岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Anthropic CEOが自らAI規制を求めた。その提言の中身

AI

Anthropic CEOが自らAI規制を求めた。その提言の中身

Anthropicのダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOが2026年6月10日、個人ブログに約1万語のエッセイ「Policy on the AI Exponential」を公開した。AI規制、雇用政策、バイオ医療、市民的自由、地政学の5分野にわたる政策提言だ。エッセイの公開に合わせ、Anthropicはフロンティアモデルの第三者テストに関する立法提案と、雇用喪失に対する政策フレームワークも発表している。 「透明性」では足りなくなった エッセイの核心は一文に集約できる。「透明性の先へ進むべき時が来た」。 アモデイ氏は2024年から2025年にかけて、AIの規制はまず透明性から始めるべきだと主張してきた。リスクの形がまだ見えない段階で細かなルールを決めれば、的外れなコンプライアンスに労力を費やすだけで本当の危険は素通りする。Anthropicが2025年にカリフォルニア州SB 53(AI透明性法)を支持し、ニューヨーク州RAISE法、イリノイ州SB 315の成立を後押ししたのは、その思想の延長線上にある。 しかし今回、アモデイ氏はその立場を明確に更新した。 転機は

Claude Fable 5のガードレールが守る側を締め出す問題

AI

Claude Fable 5のガードレールが守る側を締め出す問題

Anthropicが6月9日に一般公開したClaude Fable 5に、セキュリティ研究者から不満が噴出している。Mythosクラスの能力を安全装置つきで開放したモデルだが、そのフィルターがセキュリティの正当な業務まで遮断しているという指摘が発表翌日から相次いでいる。 「ブログ記事を読ませるだけで弾かれる」 Fable 5には、サイバーセキュリティ・生物化学・蒸留(モデルの能力コピー)の3分野を検知するフィルターが組み込まれている。関連するプロンプトを検知するとFable 5は応答せず、下位モデルのClaude Opus 4.8が代わりに回答する。Anthropicによれば、このフォールバックが発動するのはセッション全体の5%未満。残り95%超ではMythos 5と実質同等の性能が出るとしている。 だが、この5%に引っかかる側の体験はまるで違う。 Claude Fable 5 vs Mythos 5:同一モデル、異なるアクセス Fable 5Mythos 5対象ユーザー全ユーザー (API・サブスク)Glasswing パートナーサイバー セ

採用面接を悪用する国家系ハッカー 企業への侵入手口を整理

セキュリティ

採用面接を悪用する国家系ハッカー 企業への侵入手口を整理

テック業界を狙った国家支援型サイバー攻撃の約半数が、北朝鮮の工作員によるものだった。セキュリティ大手CrowdStrikeが6月9日に公開した年次レポートが、その実態を数字で裏付けた。偽の履歴書、偽の顔、偽の国籍。AIで武装した工作員は採用プロセスから企業の内側に入り込み、給料をもらいながら情報を盗んでいる。 テック業界の侵入、47%が北朝鮮 CrowdStrikeの「2026 Technology Threat Landscape Report」は、2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間を対象としたレポートだ。280以上の脅威グループを追跡するCounter Adversary Operationsチームが、テクノロジー業界に対する国家支援型の「ハンズオン・キーボード」侵入(ハッカーが手動で操作する攻撃)を集計した結果、47%を北朝鮮関連のFAMOUS CHOLLIMAが占めた。 テック業界全体でみれば、国家支援型の標的型侵入の58%超は中国系グループによるものだ。だが、人間が直接キーボードを叩いて侵入する攻撃に限ると、北朝鮮が突出する。自動化されたマルウェア

AMDが自社ベンチマークでNVIDIA Veraに反撃。数字の裏を読む

AI

AMDが自社ベンチマークでNVIDIA Veraに反撃。数字の裏を読む

2週間前、NVIDIAがPhoronixに限定公開したVera CPUのベンチマークが業界を揺らした。88コアのArm CPUが、Intel Xeon 6980PやAMD EPYCといったx86勢を複数のテストで上回ったからだ。NVIDIAのCFOコレット・クレス(Colette Kress)氏は決算説明会で「今年のCPU売上は約200億ドルに達する見通し」と語り、「世界最大のCPUサプライヤーになる」と宣言した。 AMDが黙っているわけがない。 100kWラックという土俵 AMDが6月10日に公式ブログで公開したのは、ラック単位の総合スループット比較だ。条件は100kWの電力枠。この枠内に何台のサーバーを詰め込み、どれだけの処理を捌けるかを競わせた。 テストには4構成が並んだ。AMD側は現行のEPYC 9965(コードネームTurin、Zen 5cアーキテクチャ、192コア)と次世代のEPYC Venice(Zen 6、256コア)。対するのはIntel Xeon 6980P(Granite Rapids-AP、128コア)とNVIDIA Vera(カスタムOlympusコ

