トランプ政権

「言語が違う」。AnthropicとトランプのAI戦争、Claudeが止まった日

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「言語が違う」。AnthropicとトランプのAI戦争、Claudeが止まった日

AI安全性の旗手を自任するAnthropicが、最強モデルをユーザー全員から突然奪われた。停止を命じたのは政府で、引き金は技術論争ではなく「人が合わない」という話だった。 Fable 5とMythos 5が落ちた夜 現地時間2026年6月12日の午後5時21分、Anthropicにひとつの文書が届いた。送り主は米政府。内容は、Claude Fable 5とClaude Mythos 5について、すべての外国籍の人物に対するアクセスを即時停止するよう求める輸出規制の指令だった。 そこに猶予は書かれていなかった。 Anthropicの説明では、外国籍を持つ利用者を確実に排除するには全ユーザーへのアクセスを止めるしかなかったという。結果として、国籍に関係なく世界中の顧客がFable 5とMythos 5を使えなくなった。自律型コーディング、長文推論、医療研究など、Mythos級モデルに依存していた組織が一夜にして切り離された。 直接の引き金は、AmazonのCEOアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏が財務長官スコット・ベッセント(Scott Bessent)氏へかけた電話

米セキュリティ専門家40人超がFable禁止の撤回を要求

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米セキュリティ専門家40人超がFable禁止の撤回を要求

トランプ政権がAnthropicのFable 5とMythos 5に輸出管理指令を出してから3日。Adobe、Zoom、ソフォス、NVIDIAの幹部やセキュリティ研究者を含む40人超が、ホワイトハウスに対して禁止措置の撤回を求める公開書簡に署名した。書簡が訴えるのは一点。この措置は防御側から最良のツールを奪っただけで、攻撃側には何の影響も与えていない。 書簡が突きつける問い 公開書簡を取りまとめたのは、元Facebook最高セキュリティ責任者のアレックス・スタモス(Alex Stamos)氏。現在はAIコーディングセキュリティ企業Corridorの最高製品責任者を務める。 書簡は「防御側にAIを提供することが不可欠だ」と正面から訴える。自社や顧客のコードに潜む脆弱性を、攻撃者より先に見つけて塞ぐ。その切り札と見なされていたのがFable 5だ。 署名者にはLuta SecurityのCEOケイティ・ムスリス(Katie Moussouris)氏、SocialProof SecurityのCEOレイチェル・トバック(Rachel Tobac)氏、Veracode共同創業者のクリ

Anthropicが技術者をD.C.に飛ばした。Fable 5復旧交渉の行方

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Anthropicが技術者をD.C.に飛ばした。Fable 5復旧交渉の行方

Fable 5とMythos 5の全面停止から3日。Anthropicの上級技術スタッフがワシントンD.C.に入り、ホワイトハウス関係者と直接会談に臨んでいると報じられた。対立は対話の局面に移りつつある。 金曜日から続く水面下の接触 6月14日、Anthropicに近い関係者の証言として報じられた。同社の上級技術スタッフがワシントンに飛び、ホワイトハウス関係者と対面での協議に入っている。金曜日(6月12日)にトランプ政権側が最初の接触を図って以降、技術スタッフはバーチャル会議を重ねてきたという。 双方が問題解決に意欲を示しているという。 ただし、その間にも認識のずれは表面化している。政権側は「Anthropicが真剣に取り組んでいない」と主張していた。Anthropicに近い関係者は「金曜日の段階からバーチャルで対話を続けてきた」としている。技術者がD.C.に赴いたこと自体が、この認識の溝を埋めるための動きだろう。 止まった3日間で動いたもの 停止の経緯と背景についてはこれまでの記事で詳しく報じた。ここでは、この3日間で浮上した新たな事実を確認する。 停止翌日の報道で

Fable 5停止、もう一つの理由。中国のMythosアクセス疑惑が浮上

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Fable 5停止、もう一つの理由。中国のMythosアクセス疑惑が浮上

