Ubisoftが法廷へ──The Crew閉鎖で仏団体が提訴

お金を払って買ったゲームが、ある日突然消える。その「当たり前」が問い直されている。フランスの消費者団体が、ついに法廷で動き始めた。

Ubisoftが法廷へ──The Crew閉鎖で仏団体が提訴
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お金を払って買ったゲームが、ある日突然消える。その「当たり前」が問い直されている。フランスの消費者団体が、ついに法廷で動き始めた。


フランス最大の消費者団体がUbisoftを提訴

フランスの消費者保護団体が、Ubisoftをクレテイユ司法裁判所に提訴した。2026年3月31日に発表されたこの訴訟の争点は、2024年にサーバーが停止されたレーシングゲーム『The Crew』だ。デジタルゲームの「所有権」を根本から問い直す動きが、Ubisoftの本国フランスで始まっている。

訴えを起こしたのはUFC-Que Choisir、フランス最大の消費者保護組織だ。購入者は代金を支払ったにもかかわらず、ゲームが完全に利用不能になったとして「欺瞞的な商慣行」と「濫用的な契約条項」の二本柱で追及している。同団体の担当弁護士ブリュヌ・ブラン=デュランはAFP通信に対し、The Crewのケースは「法的に極めて明確な教科書的事例」だと語った。

UFC-Que Choisirは、ゲーマーの購入したものが「いつでも取り消せるライセンス」に過ぎないとUbisoftが主張する姿勢を「容認しがたい」としている。

この提訴は単なる損害賠償請求ではない。狙いは3つある。こうした慣行の停止、利用規約における問題条項の削除、そして消費者の集団的利益への侵害の認定だ。正直なところ、これはThe Crewだけの話ではない。業界全体の「所有権」の再定義を迫る訴訟だ。

「10年遊んだから文句を言うな」というUbisoftの論理

2014年発売のThe Crewは、発売から2年で約1200万人のプレイヤーを集めたオープンワールドレーシングゲームだった。しかしUbisoftは2023年12月にデジタルストアから削除し、2024年3月31日にサーバーを完全停止した。

問題の核心は、ソロモードの存在だ。The Crewにはオンライン接続なしでも遊べるソロプレイが含まれていた。にもかかわらず、サーバー停止でオフラインで動作しうる部分まで道連れになった。一方的に、すべてが奪われたわけだ。

さらにUbisoftは2024年4月、購入者のライブラリからライセンスそのものを剥奪し始めた。インストールすらできない状態にしたのだ。返金は「最近の購入者」のみに限定され、何年も前に買った大多数のプレイヤーは何も受け取れなかった。

米カリフォルニア州で進行中の集団訴訟に対し、Ubisoftの弁護団は「原告は10年近くThe Crewを楽しんだのだから、今さら不満を言う立場にない」と主張している。

この論理が通るなら、あらゆるデジタル製品に「賞味期限」が存在することになる。メーカーがそう決めたその日が期限だ。しかもその期限は、購入時には一切知らされない。

130万人の署名が突きつける「出口戦略」の義務化

UFC-Que Choisirの提訴を支えているのが、The Crewの閉鎖を契機に2024年に生まれた消費者運動だ。YouTuberのロス・スコットが立ち上げたStop Killing Games(SKG)は、EU市民イニシアチブとして署名を集め、欧州委員会は正式に審査を開始している。

最終的な有効署名数は129万4188件。100万件のしきい値を大きく超えた。

Stop Killing Games

タイムラインはすでに動いている。2026年1月26日にイニシアチブが欧州委員会に提出され、委員会は7月27日までに公式回答を出す義務がある。SKGのモリッツ・カツナー事務局長はロイターに対し、4月16日にEU議会での公聴会が予定されていると明かした。

2026年2月には、EUと米国の両方でSKGのNGO(非政府組織)が正式に発足している。署名集めのフェーズは終わり、ロビー活動と政策提言のフェーズに入った。

SKGの要求は「ゲームを永久にサポートし続けろ」ではない。サービス終了時にオフラインパッチやコミュニティサーバーを提供し、プレイ可能な状態を残すことだ。

この一点が見落とされがちだが、重要だ。永続的なサポートを求めているのではなく、「出口戦略」の義務化を求めている。


カリフォルニアからクレテイユへ──包囲網は広がる

Ubisoftが直面する法的圧力は、今回のフランスの提訴だけではない。2024年11月には米カリフォルニア州で2人のプレイヤーが集団訴訟を提起しており、こちらも現在進行中だ。

興味深いのは、この2つの訴訟が異なる法体系から同じ問題を突いている点だ。カリフォルニアでは消費者保護法違反とコモンロー上の詐欺が争点で、原告はThe Crewのパッケージに記載されたアクティベーションコードの有効期限が2099年になっていた点を証拠として提出した。2099年まで使えると暗示しておいて、10年で切るのは詐欺ではないか、という主張だ。

フランスでは、欺瞞的商慣行と濫用的契約条項がEU消費者保護法の枠組みで争われる。欧州は一般的に消費者保護が米国より強い傾向があり、Ubisoft本国のフランスで提訴された意味は大きい。

一方、Ubisoftも無策ではない。The Crew 2とThe Crew Motorfestにはオフラインモードの実装を約束している。だが、すべての発端になった初代The Crewについては、何の救済も示されていない。2025年にはModコミュニティが独自にThe Crewを復活させた。本来Ubisoftがやるべきことを、ファンがやったわけだ。

「ゲームはサービスか、製品か」という根本的な問い

Ubisoftのイヴ・ギユモCEOは2025年7月の株主総会で、サーバー維持は「非常に重い負担」であり、この問題は「Ubisoft固有のものではない」と釈明した。それ自体は事実だろう。だがこの論理は、問題の本質をすり替えている。

裁判の行方は、ゲームが「サービス」と「製品」のどちらに分類されるかにかかっている。サービスであれば、パブリッシャーには終了の裁量がある。製品であれば、購入者の権利はより強く保護される。The Crewのケースが「教科書的」とされるのは、グレーゾーンではなく黒に近いからだ。

カリフォルニアのAB 2426法は2025年1月に発効し、デジタルストアに対して「購入」がライセンスに過ぎないことの明示を義務づけた。Steamはこの法律を受け、購入画面に免責表示を追加している。

法制度は少しずつ動いている。GOGは「うちのゲームにはオフラインインストーラーが付属しており、奪われることはありません」と皮肉を込めた声明を出した。透明性の向上は始まっているが、すでに消えたゲームは戻ってこない。この非対称性こそが、UFC-Que Choisirが法廷に持ち込んだ本質だ。


デジタルの書棚に「所有」は存在するのか

EU議会の公聴会は4月16日。欧州委員会の回答期限は7月27日。フランスの裁判は始まったばかり。カリフォルニアの訴訟も進行中。すべてが同時に動いている2026年は、デジタルゲームの「所有権」にとって分水嶺の年になるかもしれない。

あなたのライブラリに並ぶゲームは、本当に「あなたのもの」だろうか。その答えが出るまで、あとそう長くはない。


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