Game Pass値上げで「数百万人が去った」。Xbox幹部が認めた代償の重さ

ゲーム

Game Pass値上げで「数百万人が去った」。Xbox幹部が認めた代償の重さ

昨年10月の大幅値上げがどれほどの傷を残したのか、ようやく当事者の口から数字が出た。 「数カ月で数百万人を失った」 Xbox最高戦略責任者(CSO)のマシュー・ボール(Matthew Ball)氏が、Summer Game Fest 2026の会場でThe Game Businessのインタビューに応じ、Game Pass Ultimateの50%値上げ後に「数カ月のうちに数百万人の加入者を失った」と明言した。 Game Passの加入者数は、Microsoftが公式に確認した最後の数字で3400万人超(2024年2月時点)。その後、LinkedIn上のMicrosoft社員プロフィールから3500万人超という数字が漏れたことはあるが、公式発表は一度もない。母数が3500万前後だとすれば、「数百万人」の離脱は全体の1割前後に相当する計算になる。サブスクリプションビジネスにおいて、価格改定1回で1割規模の離脱が起きるのは異例の事態だ。 値上げから値下げまでの半年 2025年10月、MicrosoftはGame Passのプランを全面的に改編した。最上位のUltimateは米

Windows 11にしたらエラーコード0x80073712・0x800f099で更新できない。アップグレード組を襲う不具合が発覚

Windows

Windows 11にしたらエラーコード0x80073712・0x800f099で更新できない。アップグレード組を襲う不具合が発覚

Windows 10からWindows 11へアップグレードしたPCの一部が、月例セキュリティ更新を適用できなくなっている。Microsoftが6月のPatch Tuesdayに合わせて公表した既知の問題で、エラーコード0x80073712または0x800f0993が表示され、累積更新プログラムのインストールが失敗する。セキュリティ更新が届かなければ、PCは無防備なまま取り残される。 アップグレードが裏目に出る Microsoftのサービスアラートによれば、Windows 10(21H2/22H2)やWindows 11 23H2を使っていた端末をWindows 11 24H2または25H2にアップグレードすると、その後の累積更新プログラムが適用できなくなることがある。 影響を受けた端末では「設定」→「Windows Update」→「更新の履歴」にエラーが記録される。ログに残るのは0x800f0993(PSFX_E_REBASE_HYDRATION_CANDIDATES_MISSING)と0x80073712(ERROR_SXS_COMPONENT_STORE_CORRUPT

中国が47兆円で賭けるAI覇権。足りないのはカネではない

AI

中国が47兆円で賭けるAI覇権。足りないのはカネではない

中国政府が今後5年間で約2兆元(約47兆円)を投じ、全国にAIデータセンター網を構築する計画を進めている。構想の規模は巨大だ。だが、データセンターに詰め込む半導体を国内で本当に賄えるのかは別の話だ。 国家計画の全体像 国家発展改革委員会(NDRC)が策定を主導し、全国各地のデータセンターを単一の算力ネットワークとして接続、2028年までに統合を完了する構想だ。運営は国有通信大手のチャイナモバイルとチャイナテレコムが中心を担い、財源は超長期特別国債と国家投資基金で賄う。 核心は「国産80%」の調達要件だ。AI半導体を含む技術の少なくとも80%を、ファーウェイをはじめとする国内サプライヤーから調達する。NVIDIAとAMDは事実上、排除される。 この計画は「六網」(水網・新型電力網・算力網・新一代通信網・都市地下管網・物流網)と呼ばれる国家インフラ整備構想の一部で、2026年だけで六網関連投資は7兆元を超えると国家発展改革委員会は見積もっている。電力網の整備まで含めれば、データセンター計画だけで5兆元規模に膨らむ可能性がある。 47兆円は確かに巨額だが、文脈を見れば風景が変わる

