中国DDR5業者が在庫処分パニック——値下がりは「正常化」ではない
高騰し続けたDDR5の価格が急落した。だが喜んでいる人間と、青ざめている人間の間には深い溝がある。
高騰し続けたDDR5の価格が急落した。だが喜んでいる人間と、青ざめている人間の間には深い溝がある。
積み上げた在庫が、一夜にして重荷になった
中国の電子部品市場で、奇妙な映像が拡散している。
Memory prices have plummeted, and speculators in China are already crying out in despair. pic.twitter.com/JwiEHRUXM4
— China pulse 🇨🇳 (@Eng_china5) April 1, 2026
大量のDDR5モジュールが山積みにされた倉庫で、業者が頭を抱えている——そんな動画だ。投稿者の言葉が状況を端的に表している。「メモリの価格は暴落した。中国の投機家たちはすでに絶望の声をあげている」。
| 中国 | 米国 | 日本 | |
|---|---|---|---|
| 対象モデル | 32GB DDR5 | 32GB DDR5-6400 | DDR5-5600 16GB×2 |
| ピーク時 | 約3,000元 (約4万7,000円) |
490ドル (約7万8,000円) |
約65,000円 |
| 現在 | 約1,950元 (約3万1,000円) |
379.99ドル (約6万円) |
5万円台後半 |
| ピーク比 | ▼約35% | ▼約22% | 横ばい |
| 2025年10月比 | — | — | 約4倍 |
※ 2026年4月上旬時点のリテール価格。中国・米国は3月末からの急落後の水準。円換算は1ドル=約159円。元換算は1元≒15.8円。日本市場はTurboQuant発表後も目立った変動なし。
そして動画の中の業者が口にした言葉が、今の市場の空気をよく表している。「兄弟、メモリが大暴落だ。在庫を抱えたまま身動きが取れない。値段が戻る可能性はあるか?」
問いへの答えは、誰も持っていない。
なぜ価格は急落したのか
今回の急落には、二つの引き金がある。
一つは需要側の「心理ショック」だ。Googleが3月下旬に発表したAIメモリ圧縮アルゴリズム「TurboQuant」が、市場に衝撃を与えた。この技術はLLM推論時のKVキャッシュを最大6分の1に圧縮できるとされており、「AIデータセンターで必要なメモリ量が激減するのでは」という憶測が一人歩きした。
モルガン・スタンレーの分析によれば、TurboQuantはモデルの重み(HBM使用量)や学習処理には影響しない技術だ。実態としては「同じハードウェアでより長いコンテキストを扱えるようになる」効率化技術であり、DRAM需要そのものを消滅させるものではない。
「TurboQuantは進化的ではあっても革命的ではない。業界の長期的な需要構造を変えるものではない」——Quilter Cheviot、テクノロジーリサーチ担当 Ben Barringer氏(CNBC)
にもかかわらず、SK hynix、Samsung、Micronの株価は大幅下落し、時価総額から数千億ドル規模が消えたと報じられた。感情は、しばしば分析より速く動く。
もう一つは、投機的在庫の崩壊だ。
台湾メディアの報道によると、DDR5価格は中国で最大30%超下落。2025年後半から2026年初頭にかけてメモリ価格が300%以上高騰したことで、大規模な買い占めが横行していた。
高値でつかんだ在庫を高値で捌くはずが、値崩れが始まった途端に「我先に」と売りが殺到する。在庫を多く抱えた業者ほど損失が膨らむ構造だ。この連鎖がスポット価格の急落を加速させた。
中国と日本で、起きていることの差
下落の実態は、地域によってかなり異なる。
中国市場での値動きが最も激しかった。32GB DDR5モジュールは先週から500〜1,050人民元の値下がりを記録し、1,950人民元(約3万1,000円)まで下落した取引もある。ピーク時の約3,000人民元(約4万7,000円)から比べれば35%近い下落だ。中国の市場は流動性が高く、投機的な売買が多いため、値動きが特に激しくなる。
米国でもCorsair Vengeance 32GB DDR5-6400キットが490ドルから379.99ドル(約6万円)へ、約22%下落している。
一方、日本市場での変動はまだ限定的だ。DDR5-5600の16GB×2枚組は5万円台後半の水準で推移しており、中国市場のような急落は確認されていない。TrendForceも、今回の価格調整は「構造的な需要の崩壊ではなく、消費者主導の短期的な調整」と位置づけている。
契約価格は依然として堅調であり、サーバー向けのHBMおよびDRAM需要は主要サプライヤーとの複数年契約によって大きく支えられている。(TrendForce、2026年3月31日)
「値下がり」と「正常化」は別の話だ
喜ぶのはまだ早い、というのが市場の大方の見立てだ。
DDR5-5600の16GB×2枚組が2025年10月時点で1万4,700円だったことを考えると、現在の5万円台後半は依然として約4倍の水準にある。欧州の市場分析メディアDropReferenceは、「価格の上昇は止まったが、下がってもいない。2026年後半まで本当の値下がりは期待できない」と結論づけた。
「今回の価格調整は消費者主導の短期的な修正であり、構造的な需要の崩壊を示すものではない。主要サプライヤーは複数年の契約で守られており、サーバー向けDRAM需要は依然として堅調だ」——TrendForce(2026年3月31日)
構造的な問題は何も変わっていない。AI向けHBMの増産がコンシューマ向けDDR5の供給を圧迫する構図、設備投資の回収に3〜5年かかるDRAMの装置産業的特性、そして主要メーカーの新ファブが本格稼働するのは早くても2027年以降という現実。
それでも確かなことがある。長期投機目的でメモリを大量に抱えた人間にとって、今は最悪のタイミングだということだ。価格が上がり続けることへの信頼が崩れた瞬間、在庫はただの重荷に変わる。
「値段が戻る可能性はあるか?」
その答えは「おそらく、すぐには戻らない」だが——それを誰も教えてくれなかったわけでもない。
参照元
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