サプライチェーン攻撃

セキュリティ大手11社のCRM流出。日本にも影響か

サイバーセキュリティ

セキュリティ大手11社のCRM流出。日本にも影響か

バンクーバーの競合分析SaaS「Klue」が侵害され、Jamf、Tanium、Recorded Futureなどセキュリティ大手を含む少なくとも12社のSalesforce CRMデータが窃取された。Jamf、Tanium、Recorded Futureはいずれも日本法人を持ち、国内企業の取引先情報を含むデータが流出した可能性がある。6月23日にはLastPassも被害を公表し、影響は広がり続けている。 使い捨ての鍵が残っていた 現地時間6月12日、Klueのインテグレーション基盤で不正アクティビティが検出された。侵入経路は、かつてサードパーティ連携のプロトタイプ用に作られ、そのまま放置されていたレガシー認証情報だった。 Klueは競合インテリジェンスを提供するSaaSで、顧客企業のSalesforceやGongにOAuthトークンで接続し、営業データを取り込む仕組みだ。攻撃者はこのレガシー認証情報を使ってKlueの基盤に侵入し、顧客がKlueに預けていたOAuthトークンを一括で収穫するコードを仕込んだ。 OAuthトークンはパスワードやMFAを必要としない。Salesfo

OSSの信頼は壊れていた。直す前に証明された

セキュリティ

OSSの信頼は壊れていた。直す前に証明された

4か月、1,000パッケージ、週間ダウンロード合計5億。TeamPCPという脅威アクターが突きつけたのは、新しい手口ではなく、業界が長年見て見ぬふりをしてきた事実そのものだった。 既知の欠陥が、最悪の形で現実になった オープンソースの信頼モデルには構造的な欠陥がある。研究者も開発者も、それを知っていた。レジストリに公開されたパッケージの正当性を、ほとんどの組織は検証していない。CI/CDパイプラインは上流のコードを自動で取り込み、テストし、本番に流す。その連鎖のどこか一点が汚染されれば、下流すべてに広がる。 知っていて、直さなかった。 2026年2月末、TeamPCPがその穴を突き始めた。最初の標的は脆弱性スキャナーTrivy。Aqua SecurityのGitHub Actionsワークフローに残った未失効のトークンを利用し、公式リリースチャンネルを制圧した。セキュリティツールが、攻撃の入口になった。 そこから連鎖は止まらない。Trivyで盗んだ認証情報でCheckmarxのKICSを侵害し、LiteLLM、Bitwarden、TanStack、AntVへと波及した。5月

AUR荒らし、マルウェアの次はロシア語の嫌がらせ。AIが最初に検知

セキュリティ

AUR荒らし、マルウェアの次はロシア語の嫌がらせ。AIが最初に検知

Arch Linuxの「AUR」(Arch User Repository)で、1500を超えるパッケージがマルウェアに汚染された騒動が、ようやく収束しかけたところだった。その同じ場所が、今度は毛色の違う厄介事に見舞われている。インストール後、シェルの設定ファイルへ勝手にロシア語の悪口を書き込む嫌がらせだ。財産も認証情報も盗まない。実害がないからこそ、運営はかえって対応に困っている。 マルウェアではない、ただの荒らし きっかけは、開発者のニコラ・ボワシャ(Nicolas Boichat)氏が運用しているAI検知ボットだった。AURのパッケージに不審なメッセージが紛れ込んでいるのを拾い上げたと報告されている。問題のコミットは現地時間6月14日、つまり大規模マルウェア騒動の直後に行われたものだ。 何が仕込まれていたのか。インストール後に bashrc や zshrc、Fishといったシェルの設定ファイルへ、ロシア語の攻撃的なメッセージを書き加える処理が仕込まれていた。端末を起動するたびに、その悪態が画面に流れ出す。 ここが前回と決定的に違う。6月11日に発覚した「Atomic A

AIコーディングが見落とした脅威。jqwikとShai-Hulud

セキュリティ

AIコーディングが見落とした脅威。jqwikとShai-Hulud

Javaのテストライブラリに追加されたたった1行のプロンプトインジェクションが、AIコーディングエージェントの利用者を激怒させた。利用者側は法的措置をちらつかせ、GitHubのイシューを荒らし、開発者を「悪人」呼ばわりする騒動にまで発展した。だが同じ時期、npmとPyPIでは本物のサプライチェーンワームShai-Huludが471のパッケージに感染し、開発者の認証情報を次々と盗み出していた。AIエージェントを狙い撃ちにしたそのワームに対し、エージェント側の防御はまだ追いついていない。この非対称が、AIコーディングのいまを映し出している。 45年コードを書いてきた男の抗議 ドイツの開発者ヨハネス・リンク(Johannes Link)氏。プログラミング言語Groovyの貢献者であり、JUnit 5のプラットフォーム設計にも携わった人物だ。2017年から個人の時間を注ぎ込み、Javaのプロパティベーステストエンジン jqwik を開発してきた。テストコードに約10万行。そのほぼすべてをリンク氏がひとりで書いた。 リンク氏は2023年からAIによるコード利用を明確に拒否してきた。コント

