岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
IPO直前のOpenAIが値下げを検討。Anthropicとの価格戦争が始まろうとしている

AI

IPO直前のOpenAIが値下げを検討。Anthropicとの価格戦争が始まろうとしている

OpenAIがAPIのトークン価格を大幅に引き下げる検討に入った。事情に詳しい関係者の話として報じられた。Anthropicも同様の値下げに踏み切るとの見通しが背景にあり、両社が同時にIPO準備を進めるなかで、本格的な価格戦争の号砲になりかねない。 値下げの構図 OpenAIがいま検討しているのは、AIサービスの課金単位であるトークンの単価を大幅に引き下げることだ。Anthropicに流れた顧客を取り戻す狙いがあるとされるが、関係者によれば議論はなお流動的で、最終決定には至っていない。 背景にあるのはAnthropicの急成長だ。ARR(年間経常収益)は2025年末の約90億ドル(約1兆4000億円)から、2026年5月には約470億ドル(約7兆5000億円)へと跳ね上がった。牽引役はClaude Code。ソフトウェアエンジニアの間で爆発的に広がり、年間100万ドル以上を支出するエンタープライズ顧客は1000社を超えた。5月28日に完了したSeries Hでの企業価値評価は9650億ドル(約154兆円)。OpenAIの8520億ドル(約136兆円)を初めて上回り、未上場AI企

YouTubeが7年ぶりにDM機能を復活。ただし日本は対象外

YouTube

YouTubeが7年ぶりにDM機能を復活。ただし日本は対象外

YouTubeがアプリ内メッセージング機能の提供範囲を拡大した。2019年に廃止されたDM機能が招待制で復活し、米国・英国・ブラジル・シンガポールの4か国が新たに加わった。ただし、日本は現時点で対象に含まれていない。 「最もリクエストが多かった機能」の再挑戦 YouTubeは2026年6月10日、アプリ内で動画を共有しながらチャットできるメッセージング機能を米国など4か国に拡大すると発表した。 YouTubeにDM機能が搭載されるのは、実はこれが初めてではない。2017年にモバイルアプリ向けのメッセージ機能をリリースしたが、利用率が伸びず、2019年9月に廃止された。当時の説明は「パブリックな会話の改善に注力する」という簡素なもので、一部の若年ユーザーからは不満の声が上がったものの、大半の利用者にとっては「そんな機能あったのか」という程度の存在だった。 ところが廃止後、ユーザーからの復活要望は続いた。YouTube自身が「最もリクエストの多かった機能」と認めるほどで、2025年11月にアイルランドとポーランドで小規模なテストとして復活。2026年3月にはヨーロッパ31か国へ拡

壊れたSSDに「購入時の価格」を返す。Samsungの保証対応が法廷へ

SSD

壊れたSSDに「購入時の価格」を返す。Samsungの保証対応が法廷へ

「修理する権利」の活動家として知られるルイス・ロスマン(Louis Rossmann)氏が、Samsungへの提訴を予告した。保証期間内に故障した4TB SSD「990 PRO」の交換をSamsungが拒み、購入時の価格での返金を提示したことが発端だ。同じ製品がAmazonのSamsung公式ストアで約3倍の価格で売られている現在、「返金」は実質的な交換拒否と変わらない。 故障から始まった保証交渉 ロスマン氏は約18カ月前にBest Buyで990 PRO 4TBを約330ドル(約5万3000円)で購入した。ヒートシンクの上に80mmファン2基を載せて冷却し、RAID 1で運用していた。酷使とは程遠い環境だ。RAID 1のおかげでデータは無事だったが、SSDはアレイから繰り返し脱落し、最終的に使用不能になった。 990 PRO 4TBの保証条件は「5年間または2400TBW(総書き込み量)のいずれか早い方」。ロスマン氏のSSDはどちらの上限にも達していなかった。 ロスマン氏はエラーログを添えてSamsungに連絡。Samsung側は最初の返答でログの内容を認め、故障に同意する

