シャヘド型AI攻撃ドローン、アリババで出品されていた

ECサイトで「自律標的ロック機能付き」の攻撃ドローンが堂々と出品されていた。米軍がイランのシャヘド工場を空爆している最中に、そのコピー品がオンラインで買える時代が来ている。

シャヘド型AI攻撃ドローン、アリババで出品されていた

ECサイトで「自律標的ロック機能付き」の攻撃ドローンが堂々と出品されていた。米軍がイランのシャヘド工場を空爆している最中に、そのコピー品がオンラインで買える時代が来ている。


アリババでシャヘド型ドローンが「農薬散布機」として出品

世界最大級のECプラットフォーム、アリババでイラン製シャヘド136に酷似した一方向攻撃ドローン(いわゆるカミカゼドローン)が複数出品されていたことが発覚している。オーストラリアの公共放送ABC Newsが3月19日(日本時間)に報じた調査によるものだ。

出品ページでは「農薬散布用」や「航空測量用」と謳われていた。だが、製品カタログを精査すると実態はまるで違う。シャヘド136のコピー品に、本家にはないAI機能が追加されている形だ。2kgの弾頭を搭載可能で、航続距離は最大100km。さらにサーマルイメージングとAI誘導システムを備え、「人、建物、車両、船舶等への自律的な標的ロック」が可能だと記載されていた。

「農薬散布機」にAI標的ロック機能が必要な場面を、正直なところ思いつかない。

ABC Newsの調査によれば、ある中国の出品者は5種類の「自爆攻撃ドローン」を取り扱っており、うち2種はシャヘド136とほぼ同一の寸法・スペックを持っていた。

出品価格は巡航ミサイル型で最大5万豪ドル(約560万円)に達していた。アリババは報道を受けて該当リストを削除し、出品者のアカウントを停止。声明では「軍事兵器の販売を厳格に禁止している」と強調した。だが、報道されるまで放置されていたという事実は残る。


「買った後の使い道は関係ない」——出品者の本音

問題の本質は、リスティングの削除では解決しない構造にある。ABC Newsが複数の出品者に接触したところ、販売者側の姿勢は驚くほど無関心だった。ある販売者は「購入後に何に使うかは、我々には関係ない」と答えている。

この発言が象徴するのは、ドローンという技術が持つデュアルユース(軍民両用)の本質的なジレンマだ。銃や戦車なら「民生品です」とは言い張れない。だがドローンは違う。農業用、測量用、物流用——いくらでも「平和的な用途」を名目にできる。そして弾頭を積めば、そのまま兵器になる。

アリババが規約で軍事兵器の販売を禁じていても、出品者がカタログの表紙を「農業用」に差し替えるだけで規約の網をすり抜けられる。これはアリババだけの問題ではない。プラットフォーム型ECが構造的に抱える限界だ。

しかも、これは初めてのケースではない。2024年1月にも、深圳のOEMメーカーSunlipoがシャヘド136にそっくりなXHZ-50をアリババに出品していたことが米メディアMotherboardの取材で発覚している。当時の販売価格は5万7,000ドル(約910万円)。取材に対し、Sunlipoの営業責任者は「ウクライナの大口顧客向けにカスタマイズしたもの」と語っていた。

2024年の事件でも、出品者はMotherboardの問い合わせを受けてリスティングを削除した。「多くの人が買いたがっている。我々にとって良いことではない」——その「良くない」の基準が、倫理ではなくプラットフォームからのアカウント凍結だった点が、この問題の根深さを物語っている。

米軍がシャヘド工場を爆撃する横で、コピー品がECサイトに並ぶ矛盾

今回の報道が特に重い意味を持つのは、タイミングだ。

2026年2月28日(現地時間)に始まった米国・イスラエルによるイランへの軍事作戦「エピック・フューリー」では、シャヘドドローンの生産施設が主要標的の一つとなっている。米中央軍(CENTCOM)は3月21日(日本時間)、エスファハーン近郊のシャヘド生産工場の破壊前後の衛星写真を公開した

CENTCOM

ピート・ヘグセス国防長官はイランからのドローン攻撃が開戦以来95%減少したと発表している。だがその一方で、同じ設計思想を持つドローンが中国のECサイトから購入可能だったという事実は、国家レベルの軍事行動だけでは「ドローンの拡散」を止められないことを突きつけている。

NPRの分析記事でCSISのトーマス・カラコは、シャヘドの本質的な脅威について的確に指摘している。「特定のドローンが変革的なのではない」——つまり、問題はシャヘドという固有名詞ではなく、安価な自爆ドローンという「概念」そのものが拡散していることだ。

実際、シャヘドの設計は驚くほどシンプルだ。グラスファイバーの機体に芝刈り機レベルのガソリンエンジン。GPS、GLONASS、北斗のいずれかで航法。技術的に複製が難しい部分はほとんどない。だからこそ中国のメーカーがコピーを作れるし、アリババに出品できる。そして今回の新しい要素は、それにAI標的ロック機能が加わったことだ。


ドローン戦争の「コモディティ化」は止められるのか

シャヘド型ドローンの拡散は、もはや国家間の問題を超えつつある。

ウクライナはシャヘド迎撃の最前線で得たノウハウを中東に輸出している。トルコのBaykarは3月14日(現地時間)にAIスウォーム対応のK2カミカゼドローンを発表した。そして米軍自身、鹵獲したシャヘドを解析して「LUCAS」という自国版を開発し、イランに向けて使っている。CENTCOMのブラッド・クーパー司令官は「イランのオリジナル設計を鹵獲し、中身を引き抜いて、"メイド・イン・アメリカ"のラベルを貼って持ち帰り、イラン人に向けて撃っている」と記者会見で語った。

製造コストは1機あたり推定2万〜5万ドル(約320万〜800万円)。一方、これを迎撃するミサイルは1発あたりその数倍から数十倍のコストがかかる。この非対称なコスト構造こそが、シャヘド型ドローンが「貧者の巡航ミサイル」と呼ばれる理由であり、各国がこぞって類似品を開発する動機だ。

攻撃する側が数百万円、防御する側が数千万円。このコストの不均衡が解消されない限り、安価な自爆ドローンの拡散は加速し続ける。

アリババのリスティング削除は、問題の表面を拭いただけにすぎない。ドローンという技術が持つデュアルユースの性質は、規約の文言では制御できない。そしてAI誘導が加わることで、「人間が操縦する道具」から「自律的に標的を選ぶ兵器」への境界線はさらに曖昧になっていく。

5万豪ドルで買えるかもしれない「農薬散布機」が、実は人を標的にロックできるドローンだった——この事実を、私たちはどう受け止めるべきだろうか。


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