AURマルウェア、削除完了の翌日にさらに高度な第3波が発生

Linux

AURマルウェア、削除完了の翌日にさらに高度な第3波が発生

AURマルウェア、削除完了の翌日にさらに高度な第3波が発生 Arch LinuxのAURマルウェア汚染は、まだ終わっていなかった。悪意あるコミットの削除が完了したと報告された翌日、手口をさらに高度化した新たな攻撃が確認された。検出のきっかけは、あるコミュニティメンバーがローカルで動かしていたAIモデルだった。 沈黙は24時間も続かなかった 6月12日、パッケージメンテナーのヨナタン・グローテリュッシェン(Jonathan Grotelüschen)氏が、認識しているすべての悪意あるコミットを削除したとメーリングリストで報告した。影響を受けたパッケージは1,579件。Arch Linuxは公式声明を出し、AURへの新規アカウント作成やパッケージの更新・引き取りに制限をかけた。 その制限下で、攻撃は再び起きた。 6月13日夜(UTC)、開発者のa821氏がメーリングリストに新たなリストを投稿した。約50件のパッケージに、難読化されたBunコマンドが挿入されていた。第1波のnpm、第2波の平文Bunとは異なり、今回はコマンド文字列が1文字ずつシングルクォートで分割されていた。gi

AURマルウェア、被害は1,579件超に拡大。第2波も発生していた

Linux

AURマルウェア、被害は1,579件超に拡大。第2波も発生していた

Arch LinuxのAURで発覚したマルウェア汚染は、当初報じた400件をはるかに超える規模だった。最終的に確認された被害パッケージは少なくとも1,579件。しかも攻撃は一度では終わらず、第2波まで発生していた。Arch Linux側は悪意あるコミットの削除を終えたとしているが、公開されたリストには「すべてではない」との但し書きがある。 400件が1,579件に膨れ上がるまで 6月11日に最初の報告が上がった時点で、被害パッケージは約408件と見積もられていた。だが数時間後には約900件に増え、最終的にArch Linuxのパッケージメンテナーであるヨナタン・グローテリュッシェン(Jonathan Grotelüschen)氏がメーリングリストに投稿した影響パッケージリストには、1,579件 のパッケージ名が並んでいた。 ここまで膨らんだのは、攻撃が一度では終わらなかったからだ。 第2波はnpmではなくBunだった 既報の通り、第1波の手口はPKGBUILDや.installファイルに npm install atomic-lockfile を挿入するものだった。だが攻

Arch LinuxのAURが400件超のマルウェア汚染。その手口と対処法

Linux

Arch LinuxのAURが400件超のマルウェア汚染。その手口と対処法

Arch Linuxのユーザーリポジトリ「AUR」で、400件を超えるパッケージにマルウェアが仕込まれていたことが明らかになった。公式リポジトリは無事だが、AURを日常的に使っているなら、今すぐ自分の環境を確認すべき事態だ。 何が起きたのか 2026年6月11日、AURのメーリングリストにメンテナーのヨナタン・グローテリュッシェン(Jonathan Grotelüschen)氏が緊急の報告スレッドを立てた。AUR上の多数のパッケージに悪意あるコミットが挿入されており、現在すべての削除・リセットとアカウントBANを進めているという内容だ。 コミュニティメンバーのアンドレ・ヘルプスト(André Herbst)氏がAURのリードオンリーミラーを調査したところ、atomic-lockfileという不審なnpmパッケージのインストールを含むパッケージが約408件見つかった。セキュリティ企業Sonatypeはこの攻撃を「Atomic Arch」と命名し、独自調査を公開している。 今回の被害は AURに限定 されており、Arch Linuxの公式リポジトリ(core、extra等)は影響

MiasmaワームがMicrosoft GitHubを直撃、73リポジトリが強制封鎖

セキュリティ

MiasmaワームがMicrosoft GitHubを直撃、73リポジトリが強制封鎖

自己増殖するマルウェア「Miasmaワーム」が、AIコーディングツールを踏み台に使う新手法でMicrosoftのリポジトリを侵害した。リポジトリを開いた瞬間、資格情報が盗まれる。 「開いただけ」で動くマルウェア 6月5日、MicrosoftのGitHub組織が直撃を受けた。Azure、Azure-Samples、Microsoft、MicrosoftDocsの4組織にまたがる73のリポジトリが感染し、GitHubが105秒の自動処理で全て封鎖した。 攻撃の起点は、過去に侵害されたコントリビューターアカウントを使ったコミットだ。Azure/durabletaskリポジトリに悪意あるコミットが押し込まれ、5つの設定ファイルが仕込まれた。クローンしても安全だが、エディタで開いた瞬間に動く。パッケージのインストールも不要だ。 仕込まれた5ファイルとターゲットツール ファイルClaude CodeGemini CLICursorVS Code.claude/ settings.json○———.gemini/ settings.json—○——.c