Windows、23年越しの「信頼」を断ち切る。6月更新でフォルダアイコンが消える理由

セキュリティ

Windows、23年越しの「信頼」を断ち切る。6月更新でフォルダアイコンが消える理由

2026年6月のWindows更新プログラムを適用したあと、見慣れたフォルダのカスタムアイコンが消えていることに気づく人が出てくるかもしれない。日本語だったフォルダ名が英語に戻り、アイコンが既定の黄色いフォルダに変わる。バグではない。Microsoftが「仕様」と明言した、セキュリティ強化の結果だ。 対象はdesktop.ini。フォルダの見た目を制御する隠しシステムファイルである。 23年前から開いていた穴 desktop.iniは、フォルダごとにカスタムアイコンや表示名、ツールチップなどを定義する設定ファイルだ。エクスプローラーがフォルダを開くたびにこのファイルを自動で読み込み、見た目に反映する。ユーザーが意識する機会はほとんどない。 問題は「自動で読み込む」の部分にある。 2003年、MicrosoftはセキュリティアドバイザリMS03-027を公開した。Windowsシェルがdesktop.iniのカスタム属性を解析する処理に、未検証のバッファが見つかった。細工されたdesktop.iniを含むフォルダを開くだけで、ログインユーザーの権限で任意のコードが実行されうる

動物園の隣にデータセンターは建つのか。ナッシュビルの答え

データセンター

動物園の隣にデータセンターは建つのか。ナッシュビルの答え

ヒョウの展示場から50ヤード。そこにデータセンターを建てるという計画が、36万筆の署名、グラミー賞歌手の怒り、そして市議会の緊急立法を引き出した。 50ヤードの距離 米テネシー州ナッシュビル。350を超える種、3700を超える動物を飼育し、年間140万人が訪れるナッシュビル動物園のすぐ隣で、データセンター建設が許可段階まで進んでいた。 開発元はアトランタに本拠を置くDC BLOX。ナッシュビル南部のグラスミア・ビジネスパーク(648 Grassmere Park)に約6400平方メートルの平屋建てデータセンターを計画し、建設許可を申請した。敷地は約9.5ヘクタール。動物園の東側に隣接し、以前は別のデータセンターが運営されていた場所だ。 だが申請されたのは入口に過ぎなかった。動物園側が入手した2026年2月付けの地質調査報告書には、10メガワットの第1棟だけでなく3階建て・40メガワットの第2棟、変電所、非常用発電設備が記載されていた。合計50メガワットは一般家庭約4万戸分の電力に相当する。 動物園は、騒音・光害・振動が希少種に深刻な影響を与えると訴えている。ウンピョウ(雲豹

Xboxがまた大規模な人員削減へ。200億ドル投資の果ての「リセット」

ゲーム

Xboxがまた大規模な人員削減へ。200億ドル投資の果ての「リセット」

Microsoftのゲーム部門Xboxが、6月30日の会計年度末を境に大規模な人員削減を実施する見通しだ。正確な規模はまだ明らかになっていないが、数千人規模に達するとの見方もある。マーケティング予算も大幅に削る計画で、スタジオの閉鎖が含まれる可能性も報じられている。 5つの「現実」を突きつけた社内メール 6月10日、XboxのCEOアーシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏と、最高コンテンツ責任者マット・ブーティ(Matt Booty)氏が全世界のXbox社員に向けて社内メールを送った。その全文は同日、Xbox Wire上でも公開された。タイトルは「Next 100 Days: Xbox Reset」。2月の就任から100日間の成果を振り返ったうえで、事業が直面する5つの「現実」を列挙している。 最も重い数字は2つ目に記されていた。Activision Blizzard Kingを除く過去5年間で、Xboxはコンテンツ・プラットフォーム・ハードウェア補助金に200億ドル以上を投じた。にもかかわらず、同期間の年間収益は約5億ドル減少している。今期のアカウンタビリティマージン(

AIが賢くなるほど、測れない仕事だけが価値を持つ。ある投資家の逆説

AI

AIが賢くなるほど、測れない仕事だけが価値を持つ。ある投資家の逆説

AnthropicとNVIDIAに全額突っ込んで帰ればいい。どうせ他に投資先はない。2026年半ば、シリコンバレーのAI投資家たちにそんな空気が漂っていると、ある論考が書き出す。書いたのはAI特化VCファームConviction創業者のサラ・グオ(Sarah Guo)氏。6月10日に自身のSubstackへ投稿されたこの一本が、その絶望に正面から反論を試みている。 「測れる仕事」の末路 グオ氏はGreylockで約10年ジェネラルパートナーを務めた後、2022年にConvictionを設立した。Harvey、Mistral、Sierra、Basetenといった現在注目を集めるAIスタートアップに初期から投資しており、自らの投資先を題材にしながら、AIアプリケーション企業が基盤モデル層に吸収されるという悲観論への反論を試みている。 出発点は明快だ。ベンチマークで測れる仕事は、遅かれ早かれコモディティになる。 グオ氏はソフトウェア開発を最初の例にとる。Cognitionの自律型コーディングエージェントDevinは2024年の登場時、標準ベンチマークの達成率が13%で冷笑された。1

