岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
AIエージェントは人間より賢くて、人間より騙されやすい

AI

AIエージェントは人間より賢くて、人間より騙されやすい

セキュリティ企業バロニス(Varonis)の脅威研究チームが、AIエージェントフレームワークOpenClawで構築したメールエージェントにフィッシング攻撃を仕掛けた。技術的な罠には強く、古典的なソーシャルエンジニアリングには脆い。4つのテストが浮かび上がらせたのは、そんな不穏な非対称性だった。 脆弱性ではなく「信頼」の問題 OpenClawのセキュリティ問題といえば、今年に入ってからだけでもリモートコード実行(CVE-2026-25253)、スキルマーケットプレイスへのマルウェア混入、認証なしで公開されたインスタンスの大量露出と、技術的な脆弱性の報告が相次いできた。だが今回バロニスが突いたのは、それとは性質の異なる弱点だ。 コードにバグがあるのではない。エージェントが「信頼すべきでない相手を信頼する」。 研究を率いたのはバロニスのイタイ・ヤシャール(Itay Yashar)氏。OpenClaw上にPinchyと名付けたメールエージェントを構築し、Gmailの受信トレイ、ブラウザ操作、Google Workspace APIを接続した。社内のAWSクレデンシャル、データベース接

Ubuntu MATE、新チーム始動で26.10リリースへ

Linux

Ubuntu MATE、新チーム始動で26.10リリースへ

創設者マーティン・ウィンプレス(Martin Wimpress)氏の退任から約2か月半。26.04 LTSのインストーラーISOが存在しないまま、消滅すら囁かれていたUbuntu MATEに、新たな開発チームが名乗りを上げた。 後継者は現れた 6月9日(日本時間)、Ubuntu Discourseに投稿されたFAQで明らかになった。投稿者はUbuntuコミュニティ評議会・技術委員会の双方に席を置くトーマス・ウォード(Thomas Ward)氏。フレーバーの運営状況を監視する立場にある。 新チームはすでにフレーバー管理の引き継ぎに動いている。正式な自己紹介はまだない。だがウォード氏は26.04サイクル以前から各フレーバーの動向を追っており、「開発者は確実に名乗り出ている」と断言した。不足分の補完作業は進行中で、26.10リリース(2026年10月)を目標にしているとみられる。 バグ修正についても、26.04のISOが出ていれば本来同梱されていたはずのパッケージへの対応は継続される。変わったのはインストーラーイメージが存在しないという一点だけで、実質的にはプロジェクトの中身は途切

Windows 11のKB5094126、CVE大量修正と性能改善を同時配信

Windows11

Windows 11のKB5094126、CVE大量修正と性能改善を同時配信

6月9日(現地時間)、Microsoftが配信を開始したWindows 11の2026年6月Patch Tuesday更新プログラム(KB5094126)は、ここ数年の月例更新の中でも異例の規模になった。修正された脆弱性は198件。2025年10月の167件を超え、Patch Tuesday史上最多の記録を塗り替えた。うち32件がCritical、ゼロデイが3件含まれる。 だが今月の更新が異例なのはセキュリティ面だけではない。「Low Latency Profile」と呼ばれるCPUブースト機能の正式展開、Bluetooth LEオーディオ共有、複数アプリでのカメラ同時利用、タスクマネージャーのNPU監視強化など、機能面でもここ数ヶ月の控えめな更新とは明らかに毛色が違う。対象はWindows 11バージョン25H2と24H2で、ビルド番号はそれぞれ26200.8655と26100.8655に更新される。 ゼロデイ3件、BitLockerが2件——セキュリティの中身 今月のゼロデイ3件は、いずれもパッチ公開前に情報が公になっていたもので、現時点では実際の攻撃への悪用は確認されてい

macOS 27ベータがAsahi Linuxを起動不能に。原因と対処法

Apple

macOS 27ベータがAsahi Linuxを起動不能に。原因と対処法

WWDC 2026で発表されたmacOS 27 Golden Gateの開発者ベータを導入すると、Apple Silicon MacにインストールしたAsahi Linuxが起動できなくなる。Asahi Linuxプロジェクトが6月9日に警告を出し、ユーザーにmacOS 27へのアップグレードを控えるよう求めた。データは消えていないが、復旧にはmacOS 26以前の環境が必要になる。 消えたのはパーティションではなく「見え方」 macOS 27ベータで変わったのは、電源ボタン長押しで表示される起動ディスク選択画面と、「システム設定」内のスタートアップディスクの挙動だ。どちらもmacOS以外のOSボリュームを認識しなくなり、Asahi Linuxのパーティションが選択肢から消える。 パーティション自体は物理的にそのまま残っている。データの消失もない。ただ、起動手段が断たれるため、事実上Linuxにアクセスできなくなる。 この挙動がAppleの意図的な変更なのか、それとも単なるバグなのかは現時点で不明だ。Asahi Linuxプロジェクトはバグだと考えており、Appleにバグレポ

