Linuxカーネル

1991年のLinuxカーネルをRustで書き直した大学生の話

Linux

1991年のLinuxカーネルをRustで書き直した大学生の話

トーバルズ氏が「フォークしろ」と言った2日後、35年前のカーネルをAIで書き直したプロジェクトがHacker Newsに浮上した。実用性はゼロ。だからこそ面白い。 35年前のカーネルが動いた 北京航空航天大学(ベイハン大学)の学部生が、1991年にリリースされたLinuxカーネル0.11を丸ごとRustで書き直した。ハンドルネームは「Poseidon」。リポジトリ名はlinux-0.11-rs。 Linux 0.11は1991年12月8日に公開された初期カーネルで、初版(0.01)の公開から約3か月後にあたる。リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏がヘルシンキ大学の学生だった時代の産物だ。0.11はLinuxが初めてセルフホスティング(自分自身をコンパイルできる状態)に到達したバージョンでもある。 Poseidon版はこの0.11を、オリジナルのセマンティクス(動作仕様)を維持しながらRustで一から実装し直している。カーネル本体に加え、60以上のcoreutils(基本的なUnixコマンド群)、パイプラインや制御構文を備えたPOSIXサブセットのシェル、Ta

Linux 7.2-rc3公開、RISC-V新SoC対応とセキュリティ強化

Linux

Linux 7.2-rc3公開、RISC-V新SoC対応とセキュリティ強化

リーナス・トーバルズがLinux 7.2の3回目のリリース候補を公開した。開発は順調で、8月の安定版に向けて目立った問題は出ていない。RISC-V向け新SoCのデフォルト対応やドライバ脆弱性の修正など、多岐にわたるパッチが入った。 「怖いものは特にない」 トーバルズ氏(Linus Torvalds)は現地時間7月12日、Linux 7.2-rc3のリリースを発表した。添えられたコメントは短い。 Nothing looks particularly scary or strange.(怖いものも奇妙なものも特にない) コミット率はやや高めの状態が続いているが、夏休みに入る開発者が増え、多少バランスが取れているという。AIツールの普及でパッチ投稿量が増えた「new normal」(新しい常態)は7.0から続いており、7.2サイクルも変わらない。 変更の約半分はドライバ関連で、GPUとネットワーキングが中心。残りはファイルシステム、ドキュメント、コアカーネル、アーキテクチャ、ツール類と広く分散している。 UltraRISC RISC-Vがデフォルトカーネル構成に入る rc3

Linuxカーネル、AI帰属タグの廃止を議論。マージから3ヶ月

Linux

Linuxカーネル、AI帰属タグの廃止を議論。マージから3ヶ月

4月にマージされたAI利用の申告ルールが、早くも見直しの渦中にある。 自分たちが作ったルールを、自分たちで疑い始めた LinuxカーネルのAI帰属ルールを、メンテナー自身が見直そうとしている。 2026年4月、カーネルにマージされたcoding-assistants.rstは、AIを使ってパッチを書いた開発者にAssisted-byタグの付与を義務づけた。既報の通り、責任は全て人が負い、開発者はAIが関与した事実を申告するルールになっている。 マージから3ヶ月で、その前提が揺らいでいる。 7月1日、VFSメンテナーのクリスティアン・ブラウナー(Christian Brauner)氏がLKMLにパッチを投稿した。Assisted-byタグの大幅な簡素化を求める内容で、現行の書式がAIの名前やモデルバージョンまで記録させるためにGitの履歴がAI企業の無料広告になっている、と指摘している。 「我々のGitの履歴が、AI企業とそのプロプライエタリなエージェント・モデルの無料広告プラットフォームとして機能し始めていることに、非常にいらだちを覚える」(ブラウナー氏のLKMLへの投稿

Linuxカーネルからstrncpyが消えた。6年362コミットの結末

Linux

Linuxカーネルからstrncpyが消えた。6年362コミットの結末

C言語の標準ライブラリに含まれる関数が、Linuxカーネルから完全に姿を消した。strncpy()。文字列を指定バイト数だけコピーするこの関数は、1970年代のUNIXから受け継がれ、あらゆるCプログラマが一度は使ったことがあるだろう。だが、その挙動はバグの温床だった。 何が起きたのか 現地時間2026年6月19日、リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏がLinux 7.2のマージウィンドウでプルリクエストをマージした。strncpy()のAPI定義、5アーキテクチャ(alpha、m68k、powerpc、x86、xtensa)のアセンブリ実装、FORTIFY_SOURCEの防御コード、テストケースのすべてが削除され、19ファイルから346行が消えた。 この作業を率いたのは、Googleでカーネルセキュリティの強化に取り組むケース・クック(Kees Cook)氏だ。クック氏は2015年にKernel Self-Protection Project(KSPP)を立ち上げ、「バグを個別に潰すのではなく、バグが生まれる原因そのものを消す」という方針でカーネルの堅牢化を