AI導入後も週約6時間の新しい雑務 英国調査で生産性効果を検証

AI

AI導入後も週約6時間の新しい雑務 英国調査で生産性効果を検証

英国のオフィスワーカー1500人を対象にした調査が、AIツールの現実を突きつけた。AIは週12時間を節約してくれる。だがその裏で、従業員は週5.8時間を「ボットシッティング」に費やしている。AIが1時間で吐き出した成果物を、人がもう1時間かけて使えるものに仕上げている計算だ。 「ボットシッティング」とは何か 企業向けAIプラットフォームを手がけるGlean Technologies(グリーン テクノロジーズ)の研究部門Work AI Instituteが2026年6月10日に公開した「The Work AI Index: UK 2026」が、この実態を報告した。 調査対象はAIツールを業務で使う英国のデスクワーカー1500人。90%が業務でのAI利用を義務づけられ、80%が週に複数のAIツールを使い、39%は4種類以上を併用している。これだけ普及しても、「AIが組織のパフォーマンスを大きく改善した」と答えた従業員は18%にとどまった。 英国AI普及率と効果実感のギャップ ※ Work AI Institute「The Work AI Index

ロジクール初の折りたたみマウス。79gのMobi Foldは「持ち歩かない問題」を解くか

PC周辺機器

ロジクール初の折りたたみマウス。79gのMobi Foldは「持ち歩かない問題」を解くか

マウスを持っているのに持ち歩かない。ロジクール自身の調査が浮き彫りにした矛盾に、同社は「折りたたむ」という直球で応えた。 ポケットに入るマウスという回答 ロジクールは2026年6月10日、同社初の折りたたみ式ワイヤレスマウス「Mobi Fold」を発表した。本体を二つ折りにするとシャツの胸ポケットに収まるサイズになり、開けばそのまま通常のマウスとして使える。 同社の調査によると、外出先で仕事をする人の72%がマウスを所有しているにもかかわらず、公共の場で実際に使っている人はわずか26%にとどまる。かさばるから。重いから。従来のマウスはカバンの中で場所を取り、ポケットには入らない。結果として多くの人がノートPCのトラックパッドで妥協している。 Mobi Foldは、このギャップに対するロジクールなりの答えだ。 折りたたみケータイのように 開いた状態で122×57×33mm。折りたたむと66×57mm、厚さはわずか21mmになる。重さ79g。スマートフォンより軽い。 MicrosoftのSurface アーク マウスを連想する人もいるだろう。フラットにして持ち運び、曲げて

Claude Desktopが毎回1.8GBのメモリを奪う。チャットだけでも

AI

Claude Desktopが毎回1.8GBのメモリを奪う。チャットだけでも

Claude Desktopが、起動するたびにHyper-V仮想マシンを立ち上げている。消費メモリは約1.8GB。チャットしか使わなくても、バックグラウンドでVMが常駐する。2月に報告されたこのバグは4カ月近く放置されたまま、6月11日にHacker Newsのトップへ浮上し、議論が一気に広がった。 「安全のためのVM」が、同意なく常駐する Claude Desktopには「Cowork」と呼ばれるエージェント機能がある。ユーザーのPC上でファイル操作やコード実行を行う機能で、コードがホストOSに直接触れないよう、サンドボックス化された仮想マシンの中で動く。設計思想は理にかなっている。 問題は、このVMがCoworkを使うかどうかに関係なく、Claude Desktopを起動した瞬間に立ち上がることだ。 2月27日にGitHubのClaude Codeリポジトリに投稿されたバグレポート(Issue #29045)が、技術的な詳細を丁寧に記録している。報告者はWindows 11 Pro搭載のノートPC(16GB RAM)で調査を行い、次の事実を突き止めた。 Claude D

KWinの「安全マージン」がLinuxゲーマーから奪っていた数ミリ秒。その構造と対策

Linux

KWinの「安全マージン」がLinuxゲーマーから奪っていた数ミリ秒。その構造と対策

Linuxでゲームをする人なら、一度は感じたことがあるだろう。Windowsと比べて、どこかマウスがふわつく。設定を変えたわけでもないのに、ある日突然操作が重くなる。KDE Plasma環境でその原因を突き止め、コンポジタの内部に手を入れた開発者が現れた。 「なぜLinuxのほうが遅いのか」を計測で証明する ポーランドの開発者ヤクブ・オコンスキ(Jakub Okoński)氏が6月7日に公開したブログ記事は、LinuxとWindowsのゲーミングレイテンシを徹底的に比較した調査報告だ。 計測手法はハードウェアベース。Teensyマイクロコントローラにオープンソースのレイテンシ測定ファームウェア(Open Source LDAT)を書き込み、USBマウスとして動作させつつ、光センサーで画面の輝度変化を検知する。マウスクリックから画面に変化が現れるまでの「クリック・トゥ・フォトン」レイテンシを、数百サンプル単位で自動記録できる。 テスト環境はAda世代のGeForce RTXとZen 4 CPUを搭載したデスクトップとノートPC。KDE Plasma 6.6.4のWaylandセ