レノボ、7月から全製品を値上げへ。618商戦の終了を待っていた

PC

レノボ、7月から全製品を値上げへ。618商戦の終了を待っていた

PCが高くなった、という実感はもう多くの人にあるだろう。だが「高くなった」では終わらない。まだ上がる。 レノボが7月から全製品ラインの価格を引き上げる方針を固めたことが、中国メディアの報道で明らかになった。対象はノートPC、デスクトップ、タブレット、スマートフォン、モニター、周辺機器、スマートホーム製品まで、コンシューマー向けの全カテゴリに及ぶ。製品カテゴリに死角はないと報じられている。 618が終わるのを待っていた 注目すべきはタイミングだ。レノボは5月の社内会議でこの決定を下していたが、値上げの実施を中国最大のECセール「618商戦」の終了後に設定した。セール期間中に値上げを発表すれば消費者の反発を招く。商戦が完全に終わるのを待ってから新価格に切り替える、という判断が透けて見える。 今回の値上げ幅は、3月に実施した前回の全製品値上げとほぼ同水準になるという。前回は人気モデルの小売価格が最大1000元(約2万4000円)以上引き上げられた。わずか4か月で同規模の値上げが再び来る。 今年だけで2回目 これはレノボにとって2026年で2度目の大規模値上げだ。 3月初旬、

「超知能は来る。でも仕事は奪わない」。4か月で変わった言葉の重さ

AI

「超知能は来る。でも仕事は奪わない」。4か月で変わった言葉の重さ

Microsoft AIのトップが語った超知能、OpenAIとの距離、AI意識論争。1時間超のインタビューに浮かんだのは、業界が直面する信頼の壁だった。 4か月前の自分を否定するところから始まった Microsoft AI CEOのムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman)氏が、The Vergeのポッドキャスト「Decoder」に出演した。ホストのニレイ・パテル(Nilay Patel)氏との対話は1時間を超え、話題はMicrosoftの組織再編から超知能の定義、AnthropicのClaudeに対する意識論争にまで及んだ。 このインタビューはBuild 2026の直後、6月8日に公開されている。 その中で最も鋭かったのは、パテル氏がスレイマン氏自身の過去の発言を突きつけた場面だ。 2026年2月、スレイマン氏はFinancial Timesのインタビューで、弁護士・会計士・プロジェクトマネージャー・マーケティング担当者といったホワイトカラー業務のほとんどが「12〜18か月以内にAIで完全自動化される」と述べた。この発言は大きな反響を呼び、雇用不安の文脈で

SpaceXが宇宙データセンター工場を発表。IPO3日前の現在地

AI

SpaceXが宇宙データセンター工場を発表。IPO3日前の現在地

SpaceXがテキサス州バストロップに建設する衛星製造施設「Gigasat」と、初の軌道データセンター衛星「AI1」の設計が公開された。2027年末までに年間1GWの宇宙AIコンピュート能力を実現し、2030年には100GWへ引き上げるという。ただし、この構想を支えるチップ工場も、打ち上げ頻度も、排熱の実証も、まだ何一つ完成していない。 100万基の衛星でAIを宇宙に持ち出す SpaceXのイーロン・マスク(Elon Musk)氏は6月8日、自社Xアカウントに投稿した約30分のインタビュー動画で、軌道データセンター衛星「AI1」の設計を初公開した。 翼幅は約70メートル。ボーイング747-8の翼幅を上回る。構造の大部分を太陽電池アレイが占め、150kWを発電する。中央のAI計算モジュールはピーク150kW、平均120kWの演算能力を持つ。冷却には110㎡の展開式液体ラジエーターを使い、太陽に対して「ナイフエッジ」の角度で配置することで、両面から宇宙空間へ熱を放射する。 もう一つ、見逃せない設計判断がある。計算チップのプロバイダーを交換可能にした点だ。マスク氏はNVIDIA G