Fable 5とMythos 5の全面停止から2日。ジェイルブレイクとAmazonの通報、政権との交渉決裂という経緯はすでに報じた。だがその裏に、公表されていないもう一つの理由があった可能性が浮上している。 中国と関係のあるグループがMythosにアクセスした疑いがあり、それが輸出管理の根拠の一つだったと、事情に詳しい関係者の話として報じられた。 「アクセスを求めた」から「アクセスした疑い」へ 伏線は5月にあった。 4月、シンガポールで開かれたカーネギー国際平和財団の会合で、中国のシンクタンク職員がAnthropicの関係者にMythosへのアクセスを求めたと報じられた。Anthropicは拒否し、米国家安全保障会議(NSC)にもこの接触は報告された。 あの時点では「アクセスを求めて断られた」話だった。今回の報道は一段階先に進んでいる。中国関連グループが実際にMythosにアクセスした疑いがあるというのだ。どの組織が、どのような経路でアクセスしたのかは明らかになっていない。 食い違う説明 ここで注目すべきは、Anthropic側の反応だ。 同社の広報担当者は、Fab

Fable 5停止が浮き彫りにした「AIは誰のものか」。欧州の政治家が一斉に動いた

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Fable 5停止が浮き彫りにした「AIは誰のものか」。欧州の政治家が一斉に動いた

米国政府がAnthropicのFable 5とMythos 5を止めてから24時間も経たないうちに、ヨーロッパの政治家たちが一斉に声を上げた。左右を問わない。現職閣僚も、野党指導者も、元首相も。口にした言葉はそれぞれ違うが、指し示す先はひとつだった。AIは国家インフラになった、そしてそのインフラを他国が握っている、と。 何が起きたか 経緯を手短に振り返る。6月9日にリリースされたFable 5は、Anthropicが一般公開した初のMythosクラスのモデルだった。リリース前に米国政府への通知は済んでおり、反対はなかった。それが6月11日木曜夜、Amazonのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOが政権幹部に電話をかけたことで状況が変わる。自社の研究者がFable 5のセーフガードを突破し、サイバー攻撃に転用可能な情報を引き出したという報告だった。少なくとも5社が追随して懸念を伝え、翌金曜の夕方にはハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官からダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOへ輸出規制の書簡が届いた。同日夜、Fable 5とMytho

Fable 5はなぜ止まったのか。舞台裏の24時間と「事実上のライセンス制度」

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Fable 5はなぜ止まったのか。舞台裏の24時間と「事実上のライセンス制度」

Fable 5停止の舞台裏が見えてきた。Anthropicはリリース前に政府へ通知し、反対されていなかった。それを覆したのは、木曜夜に始まった24時間の出来事だった。 反対されなかったリリース Fable 5の6月9日のリリースに先立ち、Anthropicは政府に対してリリース計画を複数回通知していた。政府は反対しなかった。 金曜夜の規制は、「危険なモデルを止めた」だけでは説明がつかない。政府はFable 5の性能もセーフガードの仕組みも把握した上で、リリースを黙認していた。 それが変わったのは、6月11日の木曜夜だった。 木曜夜から金曜夜まで Amazonのアンディ・ジャシーCEOが、6月11日木曜夜、政権幹部に電話をかけた。自社の研究者がFable 5のセーフガードを突破し、サイバー攻撃に転用可能な情報を引き出したという報告だった。連絡先にはスコット・ベッセント財務長官も含まれていた。 Amazonだけではない。木曜夜から金曜朝にかけて、少なくとも5社が政権の複数の高官に懸念を伝えた。 金曜早朝から、政権関係者はAnthropicに対してモデルの自主撤回を繰り返

Fable 5停止の裏で何が起きていたのか。政府側の言い分とAmazonの影

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Fable 5停止の裏で何が起きていたのか。政府側の言い分とAmazonの影

Anthropicの最新モデルFable 5とMythos 5が米政府の輸出規制で停止された問題で、新たな事実が立て続けに明らかになった。政権側の論理を語ったサックス氏の投稿、そして規制の引き金を引いたのが他ならぬAnthropicの最大の出資者だったという報道。リリースからわずか3日で止められたモデルの裏で、何が動いていたのか。 政府側が初めて語った「経緯」 大統領科学技術諮問委員会(PCAST)の共同議長であるデビッド・サックス(David Sacks)氏が6月14日、一連の経緯について長文の投稿を行った。サックス氏は3月にホワイトハウスAI・暗号通貨担当の特別顧問を退任したが、PCAST共同議長としてAI政策への関与は続いている。その立場から政府側の視点を体系的に語ったのは、これが初めてだ。 I’ve had a number of conversations with folks inside and outside government about the current situation with Anthropic, and here is what I bel

米政府がFable 5とMythos 5を輸出規制。リリース3日で全ユーザーのアクセス停止へ

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米政府がFable 5とMythos 5を輸出規制。リリース3日で全ユーザーのアクセス停止へ