GoogleのAI検索が「嘘」の責任を負う。ドイツの判決が突きつけた現実

AI

GoogleのAI検索が「嘘」の責任を負う。ドイツの判決が突きつけた現実

Googleの検索結果に表示されるAI生成の要約「AIによる概要」(AI Overviews)が、実在する企業を詐欺や悪質な商慣行と虚偽の結びつきで中傷した。しかもその内容は、AI自身がリンク先のどのソースにも書かれていない「独自の主張」を作り出したものだった。ミュンヘン地方裁判所はGoogleに仮処分命令を下した。AIの出力はGoogleの自社コンテンツであり、検索エンジンの免責は適用されない、と。 「AIの言葉はGoogleの言葉だ」 5月28日、ミュンヘン地方裁判所は、Google検索の「AIによる概要」を通じてミュンヘンの出版社2社に関する虚偽の主張を拡散することを禁じる仮処分命令を出した(事件番号26 O 869/26)。 事の発端はこうだ。特定の検索クエリに対してGoogleの「AIによる概要」が、この2社を詐欺、サブスクリプション詐欺、不正な商慣行と結びつける内容を表示した。裁判所の認定によれば、AIは実際には無関係な別の悪質企業の情報を原告の出版社と混同し、リンク先のどのソースにも存在しない結びつきを自ら作り出していた。 出版社側はGoogleに警告書を送った

「1語ずつ書く」を外した実験モデル、DiffusionGemma。速さの意味と代償

AI

「1語ずつ書く」を外した実験モデル、DiffusionGemma。速さの意味と代償

AIが文章を生む方法が、根本から変わるかもしれない。Google DeepMindが6月10日に公開したDiffusionGemmaは、画像生成AIと同じ「拡散」の仕組みをテキスト生成に持ち込んだ実験的なオープンモデルだ。従来の言語モデルが1トークンずつ左から右へ順番に文章を出力するのに対し、DiffusionGemmaは256トークンの文章ブロックをまるごと同時に生成する。NVIDIA H100上で毎秒1000トークン超、GeForce RTX 5090上でも毎秒700トークン超。自己回帰型の最大4倍にあたる速度だ。 ただし代償ははっきりしている。DiffusionGemmaの出力品質は同サイズの自己回帰型モデルGemma 4を下回る。品質最優先の用途にはGemma 4を推奨すると公式ブログに明記されている。あくまで研究段階の実験モデルであり、「拡散でテキストを生む」という新しいパラダイムの可能性と課題を開発者とともに探るための公開だ。 画像生成の発想で文章を書く 拡散モデルの発想は、AIの世界では珍しくない。Stable DiffusionやMidjourneyが画像を生む

Anthropic CEOが自らAI規制を求めた。その提言の中身

AI

Anthropic CEOが自らAI規制を求めた。その提言の中身

Anthropicのダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOが2026年6月10日、個人ブログに約1万語のエッセイ「Policy on the AI Exponential」を公開した。AI規制、雇用政策、バイオ医療、市民的自由、地政学の5分野にわたる政策提言だ。エッセイの公開に合わせ、Anthropicはフロンティアモデルの第三者テストに関する立法提案と、雇用喪失に対する政策フレームワークも発表している。 「透明性」では足りなくなった エッセイの核心は一文に集約できる。「透明性の先へ進むべき時が来た」。 アモデイ氏は2024年から2025年にかけて、AIの規制はまず透明性から始めるべきだと主張してきた。リスクの形がまだ見えない段階で細かなルールを決めれば、的外れなコンプライアンスに労力を費やすだけで本当の危険は素通りする。Anthropicが2025年にカリフォルニア州SB 53(AI透明性法)を支持し、ニューヨーク州RAISE法、イリノイ州SB 315の成立を後押ししたのは、その思想の延長線上にある。 しかし今回、アモデイ氏はその立場を明確に更新した。 転機は