岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
AIが20年前のGPUドライバーを延命させている

Linux

AIが20年前のGPUドライバーを延命させている

2007年に登場したRadeon HD 2000シリーズ。その世代から2010年のHD 6000シリーズまでをカバーする古いLinuxグラフィックスドライバーが、GitHub Copilotの力を借りてメンテナンスされていることが明らかになった。AMDがとっくに手を引いた旧世代の資産を、今なお少数の有志が守り続けている。 59件のコミットが語るもの 先日、Mesa 26.2にR600ドライバー向けの59件のコミットが一度にマージされた。シェーダーコンパイラのコードを整理するリファクタリングが中心で、それ以外のコード整備も含んでいる。 作業を担ったのはゲルト・ウォルニー(Gert Wollny)氏。R600gドライバーに関わる数少ない開発者の一人で、マージリクエストにはこう記されていた。 「このシリーズは、sfnシェーダーコンパイラのコードをより読みやすくするためのリファクタリングです。リファクタリングはCopilot(自動モード)の助けを借りて行われました」 コードは動く。しかし読みにくく、維持しにくい状態にある。それを整理するために、開発者がAIと組んだ。 なぜ今もこ

ナッシュビル動物園、隣接データセンター建設計画に反発

データセンター

ナッシュビル動物園、隣接データセンター建設計画に反発

絶滅危惧種の繁殖施設の真隣にデータセンターを建てる計画が、米国テネシー州ナッシュビルで大きな波紋を呼んでいる。 データセンターが狙ったのは動物園の隣の土地 アトランタを拠点とするデータセンター事業者DC Bloxが、ナッシュビル動物園(Nashville Zoo)に隣接する土地に約6400平方メートルの施設を建設する許可を申請している。対象地は23.5エーカーの区画のうち1.6エーカーに相当し、計画が通れば3000頭以上の動物を収容する施設のすぐ隣に大規模なサーバー棟が立つことになる。 動物園側は6月、自社ブログで懸念事項を公式にまとめた。電力消費による地域送電網への影響に加え、騒音と光害、そして周辺水域の水質悪化が起きる可能性を挙げている。特に問題視されているのが、同動物園の看板種であるウンピョウ(英名:Clouded Leopard)への影響だ。この種はとりわけ機械騒音に敏感とされており、繁殖プログラムへの悪影響が懸念されている。 動物園CEO(最高経営責任者)のリック・シュワーツ氏は、同園が長年にわたって当該土地の一部を教育・保全センターとして活用するため、現在の土地保

RustベースOS「Redox OS」に5月の大型進捗、Xfce移植とファイルシステム高速化が同時到達

Linux

RustベースOS「Redox OS」に5月の大型進捗、Xfce移植とファイルシステム高速化が同時到達

Rustで書かれたオープンソースOS「Redox OS」が5月の進捗レポートを公開した。デスクトップ環境XFCEの移植、新スケジューラの採用、ファイルシステムのキャッシュ改善と、実用性に直結する成果が同じ月に揃った。 X11環境の安定化に向けてXFCEが動いた ウィルダン・ムバロク(Wildan Mubarok)氏がXFCE(X Window Systemのデスクトップ環境)をRedox OSへ移植した。これまで標準的に使われてきたMATE(MATEはGNOME 2系デスクトップ)はCajaによるクラッシュが発生していたが、XFCEはMATEより安定して動作するという。ただし現時点では「多くのバグがある」と開発側も認めており、実用レベルには達していないと明示している。 X11対応の強化は今年の開発の軸のひとつだ。同じムバロク氏がI/Oイベント待機の処理(pollおよびepoll)にも手を入れており、QEMU上の非KVM環境のベンチマークで4倍の速度向上が確認されている。X11動作の大幅な改善につながったとされ、QEMU KVM環境や実機ではさらに高い効果が見込まれるとしている。