6月9日に一般公開されたばかりのClaude Fable 5が、わずか3日で使えなくなった。 6月12日、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官がAnthropicのCEOダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏宛てに書簡を送り、Fable 5とMythos 5を輸出規制の対象に指定した。米国外への提供はもちろん、米国内の外国籍の人物への提供も禁止される。Anthropicの外国籍社員すら対象だ。外国籍のユーザーだけを選別する手段がない以上、Anthropicは全ユーザーのアクセスを止めるしかなかった。他のClaudeモデルには影響しないとしている。 波乱のリリースから72時間 Fable 5とMythos 5は同一の基盤モデルだ。違いはセーフガードの有無だけで、Fable 5にはサイバーセキュリティ、生物・化学、AI蒸留(高性能モデルの出力を使って別のAIを訓練する手法)に関するリクエストを検知する分類器が搭載されている。該当するリクエストを検知すると、応答をClaude Opus 4.8に自動的に切り替える仕組みだった。Mythos 5はこの制限

米CISA、脆弱性の修正期限を最短3日に。リスクベースの新指令を発行

セキュリティ

米CISA、脆弱性の修正期限を最短3日に。リスクベースの新指令を発行

米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)が6月10日、連邦政府機関向けの脆弱性管理を根本から組み替える拘束的運用指令「BOD 26-04」を発行した。すべての脆弱性を一律に扱うのをやめ、4つのリスク基準で優先順位をつけろ、という内容だ。最も危険な脆弱性には、修正期限が3日しかない。 「全部急げ」の限界を認めた指令 BOD 26-04の正式名称は「Prioritizing Security Updates Based on Risk(リスクに基づくセキュリティ更新の優先順位付け)」。2019年のBOD 19-02と2021年のBOD 22-01を統合・廃止し、新たな枠組みに一本化するものだ。 従来の指令は、脆弱性の深刻度スコア(CVSS)をベースに修正期限を定めていた。インターネットに公開されたシステムの重大な脆弱性は15日以内、高リスクは30日以内。KEVカタログ(既知の悪用された脆弱性カタログ)に載った脆弱性は、深刻度を問わず一律14日以内に修正しなければならなかった。 問題は、この枠組みが現場の実態に追いつけなくなっていたことだ。 5月公開のVeriz

Amazonの配達ドライバー39万人は誰の「従業員」なのか

労働問題

Amazonの配達ドライバー39万人は誰の「従業員」なのか

Amazonの荷物を届けるドライバーたちは、Amazonの制服を着て、Amazonのルートを走り、Amazonのアプリで管理されている。しかしAmazonは、彼らを自社の従業員だと認めたことがない。 連邦政府が用意した「答え」は、なぜ消えたか 米国で2年近く続いた画期的な訴訟が、事実上の幕引きを迎えた。 全米労働関係委員会(NLRB)がAmazonの「共同雇用主」責任を問う訴訟を進めていた。5月、行政法判事のラミレス(G. Rebekah Ramirez)氏がNLRBの法律顧問とAmazonの間で成立した和解を承認した。Amazonが支払うのは、対象ドライバー最大84人に対する2週間分の給与、総額約25万ドル(約4,000万円)。時価総額約2.65兆ドル(約424兆円)の企業にとっては、端数にもならない金額だ。 そして何より重要なのは、Amazonが 「共同雇用主」であるという認定も、不当労働行為の認定も 一切含まれていないことだ。 この訴訟は、Amazonの配達モデルの根幹を揺るがしかねないものだった。もし「共同雇用主」の判断が確定すれば、全米で約39万人のラストマイル配

AIが診断し、AIが薬を出す。米政権が描く医療の未来

AI

AIが診断し、AIが薬を出す。米政権が描く医療の未来

トランプ政権がAIチャットボットに診断と処方を担わせる構想を、本気で動かし始めた。その中心にいるのが、DOGE(政府効率化局)の責任者エイミー・グリースン(Amy Gleason)氏だ。元看護師の彼女は現在、保健福祉省(HHS)長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の顧問としてAI医療の推進を担っている。 原体験は娘の病気だった。10年以上にわたる自己免疫疾患と闘う娘が、16年分の医療記録をChatGPTに読み込ませたところ、医師とは異なる診断が返ってきた。それが臨床試験への道を開いたという。 自動運転と同じ道を グリースン氏がインタビューで語ったのは、AI医師の規制を自動運転車と同じモデルで段階的に整備するという構想だ。テストコースから公道へ、何年もかけて実績を積み信頼を得たあのプロセスを、医療でも繰り返すという。 この構想は個人のビジョンではない。政権全体が動いている。 FDAはデジタルヘルス技術に対する審査の迅速化レーン(ファストトラック)を新設した。AIチャットボットやウェアラブル機器が対象だ。メディケイド(低所得者向け公的医療保険)がAI搭載のウェルネスアプリに初

