PS6は699ドルで出せるのか──部品原価760ドルが突きつける現実

PS5が4度目の値上げに踏み切った翌日、リーカーがPS6の部品原価を暴露した。699ドルは「まだ可能」だという。ただし、その言葉の後に続いた一文が、本当の爆弾だった。

PS6は699ドルで出せるのか──部品原価760ドルが突きつける現実

PS5が4度目の値上げに踏み切った翌日、リーカーがPS6の部品原価を暴露した。699ドルは「まだ可能」だという。ただし、その言葉の後に続いた一文が、本当の爆弾だった。


PS5の値上げが止まらない

2020年に4万9,980円で登場したPS5が、2026年4月2日から9万7,980円になる。発売時のほぼ2倍だ。

PS5 Proに至っては13万7,980円。ディスクドライブなしの「ゲーム機」に、14万円近い金額を支払う時代が来てしまった。デジタル・エディションも8万9,980円に跳ね上がり、唯一据え置きの「日本語専用モデル」が5万5,000円で踏みとどまっている。

SIEのイザベル・トマティス(グローバルマーケティング担当VP)は「世界的な厳しい経済環境の変化が長期化する状況下」での判断だと説明した。

PS5®、PS5®ProおよびPlayStation Portal™ リモートプレーヤーの希望小売価格改定のお知らせ
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だが具体的なコスト要因には一切触れていない。2025年8月の前回値上げ時も、2026年2月の決算説明会でも、この姿勢は一貫している。

ソニーが値上げの理由を明かさないのは今に始まったことではない。だが業界の見方は一致している──AI需要によるメモリ価格の高騰が最大の要因だ。

Ampere Analysisのリサーチディレクター、ピアーズ・ハーディング=ロールズは、ソニーが部品の価格保護契約の期限を迎えた可能性を指摘している。メモリ価格が下がる兆しがない以上、コスト転嫁は不可避だったということだ。加えて中東情勢の悪化による原油価格の高騰が、物流コストにも波及している。

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部品原価760ドル──PS6の価格が見え始めている

PS6の製造コストに、初めて具体的な数字が突きつけられている。PS5値上げ発表の直後、NeoGAFフォーラムにAMDリーカーのKeplerL2が投稿した。

「PS6のBOM(部品原価)は現時点で約760ドル。適切な補助金があれば699ドルは可能だと思う」

Business - Sony hikes up PS5 pricing in April: PS5 – $649.99, PS5 Digital Edition – $599.99 PS5 Pro – $899.99, Portal $249.99
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BOM(Bill of Materials)とは、製品を構成する全部品のコストを合算した数字だ。760ドルは日本円にして約12万1,600円(1ドル=約160円換算)。これはあくまで部品代であり、組み立て、輸送、小売マージン、税金は含まれていない。

KeplerL2はこの見積もりの内訳についても補足している。

構成は「1TB Gen5 SSD搭載、ディスクドライブなし」が前提だ。PS5 Proの大幅な値上がりの一因である2TB SSDは含まれていない。

NeoGAFのユーザーたちが指摘したように、BOMが760ドルなら最終的な小売価格はそれを大きく上回る可能性がある。699ドル(約11万1,800円)で売るということは、ソニーが1台あたり100ドル以上の赤字を被るということだ。

だがゲーム機の歴史において、逆ザヤ(赤字販売)は珍しいことではない。PS5も発売から4年間、赤字で売り続けていた。問題は、今のソニーにその覚悟があるかどうかだ。

Xboxが競合でなくなった世界で、ソニーは値下げするか

PS6の価格を左右する最大の変数は、部品コストではない。競争環境だ。KeplerL2の発言で最も注目すべきは、価格の数字ではなかった。

Kepler_L2

「問題は、Xboxがもはや直接の競合でなくなった今、ソニーがわざわざ努力をするかどうかだ」

この一文が、PS6の価格問題の本質を突いている。ゲーム機メーカーが逆ザヤを許容してきたのは、競合に市場を奪われないためだった。PS3の599ドルは高すぎてXbox 360に負けた。その教訓から、PS4は399ドルで出して大勝した。価格設定は技術力ではなく、競争環境が決めてきた。

しかし次世代では、その構図が根本から変わる。MicrosoftのXbox次世代機「Project Helix」は、KeplerL2の推定でBOMが約900ドル。小売価格は1,200ドル(約19万2,000円)に達する可能性がある。PS6より42%多いシリコン、20%多いメモリ、さらに高いボード・冷却コストを抱えるProject Helixは、もはや「ゲーム機」というより「ゲーミングPC」に近い価格帯だ。

ただし、スペックの差が体験の差に直結するとは限らない。

Digital FoundryもKeplerL2も、両機の実際のゲーム性能差は「それほど意味のあるものではない」と見ている。Project Helixのスペック優位は、内部レンダリング解像度の差程度に収まる可能性が高い。

つまりソニーの前に立ちはだかる競合は事実上消えた。Xboxが1,200ドルの超高級機を出すなら、PS6が799ドルでも「安い」と感じさせることができる。わざわざ逆ザヤで699ドルに抑える経営判断は、合理性を失いつつある。

ゲーム機は「手頃な娯楽」でいられるか

ゲーム機の価格は、もはや「手頃」の範囲を超えつつある。PS5は2020年の発売時に499ドル(日本では4万9,980円)だった。それが6年で価格はほぼ倍になった。PS5 Proは900ドルに迫り、PS6は699ドルでも「安い方」という議論が成立してしまう。

NeoGAFでは「AIブームが終わるまで2030年に延期すべきだ」という声も上がった。だが部品価格が下がる保証はどこにもない。むしろ中東情勢やトランプ政権の関税政策が、さらなるコスト増を招く可能性がある。

メモリの価格がBOM全体の半分近くを占めるという指摘もあり、AIバブルが弾けない限り、状況は変わりそうにない。仮にPS6が出たとしても、既存ユーザーがアップグレードに動くかは別の話だ。

Wccftechが取り上げたAlderon Games創設者マシュー・カセルズのコメントによれば、PS5やPS5 Proユーザーを次世代機に移行させるのは容易ではない。高い本体価格に見合う次世代専用タイトルがなければ、PS5世代は延々と続く。

KeplerL2はPS6とXbox次世代機がともに2027年ホリデーシーズンの発売を予定しているとも述べている。だがメモリ高騰が続く限り、延期の可能性もちらついている。

ひとつだけ確かなことがある。ゲーム機が「手頃な娯楽」だった時代は、静かに幕を閉じようとしている。それが一時的なコスト高によるものなのか、構造的な変化なのか──答えはPS6の価格が正式に発表されるその日まで、誰にもわからない。


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