原告・被告双方の書面にAI生成文 裁判所が全弁護士を失格処分

AI

原告・被告双方の書面にAI生成文 裁判所が全弁護士を失格処分

ミシシッピ州の連邦裁判所で、前代未聞の判断が下された。原告側・被告側の弁護士が全員、AIの生成した架空の判例を裁判所に提出していたことが発覚し、裁判官は裁判を中止し、関与した4人の弁護士を全員失格処分にした。架空の判例が法廷の両側でぶつかり合っていた。誰も気づかないまま。 「またか」と言った裁判官 2026年6月8日付の制裁命令を出したのは、ミシシッピ州北部地区連邦地裁のシャリオン・エイコック(Sharion Aycock)上級判事。命令書の冒頭でこう記している。「本裁判所は再び、AIのハルシネーションに起因する裁判書面への対応を強いられている」。 「再び」が重い。エイコック判事は2025年12月にも同地区の別の訴訟2件で、AI由来の架空判例を提出した弁護士に制裁を科している。今回が異例なのは、対立する双方の弁護士が同時に同じ問題を起こしていた点にある。 弁護士費用をめぐる訴訟が、弁護士不在の訴訟になった 事件の概要はこうだ。ルイジアナ州の弁護士トム・ウィザーズ(Tom Withers)氏がミシシッピ州アバディーン市を相手取り、未払いの弁護士報酬を求めて提訴した。ウィザー

Google AI Plus、月額725円に4割値下げ AI価格戦争が日本にも来た

AI

Google AI Plus、月額725円に4割値下げ AI価格戦争が日本にも来た

Googleが個人向けAIサブスクリプション「Google AI Plus」を月額1200円から725円に引き下げ、ストレージも倍増させた。新興国で先行していた値下げ競争が、日米の一般消費者市場にも波及した。 値下げの中身 Googleは6月8日(現地時間)、Google AI Plusの月額料金を7.99ドルから4.99ドルへ引き下げた。日本での月額は1200円から725円に、年間プランも1万2000円から7250円になる。同時に、Gmail・Googleドライブ・Googleフォト共通のクラウドストレージが200GBから400GBへ倍増した。 既存ユーザーには次回の更新時から新料金が自動適用され、ストレージの増量も数日かけて順次反映される。AI機能に変更はない。Geminiアプリでの使用量上限2倍、動画生成モデルOmni Flash、NotebookLMの拡張機能、GmailのAI校正といった特典はそのまま残る。 ただし混乱を招く変更も同時に入った。Google Oneプレミアム(2TB)プランが「Google AI Plus」に名称変更されたのだ。こちらは月額1450円

Microsoft Defenderの新たなゼロデイ「RoguePlanet」、月例パッチ当日に投下

セキュリティ

Microsoft Defenderの新たなゼロデイ「RoguePlanet」、月例パッチ当日に投下

Microsoftが過去最大規模の月例パッチを配信した、まさにその日だった。セキュリティ研究者Nightmare Eclipse氏が、Microsoft Defenderのゼロデイ脆弱性「RoguePlanet」の実証コードを公開した。Windows 10/11の最新パッチ適用済み環境でSYSTEM権限が奪われることが、第三者の検証でも確認されている。CVEは未割り当て。パッチは存在しない。 7本目の刃 Nightmare Eclipse氏がWindows関連のゼロデイを公開するのは、これで7本目になる。 4月のBlueHammer(CVE-2026-33825)に始まり、RedSun、UnDefend、YellowKey、GreenPlasma、MiniPlasmaと、約2か月で6本の脆弱性を立て続けに公開。いずれもMicrosoftへの事前通知なし、いわゆる「協調的脆弱性開示」を経ない公開だった。そのうちBlueHammer、RedSun、UnDefendの3本は実際の攻撃で悪用が確認され、CISAのKEV(既知の悪用済み脆弱性)カタログにも追加されている。 6月10日(

Nintendo Directを埋め尽くしたサードの本気

ゲーム

Nintendo Directを埋め尽くしたサードの本気

約50分間の放送で、時オカリメイクとゼノブレイド新作だけでも十分すぎる弾だった。だが6月9日のNintendo Directで本当に驚かされたのは、スクウェア・エニックスとカプコンを筆頭とするサードパーティの攻勢だ。しかもその多くがSwitch 2だけでなくPS5・Xbox・PCにも同時展開される。任天堂のプラットフォームから発表されるマルチタイトルが、ここまで粒揃いだったことがあっただろうか。 『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と『ゼノブレイド ジェネシス』(まずSwitch 2独占の話をさせてほしい) サードの話に入る前に、2本だけ。 1998年発売の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』がSwitch 2でリメイクされる。2011年の3DS版以来、約15年ぶり。公開された映像はコキリの森で眠る幼少期のリンクを映すだけで、ゲームプレイは一切見せなかった。2026年内発売とされているが、続報は後日。ゼルダ誕生40周年の年にシリーズの分岐点を甦らせる。任天堂らしい采配だ。 もうひとつ、モノリスソフトの新作『ゼノブレイド ジェネシス』。6つの太陽を持つ世界「アンシャル」を舞台に、シリーズ完