GIMP 3.2.2リリース──「7年沈黙」を脱したOSSが見せる新しいリズム
かつて7年ごとにしか動かなかったプロジェクトが、2週間でバグフィックスを届けた。GIMPの開発体制は、静かに、しかし確実に変わり始めている。
かつて7年ごとにしか動かなかったプロジェクトが、2週間でバグフィックスを届けた。GIMPの開発体制は、静かに、しかし確実に変わり始めている。
レイヤーグループが消える──3.2最大のバグを修正
GIMP 3.2.2が公開されている。3月14日にリリースされたGIMP 3.2.0の最初のバグフィックス版で、わずか2週間での修正対応だ。
最も深刻だったのは、ドロップシャドウなどのフィルタを適用したレイヤーをレイヤーグループに追加すると、描画が停止するという不具合だ。データそのものは失われないが、編集中に突然レイヤーが見えなくなる体験は、作業者にとって悪夢に近い。メンテナーのJehanが原因を特定し、修正した。
このバグがGIMP 3.2.2の早期リリースを決定づけた最大の要因だった。GNOMEの開発者フォーラムでは、リリース数日前にJehanが「一部のバグは他より深刻だ」と緊急対応の理由を説明している。

ベクターレイヤー関連の不具合も複数修正された。3.2で新たに導入された機能だけに、大量のユーザーが触れたことで見落とされていたケースが浮上した形だ。SVGパスのインポート時にスケーリングが正しく動作しない問題も解消されている。
ファイル形式の対応力を底上げ
画像編集ソフトの実力は、派手な新機能よりも「どれだけ多くのフォーマットを正しく読めるか」で測れる部分がある。3.2.2では地味だが重要な改善が複数入った。
PSDプラグインは、マルチチャンネルモードの全チャンネルをインポートできるようになった。新コントリビューターのフランク・テクロテが、TIFFやJPEGに格納されたPSDのレイヤーやパス情報の読み込み対応を進めている。Photoshopとの相互運用性は、GIMPがプロの現場に食い込むための生命線だ。
FITS、TIM、PAA、ICNS、PVR、SFW、JIFといったフォーマットのインポートプラグインも堅牢性が向上した。Paintshop Proプラグインは選択範囲の形状を正しく読み込むようになり、レガシーなタイルフィルタはカラープロファイルを正しくコピーするようになった。
PSD互換性の改善は、GIMPをサブツールとして使う層にとって切実な問題だ。「開けるが崩れる」と「完全に再現できる」の間には、採用と不採用を分ける壁がある。
UX改善──ピクセルアーティストと効率重視のユーザーへ
バグフィックスが主題のリリースだが、ユーザー体験の改善もいくつか含まれている。
ヒストグラムドックの「固有色のカウント」機能が、アクティブな選択範囲を認識するようになった。画像全体ではなく、選択した領域内のピクセルだけをカウントする。ドット絵制作者や正確な色数管理が必要なワークフローには、地味ながら大きな改善だ。
回転メタデータ付きの画像を開く際、プレビュー画像を直接クリックして向きを選べるようになった。プラグインのリソース選択ボタンにはキーボードショートカット(ニーモニック)が追加され、マウスに頼らない操作が可能になっている。
非破壊フィルタのポップオーバーメニューでは、表示切替ボタンがフィルタスタックの状態に連動するようになった。すべてのフィルタを個別にオフにすると、ボタンが自動的に「全オン」モードに切り替わる。
32bit Windows廃止──インストーラが100MiB軽量化
以前から予告されていた32bit Windowsビルドの廃止が、3.2.2で正式に実施された。32bitプロセッサをサポートする最後のWindowsは、2025年10月にサポートが終了したWindows 10だ。
この決定と同梱データの整理により、.exeインストーラのサイズが100MiB以上縮小し、動作も高速化した。レガシーの切り捨ては痛みを伴うが、開発リソースの集中という観点からは合理的な判断だろう。
macOSのビルドプロセスも刷新が進んでいる。ブルーノ・ロペスが2025年12月からmacOSインフラの近代化に取り組んでおり、将来的にはGitLab CIからの自動ビルドを目指す。ただし3.2.2のmacOS DMGパッケージは、ボランティアの体調不良と時間不足により遅延が予告されている。
山形大学がミラーに──日本で2拠点目
日本のユーザーにとって嬉しいニュースもある。山形大学がGIMPの公式ダウンロードミラーとして新たに参加した。日本国内では2拠点目となる。
GIMPは毎日数万件のダウンロードを処理しており、地理的に近いミラーの存在はダウンロード速度に直結する。日本国内2拠点目のミラー誕生は、アジア地域でのGIMPの利用拡大を反映しているとも読み取れる。

「7年」から「2週間」へ──変わる開発のリズム
数字を並べてみよう。GIMP 2.8から2.10まで6年。2.10から3.0まで7年。ところが3.0から3.2まではわずか1年。そして3.2.0から3.2.2までは、たった2週間だ。
3.2.2では21人のコントリビューターが参加し、200件のコミットが実行され、30件の報告がFIXEDとしてクローズされた。10言語の翻訳が更新され、画像処理エンジンGEGLも0.4.70がリリースされている。
開発チームはすでにGIMP 3.4の準備に言及している。バグフィックスのフェーズが落ち着き次第、新機能の開発に移行する見込みだ。
GIMPチームは「GIMPは手伝いたい人なら誰でも作れる」と述べ、テストバイナリでの深いテストに参加する早期テスターを募っている。テスター登録はgimp-web-develトラッカーから可能だ。
正直なところ、GIMPの開発ペースがここまで変わるとは思わなかった。もちろん、macOSビルドの遅延が示すように、ボランティア主体のプロジェクトには常に綱渡りの側面がある。それでも、「7年の沈黙」を知る者にとって、2週間でバグフィックスが届く現実は、まったく別のプロジェクトを見ているようだ。
この勢いが持続するかどうかは、次の3.4が答えを出す。
参照元
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