Chromeに今年5件目の実悪用ゼロデイ、V8に脆弱性

セキュリティ

Chromeに今年5件目の実悪用ゼロデイ、V8に脆弱性

Googleは6月9日、Chrome向けの緊急アップデートを公開した。JavaScriptエンジン「V8」に存在するゼロデイ脆弱性(CVE-2026-11645)が実際の攻撃に使われていることが確認されたためで、2026年に入ってから実悪用が確認されたChromeのゼロデイとして5件目になる。 攻撃で悪用されていた脆弱性の中身 今回修正されたCVE-2026-11645は、ChromeのJavaScriptエンジンV8における範囲外読み書き(out-of-bounds read and write)の脆弱性だ。細工されたHTMLページにアクセスするだけで、攻撃者がブラウザのサンドボックス内で任意のコードを実行できる可能性がある。 悪用に成功すると、メモリバッファの境界を越えてデータが読み書きされ(ヒープ破壊)、本来アクセスできないはずの情報が漏れたり、ブラウザがクラッシュしたりする。さらにASLRをはじめとした保護機構を回避する踏み台にもなるため、深刻度の評価は「High(高)」とされた。 この脆弱性は4月27日に匿名の外部研究者がGoogleに報告しており、バグバウンティと

IntelのiBOTが対応ゲームを19本へ拡大、最大27%向上

ゲーミングPC

IntelのiBOTが対応ゲームを19本へ拡大、最大27%向上

3月の登場から3ヶ月、Intelのバイナリー最適化ツール「iBOT」が静かに、しかし着実に育ちつつある。新たに7タイトルが追加され、対応ゲームはこれで計19本。登場時の12タイトルからの上積みだ。 7タイトルが追加、平均12%向上をIntelが主張 今回追加されたのは以下の7タイトルだ。 * メトロ・エクソダス Enhanced Edition * カリスト・プロトコル * ホームワールド3 * オリとウィスプの意志 * リトル・ナイトメアズIII * ウォーフレーム * ホロウナイト: シルクソング iBOT ゲーム別パフォーマンス向上率(Intel公称) ※ Intel公称値。Core Ultra 7 270K Plus、GeForce RTX 5090、DDR5-7200 32GB、1080p設定「高」での計測。橙点線は7タイトル平均(12%)。 Intelが公表した計測結果によると、Core Ultra 7 270K

AIデータセンターの「水問題」、冷却は氷山の一角だった

AI

AIデータセンターの「水問題」、冷却は氷山の一角だった

アメリカで建設が計画されているAIデータセンターの3分の2が、干ばつの続く地域に立地しようとしている。技術企業側が繰り返す「水の使用量は農業より少ない」という弁明は、数字として間違ってはいないが、重要な前提を欠いている。 809件中517件が干ばつ地帯 NOAAの干ばつ情報システムで干ばつ地域を照合したところ、全米で計画中の809件のデータセンタープロジェクトのうち517件が、過去1年間にわたって干ばつに分類された地域に集中している。 この数字が示すのは、立地選択の失敗ではなく、業界が水問題をどこから切り取っているかという問いだ。 企業側の論拠はこうだ。1月にザイレム(Xylem)とグローバル・ウォーター・インテリジェンス(Global Water Intelligence)が出した報告書によると、2050年までにAIが必要とする追加の水需要のうち、データセンターの冷却水が占める割合は約4%にとどまる。残りは発電が約54%、半導体製造が約42%を占める。テック企業が語る「冷却水の節約」は、AI由来の水消費全体のうち4%をめぐる話にとどまる。 6月3日に国連大学が発表したレポ

NVIDIAドライバー610.52公開、610.47直後の不具合を一括修正

NVIDIA

NVIDIAドライバー610.52公開、610.47直後の不具合を一括修正

Game Readyドライバー610.47がリリースされてから約2週間。NVIDIAコントロールパネルの廃止という20年ぶりの大変更を盛り込んだそのドライバーで噴出した不具合を、ホットフィックス610.52がまとめて修正した。対象はWindows 10/11の64ビット環境だ。 何が直ったのか 修正項目は計8件。症状別に整理すると以下のとおりだ。 Hotfix 610.52 修正項目一覧 カテゴリ対象環境症状と修正内容G-SYNC フレームペーシングRTX 40シリーズ (Ada)G-SYNC有効時、特定モニターで フレームレートが激しく乱れるマルチモニター 安定性全対象DLSSフレーム生成+V-SYNC併用の マルチモニター環境でゲームが不安定スリープ 復帰不能特定モニタースリープ状態から ディスプレイが復帰しないNV-Failsafe 誤認識特定モニターEDIDが読み取れず「NVIDIA NV-Failsafe」 と表示され解像度設定が不正常になるSmooth Motion カクつきDirectX 11 タイトルSmooth Motio