2年前に「消せ」と言われたコード、消さなかった企業に何が起きたか

セキュリティ

2年前に「消せ」と言われたコード、消さなかった企業に何が起きたか

東芝、無印良品、象印マホービンをはじめとする日本企業のサイトで、突然「ユーザー名とパスワードを入力してください」という認証画面が表示される事態が相次いでいる。正規のサイトを開いただけで、ログイン画面が出る。原因は2024年にサプライチェーン攻撃の舞台となったpolyfill.ioの参照コードを、2年経っても削除していなかったこと。停止されていたはずのドメインが5月末に動き出し、放置されたコードが牙をむいた。 何が起きているのか 東芝は6月2日、無印良品も同時期に、それぞれ公式サイトで注意喚起を出した。内容はほぼ同じだ。「サイトの一部で不審なサインイン画面が表示されることを確認した。何も入力せずキャンセルを選んでほしい。万が一入力してしまった場合は、同じパスワードを使っている他サービスのパスワードを変更してほしい」。 象印マホービン、FiNC Technologies、医歯薬出版、ほぼ日、リクルートマネジメントソリューションズも同様の告知を出している。ユーザーの報告では三井ショッピングパーク系列の施設サイトやオートバックス公式通販、音声合成ソフトVoiSonaのサイトでも同じダイ

Red Hatの公式npmパッケージ32件が侵害

セキュリティ

Red Hatの公式npmパッケージ32件が侵害

Red Hatが管理するnpmパッケージ32件に、認証情報を根こそぎ奪うマルウェアが仕込まれていた。偽物のパッケージではない。@redhat-cloud-servicesという正規の名前空間に、正規のCI/CDパイプラインを通じて、正規の署名付きで配信された本物の毒だ。 「信頼」そのものが武器になった 2026年6月1日、セキュリティ企業StepSecurityが@redhat-cloud-servicesスコープ配下の複数のnpmパッケージにマルウェアが埋め込まれていることを発見した。影響を受けたのは32パッケージ、96バージョン。合計で週あたり約11万7000回ダウンロードされていたパッケージ群だ。 今回の攻撃で決定的に重要なのは、これがタイポスクワッティング(名前の似た偽パッケージを公開する手口)ではないという点にある。攻撃者はRed Hat従業員のGitHubアカウントを侵害し、RedHatInsightsのGitHubリポジトリに不正なコミットを直接プッシュした。そこからGitHub ActionsのOIDCトークンを悪用して、正規のSLSAプロビナンス認証(ビルドの

GitHubリポジトリ5500件超にバックドア、「Megalodon」攻撃の全容

セキュリティ

GitHubリポジトリ5500件超にバックドア、「Megalodon」攻撃の全容

偽のCIコミットが6時間で5700件以上のリポジトリに押し込まれた。GitHub Actionsを悪用し、クラウド認証情報からSSH鍵まで根こそぎ抜き取る大規模サプライチェーン攻撃の手口と対策。 6時間で5561リポジトリが陥落した 2026年5月18日、GitHubで異常な規模の自動化攻撃が発生している。セキュリティ企業SafeDepが「Megalodon」(メガロドン)と名付けたこのキャンペーンは、わずか6時間の間に5718件の偽コミットを5561のリポジトリに送り込んだ。CIの自動化に見せかけてバックドアを仕込み、開発者が気づかないまま認証情報を抜き取る——過去最大規模のGitHub Actionsワークフロー汚染だ。 コミットの著者名はbuild-bot、auto-ci、ci-bot、pipeline-botの4種類。メッセージも「ci: add build optimization step」「chore: optimize pipeline runtime」など、日常的なCI保守に偽装されていた。使い捨てのGitHubアカウント(ランダム8文字のユーザー名)を使い回

GitHubの内部リポジトリ約3800件が流出した経路が判明した

セキュリティ

GitHubの内部リポジトリ約3800件が流出した経路が判明した

VS Code拡張機能の偽バージョンを踏んだ社員1人。それだけで、世界最大のコードホスティングプラットフォームの内部コードが外に出た。 18分間の窓 5月18日、Nx Console 18.95.0の改ざん版がVisual Studio Marketplaceに公開された。そのまま残っていたのは18分間だった。 短い。しかし十分だった。 GitHubの社員が、この拡張機能をインストールした。拡張機能は起動時に静かに動き出し、シェルコマンドを実行した。表向きは「MCPのセットアップタスク」を装ったそのコマンドは、Nxの公式GitHubリポジトリに仕込まれたコミットから隠しパッケージを引き出した。収集されたのは、1Passwordのボールト、npm・GitHubのトークン、AWS認証情報、AnthropicのClaude Codeの設定ファイル(~/.claude/settings.json)だ。 奪った認証情報を使い、攻撃者はCI/CDパイプラインを横移動し、GitHubの内部リポジトリ約3800件を外部に持ち出した。公開から 18分間 で、それだけの被害が確定した。 ウェ