Linuxカーネルが新ファイルシステムの受け入れ基準を明文化

Linux

Linuxカーネルが新ファイルシステムの受け入れ基準を明文化

新ファイルシステム追加のガイドラインが、異論なく承認された。5月に草案として提示されていた文書が、Linux 7.2のマージウィンドウが開くと同時にカーネルのドキュメントツリーへ収まっている。 草案から正式な「門」へ adding-new-filesystems.rst がLinuxカーネルの Documentation/filesystems/ に追加された。 5月のLSFMM+BPFサミットでアミール・ゴールドスタイン(Amir Goldstein)氏が提案し、ファイルシステム開発者の間で議論を経たドキュメントだ。当時は草案だった。今回Linux 7.2のマージウィンドウで、反対意見なしに正式採用された。 中身は「新しいファイルシステムをカーネルに入れたいなら、これを満たせ」という要件集。技術要件とコミュニティへの責任、その両方を明記している。 何が求められるのか 技術面の要件は明快だ。 folio(ページキャッシュの管理単位)とiomap(ブロックマッピングの現行API)を使うこと。古いAPIで組まれたファイルシステムは、そもそもレビューの土俵に上がれない。mk

Linuxカーネル7.2、Rustで「書かなくて済むコード」がまた増える

Linux

Linuxカーネル7.2、Rustで「書かなくて済むコード」がまた増える

「危険なコードを、書かずに済ませる」。次期Linuxカーネル7.2に向けてミゲル・オジェダ(Miguel Ojeda)氏が送ったRust関連のプルリクエストは、新機能の華やかさとは無縁だ。それでも、カーネルという土台にとっては重みのある一歩になる。今回の目玉は、4万行近いコードを一気に取り込むzerocopyライブラリの導入。これまで人が手書きしていた危ういコードの一部が、コンパイラに安全性を保証させる書き方へ置き換わる。 4万行の正体は「危険な変換」をなくすための部品 7.2のマージウィンドウは、7.1の正式リリース(現地時間6月14日)とともに開いた。その7.1も、NTFSの新ドライバ、Intel FREDのデフォルト有効化、x86の486世代サポートを含む14万行超の旧コード削除を抱えた、節目の更新だった。続く7.2に向けて、Rust陣営が真っ先に送り込んだのが今回のプルリクエストになる。 差分の行数だけ見れば、約3万9000行の追加。ベンチマーク用のコードを除いても約3万2000行という、Rust関連としては異例の大きさだ。ただ、この数字に身構える必要はない。中身のほと

Linuxカーネル、RNDISドライバ無効化に再挑戦

Linux

Linuxカーネル、RNDISドライバ無効化に再挑戦

USBをLANケーブル代わりに使う。スマートフォンのテザリングで当たり前のように行われているこの機能の裏側で、3年半に及ぶ攻防が続いている。Linuxカーネルの安定版リリース責任者であるグレッグ・クロー=ハートマン(Greg Kroah-Hartman)氏が5月31日、MicrosoftのRNDISプロトコルドライバを全面無効化するパッチを、自身のGitブランチに再び更新した。 「設計上、安全にできない」 RNDIS(Remote Network Driver Interface Specification)は、USB経由で仮想的なイーサネット接続を実現するためにMicrosoftが策定した独自プロトコルだ。Windows XP時代に導入され、LinuxやAndroidにもドライバが移植されてきた。 問題はこのプロトコルの設計そのものにある。クロー=ハートマン氏は2022年11月、Linuxカーネルメーリングリストで最初のパッチを投稿した際にこう記している。 MicrosoftのRNDISプロトコルは、信頼できないホストやデバイスと組み合わせて使うあらゆるシステム上で、設計上

AI生成コードがLinuxを蝕む構造的危機

Linux

AI生成コードがLinuxを蝕む構造的危機

Linuxカーネル7.1の開発サイクルで、AI生成コードがもたらす問題が臨界点に達しつつある。リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏はrc4でAIバグレポートの洪水を批判し、rc5ではコード投稿そのものに対して態度を硬化させた。問題は開発効率の話にとどまらない。フリーソフトウェアの根幹であるGPLv2ライセンスとの法的衝突という、もっと深い地層にまで亀裂が走り始めている。 rc4からrc5へ、怒りの温度が変わった 5月17日のrc4リリース時、トーバルズ氏の批判はAIツールで発見されたバグレポートに向けられていた。同じツールを使う複数の人間が同じ脆弱性を重複報告し、カーネルのプライベートなセキュリティメーリングリストが「ほぼ完全に管理不能」になったと指摘した。AIで見つけるだけ見つけて、修正コードは書かずにメンテナに丸投げする ── その構造への苛立ちだった。 5月24日のrc5で、矛先はさらに広がった。 rc5は本来、安定化に向けてコード変更が減る段階だ。だが今回のrc5は従来のrc5と比べて「かなり大きい」とトーバルズ氏は述べた。ドライバへの些末な修正が大