農業AIが普及しない3つの理由、カナダの研究が解明

AI

農業AIが普及しない3つの理由、カナダの研究が解明

技術は揃っている。それでも農家には届かない。カナダの研究者がその構造的な問題を3つに整理した。「スマート農業元年」が何度も繰り返されてきた日本でも、この分析は対岸の話では済まない。 農業AI市場は急拡大、現場との乖離は深まる 農業分野のAI市場は世界的に膨らんでいる。2034年には約470億ドル規模に達するとの試算もある。ドローン、センサー、自律走行トラクター。技術の選択肢はここ数年で一気に広がった。 それでも農家には届いていない。 カナダのブロック大学で公共政策を専門とするチャールズ・コンテ(Charles Conteh)氏は、オンタリオ州での2年間の農業自動化・ロボティクス研究をもとに、普及を阻む構造的な問題を特定した。 3つの症候群 コンテ氏は「普及しないのは技術の問題ではなく、構造の問題だ」と主張する。整理した障壁は三つだ。 第一は 「情報ギャップ症候群」。どんなAIツールが存在し、自分の農場で何が使えるのかを、多くの農家がそもそも知らない。道具の存在を知らなければ、使いようがない。 第二は 「ミスマッチ症候群」。知っていても、既存の機器やデータ環境、作業フ

生成AIへの「依存」、責任はどこにあるのか

AI

生成AIへの「依存」、責任はどこにあるのか

チャットボットを最初の相談相手にする。検索より先にAIに聞く。不安を感じたとき、まずAIに話しかける。生成AIユーザーの約3割が「依存しているかもしれない」と感じた経験があるという調査が国内でも出ている。ツールとして使っているつもりが、いつの間にか手放せなくなっている。その責任をどこが担うのか、まだ答えは出ていない。 SNS訴訟の「次の問い」 2026年3月、ロサンゼルスの陪審員がMetaとYouTubeに有罪評決を下した。インスタグラムを9歳から使い始め、精神的な健康を損なったと訴えた原告の主張を認め、設計の過失と、危険性の周知を怠った責任が認定された。補償的損害賠償として総額300万ドル(約4億8000万円)、懲罰的損害賠償として計300万ドルの支払いも勧告された。この評決は1500件以上の類似訴訟の行方に影響するとみられており、「ビッグテックのタバコの瞬間」と呼ぶ声もある。 評決から2ヵ月後の5月、ノッティンガム大学でテクノロジー批判研究を専門とするバーンド・カルステン・シュタール(Bernd Carsten Stahl)教授が、同じ問いを生成AIに当てはめた論文を発表し

Flatpak 1.18でAMD ROCm対応が前進、GPUアクセス制御が改善

Linux

Flatpak 1.18でAMD ROCm対応が前進、GPUアクセス制御が改善

LinuxのAMD GPU環境で長く課題とされてきた「サンドボックス内アプリからROCmが使えない」問題が、Flatpak 1.18で解消された。GPUコンピューティングのためにサンドボックスを事実上無効化する必要が、ようやくなくなった。 サンドボックスとGPUの長年の摩擦 FlatpakはLinux向けのアプリ配布・サンドボックス基盤だ。アプリを隔離環境で動かすことでシステムへの影響を抑えるが、その隔離がAMDのGPUコンピューティング環境であるROCmの利用と相性が悪かった。 ROCmはAMD GPUでAI処理や科学計算を行うためのオープンソースソフトウェアスタックだ。NVIDIAのCUDAに相当するが、スタック全体がオープンソースという点が異なる。ROCmがGPUにアクセスする際には、カーネルが提供する/dev/kfd(AMDKFDカーネルコンピュートドライバーが公開するデバイス)へのアクセスが必要になる。 問題はここにある。Flatpakのサンドボックスは、このデバイスへの個別アクセスを許可する仕組みを持っていなかった。そのため、ROCmを使うFlatpakアプリは-

