Linux

ZigでVulkanドライバを一から書いた開発者が現れた

Linux

ZigでVulkanドライバを一から書いた開発者が現れた

Vulkanドライバといえば、AMDのRADV、IntelのANV、NVIDIAのプロプライエタリドライバ、あるいはMesaのソフトウェアラスタライザLavapipe。いずれも巨大な組織が何年もかけて開発し、保守している。そこに個人開発者が、Zigだけで一からVulkanドライバを書いた。 Apeとは何か 「Ape」は、フランスのゲームエンジン開発者であるkbz_8氏が個人の学習目的で開発しているオープンソースのVulkanドライバだ。ICD(Vulkanの正式なドライバ形式)として実装されており、コードの99.9%がZigで書かれている。Mesaのコードには一切依存しない完全な独立実装だ。 MesaのLavapipeと同じく、GPUのハードウェアを直接叩くのではなく、CPU上でVulkanの処理をソフトウェア的に実行するソフトウェアラスタライザにあたる。シェーダの実行には、kbz_8氏が同じくZigで開発した独自のSPIR-Vインタプリタを使っている。 リポジトリの最初のコミットは2025年10月。約7か月の開発で292コミットを重ね、現時点でVulkan 1.0のテストを

SteamでWindows 11シェアが約70%に到達、それでも残る24%の行方

PCゲーミング

SteamでWindows 11シェアが約70%に到達、それでも残る24%の行方

Valveが公開した2026年5月のSteamハードウェア&ソフトウェア調査で、Windows 11のシェアが69.76%に達した。前月比+2.02ポイント。2025年後半にようやく過半数に達したことを考えると、半年強で70%目前まで来たことになる。 PCゲーマーの間では、Windows 11はもはや「新しいOS」ではなく「当たり前のOS」になった。問題は、まだ当たり前になっていない残り24%のほうだ。 サポート終了後8か月、Windows 10はまだ24% Windows 10のシェアは23.99%(前月比-1.64ポイント)。Microsoftが2025年10月にサポートを終了してから8か月が経つが、Steamユーザーのほぼ4人に1人がいまだにWindows 10を使い続けている。 減少ペースは着実ではある。だが悠長に構えていられる状況ではなくなりつつある。Windowsのセキュアブートで使用される証明書「Microsoft Corporation KEK CA 2011」の有効期限が2026年6月に切れる。Windows Updateを適用し続けていれば自動更新されるが

Ubuntu 26.10が目指す「文脈を理解するデスクトップ」の全容

テクノロジー

Ubuntu 26.10が目指す「文脈を理解するデスクトップ」の全容

10月リリース予定のUbuntu 26.10"Stonking Stingray"のロードマップが公開された。GNOME 51やRISC-V対応といった堅実なアップデートに加え、Canonicalが本格的に踏み込んだのは「コンテキストアウェアデスクトップ」。デスクトップ自体がユーザーの意図を理解するという構想の第一歩が、ここから始まる。 28.04 LTSへの布石 4月にリリースされたUbuntu 26.04 LTS"Resolute Raccoon"の安定運用が始まったばかりだが、デスクトップエンジニアリングチームはすでに次を見ている。 Canonicalのデスクトップエンジニアリングディレクター、ジャン=バティスト・ラルマン(Jean-Baptiste Lallement)氏が6月5日に公開したロードマップは、Ubuntu 26.10単体の機能一覧ではない。2028年4月に予定される次期LTS、Ubuntu 28.04への設計方針を示す文書だ。掲げられた4つの柱は「GNOMEを基盤とする堅牢なプラットフォーム」「シンプルかつ柔軟な設計」「コンテキストアウェアなデスクトップ」

