Copilot新版、Edge丸ごと同梱でRAM消費10倍に
「ネイティブ回帰」を掲げたMicrosoftが、AIアシスタントに850MBのブラウザエンジンを詰め込んだ。スタートメニューのWinUI移行と真逆の方向を歩むCopilotが、Microsoftの言行不一致を露呈している。
「ネイティブ回帰」を掲げたMicrosoftが、AIアシスタントに850MBのブラウザエンジンを詰め込んだ。スタートメニューのWinUI移行と真逆の方向を歩むCopilotが、Microsoftの言行不一致を露呈している。
5度目のアーキテクチャ変更、今度はEdgeごと配達
Windows 11のCopilotがまた生まれ変わった。今度で5回目だ。
サイドバーから始まり、Edgeベースのサイドバーになり、PWAになり、WebViewになり、WinUIベースの「ネイティブアプリ」になり、そしていま再びWebの世界に戻ってきた。四半期ごとに設計思想が変わるAIアシスタントなど、ほかに例を見ない。
しかも今回は、ただのWebラッパーではない。Copilotのインストールフォルダを開くと、そこにはEdgeのバージョン146.0.3856.97が丸ごと鎮座している。msedge.exe、msedge.dll、ffmpeg.dll、Vulkan/SwiftShader、WidevineCDMまで含む、約850MBの完全なChromiumブラウザだ。
msedge.dllだけで315MB。これは「WebView2を利用した軽量なWebアプリ」ではなく、Edgeそのものを内蔵した独立ブラウザである。
通常のWebView2アプリやPWAであれば、Windows 11にプリインストールされたEdge基盤を共有する。わざわざ専用のEdgeフォークを同梱するということは、Microsoftがシステム側のEdgeとは独立した実行環境を必要としたことを意味する。
バックグラウンドで500MB、操作すれば1GB
Windows Latestの検証によれば、新Copilotはバックグラウンドだけで最大500MBのRAMを消費する。実際に操作を始めると1GBに達することもある。

旧WinUIネイティブ版のCopilotが100MB未満で動作していたことを考えると、メモリ消費は約10倍だ。しかもウィンドウを閉じてもEdgeのプロセス群はメモリ上に残り続ける。タスクマネージャーで手動終了しない限り、リソースは解放されない。
8GBのPCでこの挙動は厳しい。Copilotだけでシステムメモリの6%以上を占有する計算になる。
Browser Helper Objects、Trust Protection Lists、DRM、PdfPreview、edge_game_assist──Copilotのパッケージ内にはEdgeのサブシステムが丸ごと含まれている。AIチャットアプリにゲームアシスト機能が必要な理由は、おそらく誰にも説明できない。
「ネイティブ回帰」を掲げた2週間後の矛盾
この話が特に皮肉なのは、タイミングだ。
Microsoftは2026年3月20日、Windows Insider Blogで「Our commitment to Windows quality」と題した宣言を公開した。Windows担当プレジデントのパヴァン・ダヴルリが「Windowsの品質基準を引き上げる」と約束し、具体的な施策としてスタートメニューのReactからWinUI3への移行、メモリ効率の改善、WebView2依存の見直しを挙げた。
「Webベースのコンポーネントは常にネイティブフレームワークより遅い」という認識を、Microsoft自身が公式に表明したのだ。さらに3月26日には、パートナーアーキテクトのルディ・ヒュイン(Rudy Huyn)が「100%ネイティブなWindowsアプリを作る新チームを編成する」とXで明かしている。
その宣言からわずか2週間後に出てきたのが、850MBのEdgeを丸ごと内蔵したWebアプリだった。
右手でネイティブ回帰を宣言し、左手でEdge同梱のWebアプリを配布する。この矛盾を「組織の部門が違うから」で済ませるのは簡単だが、ユーザーのPCに届く結果は一つだ。メモリは増え、ストレージは圧迫される。
セキュリティ研究者が見た「もう一つの顔」
セキュリティ研究者のアレックス(@xaitax)は、Copilotの内部をさらに掘り下げている。
https://x.com/xaitax/status/2037292090699186477
Copilotアプリには専用のApp-Bound Encryption(ABE)が実装されており、IElevatorCopilotという独自のCOMインターフェースを持つ。elevation_service.exeも専用のものが同梱されている。つまりCopilotは単にEdgeのガワを借りているのではなく、独自の暗号化境界を持つ独立したChromiumブラウザとして機能している。
復号すると、copilot.microsoft.comの認証クッキー、MSALセッショントークン、Microsoftアカウントのトークンなどが格納されていることが確認された。Copilotは「アプリのふりをしたブラウザ」ではなく、「ブラウザそのもの」だ。
セキュリティ境界の分離という設計判断自体には理がある。Edge本体の脆弱性がCopilotに波及するリスクを減らせるからだ。だがユーザーの視点で言えば、AIチャットアプリのためにもう一つのブラウザを丸ごと飼うことになっている。
Microsoftが抱える構造的な引き裂き
MicrosoftのCopilotチームとWindowsプラットフォームチームは、明らかに別の方向を向いている。
Copilot側はWeb技術でクロスプラットフォームの一貫性を求める。Webベースならば、Windows、macOS、モバイルのすべてで同じUIを同じコードで動かせる。アップデートもサーバー側で即座に反映できる。開発速度が最優先の世界では、合理的な判断だ。
一方、Windowsプラットフォーム側はネイティブ回帰でOS全体の品質を立て直そうとしている。RAMを削り、レイテンシを減らし、「Windowsが重い」という評判を払拭したい。その文脈でWebView2やElectronは敵であり、WinUI3こそが正解だ。
どちらも一理ある。問題は、この2つの正しさがユーザーのPC上でぶつかっている点にある。
問われるのはMicrosoftの本気度
Windows Latestが言うように、「Windows 11にはすでにWebアプリ、PWA、Electronが溢れかえっている。これ以上は要らない」。実際、WhatsApp、Discord、Teamsなど主要アプリがWebラッパーに移行し、メモリ消費の膨張は無視できないレベルになっている。
Copilotが速く感じるという声もある。専用のEdgeフォークを使うことで、共有のWebView2ランタイムより最適化された実行環境を実現しているのかもしれない。だが、その「速さ」の代償が850MBのストレージと500MBのRAMなら、ネイティブアプリで同じ体験を作る方がよほど合理的だ。
3月の品質宣言が本物なら、Copilotこそ最初にネイティブ化すべきアプリだったはずだ。Microsoftが自社のフラッグシップAIアシスタントでさえWebに逃げるなら、サードパーティにネイティブアプリ開発を求める説得力は、どこにもない。
参照元
- Windows Latest - New Copilot for Windows 11 includes a full Microsoft Edge package, uses more RAM
- Windows Insider Blog - Our commitment to Windows quality
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