パスワードの放置が終わる。AppleがAIで自動更新へ

セキュリティ

パスワードの放置が終わる。AppleがAIで自動更新へ

脆弱なパスワードを「警告」で終わらせず、AIが代わりに変えてしまう。WWDC 2026で発表されたApple Intelligenceの新機能が、長年のセキュリティ課題に正面から踏み込んできた。 これまでの「警告どまり」 iPhoneの「パスワード」アプリとSafariは、弱いパスワードや使い回し、流出したものを検出して警告する機能を既に備えていた。アカウント登録時に脆弱なパスワードを入力すれば注意を促し、強力なパスワードを提案する。 ただ、そこで止まっていた。警告は出せても、直すのはユーザー任せ。面倒さに負けて放置する。その構造は変わっていなかった。 「直す」ところまでAIがやる iOS 27で変わるのは、その最後のステップだ。 Appleは6月8日、Apple Intelligenceを使って脆弱・流出したパスワードを自動で修正する機能を発表した。動作はシンプルで、パスワードアプリ上でユーザーが処理を許可すると、SafariとAIが連携して対象サイトへ自律的にアクセス。ログインし、パスワードを強力なものへ更新する。Appleの発表では「ワンタップで」と説明されており

Windows 11のウィジェットとスタートメニューがようやく静かになる

Windows

Windows 11のウィジェットとスタートメニューがようやく静かになる

タスクバーの位置変更とスタートメニューのリサイズは先月のInsider配信で既に動いている。今回はその後に積み重なってきた変化だ。ウィジェットの押しつけ、スタートメニューの大きすぎる存在感、MSNフィードの強制表示・・・Windows 11がずっと抱えてきた「小さな不満」が、ひとつずつ手術台に乗った。 ウィジェットがようやく黙る タスクバーのウィジェットアイコンに少し触れただけで広がる、MSNニュースと広告の混在したパネル。これのデフォルト動作が変わる。 ホバーするだけでパネルが広がる動作が、デフォルトでオフになる。タスクバー上の通知バッジや株価アニメーションも、自分から開くまで表示されなくなる。ウィジェットアイコンをクリックすれば、ピン留めしたカレンダーや天気が前に出て、MSNディスカバーフィードは後ろに追いやられる。 広告収益を削ってでも静かなタスクバーを選んだ。現在InsiderのExperimentalチャンネルで展開中で、全PC配信は今後見込まれている。 スタートメニューに「触れる」設定が来た スタートメニューが大きすぎる、という声は長い間放置されてきた。今回

Windows 11検索からBingをオフにできる設定が登場

Windows

Windows 11検索からBingをオフにできる設定が登場

長年レジストリ編集でしか無効化できなかったWindows Searchのウェブ検索が、ついに設定のトグル1つで切れるようになる。Windowsインサイダー向けのイベントで初めて公開された機能で、今後数週間以内にテスターへ展開が始まるとされている。 「ローカル検索」が本来の姿に戻る Windowsサーチは長らく、ファイルを探しているはずがBingの検索結果に誘導される機能として批判を集めてきた。アプリを探せば映画のリンクが出てきたり、2文字入力しただけでウェブ結果が優先されたり。Microsoftはこの問題を「Bingの利用促進」と「ローカル検索」の目的を同じ箱に詰め込んでいたことで起こしてきたとも言える。 今回の変更はその箱を割ることを意味する。具体的には、設定画面にウェブ検索を切るトグルが追加される。オフにすると、Bing・MSN・Microsoftストアの一覧表示がサーチ結果から消え、PC内の検索に専念する。Microsoftストアの項目は個別に無効化することもできる見込みだ。 現時点では、ウェブ検索を無効化するにはレジストリエディターでHKEY_CURRENT_USER

Build 2026でもスルー。Windows 11ウィジェットの現在地

Windows11

Build 2026でもスルー。Windows 11ウィジェットの現在地

Windows 11のタスクバー左端に鎮座するウィジェットボタン。押したことがある人のほぼ全員が次にすることは同じだ。すぐ閉じる。 MicrosoftはBuild 2026でAIエージェント、ネイティブWindowsアプリ、開発者向けミニPC「Surface RTX Spark Dev Box」など大量の発表を行った。Windows 11の品質改善プロジェクト「Windows K2」も着々と進んでいる。ウィジェットパネルについて、Buildで語られた言葉はゼロだった。 56個、でも使えるのは数えるほど Microsoft Storeで現在提供されているウィジェットは56個。数だけ見ると悪くない。開けてみると、実用に耐えるものはごく一部だ。 カレンダー表示の「Calendar Flyout」、AirPodsをWindows上で管理するアプリ「MagicPods」のウィジェット、いくつかのシステム情報系ユーティリティ。大体これで終わりだ。 天気、ニュース、株価。これらはMicrosoft自身が提供しているが、アプリを開いた方が早いし、スマートフォンで見た方が早い。「ウィジェット