RTX 4090が燃え始めた。飼い主を救ったのはハードウェア監視ではなく「猫」だった
トイレにいた飼い主を、鳴き声で異変に気づかせた。ハードウェア監視ソフトは何も検知しなかった。
トイレにいた飼い主を、鳴き声で異変に気づかせた。ハードウェア監視ソフトは何も検知しなかった。
煙の匂いに気づいたのは猫だった
台湾のPTT掲示板に、ある投稿が現れた。

2022年10月に購入したMSI GeForce RTX 4090 Gaming Trioが、使用中に電源コネクタから発火したという報告だ。投稿者Acakiがトイレにいたとき、飼い猫が突然鳴き始めた。ドアを開けると、煙と焦げたプラスチックの臭いが部屋に充満していた。
猫が鳴かなければ、もっと深刻な事態になっていた可能性がある。
PCはまだ動作していたが、通常のシャットダウンを受け付けなかった。投稿者は壁からプラグを直接抜いて電源を落とした。添付された写真には、GPU側の16ピン電源コネクタが溶けて変形し、ケーブルが焼け焦げた状態が写っている。






PTT
「正しい使い方」をしていたのに
この事例が注目を集めているのは、投稿者が「やってはいけないこと」を何ひとつしていなかったからだ。
使用していた電源はFSP Hydro PTM Pro 1000W(型番:HPT2-1000M)で、付属アダプタではなく直結ケーブルを使用。ケーブルは定期的に確認し、正しく挿入されており、鋭く曲げてもいなかった。RTX 4090の電源コネクタ問題では「アダプタを使わず直結ケーブルを使え」「ケーブルを曲げるな」「しっかり挿し込め」が対策として繰り返し語られてきた。
この投稿者は、その全てを守っていた。それでも燃えた。
だが、PSU側のコネクタは溶けていない。ケーブルこそ黒く変色しているものの、損傷の中心はGPU側に集中している。発熱源がコネクタの接触面にあったことを示唆しており、挿し込み不良ではない可能性が高い。
ハードウェア監視は役に立たなかった
投稿者は「ハードウェア監視ソフトウェアは何も役に立たなかったが、猫は時間通りに仕事をした」と皮肉を述べている。
GPU温度、電力消費、ファン回転数。現代のハードウェア監視ツールは膨大なデータを収集する。だが16ピンコネクタの接触不良による局所的な発熱は、これらの監視対象に含まれていない。GPU全体の温度が正常でも、コネクタのピン1本が過熱している可能性がある。
電源コネクタの異常を検知できるのは、温度センサーではない。煙の臭いを嗅ぎ分ける鼻だった。
PTTのコメント欄は「猫猫警報器」(猫アラーム)という表現で沸いた。「缶詰をあげろ」「90系GPU買うならまず猫を飼え」といったジョークが並ぶ一方で、「部屋に火災報知器はあったのか」という真面目な指摘もあった。
MSIのGPU Safeguard+、間に合わなかった皮肉
この投稿が現れたのは4月4日。MSIが今年1月のCES 2026で発表したGPU Safeguard+が、まさにこの問題への回答として注目を集めている。
GPU Safeguard+は、12V-2×6コネクタの各ピンに流れる電流をリアルタイムで監視し、異常を検知するとブザーとポップアップ通知で警告する機能だ。3分以内にユーザーが対応しなければ、電源ユニットがGPUへの給電を自動的に遮断する。
この機能が搭載されているのはMSIの新型電源ユニット「MPG Ai1600TS PCIE5」などだ。問題は、燃えたカードがMSI製のRTX 4090であり、使用されていた電源はFSP製だったことだ。MSIは「GPUを守る電源」を発表したが、自社GPUを救うには間に合わなかった。
GPU Safeguard+は、まさにこの種の事故を防ぐために設計された。だがそれは、2026年の新型電源ユニットにしか搭載されていない。
RTX 4090の16ピンコネクタ問題は2022年の発売直後から報告されていた。NVIDIAは12V-2×6への改良を行い、ケーブルメーカーは様々な対策を試みた。2024年4月時点で修理業者NorthridgeFixは「月に約200枚の焼けたRTX 4090が送られてくる」と証言しており、問題は収束していない。
カードの行方と、残された問い
投稿者は既にRMA(返品保証)を申請し、書類の到着を待っている状態だという。RTX 4090は2022年10月発売であり、MSIの標準保証3年は2025年10月に満了している。PTTのコメントには「RMA通るといいな」という声と、「3年半も経たずに燃えるカードに約30万円払ったのか」という皮肉が混在していた。
このケースは、単なる「ユーザーの挿し込みミス」では説明できない。直結ケーブル、正しい挿し込み、曲げなし。にもかかわらず発火した事実は、16ピンコネクタという規格そのものの限界を示唆している。
600Wを1本のケーブルで賄う設計は、物理的な限界に近い。部分的な接触不良、ピン間の電流不均衡、わずかな抵抗増加が、数百ワットの電力負荷のもとで急速に発熱を招く。ASUS ROG AstralシリーズのPower Detector+や、MSIのGPU Safeguard+は、この問題への解答として登場した。
だがそれらは全て、これから購入する新製品に搭載される機能だ。既に稼働している数百万枚のRTX 4090には、何のセーフティネットもない。
残されたのは、煙の匂いを嗅ぎ分ける猫だけだ。
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