rsyncのAIコーディング騒動が映すもの――30年のインフラを支える「一人」の限界

AI

rsyncのAIコーディング騒動が映すもの――30年のインフラを支える「一人」の限界

1996年から世界中のサーバーで動き続けてきたファイル同期ツールrsync。そのアップデートが一部のバックアップを壊し、原因を探ったユーザーがコミット履歴に見つけたのは「tridge and claude」という共著者名だった。バグ修正の議論は瞬く間に「AIコード是非論」へと変質し、オープンソースコミュニティを巻き込む炎上へ発展した。だが、この騒動の底にあるのはAIの問題だけではない。 セキュリティ修正が引き起こした連鎖 rsync 3.4.3は5月20日、6件のCVEを修正するセキュリティリリースとして公開された。6件中3件は非デフォルトのデーモン設定、1件はプロキシ設定時のみ到達可能だが、残る2件は通常のpull操作や認証済みデーモン接続でも到達できる。放置できる性質のものではなかった。 ところがリリース直後、インクリメンタルバックアップが正常に動作しなくなったという報告が相次いだ。とあるユーザーは、フルバックアップ以外のすべてが失敗するようになったと訴えている。技術的には、CVE-2026-29518およびCVE-2026-43619のシンボリックリンク競合対策として導入

Phoronix22周年が映すLinuxの22年間

Linux

Phoronix22周年が映すLinuxの22年間

2004年、USBマウスすらまともに動かないディストロがあった時代に、たった一人でLinuxハードウェアレビューを始めた人物がいる。マイケル・ララベル(Michael Larabel)氏。彼が立ち上げたPhoronixが、2026年6月5日で22周年を迎えた。 OEMに門前払いされた2004年 ララベル氏がPhoronixを始めた理由は単純だった。Linuxのハードウェア互換性に不満があったからだ。当時はMandrake、Yoper、MEPISといったディストリビューションが並び、基本的な周辺機器すら動作保証がなかった。OEMやODMにレビュー機材を依頼しても、Linuxユーザー向けのレビューに興味を示すメーカーはほとんどいなかったという。 サイト名の「Phoronix」は、「方向・動き」を意味する接頭辞「phoro-」と、UNIX系OSを指す「*NIX」の造語で、「Linuxの前進」を意味する。この名前を冠して、彼は個人サイトとしてPhoronixを公開した。 22年後の数字はこうなる。5,600本以上のハードウェアレビュー、5万200本を超えるニュース記事、2万本以上のラ

Brave Origin正式リリース、「機能を削って有料」の是非

ブラウザ

Brave Origin正式リリース、「機能を削って有料」の是非

プライバシー重視ブラウザBraveが、収益化機能を取り除いた有料版「Brave Origin」を正式にリリースした。買い切り59.99ドル(約9,600円)。ユーザーからの「ミニマルなブラウザが欲しい」という声に応えたとBrave側は説明するが、無料版で膨らませた機能を削って売るという話でもある。反応は割れている。 何が消えて、何が残るのか Brave Originで無効化または削除されるのは、Leo AI、Brave Rewards、Brave Wallet、VPN、Brave News、Brave Talk、Tor、Wayback Machine、Web Discovery Projectなど。日常的にBraveを使っていて「これ要らないのに」と思ったことがある機能が、ほぼすべて対象になっている。 残るのはBrave Shieldsを中心とした広告・トラッカーブロック、Chromiumベースのセキュリティアップデート、そしてブラウザとしての基本機能だ。Braveが最初に支持された理由そのものである。 提供形態は2種類ある。既存のBraveとは別にインストールするスタンドア

Linux 7.2でApple M3が起動可能に、ただし実用までは遠い

Linux

Linux 7.2でApple M3が起動可能に、ただし実用までは遠い

Apple M3搭載Macに対応するデバイスツリーが、Linuxカーネルのメインラインに向けて投稿された。6月中旬に開くLinux 7.2のマージウィンドウで取り込まれれば、メインラインカーネル単体でM3 Macが起動可能になる。ただし現時点で動くのはシリアルコンソールまで。日常利用までの道のりは、まだ長い。 発売から2年半、ようやくメインラインへ Asahi Linuxのコア開発者であるスヴェン・ペーター(Sven Peter)氏が6月4日、Linux 7.2に向けたApple SoCデバイスツリーの更新をプルリクエストとして送付した。この中に含まれるのが、ヤンネ・グルナウ(Janne Grunau)氏とマイケル・リーヴス(Michael Reeves)氏が共同で作成した、M3(内部コード t8122)対応のデバイスツリー一式だ。 対象機種は以下の4モデル。 iMac(24インチ、M3、2023) MacBook Air(13インチ、M3、2024) MacBook Air(15インチ、