台湾がAIチップ密輸を「犯罪」に格上げへ。法的な網がサーバーまで広がる

AIチップ

台湾がAIチップ密輸を「犯罪」に格上げへ。法的な網がサーバーまで広がる

台湾が、中国向けAIチップの輸出を刑事罰の対象とする規制強化を検討している。現行法では違法な輸出が発覚しても輸出管理違反として直接起訴できず、文書偽造など別の容疑を使って迂回するしかない。その穴を埋めるのが今回の動きだ。 AIサーバー密輸に「刑事」の名がつく日 5月、台湾の検察当局が基隆で3人を身柄拘束した。容疑は、NvidiaのAIチップを搭載したスーパーマイクロ・コンピューター製サーバー約50台を中国へ転送するために書類を偽造したというものだ。台湾初の本格的なAIチップ密輸摘発として注目を集めたが、罪状は輸出管理違反ではなく文書偽造だった。 なぜか。台湾には、AIチップの不正輸出を直接罰する法律がない。当局が取れる手段は、潜在的な違反者に対して「米国の規制を破ることになるかもしれない」と警告することにとどまる。国内法で立件するには、輸出管理とは無関係の別の罪をあてはめるしかない。 今回の検討は、その状況を変えようとするものだ。ファーウェイやSMIC(中芯国際集成電路製造)のようなブラックリスト企業だけでなく、中国の民間事業者も含む「全市場」への輸出を対象に、一定の演算性能

Z990チップセットの実物写真が初流出、消費電力も判明

Intel

Z990チップセットの実物写真が初流出、消費電力も判明

スペック表ではなく、実際のシリコンだ。Intel次世代デスクトッププラットフォーム向けZ990チップセットの実物写真が初めて流出した。消費電力の数値も初めて出そろった。 2月のスペックリークから、今度は実物へ 今年2月、ジェイキン(Jaykihn)氏が900シリーズチップセットのスペック表を流出させ、Z990・Z970・W980・Q970・B960という5製品の構成が明らかになった。Z990はIntelの次世代デスクトッププラットフォーム「Nova Lake-S」(LGA 1954ソケット)向けのフラグシップ製品で、PCIe 5.0レーン12本を含む合計48本のPCIeレーン、DMI Gen 5 x4接続、CPU倍率とBCLKを含む全OC機能対応という仕様が伝えられていた。 Keep in mind this 14W figure assumes full chipset residency with Gen 5 devices. The base power of the Z990

Anthropicが「Mythos級」AIを一般公開。Claude Fable 5の設計思想

AI

Anthropicが「Mythos級」AIを一般公開。Claude Fable 5の設計思想

Anthropicが6月9日にリリースしたClaude Fable 5は、4月のProject Glasswing発表以来、限られたサイバーセキュリティ企業や重要インフラ事業者にのみ提供されてきたMythosクラスの能力を、安全装置とセットで初めて一般向けに開放したモデルだ。 「このレベルのAIをどこまで世に出せるか」という問いへのAnthropicなりの現時点の答えが、この設計に込められている。 同じモデル、違う安全装置 Claude Fable 5と同時にリリースされたClaude Mythos 5は、技術的には同一モデルだ。ラテン語のfabula(語られるもの)とギリシャ語のmythosはほぼ同義であり、名前の違いが設計の違いをそのまま示している。 Fable 5は安全装置を搭載した一般公開版、Mythos 5はその一部を解除したProject Glasswingパートナー限定版。使い分けの理由は明快で、Mythosクラスのサイバーセキュリティ能力は「悪意ある攻撃者が使えば深刻な被害につながりうる」とAnthropicは公式に認めている。 具体的な対処として、Fabl

