SNSの「中毒設計」に初の法的責任──MetaとYouTube敗訴

6歳でYouTubeを覚え、9歳でInstagramを始めた少女が法廷に立った。ロサンゼルスの陪審は「問題はコンテンツではなく設計だ」と認定し、2,000件超の同種訴訟の行方を左右する歴史的な評決を下した。

SNSの「中毒設計」に初の法的責任──MetaとYouTube敗訴

6歳でYouTubeを覚え、9歳でInstagramを始めた少女が法廷に立った。ロサンゼルスの陪審は「問題はコンテンツではなく設計だ」と認定し、2,000件超の同種訴訟の行方を左右する歴史的な評決を下した。


陪審が認めた「中毒の設計図」

MetaとGoogle(YouTube)が、SNSの中毒性をめぐり初めて陪審裁判で敗訴した。ロサンゼルス郡上位裁判所の陪審は3月26日(日本時間)、両社のプラットフォームが意図的に中毒性を持つよう設計され、若年ユーザーに精神的な害を与えたと認定している。

補償的損害賠償300万ドルに加え、懲罰的損害賠償300万ドル。合計600万ドル(約9億5,000万円)の支払い命令だ。責任の配分はMeta70%、YouTube30%。9日間・44時間超に及ぶ評議の末に下された結論だった。

原告のKGM(ケイリー、現在20歳)は、6歳でYouTubeを、9歳でInstagramを使い始めた。無限スクロール、自動再生、プッシュ通知、美容フィルター──原告側弁護士のマーク・ラニエはこれらの機能を「デジタルカジノ」になぞらえ、子どもが手放せなくなるよう「設計された」ものだと主張した。

注目すべきは法的戦略だ。原告側はユーザーが投稿した「コンテンツ」を一切問題にしなかった。代わりに標的にしたのは、プラットフォームの構造そのものだ。米国の通信品位法第230条は、テック企業をユーザー投稿の責任から守る盾として長年機能してきた。その盾を無力化するために、「設計上の欠陥」という製造物責任の論理が持ち込まれた。

ザッカーバーグが法廷で見た「35フィートの告発」

この裁判を象徴する場面がある。ラニエはザッカーバーグへの尋問の最後に、約10メートルの巨大コラージュを法廷に持ち込んだ。ケイリーがInstagramに投稿した数百枚のセルフィーだ。美容フィルターを使ったものが多くを占めていた。

Metaの利用規約は13歳未満のアカウント作成を禁じている。だが内部文書は別の物語を語っていた。ある文書には「ティーンで勝ちたければ、もっと幼い段階で取り込め」と記されていた。別のメモは、11歳のユーザーが競合アプリと比べInstagramに戻る確率が4倍高いことを示していた。13歳未満の利用を禁止しながら、その年齢層を引き留める仕組みが最も効果的に機能していたわけだ。

社会心理学者のジョナサン・ハイトは、ニューメキシコとロサンゼルスの2つの裁判で提出された内部資料が「意図的な行為」を示していると指摘している。

Meta側は、ケイリーの精神的な問題はSNS以前から存在し、家庭環境に起因するものだと反論した。医療記録には虐待の記録があり、本人のセラピストもSNSを原因として文書化していなかった。YouTube側も、ケイリーの利用記録ではYouTube Shortsの平均視聴時間が1日約1分にすぎなかったと主張した。

だが陪審に求められたのは、SNSが問題を「引き起こした」かではない。「実質的な要因」だったかどうかだ。12人中10人が、その問いに「はい」と答えた。

48時間で2つの評決──保険も失ったMeta

この評決は、孤立した事件ではない。わずか24時間前、ニューメキシコ州の陪審がMetaに3億7,500万ドル(約596億円)の賠償を命じたばかりだ。異なる州、異なる法理論、異なる陪審が、48時間で同じ結論に達した。

さらに深刻なのが、デラウェア州裁判所の判断だ。ハートフォードやチャブなど20社以上の保険会社がMetaの防御費用を負担する義務はないとの判決が2月末に確定している。SNS訴訟が主張しているのは「偶発的な事故」ではなく「意図的な設計行為」だからだ。保険が適用されるのは事故であり、故意の設計はカバーされない。

保険会社ですら「これは事故ではない」と認めた。Metaは数千件の訴訟を、すべて自費で戦わなければならない。


2,400件の訴訟と「たばこの再来」

ロサンゼルスの裁判は「ベルウェザー(先行指標)」として選ばれた試金石だ。カリフォルニア州だけで約1,600件の類似訴訟が統合されている。連邦レベルではさらに約2,400件が係争中で、約800の学区と41州以上の司法長官も訴訟に加わっている。

この評決が直接ほかの訴訟の結果を決めるわけではない。だが先行指標裁判の結果は、残る訴訟の和解交渉と今後の判決に重大な影響を及ぼす。コーネル大学テック政策研究所のサラ・クレプスは、1990年代のたばこ訴訟との類似性を指摘し、こうした評決が 「水門を開く」 可能性に言及している。

MetaもGoogleも控訴を表明した。Googleは「YouTubeはSNSではなく、責任をもって構築されたストリーミングプラットフォームだ」と主張している。だがこの裁判で確立された法的論理は、YouTubeの自己定義とは無関係に機能する。問われたのはInstagramやYouTubeの特定のコンテンツではなく、無限スクロールや自動再生といった設計パターンそのものだからだ。

今年夏にはカリフォルニア北部地区連邦裁判所で、学区と保護者による連邦裁判も始まる。TikTokとSnapは本件で和解したが、連邦訴訟では引き続き被告だ。

600万ドルという金額は、Metaの時価総額から見れば誤差にすぎない。だがこの裁判の意義は金額にはない。陪審員のヴィクトリアは評決後にこう語った。「私たちは、企業にこれを感じてほしかった」。600万ドルでは感じないかもしれない。だが2,400件のあとに、同じことを言い続けられるだろうか。


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