ChatGPT「大人モード」無期限凍結──OpenAIの焦燥

OpenAIがわずか1週間で3つのプロジェクトを切り捨てた。Sora、即時購入機能、そしてChatGPTの「大人モード」。寄り道を次々と精算する巨人の背中には、ある競合の影が張り付いている。

ChatGPT「大人モード」無期限凍結──OpenAIの焦燥
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OpenAIがわずか1週間で3つのプロジェクトを切り捨てた。Sora、即時購入機能、そしてChatGPTの「大人モード」。寄り道を次々と精算する巨人の背中には、ある競合の影が張り付いている。


ChatGPTの「アダルトモード」はなぜ消えたのか

OpenAIがChatGPTに導入予定だった成人向け「アダルトモード」が、無期限の凍結に追い込まれている。Financial Timesが3月26日(日本時間)に報じた。リリース時期は白紙だ。広報は「追加でコメントすることはない」と繰り返すだけで、撤退なのか延期なのかすら明言しない。

この構想を最初に打ち上げたのはサム・アルトマンCEO自身だ。2025年10月、Xへの投稿で「大人のユーザーを大人として扱う」と宣言し、年齢確認済みユーザーへのエロティカ提供を予告した。

だが社内からの反発は激しかった。ウェルネスアドバイザーたちはAIへの不健全な感情的依存を警告し、1月の顧問会議ではある顧問がこの機能を「セクシーな自殺コーチ」になりかねないと発言した。

年齢確認の技術的な壁も高かった。報道によれば、年齢推定システムのエラー率は10%超。仮にそのまま導入されていれば、数百万人の未成年がアクセスできた計算になる。当初2025年12月に予定されたリリースは2026年第1四半期へ、さらに3月に再延期。そして今回、完全に棚上げとなった。

自ら蒔いた種を、自ら摘み取る。アルトマンの「大人の約束」は、結局果たされないまま宙に浮いている。

たった1週間で3つの「寄り道」が消えた

アダルトモードの凍結は、孤立した事件ではない。OpenAIはこの1週間だけで、3つの主要プロジェクトを次々と切り捨てている。

3月25日(日本時間)、AI動画生成アプリSoraの終了が突然発表された。ピーク時には月間330万ダウンロードを記録したアプリだが、2026年2月には110万まで落ち込んでいた。

Soraの終了で最も衝撃的だったのは、Disneyとの10億ドル(約1,590億円)規模の提携が消滅したことだ。ミッキーマウスやマーベルなど200以上のキャラクターライセンスを含む大型契約だったが、実際には一円も動かないまま幕を閉じた。同じ日にはChatGPTをECポータルにする「Instant Checkout」も優先度を引き下げられている。

動画、ポルノ、ショッピング。2025年に広げた風呂敷が、猛烈な速度で畳まれている。

Anthropicという「目覚まし時計」

なぜ今なのか。その答えは、Anthropicの3文字に集約される。

Anthropicが、OpenAIにとって最も重要な市場であるエンタープライズとコーディングを猛烈に侵食している。ある分析によれば、AIツールを初めて導入する企業の支出のうちAnthropicが約73%を獲得。2026年3月にはClaudeがApp StoreのダウンロードでChatGPTを逆転した。

OpenAIのアプリケーション部門CEOフィジ・シモは、社内でこの事態を「コードレッド」と表現した。

「寄り道に気を取られて、この瞬間を逃すわけにはいかない。生産性、特にビジネス面での生産性を確実にものにしなければならない」──フィジ・シモ(Wall Street Journal報道)

新方針は明快だ。ChatGPT、コーディングツールCodex、AIブラウザAtlasを統合した「スーパーアプリ」に一本化する。エンターテインメントもポルノも、その地図には載っていない。

Anthropicは画像も動画も音声も生成しなかった。テキストとコードに絞り、企業向けに磨き続けた。その「やらない勇気」が、今OpenAIの背中を追い詰めている。


AIの未来は「ビジネスと戦争」に向かうのか

OpenAIの方向転換には、もうひとつの文脈がある。

2月末、Anthropicが国防総省との契約交渉で決裂した直後、OpenAIは最大2億ドル(約320億円)の軍事契約を電撃的に締結した。自律型兵器や国内監視へのAI利用をめぐりAnthropicが「サプライチェーンリスク」に指定される中、OpenAIはその空白に飛び込んだ。

アルトマン自身が「急ぎすぎた」「日和見的に見えた」と認めたこの契約は、ChatGPTのアンインストール急増という形でユーザーの反発も招いた。それでもOpenAIは軍事分野への関与を選んだ。

ポルノやミームから、コードと国防へ。OpenAIの優先順位は、かつてないほど鮮明になっている。だが「寄り道」を次々と捨てた先に、かつてChatGPTが持っていた「誰にでも開かれたAI」という顔は、少しずつ見えなくなっていくのかもしれない。


参照元


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