EUのiPhoneでSiri AIが使えない理由、Apple対欧州委員会の食い違い

AI

EUのiPhoneでSiri AIが使えない理由、Apple対欧州委員会の食い違い

WWDC26で発表されたSiri AIが、EU圏のiPhoneとiPadには提供されないことになった。AppleはDMA(デジタル市場法)を理由に挙げ、欧州委員会はApple側の問題だと真っ向から否定する。双方の主張は噛み合わないまま、EU在住のユーザーだけが置き去りになっている。 Appleが示した「最後の提案」と、その却下 AppleはEUに向けて、「Trusted System Agent」と呼ぶ仲介機能を設計していた。競合のバーチャルアシスタントがSiri AIと同等の権限に安全にアクセスできる仕組みで、18か月をかけて段階的に展開するという計画だった。 欧州委員会はこれを拒否した。 Appleの公式発表によれば、委員会が提示したいかなる代替案にも同意しなかったという。ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏は、「EU域内においてiOSとiPadOSでSiri AIを提供する目処は立っていない」と述べている。 Appleが懸念するのはセキュリティだ。DMAが求めるとされる相互運用性の水準では、

RTX 5090の16ピンケーブルは「点検のたびに抜く」と壊れる

GPU電源

RTX 5090の16ピンケーブルは「点検のたびに抜く」と壊れる

GeForce RTX 5090の16ピン電源ケーブル焼損が、また新たな経緯で報告された。3か月ごとにコネクタを抜き差しして点検し、毎月ホコリを吹いてから押し込んで接続を確認する。そこまで管理を徹底していたユーザーのケーブルが溶け、GPUの電源ソケットが黒焦げになった。 「ちゃんと管理していた」ユーザーが焼損 構成はMSI GeForce RTX 5090 SUPRIMにCorsair RM1000xの電源、Corsair公式Type 4 12VHPWRケーブルという組み合わせ。GPUは垂直マウントで、ケーブルには曲がる前に7〜9cmのストレートクリアランスが確保されていた。120FPSキャップをかけてForza Horizon 6を数週間プレイした後の点検で、ケーブル端が完全に溶け落ち、GPU側の電源ピンが黒ずんでいるのを発見した。 接続が甘かったのではと思うかもしれないが、ユーザーはセンサーパネルでテレメトリをリアルタイム監視しており、350ワット負荷時に12Vラインが11.4〜11.2Vまで下がる現象も把握していた。この電圧降下が焼損の前兆だったとみられる。 「点検の

x86誕生48周年、今も使い続けている理由

CPU

x86誕生48周年、今も使い続けている理由

1978年6月8日、Intelが16ビットCPU「8086」を発表した。あなたが今使っているWindowsパソコンは、その命令セットをそのまま受け継いでいる。48年という時間は、PCの世界では途方もなく長い。 間に合わせで生まれた革命 8086には、あまり知られていない出自がある。 Intelが本腰を入れていたのは、より野心的な32ビット設計「iAPX 432(アイエーピーエックス 432)」だった。しかし開発が難航し、製品化は遅れた。開発の遅れを受けて急遽投入されたのが8086だ。 開発期間はわずか18ヶ月。前世代の8ビットCPUから乗り換えやすいよう、アセンブラレベルで互換性を持たせ、当時としては大きな1Mバイトのアドレス空間を確保した。「間に合わせ」という出自にもかかわらず、それでも確実に仕上げてきた設計が、その後の数十年を決定づけた。 結末はわかっている。本命だったiAPX 432は市場に受け入れられず姿を消し、間に合わせのはずの8086から生まれたx86が世界標準になった。 IBMが選んだことで何もかもが変わった x86が世界標準になった鍵を握っていたのはI

