した。「フロンティアAIラボに不満を持っているのは、一般の人だけではない。私たちが取引しているすべての企業顧客が、非公式の場でそう言っている」。 この発言の重みは、タイミングにある。Anthropicが6月1日にS-1を極秘提出し、OpenAIがその1週間後に続いた。両社とも2026年後半の上場を見据え、企業価値はAnthropicが約9650億ドル(約154兆円)、OpenAIが約8520億ドル(約136兆円)と報じられている。AI史上最大のIPOレースが始まったその瞬間に、エンタープライズAI企業のトップが「顧客は怒っている」と言い切った。 「tokenmaxxing」という告発 カープ氏がインタビューで繰り返し使った造語がtokenmaxxingだ。AIのトークン(処理の基本単位)の消費量を最大化すること自体が目的になり、ビジネスの成果につながっていないという批判を一語に凝縮している。 この

Arch LinuxのAURが400件超のマルウェア汚染。その手口と対処法

Linux

Arch LinuxのAURが400件超のマルウェア汚染。その手口と対処法

Arch Linuxのユーザーリポジトリ「AUR」で、400件を超えるパッケージにマルウェアが仕込まれていたことが明らかになった。公式リポジトリは無事だが、AURを日常的に使っているなら、今すぐ自分の環境を確認すべき事態だ。 何が起きたのか 2026年6月11日、AURのメーリングリストにメンテナーのヨナタン・グローテリュッシェン(Jonathan Grotelüschen)氏が緊急の報告スレッドを立てた。AUR上の多数のパッケージに悪意あるコミットが挿入されており、現在すべての削除・リセットとアカウントBANを進めているという内容だ。 コミュニティメンバーのアンドレ・ヘルプスト(André Herbst)氏がAURのリードオンリーミラーを調査したところ、atomic-lockfileという不審なnpmパッケージのインストールを含むパッケージが約408件見つかった。セキュリティ企業Sonatypeはこの攻撃を「Atomic Arch」と命名し、独自調査を公開している。 今回の被害は AURに限定 されており、Arch Linuxの公式リポジトリ(core、extra等)は影響

米国の令状なし監視法、史上初の失効へ。人事の混乱が引き金に

セキュリティ

米国の令状なし監視法、史上初の失効へ。人事の混乱が引き金に

外国情報監視法(FISA)の第702条が、6月12日をもって史上初めて失効する。NSA(国家安全保障局)やFBIが令状なしで米国市民の通信を収集してきた法的根拠だ。下院は延長法案を採決にかけたが、賛成198・反対218で否決された。可決には3分の2の賛成が必要だったが、共和党からも19名が反対に回り、単純過半数にすら届かなかった。 失効の直接の引き金は、法律そのものへの反対ではない。トランプ大統領が情報機関トップに据えようとした人事が、与野党の拒絶を招いた。 住宅官僚がスパイ長官に 5月22日、トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)国家情報長官が辞任を表明した。夫のアブラハム・ウィリアムズ(Abraham Williams)氏がまれな骨がんと診断され、闘病を支えるためだという。6月30日付の退任で、後任人事が急務になった。 トランプ大統領が6月2日に指名したのは、連邦住宅金融庁(FHFA)長官のビル・パルト(Bill Pulte)氏。ファニーメイとフレディマックの会長も兼任する38歳の不動産業界出身者で、情報機関での経験はない。 パルト氏がFHFAで何をしてき

ポケモンGOで遊んでいた人のデータが、軍事ドローンの技術を育てていた

AI

ポケモンGOで遊んでいた人のデータが、軍事ドローンの技術を育てていた

ポケストップを撮影してゲーム内報酬をもらう。何億人ものプレイヤーにとって、それはただの日課だった。だがその映像は、GPSが使えない戦場で自律飛行するドローンのナビゲーション技術の訓練素材になっていた可能性がある。Niantic Spatialは「現在のデータ共有はない」と否定した。だが「過去に訓練に使ったか」への答えは、それとは別だ。 300億回のスキャンが辿った道 ポケモンGOは2021年、プレイヤーにポケストップ周辺の建物や街路を短い動画で記録する「ARスキャン」機能を導入した。機能への参加は任意だが、参加するとナイアンティックに映像データの再利用・第三者提供を認める追加規約を受け入れる必要があった。集まったスキャンの数は約300億件。公園の噴水も、駅前のモニュメントも、人によっては自宅の室内すらも、3Dモデルの素材になった。 これらのデータはすべてNiantic Spatialが保有している。ナイアンティックは2025年5月、ゲーム事業をサウジアラビア政府系ファンド傘下のスコープリーへ約35億ドル(約5000億円)で売却した。一方、地図・空間AI技術は切り離し、創業者のジ

