Chrome 148で動画・音声のネイティブ遅延読み込みが解禁される

ウェブページを開いた瞬間、画面の外にある動画まで一斉に読み込まれている。ずっと当たり前だったその非効率が、Chrome 148でようやく終わりを迎えようとしている。

Chrome 148で動画・音声のネイティブ遅延読み込みが解禁される

ウェブページを開いた瞬間、画面の外にある動画まで一斉に読み込まれている。ずっと当たり前だったその非効率が、Chrome 148でようやく終わりを迎えようとしている。


なぜ今まで動画には対応していなかったのか

Chromeの遅延読み込みといえば、2019年から画像と<iframe>には標準対応してきた。loading="lazy"という属性を一つ追加するだけで、画面外のリソースを必要になるまで読み込まない——シンプルで強力な仕組みだ。

ところが動画と音声は、ずっと蚊帳の外だった。

開発者たちは長年、JavaScriptのIntersection Observerというブラウザ標準APIを使った独自実装で対応してきた。ビューポートに要素が近づいたら動的にsrc属性を書き換える——という方法だが、これには根本的な問題がある。ブラウザの外側からブラウザの仕事をしていた、というのが本質だ。できないことはないが、本来あるべき姿ではない。

JavaScriptによる実装は複雑になりがちで、ブラウザ本来のプリロードスキャナとうまく連携できない。ネットワーク状況を考慮した最適化や、autoplay属性との正しい連携も実現できない。

標準化への長い道のり

この問題に正面から向き合ったのが、Squarespaceのエンジニアチームだ。2025年秋のハックウィークで動き出したこのプロジェクトは、最終的にHTMLの仕様そのものを書き換えることになった。

Squarespaceのエンジニア、スコット・ジールを中心とするチームは、ブラウザコードに触れたことのないフルスタック開発者たちで編成されていた。それでも、FirefoxとWebKitへのパッチを一週間で書き上げた。

Chromiumへの実装は、オーストリアのエンジニア、ヘルムート・ヤーヌシュカが担当した。krone.atのエンジニアリング責任者でありながら、Chromiumへの貢献数が95件以上に及ぶ独立系コントリビューターだ。彼が書いたパッチは2026年2月下旬にChromium 147へマージされ、4月7日のリリースでコマンドラインスイッチの後ろに隠れた状態で提供された。

Chrome / Edge Firefox Safari (WebKit)
エンジン Chromium Gecko WebKit
実装状況 実装済み パッチ審査中 パッチ審査中
コードマージ Chromium 147
2026年2月下旬
未マージ 未マージ
デフォルト有効 Chrome 148
2026年5月上旬予定
未定 未定
対象プラットフォーム Desktop / Android
iOS / WebView
パッチ提供元 H. ヤーヌシュカ
(独立エンジニア)
Squarespace
エンジニアチーム
Squarespace
エンジニアチーム
HTML標準採択 2026年3月下旬 ── WHATWG HTML Living Standard に正式採択

※ Chrome/Edgeの「対象プラットフォーム」はChrome 148時点の予定。Firefox・Safari(WebKit)の対応時期は未公表。EdgeはChromiumベースのため、Chromeと同タイミングで対応予定。

そして2026年3月下旬、HTML Video・Audioの遅延読み込みは正式なウェブ標準となった。Firefox、WebKit(Safari)、Chromiumの三大エンジン全てが前向きな姿勢を示しており、ウェブ標準史上でも稀な「三ブラウザ同時進行」の展開だ。

Chrome 148で何が変わるのか

Chrome 148では、この機能が全ユーザーに対してデフォルト有効で展開される予定だ。リリースは2026年5月上旬が見込まれている。Desktop、Android、iOS、WebViewのすべてで同じバージョンに揃う。

変更の実感はシンプルだ。開発者がHTMLにloading="lazy"を書くだけで、画面外の動画や音声ファイルが自動的に遅延読み込みされる。JavaScriptのコードは一行も要らない。

ブラウザはネットワーク状況に応じて読み込みのタイミングを最適化し、autoplay属性との連携も正しく制御する。画面外で再生が始まる問題も解消される。

HTTP Archiveのデータによれば、動画ファイルはウェブページ全体で最も重いリソースカテゴリであり、次点の画像と比べても差は歴然としている。スクロールせずに閉じられたページの動画が、読み込まれることなく終わるようになる。エネルギーとデータ通信量の節約という意味で、インターネット規模の話だ。

恩恵を受けるのは誰か

この変更が直接響くのは、まずウェブ開発者だ。JavaScriptによる複雑な実装を捨てて、一つの属性に置き換えられる。保守コストの削減は地味だが確実に効く。

ユーザー側では、動画を多用したサイト——ニュースメディア、ECサイト、ポートフォリオサイトなど——での初期読み込みが速くなる可能性がある。特にモバイル回線では体感しやすいはずだ。

ただ、一つ注意点がある。この機能はあくまで「属性を書いたサイト」にしか効かない。ブラウザが自動で全ての動画を遅延読み込みするわけではない。標準化されたとはいえ、実際の恩恵はサイト側の実装次第だ。

Squarespace & Web Standards: How We Helped Bring HTML Video & Audio Lazy Loading to Today’s Browsers — Squarespace Engineering Blog
At Squarespace, many of our core products are built on web standards, and our engineers are constantly pushing the boundaries of the web’s capabilities. Occasionally, those boundaries reveal a limitation: an opportunity for the web’s native capabilities to grow. This post is the story of how we foun

EdgeやBraveも対象——Chromiumベースのブラウザ全てに波及

ChromiumはGoogle Chromeだけでなく、Microsoft Edge、Vivaldi、Brave、Operaなどの土台でもある。Chrome 148でデフォルト有効になれば、これらのブラウザにも波及する。

FirefoxとWebKitへのパッチはSquarespaceチームがすでに提出済みで、審査・統合の段階にある。タイムラインは未定だが、最終的に主要三エンジン全てで同じHTMLが同じ動作をするという、ウェブ標準本来の姿に近づく。

標準化から実装まで、これだけのスピードで三ブラウザが足並みを揃えることは珍しい。それだけ「遅れていた機能」だったということかもしれない。


参照元

他参照