Signalが英国のデバイス一斉スキャン計画に「監視インフラだ」と反論

プライバシー

Signalが英国のデバイス一斉スキャン計画に「監視インフラだ」と反論

英国政府がスマートフォンのOSに裸体スキャニングを組み込むよう主要テック企業へ3か月の期限付き通告を出した。暗号化通信アプリSignalはこれを「子どもの安全ではなく監視インフラの構築だ」と批判する声明を6月8日に公表した。 AppleとGoogleへの3か月通告 キア・スターマー(Keir Starmer)首相は今月8日、ロンドン・テック・ウィークに登壇し、AppleとGoogleに対して3か月以内の対応を求めた。子どもが端末上で裸の画像を撮影・送受信・閲覧できないようにしろ、従わなければ立法措置に踏み切り、罰則だけでなく企業経営者への刑事責任も問う、というものだ。 英国内務省(Home Office)が想定する技術的な方法は、OSに裸体検知アルゴリズムを直接組み込むというものだ。端末のカメラ、メッセージアプリ、フォトライブラリ、ブラウザを対象に、デフォルトで露骨な画像をブロックする。成人が制限を解除するには、生体認証や公的身分証明による年齢確認が必要になる。既存・新規を問わず英国内の全スマートフォン・タブレットが対象となる。 英政府はAppleが既に実装している「Comm

Chrome 150でuBlock Originの回避策が完全終了へ

Chrome

Chrome 150でuBlock Originの回避策が完全終了へ

Chromeでの広告ブロッカー問題が、新たな局面を迎えた。MV2(Manifest V2)拡張機能を延命してきた回避フラグが、Chrome 150・151で段階的に完全削除されることが明らかになった。一方で、uBlock Origin開発者はMV3(Manifest V3)への移行版をすでにリリース済みだ。 回避策の「最後の出口」が閉まる MV2からMV3への移行は数年越しのプロセスだったが、今回Chromeが閉める扉は性質が違う。これまで存在していたのは、フラグ操作によってMV2拡張を強制的に生かし続ける「抜け道」だった。 w3c WebExtensionsリポジトリへの投稿によれば、Chrome 149がMV2を完全サポートする最後のバージョンになるという。Googleエンジニアのデブリン・クロニン(Devlin Cronin)氏は、サポート対象のChrome全バージョンでMV2拡張がもはや許可されておらず、技術的負債とセキュリティリスクの観点から関連機能を無期限に維持し続けることはできないとしている。その方針どおり、Chrome 150ではExtensionManifes

AIが20年前のGPUドライバーを延命させている

Linux

AIが20年前のGPUドライバーを延命させている

2007年に登場したRadeon HD 2000シリーズ。その世代から2010年のHD 6000シリーズまでをカバーする古いLinuxグラフィックスドライバーが、GitHub Copilotの力を借りてメンテナンスされていることが明らかになった。AMDがとっくに手を引いた旧世代の資産を、今なお少数の有志が守り続けている。 59件のコミットが語るもの 先日、Mesa 26.2にR600ドライバー向けの59件のコミットが一度にマージされた。シェーダーコンパイラのコードを整理するリファクタリングが中心で、それ以外のコード整備も含んでいる。 作業を担ったのはゲルト・ウォルニー(Gert Wollny)氏。R600gドライバーに関わる数少ない開発者の一人で、マージリクエストにはこう記されていた。 「このシリーズは、sfnシェーダーコンパイラのコードをより読みやすくするためのリファクタリングです。リファクタリングはCopilot(自動モード)の助けを借りて行われました」 コードは動く。しかし読みにくく、維持しにくい状態にある。それを整理するために、開発者がAIと組んだ。 なぜ今もこ

ナッシュビル動物園、隣接データセンター建設計画に反発

データセンター

ナッシュビル動物園、隣接データセンター建設計画に反発

絶滅危惧種の繁殖施設の真隣にデータセンターを建てる計画が、米国テネシー州ナッシュビルで大きな波紋を呼んでいる。 データセンターが狙ったのは動物園の隣の土地 アトランタを拠点とするデータセンター事業者DC Bloxが、ナッシュビル動物園(Nashville Zoo)に隣接する土地に約6400平方メートルの施設を建設する許可を申請している。対象地は23.5エーカーの区画のうち1.6エーカーに相当し、計画が通れば3000頭以上の動物を収容する施設のすぐ隣に大規模なサーバー棟が立つことになる。 動物園側は6月、自社ブログで懸念事項を公式にまとめた。電力消費による地域送電網への影響に加え、騒音と光害、そして周辺水域の水質悪化が起きる可能性を挙げている。特に問題視されているのが、同動物園の看板種であるウンピョウ(英名:Clouded Leopard)への影響だ。この種はとりわけ機械騒音に敏感とされており、繁殖プログラムへの悪影響が懸念されている。 動物園CEO(最高経営責任者)のリック・シュワーツ氏は、同園が長年にわたって当該土地の一部を教育・保全センターとして活用するため、現在の土地保