AI以外の産業がメモリ不足でトランプ政権に介入を要請

AI

AI以外の産業がメモリ不足でトランプ政権に介入を要請

メモリ不足が騒がれ始めてもう半年以上になる。だがこれまで声を上げていたのは、PC業界やメモリメーカー、つまり半導体サプライチェーンの内側にいる当事者ばかりだった。その構図が変わった。 9つの業界団体が連名で書簡を送った 6月3日、米国の9つの業界団体がスコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官とハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官に宛てて連名の書簡を送付した。通信、自動車、医療機器、小売という、半導体産業の「外側」にいる業界が揃って政府に対策を求めるのは初めてのことだ。 署名したのは、米国のインターネット・テレビ業界団体NCTA、米国通信産業協会(TIA)、米国自動車イノベーション連盟(Alliance for Automotive Innovation)、先進医療技術工業会(AdvaMed)、全米小売業協会(NRF)など。共通しているのは、いずれもAIデータセンターとは無縁の産業でありながら、メモリチップを大量に必要とする分野だという点だ。 書簡の要旨はこうだ。AIデータセンターの爆発的拡大がメモリチップの供給能力を食い尽くし、価格が

米FCCが放送局に「免許は特権」と通告

テクノロジー

米FCCが放送局に「免許は特権」と通告

米連邦通信委員会(FCC)が5月28日、全米のテレビ・ラジオ放送局に向けて7ページの公式通知を発出した。放送免許はあくまで「公共の利益に資する限りにおいて認められる特権」であり、放送局がこの義務を果たさなければ免許の早期更新要求や短期限定の条件付き更新、さらには取り消しを含む措置を講じるという内容だ。 一見すると、約100年前の通信法にある原則を再確認しただけに見える。だが、この通知がなぜ「今」出たのかを見れば、話はまるで違ってくる。 50年ぶりの「武器」が動いた日に 通知が出た5月28日は、ディズニー傘下のABCが保有する8局の放送免許早期更新申請の期限当日だった。 経緯を振り返る。4月23日、ABCの深夜番組「Jimmy Kimmel Live!」で司会のジミー・キンメル(Jimmy Kimmel)氏がメラニア・トランプ(Melania Trump)大統領夫人について「もうすぐ未亡人になりそうな輝き」と冗談を飛ばした。2日後の4月25日、ホワイトハウス記者協会夕食会で銃撃未遂事件が発生。大統領夫妻は避難を余儀なくされた。 事件後、メラニア夫人はキンメル氏の発言を「憎悪と

米AI大統領令が撤回された経緯 政策変更に関与した勢力を整理

AI

米AI大統領令が撤回された経緯 政策変更に関与した勢力を整理

トランプ政権のAI規制を巡り、ホワイトハウス内部で三つの勢力が激突している。規制緩和を求めるシリコンバレー人脈、安全保障上の脅威として規制強化を訴える国防総省、そしてその間で落としどころを探る首席補佐官と財務長官。5月21日にAI大統領令の署名が土壇場で撤回された裏側に、この対立構造がある。 署名式の数時間前に起きたこと 5月21日、ホワイトハウスはAI企業の幹部を署名式に招待していた。大統領令の草案は数カ月かけて練り上げられ、5月20日にはアイゼンハワー行政府ビルでAI企業幹部向けの説明会が2回開かれた。全員が合意し、あとは署名するだけだった。 だがその前夜から当日朝にかけて、3本の電話がトランプ大統領に入った。元AI・暗号資産担当特別顧問のデビッド・サックス(David Sacks)氏、イーロン・マスク氏、マーク・ザッカーバーグ氏。3人の主張は同じ一言に集約される。「中国に負ける」。 サックス氏は大統領に直接電話し、草案に含まれる監視枠組みが事実上のFDA型承認プロセスになりかねないと警告した。トランプ大統領は記者団に対し、「ある部分が気に入らなかった。延期した。我々は中