中国DDR5業者が在庫処分パニック——値下がりは「正常化」ではない

高騰し続けたDDR5の価格が急落した。だが喜んでいる人間と、青ざめている人間の間には深い溝がある。

中国DDR5業者が在庫処分パニック——値下がりは「正常化」ではない

高騰し続けたDDR5の価格が急落した。だが喜んでいる人間と、青ざめている人間の間には深い溝がある。


積み上げた在庫が、一夜にして重荷になった

中国の電子部品市場で、奇妙な映像が拡散している。

大量のDDR5モジュールが山積みにされた倉庫で、業者が頭を抱えている——そんな動画だ。投稿者の言葉が状況を端的に表している。「メモリの価格は暴落した。中国の投機家たちはすでに絶望の声をあげている」。

中国 米国 日本
対象モデル 32GB DDR5 32GB DDR5-6400 DDR5-5600
16GB×2
ピーク時 約3,000元
(約4万7,000円)
490ドル
(約7万8,000円)
約65,000円
現在 約1,950元
(約3万1,000円)
379.99ドル
(約6万円)
5万円台後半
ピーク比 ▼約35% ▼約22% 横ばい
2025年10月比 約4倍

※ 2026年4月上旬時点のリテール価格。中国・米国は3月末からの急落後の水準。円換算は1ドル=約159円。元換算は1元≒15.8円。日本市場はTurboQuant発表後も目立った変動なし。

そして動画の中の業者が口にした言葉が、今の市場の空気をよく表している。「兄弟、メモリが大暴落だ。在庫を抱えたまま身動きが取れない。値段が戻る可能性はあるか?」

問いへの答えは、誰も持っていない。


なぜ価格は急落したのか

今回の急落には、二つの引き金がある。

一つは需要側の「心理ショック」だ。Googleが3月下旬に発表したAIメモリ圧縮アルゴリズム「TurboQuant」が、市場に衝撃を与えた。この技術はLLM推論時のKVキャッシュを最大6分の1に圧縮できるとされており、「AIデータセンターで必要なメモリ量が激減するのでは」という憶測が一人歩きした。

モルガン・スタンレーの分析によれば、TurboQuantはモデルの重み(HBM使用量)や学習処理には影響しない技術だ。実態としては「同じハードウェアでより長いコンテキストを扱えるようになる」効率化技術であり、DRAM需要そのものを消滅させるものではない。

「TurboQuantは進化的ではあっても革命的ではない。業界の長期的な需要構造を変えるものではない」——Quilter Cheviot、テクノロジーリサーチ担当 Ben Barringer氏(CNBC)

にもかかわらず、SK hynix、SamsungMicronの株価は大幅下落し、時価総額から数千億ドル規模が消えたと報じられた。感情は、しばしば分析より速く動く。

もう一つは、投機的在庫の崩壊だ。

台湾メディアの報道によると、DDR5価格は中国で最大30%超下落。2025年後半から2026年初頭にかけてメモリ価格が300%以上高騰したことで、大規模な買い占めが横行していた。

高値でつかんだ在庫を高値で捌くはずが、値崩れが始まった途端に「我先に」と売りが殺到する。在庫を多く抱えた業者ほど損失が膨らむ構造だ。この連鎖がスポット価格の急落を加速させた。


中国と日本で、起きていることの差

下落の実態は、地域によってかなり異なる。

中国市場での値動きが最も激しかった。32GB DDR5モジュールは先週から500〜1,050人民元の値下がりを記録し、1,950人民元(約3万1,000円)まで下落した取引もある。ピーク時の約3,000人民元(約4万7,000円)から比べれば35%近い下落だ。中国の市場は流動性が高く、投機的な売買が多いため、値動きが特に激しくなる。

米国でもCorsair Vengeance 32GB DDR5-6400キットが490ドルから379.99ドル(約6万円)へ、約22%下落している。

一方、日本市場での変動はまだ限定的だ。DDR5-5600の16GB×2枚組は5万円台後半の水準で推移しており、中国市場のような急落は確認されていない。TrendForceも、今回の価格調整は「構造的な需要の崩壊ではなく、消費者主導の短期的な調整」と位置づけている。

契約価格は依然として堅調であり、サーバー向けのHBMおよびDRAM需要は主要サプライヤーとの複数年契約によって大きく支えられている。(TrendForce、2026年3月31日)

「値下がり」と「正常化」は別の話だ

喜ぶのはまだ早い、というのが市場の大方の見立てだ。

DDR5-5600の16GB×2枚組が2025年10月時点で1万4,700円だったことを考えると、現在の5万円台後半は依然として約4倍の水準にある。欧州の市場分析メディアDropReferenceは、「価格の上昇は止まったが、下がってもいない。2026年後半まで本当の値下がりは期待できない」と結論づけた。

「今回の価格調整は消費者主導の短期的な修正であり、構造的な需要の崩壊を示すものではない。主要サプライヤーは複数年の契約で守られており、サーバー向けDRAM需要は依然として堅調だ」——TrendForce(2026年3月31日)

構造的な問題は何も変わっていない。AI向けHBMの増産がコンシューマ向けDDR5の供給を圧迫する構図、設備投資の回収に3〜5年かかるDRAMの装置産業的特性、そして主要メーカーの新ファブが本格稼働するのは早くても2027年以降という現実。

それでも確かなことがある。長期投機目的でメモリを大量に抱えた人間にとって、今は最悪のタイミングだということだ。価格が上がり続けることへの信頼が崩れた瞬間、在庫はただの重荷に変わる。

「値段が戻る可能性はあるか?」

その答えは「おそらく、すぐには戻らない」だが——それを誰も教えてくれなかったわけでもない。


参照元

関連記事

Read more

Windows 11、24H2ユーザーに25H2への強制アップデートを開始

Windows 11、24H2ユーザーに25H2への強制アップデートを開始

「更新を好きなだけ止められる未来」が来る前に、全員に最新版を配り終えたいらしい。Microsoftが静かに始めた強制移行の裏には、矛盾と焦りが透けて見える。 24H2の「寿命」が、強制更新のトリガーになった Windows 11 バージョン24H2を使っている一般ユーザーのPCに、バージョン25H2への自動アップグレードが始まっている。Microsoftは3月末、Windows Release Healthダッシュボードを更新し、IT部門の管理下にないHome・Proエディションの全24H2デバイスへの展開拡大を明らかにした。 同社が「機械学習ベースのインテリジェントロールアウト」と呼ぶ段階的配信の、事実上の最終フェーズだ。 つまり、企業のIT管理下にない個人PCは、ユーザーが手を動かさなくても25H2に移行する。再起動のタイミングは選べるし、一時的な延期も可能だが、最終的にはアップデートが降ってくる。 背景にあるのはサポート期限だ。24H2のHome・Proエディションは2026年10月13日にサポートが終了する。残り約半年。この期限を過ぎると、セキュリティパッチも既知の