AIが暴いたX.Orgの脆弱性9件、終わらない13年

セキュリティ

AIが暴いたX.Orgの脆弱性9件、終わらない13年

X.Org Serverに9件のセキュリティ脆弱性が公開された。修正版のxorg-server 21.1.23とXWayland 24.1.12がリリースされている。注目すべきは発見の経緯で、9件中8件をトレンドマイクロのAIセキュリティ研究プラットフォーム「TrendAI Zero Day Initiative」が検出した。残る1件はRed Hatのピーター・フッテラー(Peter Hutterer)氏による報告。レガシーコードに眠り続けた脆弱性を、AIが一気に掘り起こした形だ。 13年前の「大惨事」宣言、その後 2013年、セキュリティ研究者のイリヤ・ファン・スプルンデル(Ilja van Sprundel)氏が第30回Chaos Communication Congress(30C3)で発表した内容は、X.Orgコミュニティに衝撃を与えた。X.Org Serverのセキュリティは「大惨事(disaster)」であり「

KDE Linux、5月の大掃除でZenカーネル廃止

Linux

KDE Linux、5月の大掃除でZenカーネル廃止

KDEコミュニティが開発中のOS「KDE Linux」の5月の月次報告が公開された。4月に発覚したLinuxカーネルの複数の脆弱性をきっかけにセキュリティの全面点検を実施し、Zenカーネルの廃止や十数件のパッケージ削除に踏み切った。ビルドシステムの根本的な刷新も完了し、プロジェクトが課題としてきたAUR依存もゼロになっている。 使わないものは、切る KDE Linuxは、KDEコミュニティが2025年9月にアルファ版を公開したイミュータブルLinuxディストリビューションだ。KDE Plasmaデスクトップの「リファレンス実装」を目指し、Arch LinuxのパッケージをベースにしつつFlatpakでアプリを管理する設計をとっている。現在はベータに向けた開発が進行中だ。 5月の報告で最も大きな比重を占めたのが、セキュリティ監査とその結果としての大規模整理だった。 直接のきっかけは、4月末に公開されたLinuxカーネルの権限昇格脆弱性CVE-2026-31431(通称Copy Fail)をはじめとする、上流カーネルで相次いだセキュリティ問題だ。KDE Linuxの開発チームはこ

Linuxカーネル、RNDISドライバ無効化に再挑戦

Linux

Linuxカーネル、RNDISドライバ無効化に再挑戦

USBをLANケーブル代わりに使う。スマートフォンのテザリングで当たり前のように行われているこの機能の裏側で、3年半に及ぶ攻防が続いている。Linuxカーネルの安定版リリース責任者であるグレッグ・クロー=ハートマン(Greg Kroah-Hartman)氏が5月31日、MicrosoftのRNDISプロトコルドライバを全面無効化するパッチを、自身のGitブランチに再び更新した。 「設計上、安全にできない」 RNDIS(Remote Network Driver Interface Specification)は、USB経由で仮想的なイーサネット接続を実現するためにMicrosoftが策定した独自プロトコルだ。Windows XP時代に導入され、LinuxやAndroidにもドライバが移植されてきた。 問題はこのプロトコルの設計そのものにある。クロー=ハートマン氏は2022年11月、Linuxカーネルメーリングリストで最初のパッチを投稿した際にこう記している。 MicrosoftのRNDISプロトコルは、信頼できないホストやデバイスと組み合わせて使うあらゆるシステム上で、設計上