AIモデル、選んで使う時代。価格戦争の本当の勝者

AI

AIモデル、選んで使う時代。価格戦争の本当の勝者

OpenAIとAnthropicの値下げ合戦が取り沙汰されている。だが企業はとっくに動いていた。フロンティアモデルは「必要なときだけ呼ぶ高級品」へと変わりつつある。 企業はもう忠誠を誓っていない 先日の記事でOpenAIがトークン単価の大幅引き下げを検討していると伝えた。Anthropicとの価格戦争が始まろうとしている、と。だが続報が映す現実は、予想とは少し違っていた。 戦いはもう始まっている。しかも戦場を動かしているのは、OpenAIでもAnthropicでもない。企業の現場だ。 大企業やスタートアップの間で、複数のAIモデルを動的に切り替えて使うツールが急速に広がっている。中国のDeepSeekやAlibabaのモデルを含む安価なオープンソースAIを日常業務に回し、OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaudeは複雑なタスクにだけ使う。この「モデルミックス」戦略で、AIコストを最大95%削減した企業もあるという。 バグ検出スタートアップDetailの創業者ダン・ロビンソン(Dan Robinson)氏は、ワークロードの90%をClaudeとGoogle

AMDの自動更新ツール脆弱性、修正に124日。報奨金はゼロ

セキュリティ

AMDの自動更新ツール脆弱性、修正に124日。報奨金はゼロ

2月に報じたAMDの自動更新ツールの脆弱性が、ようやく修正された。ただし「修正された」の裏側に、4か月間の沈黙と報奨金の拒否、そして修正そのものの品質への疑問が残る。 「スコープ外」から一転、修正へ 2026年1月27日、ニュージーランドのセキュリティ研究者ポール(MrBruh)が、AMDの自動更新ツールに脆弱性を発見した。ドライバーのダウンロードにHTTPが使われており、中間者攻撃でリモートコード実行が可能だった。ダウンロードされたファイルの署名検証も行われていなかった。 2月6日にAMDのバグバウンティプログラムに報告したところ、即日「中間者攻撃はスコープ外」として却下された。ポールがブログで脆弱性を公開し、Hacker Newsで注目を集めると、翌日にはAMD PSIRT(製品セキュリティ対応チーム)から「内部で再検討する」と連絡が入った。ネット上の反響がなければ、修正されなかったかもしれない。 報奨金は出さないが、口は閉じてほしい AMD側はポールに対し、CVEの発行と研究者としてのクレジットを約束した。だが報奨金の支払いは拒否した。「オプションのツールであり、中

Googleが自社AI悪用の犯罪ネットワークを提訴。その中身が深刻だ

セキュリティ

Googleが自社AI悪用の犯罪ネットワークを提訴。その中身が深刻だ

スマートフォンに届く「荷物を預かっています」「料金が未払いです」という見覚えのないSMS。日本でも日常化したこの手口の裏側に、AIで武装した巨大な犯罪インフラが存在する。Googleがその実態を訴状という形で明らかにした。 自社のAIが犯罪の道具になっている Googleは2026年6月12日、中国に拠点を置くとみられるサイバー犯罪ネットワーク「Outsider Enterprise」を、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提訴した。 訴状の核心は、この犯罪グループがGoogleのAIチャットボットGeminiを使い、フィッシングサイトのコードを生成していたという事実だ。Geminiに偽の「ギフト引き換えページ」のHTMLコードを書かせ、それを犯罪プラットフォームに取り込む。その過程を撮影したチュートリアル動画まで組織内で共有されていたと、Googleは訴状の中で主張している。 Geminiの悪用を理由にGoogleが法的措置を取るのは、今回が初めてだ。 週1万4000円で誰でも詐欺師になれる仕組み Outsider Enterpriseが提供していたのは、「フィッシン